水本  乾太さん
インタビュー公開日:2022.10.06

生まれた時からイラストの申し子。
小学生でオリジナルキャラを作成?
「物心がついた頃から絵を描くのが好き。いつも片手にクレヨンを握ってる、そんな子どもでした」そう語るのは、札幌のアニメーション制作会社ウタリカで3Dモーションデザイナーを務める水本乾太さん。入社してまだ一年足らずなのに、口調や仕草にどこか落ち着きを感じさせる好青年です。
「小学校に進むと、片っ端から漫画の主人公を模写しました。それだけでは飽き足らず、オリジナルのキャラクターまで作ったりして」
中学、高校と進学するにつれ、その傾向はエスカレートする一方。
「中学校は美術部に所属して本格的なイラストを、高校時代はバイトと食事の時間以外…授業中までアニメーションを描きまくっていました。ちなみにバイト代はほとんど、パソコンやソフト、ペンタブなど、絵を描く道具に化けていました(笑)」
いつの間にか心の中に芽生えたのは、イラストを一生の仕事にしたいという思い。高校を卒業したらそのままフリーのイラストレーターになろうと考えたこともありましたが…
「ただ新人が稼げるほど世の中は甘くないということが分かり、まずは専門的な知識を習得するために専門学校に進みました」

※下記は中学生時代に描いていたキャラクター
3Dの知識や仲間との共同作業、
世界が一挙に広がった専門学校。
水本さんが選んだのはゲームカレッジ学科。ビデオゲームの基礎や技術、制作方法等を学ぶコースです。
「それまでは一人で2D作品ばかり描いていたので、3Dのアニメ制作はとっても衝撃的でした。さらにゲームのコンセプトを考えたり、モデリングやモーションの技術を習得したりと、毎日が貴重な経験の連続。自分の生きている世界が一挙に広がったような感覚になりました」
特にためになったのはオリジナルゲームの制作。プランを立てる、デザインをする、イラストを描くとチームで役割を分担し、共同作業でゲームを構築するというカリキュラムでした。
「自分はビジュアルやモーション制作を担当しました。全員で協議したり、メンバーの提案を尊重しながらの作品づくりはとても新鮮。時に意見が食い違うこともありましたが、そんな苦労をしたからこそ、完成した作品には強い思い入れを感じましたね」
瞬く間に過ぎた2年間。就職先を探す中、学校の先生から紹介されたのは設立まもないウタリカという会社。
「関連会社が自分の好きなアニメ作品を手がけている企業だと分かり、俄然興味が湧きました。出来たばかりなので何にも染まっていない新鮮さも感じましたし、いろんな仕事にチャレンジできることも魅力でした」
エンドロールの名前を見て
喜んでくれた両親に感謝を。
専門学校でアニメーション制作の基本知識や技術を培っていたこともあり、水本さんは入社後、即戦力として活躍します。
「勤務後すぐに、アニメの絵コンテ編集、撮影やテロップ作成などを担当しました。その作品はテレビやYouTubeでも放映されたのですが、エンドロールに僕の名前を見つけた両親が大喜びしたことを聞き、心からこの仕事に就いて良かったと思いました」
実は水本さんがアニメーションの世界で働きたいと伝えたとき、ご両親は不安な表情をされたのだとか。今でこそ、日本のアニメーションは世界各国で評価され、大きな市場を有するビジネスコンテンツとしても注目されていますが、かつては「アニメ=遊び」というような認識もありました。
「アニメを仕事にするってどういうことだろう? 苦労するんじゃないか…そんなふうに思っていたのでしょうね」
エンドロールに掲げられた水本さんの名前は両親の不安を消し去っただけでなく、「僕はこの世界で頑張って働いているよ、安心して」というメッセージにもなったのでしょう。
「だからこそもっと仕事の領域を広げ、いろんな作品に参加して、エンドロールだけでなく、作者とかクレジットとかに自分の名前を出していかなきゃって思っています」
キャラの性格や気持ちまで表現する
アニメのモーション制作。
入社してちょうど一年、水本さんは現在どのような仕事をしているのでしょう。
「今取り組んでいるのは、ゲーム内で使われる3Dアニメのムービー制作。キャラクターたちが、ダンスをする場面のモーション作業に取り組んでいます。今回は実際に演者がダンスをしているところを撮影し、その動画をもとにアニメの動きを整えていくという手法を取り入れています」
とはいえ、演者のダンスをまるごとコピーしたようなモーションでは、ディレクターからOKを貰えないとか。
「例えば陽気なキャラクターなら身振りも大きく、笑顔も華やかに、ステップも軽やかになりますし、反対に大人しいキャラクターならダンスの動きもやや抑えめで、表情も穏やかになります。つまりそのキャラクターの性格やその瞬間の気持ちなどを熟知した上で、キャラクターの表情の変化、動作の細部の表現を決めていかねければなりません」
さらに複数のキャラが同じダンスを踊る際でも、完璧に同じ動作をするよりも多少のズレやブレがあったほうが、自然に見えるのだとか。聞けば聞くほど、細かな感覚が必要な仕事…
「小さな表現を一つ一つ積み上げていくのが、自分の役割。苦労も多いけれどその何倍もの達成感を味わっています」
心の中に貯めた作品をいつか
アウトプットしたい。
これまで制作で携わった作品は6つほど。何人ものクリエイターとの共同作業のため、作品のアニメーションの一部分を担当するというケースがほとんどだそう。
「まだ一年目ですし、技術的にもスピードの面でも諸先輩には敵いません。だからテクニックや知識をじっくり磨いて、将来は作品全体に関わるような役割を担いたい。ディレクターやプロデューサー、アニメーションの監督的な立場も味わってみたいです」
そんな思いとは別に、学生時代からずっと抱いてる夢もあるのだとか。
「幼い頃からノートに書いたり、心の中で温めて続けてきた自分の作品があるんです。それを世間に向けアウトプットするのが僕のひそかな夢。展示会なのか、webなのか、今は何も決まっていませんが、それを発表することで次の段階に行けるような気がしてるんです。いつか必ず実現させます!」
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

チャンスは向こうからやってきません。
どれだけ練習できるか、
どれだけほか人より頑張れるか、
どれだけ技を盗み、自分のものに出来るか…が大切。
ただし、「飢える」ほどの前向きさがあれば
必ずチャンスはやって来ます。がんばって!

株式会社ウタリカ

札幌を拠点に日本のアニメやバーチャルキャラクターに特化したアニメーションスタジオ。ウルトラスーパーピクチャーズグループの一員として、株式会社サンジゲン、株式会社サブリメイション、株式会社Tooの3社で設立した、合弁会社。

住所
北海道札幌市中央区(札幌駅周辺)
URL
https://utalica.jp/

お仕事データ

非現実を現実に表現する!
CGクリエイター
CGクリエイターとは
デジタルテクノロジーを使って、
グラフィックやアニメーションを制作

CGとはコンピューター・グラフィックスの略。文字通りコンピューターを使って、ゲームやアニメなどグラフィックやアニメーションを制作します。大きく分けて2Dと3Dに分類され、2Dは平面で表現し、3Dは立体での表現です。3Dはさらに動きの元となる立体物をつくるモデラー、動きを付けるアニメーター、特殊効果を付けるエフェクターなどそれぞれのプロフェッショナルに細分化されています。

CGクリエイターに向いてる人って?
好奇心旺盛で、
最新技術へのアンテナを張れる人

映像を取り巻く世界は日々進化を遂げ、現実と区別が付かないようなリアルなCGを制作する技術も実現しています。その制作に用いるソフトも次々と新しい機能が増えたり、新製品が生まれたりするため、積極的に最新技術を学ぶ姿勢が必要です。またクリエイティブな世界をつくるための想像力や、円滑なチームワークのためのコミュニケーション能力も必須。納期に追われる機会も多いため、粘り強く取り組む根気やハードな働き方に耐える体力も求められるでしょう。

CGクリエイターになるためには

学歴や資格は必要ありませんが、コンピュータースキルは必須。特に3DCGは「Maya(マヤ)」や「Blender(ブレンダー)」といった制作ソフトを使うための知識や技術が必要なので、専門学校や短大、大学でスキルを身に付けた後、ゲームやアニメ関係の会社に入って覚えるのが一般的です。オンライン講座や書籍など独学で学ぶことも可能なため、スキルを身に付けた後に実際の制作現場で学ぶという選択肢もあります。

ワンポイントアドバイス
将来性高く、チャンスも無限!

3DCGはその誕生以来、アニメ、ゲーム、映画などエンタメを中心に普及してきました。近年は建築や製品のデザイン、医療や化学などさまざまな分野でも活用されていて、今後も他分野にわたって需要が拡大すると見られています。また技術さえあれば国内、国外を問わず活用できるのも特徴です。一流のCGクリエイターとなれば世界の有名スタジオで活躍できるかもしれません。