斯波 充さん
インタビュー公開日:2023.06.23

どうしたらラジコンに乗れるのか…
そんなことばかり考えていました。
札幌市中央区、豊かな自然に囲まれた盤渓エリア。「こんなところに店舗が…?」と思うような場所に、中古車販売や整備・車検、板金・塗装などを手がける「タイガーモービル」があります。今回お話を伺ったのは整備士であり、代表でもある斯波(しば)充さん。
「幼いころはミニ四駆やラジコンが流行していて、モーターエンジンにタイヤが付いて走っていく姿に、ただただ『スゲー!』と感動。そのうち、ラジコンに荷台を取り付けて引っ張ってもらえば自分も乗れるんじゃないかって、そんなことばかり考えるようになりました(笑)」
中学時代にはF1やラリーの一大ブームが到来。スーパーカーが取り沙汰される一方で、斯波さんはフォルクスワーゲンやジープの古いクルマに心が動かされるようになったといいます。
「当時、僕のマニアックな興味にピッタリ合う幼馴染みと、大人になって一緒にクルマ屋を営むなら、どんな車種を扱って、どう展開をする…そんな話を語り合い、ノートに書き留めていました」
幼馴染と語った「計画」を、
実行に移そうと一念発起。
斯波さんは小樽商科大学卒業後、レコード会社に就職。ところが、「まだまだ子どもだったこともあり、仕事に楽しんで取り組めませんでした」と率直に振り返ります。
「心から好きとはいえないアーティストを売り込むのが、ウソをついているようでどこか心苦しかったんです。ビジネスの何たるかを心得ていない若気の至りでしょうね」
そんな時、夢を語り合った夢幼馴染みからヘルプのサインが届きます。
「彼はタイヤメーカーに就職し、整備の仕事をしていました。ただ、異動によって一大プロジェクトの莫大な金額を扱うポジションとなり、重圧に押しつぶされそうになっていたんですね。ある日、中学時代に語り合った計画を覚えているかと尋ねられ、これは彼なりの『助けてくれ』だと感じて、一緒に車屋を始めようと一念発起したんです」
その後、店舗の立ち上げに向けて斯波さんは運送会社で資金を貯め、幼馴染みは車屋に転職して技術を磨くことに。これがタイガーモービルの前夜だったのです。
お客様が広がったきっかけは、
タイヤ交換のポスティングです。
斯波さんは資金のメドが立ったところで、幼馴染みとともに「タイガーモービル」を設立。「人生は一回きり」とばかりに、計算も勝算もないまま勢いでスタートを切ったと笑います。
「ココは山の中みたいなものなので、当初は閑古鳥が鳴く日々(苦笑)。ただ、タイヤ交換を格安で引き受けるというチラシを作り、近所にポスティングしたことでお客様が広がりました。もともとは中古車の販売だけを展開していましたが、売りっぱなしはイヤですし、先々までサポートしたいと、整備や修理、車検と少しずつ守備範囲を広げたんです」
もともと好きだった古いクルマについては「取り扱っても売れなくて」と苦笑。とはいえ、フォルクスワーゲンのクラシカルな車種はレースに出る際に活用しているそうです。
「あるレースに会社名を掲げて出場したところ、多少の宣伝効果はありました。『札幌でフォルクスワーゲンならタイガーモービル』と紹介してくれる同業者も増えましたね」
これまでの技術だけではなく、
EVや先端知識を学ぶのも大切。
現在、タイガーモービルではCMや映画に使用されるクルマを、オーダーに合わせてラッピングすることも。学生時代に購入したワーゲンバスという古い車種が北海道のミュージアムを啓蒙するウェブ動画に登場したそうです。
「ヘンなクルマを扱うことも多いので、CM制作会社のプロデューサーがたまたま店舗の前を通りがかった時に昭和生まれの青いトラックを目に留めてくれたのがきっかけです」
やはり古いクルマが好きだと見受けられる斯波さん。最近よく耳にするEVについてはどう考えているのでしょう?
「今後はIT企業がクルマを作ってしまうかもしれない時代。今までのエンジンが必要とされなくなる可能性も高いため、僕ら整備士にとっては大変革期です。ただ、古い技術にだけしがみついていては未来は開けないので、新しい時勢を受け入れた上で、最先端の知識を取り入れなければならないと思っています。業界の問題点に物申すにも、現状を知らないことには始まりませんからね」
令和の時代でも子どもたちは
ミニ四駆に興味津々です。
今、整備士は業界全体で深刻な人手不足なのだとか。確かに一般的には難しそうなイメージがあり、飛び込みにくい気もします。
「きっかけはクルマではなくても良いんです。テレビや冷蔵庫、目覚まし時計でも、機械を分解してみると意外と直せるようになるもの。かつての『3K』なイメージもハードルとなっていますが、今はどこも労働環境が改善され、当店でも遅くまで残ることはありません。構造上、どう直すか試行錯誤するのは経験を重ねた今でも楽しいものです」
斯波さんと話していると、整備士に大切なのは子ども心ではないかと思わされます。
「僕は整備士の振興会や組合に加入し、青年部の活動で子どもたちと触れ合う機会も少なくないんです。例えば、商業施設に大きなミニ四駆コースを設置すると目を輝かせて駆け寄ってきますし、小学生と一緒にミニ四駆を作る取り組みでも、本当に楽しそうに手を動かしています。そんな姿を見ていると、整備士の仕事は世代を超えて楽しいのだと明るい希望が持てるんですよね」
シゴトのフカボリ
整備士の一日
8:30
出社
8:35
ミーティング(問題点や目標の共有)
8:45
請求書作成などの事務作業
12:00
昼休み
13:00
車検や整備の補助
18:00
退社
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
あこがれのタイヤチェンジャー
タイヤからホイールを外すタイヤチェンジャーが特に好きな機械。価格も大きさも個人ではなかなか保有が難しいので、昔はガソリンスタンドで働く友人に使わせてもらった思い出があります。店舗を構えてコレを手に入れた時は、「自分もいっぱしの車屋になったんだな」と感慨深いものがありました。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

「タイガーモービル」の立ち上げ時にも思ったように、人生は一度切り。極端な例えかもしれませんが、もしかすると人は明日にでも人生の幕が下りるかもしれません。そう考えると面白くないことをやっている暇はない!やりたいことには、早くチャレンジしたほうが良いですよ!

タイガーモービル株式会社

車からバイクまでライフスタイルに合った一台を徹底的に追及。資格・経歴のある整備士(mechanic)による安全な車検・点検からカスタマイズ車を低価格で実現。購入後のアフターサービスまで万全の体制。

住所
北海道札幌市中央区盤渓415番
TEL
011-556-1512
URL
https://tigermobile.jp/

お仕事データ

車のトラブルを未然に!
自動車整備士
自動車整備士とは
クルマの故障を修理し、
定期的な点検で事故を未然に防止!

乗用車やバス、トラックなどさまざまな自動車を整備し、故障を修理するほか、定期的なメンテナンスや調整、分解や組み立ても担当。仕事は大きく分けて「点検整備」、「緊急整備」、「分解整備」の3つ。「点検整備」は、車検や定期点検でベルトやブレーキの摩耗、オイルの状態などをチェックして、消耗した部品を交換。「緊急整備」は、急を要する事故や故障による整備・修理のことです。「分解整備」は「オーバーホール」と呼ばれ、エンジンやミッション(変速機)など自動車の重要な機器を分解し、点検して不具合や故障箇所などがあれば整備・修理します。

自動車整備士に向いてる人って?
最新の技術やメカニズムを
学ぼうとうする向上心が必要。

クルマや機械の構造・仕組みに興味があることは大前提。ここ最近は自動運転技術をはじめ、自動車業界の進化が目覚ましいことから、新しいメカニズムやテクノロジーを積極的に学ぼうとする向上心が必要です。自動車整備士の仕事には地道な作業も多いので、コツコツと取り組む忍耐強さも求められます。

自動車整備士になるには

国家資格の「自動車整備士」取得が必須。高校卒業後、国が定める自動車整備士養成学校(2年制の自動車整備士専門学校や自動車短期大学など)に進み、自動車整備士技能検定(二級)に合格した上でディーラーや整備工場などに就職するのが一般的です。4年制の専門学校や大学には一級の受験資格が得られるところもあります。また、養成学校を卒業せずとも、実務経験を重ねた後に資格を取得するのもOK。詳しくは国土交通省のホームページをご確認ください。
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk9_000003.html

ワンポイントアドバイス
自動車整備士の資格の種類。

実は自動車整備士の資格といっても種類はさまざま。レベルは「1級自動車整備士」「2級自動車整備士」「3級自動車整備士」があり、ほかにも各々の分野について専門的な知識・技能を有する「特殊整備士」も。一般的に求められる2級自動車整備士のなかでも、「2級ガソリン自動車整備士」「2級ジーゼル自動車整備士」「2級自動車シャシ整備士」「2級二輪自動車整備士」に分類されます。自動車の技術革新が進んでいる今、より高度な自動車整備ができる1級自動車整備士が注目を集めています。

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