土田  菜月さん
インタビュー公開日:2023.09.25

先生の一言をバネに
クリエイティブの道へ。
みなさんはコピーライターという職業をご存じでしょうか?街にあふれる広告には、人々を惹き付け、商品やサービスの魅力を最大限に伝える言葉、「キャッチコピー」が書かれています。誰にどう伝えるか、きちんと伝わるかを考え抜き、広告の根っこにあるコンセプトを左右するのもコピーライターの役割です。
「その一言で売れるか売れないか、商品やサービスの運命を変えちゃうことも。責任は大きいけれど、やりがいも大きいんです」
そう話すのはコピーライターの土田菜月さん。帯広の広告制作会社、プロコム北海道に勤め、全国的に話題となった広告や受賞実績もある気鋭の若手です。
「中学生のころから映画の予告編やミュージックビデオを見るのが好きで、クリエイティブな仕事に憧れを持っていました。高校には美術コースもありましたが、特別な才能もない私が進んだのは進学向けのコース。クリエイターとは真逆の世界だったんです」
しかし夢を諦めきれなかった土田さんは、先生に思いをぶつけてみたのだとか。ところが…
「『そういう仕事はセンスがなきゃ』の一言で片付けられちゃったんです。今考えたら進学向けコースの先生としての助言だと思うんですが、当時は理解できなくて『悔しいっ!』って(笑)」
けれど、その悔しさこそが土田さんの原動力となっていきます。
コピーライティングは、
最短距離のクリエイティブ。
高校卒業後はグラフィックデザインや映像制作など、さまざまなクリエイティブを学べる大学へ進学。でも、どんな創作に挑戦しても自分の中ではしっくり来ないままだったのだとか。
「アイデアを考えている時は楽しいのに、手を動かした途端に意欲が下がっちゃって。飽きっぽい性格なので細かいことをずーっと続けるというのがどうしても苦手なんです(笑)」
「もしかして大学を間違えたかも」そんな疑念を一蹴させたのが、大学2年生のころに受けた広告に関する講義。札幌で活躍するコピーライターが講師となり、架空のテーマにキャッチコピーを付けるという内容でした。土田さんが考えたコピーは多くの友人や講師から「面白いね!」と褒められただけでなく、SNSにアップしたところ「いいね!」が鳴り止まなかったのです。
「勉強もデザインもイマイチだった私が、初めて人からきちんとした評価を受けた瞬間でした。『私、できるじゃん!』って、みるみる自己肯定感が増して(笑)。コピーはデザインや映像などと比べて道具も使わないし、パッと浮かんだアイデアが全て。完成までの道のりが短い、最短距離のクリエイティブなんです。この世界なら力を発揮できるかもって、この時確信したんです」
イベントの司会や4コマ漫画のラフ作りも…
どんなネタもアイデアのタネに。
土田さんは2017年、帯広に本社を持つ広告制作会社、プロコム北海道に入社しました。それまでの人生で縁のなかった帯広の会社を選んだのはなぜだったのでしょうか?
「大都市周辺の事業規模の大きい会社では有名企業の広告に関われるメリットはありますが、お客様と直接やりとりできなかったり、作った広告が東京にしか掲示されなかったり。私は広告を見る人が身近にいる環境がいいと思い、地域密着型の会社を探していたところ、後に先輩となる方からプロコムの仕事内容や働き方などを聞いて『北海道内なら札幌以外の地域でもアリかも』と思えるようになりました」
一方でローカル地域の会社にはデメリットもあるという土田さん。特に人数が少ない会社では、カメラマンやデザイナーの手配、日程管理や調整、顧客との連絡などさまざまな業務を兼務することも。「こんなに文章を書く仕事が少ないとは…」と肩書きとのギャップを感じる若手も少なくないのだとか。土田さんも「何でもやりましたよ」と笑います。
「イベントの司会、4コマ漫画のラフ制作、住宅展示場の受付、ゆるキャラの着ぐるみ管理まで…(笑)。どんな仕事も『いつかアイデアにつながるかも』なんて楽しみながら働きました」
書いて書いて、また書いて。
鉛筆は折れても、心は折れない。
さまざまな仕事の合間にコピーの練習を重ねてきた土田さんですが、2年目にして師匠でもある先輩が退職することに。「これからは自立しなければ」と悩んだその時、目に飛び込んできたのが、コピーライターの養成講座の募集広告でした。
「隔週土曜日の開催で期間は半年ほど。毎回札幌まで足を運ばなければなりませんでしたが、『早く一人前にならねば!』という一心で申し込みました」
講師は誰もが見たことのある広告やCMを手掛けるコピーライター。30人ほどの受講生が与えられた題材でコピーを書き、講師や仲間同士で講評し合うという会で、成績上位者には金色の鉛筆が手渡されます。土田さんもわずかな時間を見つけては鉛筆を握り、コピーを書き連ねていきました。
「書いても書いても、人のコピーを見ると『そんな発想もあったのか!』って。たくさんのライバルと競い合うことで、自分に足りない視点に気付かされるんです」
自信をつけた土田さんは翌年、業界団体が主催する広告賞に作品を出品します。
「SNSやネットニュースで全国的に話題になった広告で自信もあったのですが…結果は『入選』止まり。この悔しさがまた自分をつき動かしてくれました」
生徒から講師に転身。
育ててくれた人たちへ恩返しを。
土田さんは2021年、前述の広告賞で新人賞に加えて、審査員賞とのW受賞を獲得するというリベンジを果たしました。「嬉しかった?」の質問に「もちろんです。でも…」と言葉を継ぎます。
「自分にとって新人賞はスタートライン。これからが本当のコピーライターだと自覚しました。元々がズボラで自分から腰を上げられない性格なので、定期的に挑戦したり、外から評価されたりしないと、つい気が緩んじゃうんですよね(笑)」
こうした土田さんのストイックな姿勢は会社に評価され、家庭の都合で札幌への転居が決まった際は札幌事務所を用意してくれるという厚待遇も受けました。現在、社内では若手の指導にも注力しているほか、かつては生徒だったワークショップの場には講師として立っています。さらには、母校の大学でキャリア系の授業を担当したり、コピー講座の修了生としてトークイベントに出たりするなど、『コピーライター』の魅力を若い人たちに伝える活動も。
「後進の育成はもちろん、大学の広告や販促物のコピーなど教育にかかわる仕事は積極的に挑戦していきたいですね。『センスがなきゃ…』と悔しさを与えてくれた先生はもちろん、大学でお世話になった教授たち、養成講座や業界団体でお世話になった師匠とも呼ぶべきみなさん。自分がたくさんの方に育てられたからこそ、恩返しとして次は自分が若い子を育てていきたいんです」
シゴトのフカボリ
コピーライター/プランナーの一日
8:50
出勤、メールチェック
9:10
社内会議、リーダー会議
9:40
見積やスケジュール等の調整、連絡
12:00
昼休憩
13:00
コピーやラフ、企画書の制作、打ち合わせなど
18:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

人にどんなことを言われたって、最後に決めるのは自分。就活でも仕事でも、自分のやりたいことを大切に、アイデアを実現してみてください。自分の力で希望を叶えると、おのずと付いてきてくれる人もいるはずです。

株式会社プロコム北海道

デザインを中心に広告代理業を行う企業。北海道・十勝地域に密着してデザインや販売促進の企画、制作を続けています。

住所
北海道帯広市西5条南9丁目2-15(本社)
TEL
0155-20-2656
URL
https://procomh.co.jp

お仕事データ

コトバで人の心を動かす!
コピーライター
コピライターとは
商品・サービスの魅力を
言葉で伝える仕事。

広告や宣伝の文章(コピー)を専門に書くライターです。商品やサービスの魅力を最大限に伝え、広告を見た・聞いた人を惹き付けるコピーを考えます。媒体は紙のポスターやチラシからウェブ広告、ラジオやテレビCMのナレーションまでさまざま。コピーを考える工程は「誰に・何を・どう届けるか」というコンセプトづくりにも通じることから、広告の企画やイメージを方向付けるクリエイティブディレクター(CD)という役割を担うケースもあります。

コピーライターに向いている人って?
クリエイティブな視点と同時に
一般的な感覚も必要。

優れたコピーには「発見」や「共感」があると言われています。1つの物事をさまざまな角度から見つめたり、発想の転換をしたりするクリエイティブな思考だけでなく、メッセージの受け手がどう感じるかといった一般的な感覚も必要です。好奇心旺盛であったり、人の気持ちに立って考えられたりする人が向いているでしょう。

コピーライターになるためには

必要とされる資格はありません。大学・短大・専門学校でマーケティングや広告、広報などを学んだり、コピーライターの養成講座で専門的な技術を身に付けたりするのが近道。就職先は広告制作会社や広告代理店のほか、企業の広報部が一般的です。はじめから募集しているケースもありますが「コピーライター」というポストを設けていない企業もあります。営業職・企画職を経て企画力やマーケティング知識を身に付けてから転身したり、デザイナーがコピーの技術を身に付けて兼務したりといったケースも少なくないでしょう。

ワンポイントアドバイス
いつの時代も、書くことが核になる。

文章生成AIの台頭が話題となりましたが、メッセージを受け取った人の気持ちを考えたり、人からの共感を得る言葉を生み出したりするのはまだまだ人間の手でしかできません。コピーを考えるために行うコンセプトメイキングの工程は広告のみならず、あらゆるクリエイティブを行う際にも核となる部分のため応用が可能。どんな時代、どんな場でもペンと紙、そしてアイデアで勝負できるのがコピーライターという職業です。