土門 岳さん
インタビュー公開日:2019.05.13

自分がつくったパンやお菓子で、
人に喜んでもらうのがうれしくて。
「ふわもち邸」は、その名の通りふわふわ、もちもち食感の生地にこだわるベーグル・ドーナツの専門店。今回は、ここで働くパン製造スタッフの土門岳さんにインタビューのマイクを向けました。
「中学生のころにパン職人が活躍するマンガを読んで、主人公にあこがれました。そのうち自分でもパンをつくってみたくなり、生地からソーセージドッグを手づくりしてみたんです。今考えると出来は良くなかったけれど、自分的にはすごくおいしかった記憶があります(笑)」
土門さんは高校生になってもパンやクッキーをつくっては、家族や友人に食べてもらっていたとか。自分がつくったもので人に喜んでもらうことがうれしくて、食の道に進もうと決意したと笑います。
自分の原点のパンづくりに
立ち返ろうと思いました。
土門さんは、光塩学園調理製菓専門学校の製菓技術専攻科に進学。プロ仕様のミキサーやオーブンを使って、手の込んだお菓子をつくる実習にワクワクしたと振り返ります。
「一方、プロの現場では掃除や下準備、素材の下ごしらえを徹底しているという厳しさも学びました。自分の進む道は一筋縄では行かない…そんな心構えもできたと思います」
専門学校時代、土門さんはコーヒー豆を売るバイトに携わるうちに、カフェで働きたいと考えるようになりました。卒業後は本格コーヒーを看板に据えるカフェチェーンに就職。
「コーヒーを淹れたり、軽食をサービスしたりする仕事は楽しかったです。ただ、当時は出店ラッシュで本州をアチコチ転勤。勤務時間の長さにも体が持たず…」
札幌にUターンした土門さんが見つけたのは「ふわもち邸」の求人情報。自分が食に興味を抱いた原点はパンづくりにあったことを思い出し、すぐに転職することを決めました。
うちのもちもちしたベーグルは、
素材の配合にヒミツがあります。
入社後は、ベーグルやドーナツの袋詰めから教わったという土門さん。いきなり製造を覚えるのではなく、まずは職場の雰囲気に慣れてもらうための心遣いでもありました。
「1カ月ほど経ってから、生地に少しずつふれるようになりました。僕が最初に携わったのは成形。ベーグルの焼き上がりを見据えて形をつくる工程です。こういうと簡単そうに聞こえますが、生地の状態や季節の温度変化によって成形するタイミングを見極めるのは経験を必要とします」
ベーグルは発酵させた生地を一度茹でるのがパンづくりとの大きな違い。こうすることで生地が引き締まり、あのもっちりとした食感が生まれるのです。
「うちのお店はもちもち感が自慢。詳しくはいえませんが、小麦粉や塩といった素材の配合を工夫してなんとも心地よい食感をつくり上げています」
「お好み焼きベーグル」が、
新作として採用されました!
「ふわもち邸」では、製造に携わるスタッフは月に一度新作を考案。10人以上が持ち寄った試作品の中から採用されると、お店に自分のベーグルが並ぶだけでなく、「新商品手当」がいただけるといいますから実にユニークです。
「僕はお好み焼きベーグルが新作として採用されました。生地の中に千切りキャベツや桜エビ、厚切りベーコンを入れ、ソースやマヨネーズのテイストに仕上げたんです。やはり、自分のアイデアから生まれた商品をお客様に『おいしい』といっていただけるのは普段にも増して手応えがあります」
新作の中にはお客様からの評判が高く、レギュラー商品として定着したものもあるのだそうです。
「まだ経験したことはありませんが、新作を試行錯誤する時は常にレギュラー化を目指す意気込みです!」
自分のやりたいことに
柔軟に応えてくれるお店です!
「ふわもち邸」の製造現場は生地の仕込みや成形、焼き、揚げといった各工程を持ち回り制で分担。さまざまなスキルが身に付く上、チームワークで効率アップを目指せるところも面白いと土門さんは語ります。
「うちのお店はスタッフの『やってみたい』にも柔軟に応えてくれます。僕はコーヒーも好きなので直火焙煎にチャレンジしたいというと、小さな焙煎機を買ってくれました。今は店舗に併設したカフェで自分が焙煎したコーヒーを提供してもらっています」
さらに、土門さんはいつかカフェを運営したいと伝えたところ、社長から「場」を与えてもらったとか。東京に出店予定のドーナツと道産牛乳にこだわったカフェラテのお店を任されることになったのです。
「今は、お店のコンセプトや運営ノウハウを勉強中。近いうちに『ふわもち邸』の味と自分の直火焙煎コーヒーを武器に東京で戦えることが楽しみで仕方ありません!」
シゴトのフカボリ
パン職人の一日
1:30
出勤
3:00
成形作業
8:30
休憩
9:30
ドーナツを揚げる作業&洗い物
10:30
ドーナツのコーティング(チョコなど)
11:30
コーヒーの焙煎
12:30
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

どんな職業でも仕事の中には得手不得手や好き嫌いはあります。けれど、苦手なことでも小さな楽しみを見つけられれば前向きに取り組めるようになるはずです。その「発見」のために必要なのは笑顔で働くこと!

ふわもち邸  
有限会社Fuwamochi company

天然酵母や道産小麦などの厳選した材料を使って、ドーナツ・ベーグルを一つひとつ丁寧に手づくり。ふわふわ、もちもちの食感にこだわった生地にたっぷりの具をつめたおいしさが好評。子どもからご年配の方まで幅広いお客様に愛されるお店。

住所
北海道札幌市厚別区厚別中央2条2丁目3-3
TEL
011-802-5919
URL
http://www.fuwamochi-tei.com/

お仕事データ

おいしいパンを追求!
パン職人
パン職人とは
その日の気温や湿度を感じて、
パンの材料や水の配分、焼き時間を微調整。

パン職人の仕事はおいしいパンを作ること。主にパン生地の材料の配合や仕込み、発酵、焼き上げを担当し、商品を店舗の棚に並べます。パン作りは、その日の気温や湿度に合わせ、材料や水の配分、焼き時間などを微調整するのが大切。職場によって異なりますが、各工程を分担することもあれば、一連の作業を一人で行ったり、工場で製造するケースもあります。パンを食べるなら「朝」という人が多く、朝早くからわざわざ足を運んでくれる人のために、朝3~4時ごろから作業をスタートさせるのが一般的。また、日常的な食べ物だからこそ、新たな食感やテイストがお客様に喜ばれることから、新商品の開発もパン職人の仕事の一つです。

パン職人に向いてる人って?
朝早くからの作業や力仕事も多いため、
パンが大好きという気持ちが何より大切。

パン職人の仕事は夜が明ける前から始まるケースが大半。さらに立ちっぱなしの作業が多く、小麦粉の袋を担いだり、オーブンから大量のパンを取り出したり、力仕事も少なくありません。そのため、パンが大好きという強い気持ちが何よりも大切です。また、パン生地は「生きもの」であり、種類によって材料の配合や製造の方法が異なるため、技術習得にはかなりの経験が必要。一人前になるまでには時間がかかる職業なので、コツコツと努力を続けられる人が向いているでしょう。

パン職人になるためには

パン職人には特別な資格や免許は必要ありません。一般的にはパン作りに必要な知識や技術を学べる製菓・調理専門学校などに進み、基礎的なスキルを身につけた後にベーカリーやメーカーに就職するケースが多いようです。進学が難しい場合は、パン屋でアシスタントやアルバイトとして働きながら修業をするという道もあります。

ワンポイントアドバイス
技術の証には「パン製造技能士」を、
開業を目指すなら「菓子製造業許可」を。

パン作りには特別な資格が必要ないとはいえ、プロフェッショナルとしての実力を証明するために国家資格の技能検定制度「パン製造技能士」を取っておく人が多いようです。この他、「パンアドバイザー」や「パンコーディネーター」など、さまざまな民間資格も用意されています。お店のスタイルによって許可の種類が変わってきますが、自分で作った商品を販売する場合は「菓子製造業許可」、イートインコーナーを設ける場合は「飲食店営業許可」など、開業の際を目指す場合には各種許可も必要です。