片野 司さん
インタビュー公開日:2021.08.10

道路などをつくるために必要となる
地形、高さ、位置などを調べる仕事。
一見すると、平坦で真っ直ぐな道路も、たとえば歩いたり自転車で走ると、微妙に勾配がついていたり、カーブしていることに気づくことがあります。それは主に、その道路が敷かれている場所の、もともとの地形や周辺状況によるものです。
「ここに、こんな道路を通したいという計画に基づいて、その場所の地形や高さ、位置などを詳細に調べるのが、測量調査という仕事の大切な役割の一つです」
そう話すのは、旭川設計測量で測量現場の第一線を担っている片野司さん。入社10年目を迎えるベテラン技術者です。主に国や北海道、市町村が発注する道路、田畑、河川、山林等の施工を行うゼネコンなどが、それらをどういう形でつくるのが現地の地形などにマッチするかを検討し、工事を進めるために必要となる基礎データを作成することが、片野さんの主な業務です。
「道路などの設計担当者や、社内の設計部門と一緒に現場に行ったり、情報共有を行いながら仕事を進めていきます」
どんな形状で地面を切り崩すのか?
ゼネコンなどが検討する基礎資料。
同じく道路を例にとると、まずは計画されている道路がどの位置を通るかを正確に求めることから、測量調査業務はスタートします。
「地球上の水平位置・高さを求めるために国土地理院が定めている公共基準点というポイントをもとに測量を行い、道路の位置や標高などを定めます。基準点測量と呼ばれる、計画の基礎となる段階です」
そこで得られたデータを専用ソフトで解析すると、道路の形が自動的に連続した点で示され、それをCADで結ぶことで、道路の測量図面が描けるのだそうです。その後、道路の中心位置や高さ、縦断図・横断図を同じく測量に基づいて作成します。これらを路線測量と呼ぶそうです。
「道路設計のもととなる測量です。このデータをベースに、ゼネコンなどが、どれくらい、どんな形状で地面を切り崩す必要があるかといった検討を行い、工事が進められます」
一般には目にする機会の少ない、まさに技術の世界ですが、道路工事などが的確に実施されるための第一歩となる仕事であり、責任も大きいのだと片野さんは話します。
一度は辞めようと思った測量の仕事。
居心地の良さが働くモチベーションに。
道路のほか、近年は水田・畑地の用・排水路や耕作面積の大型化を図る区画整理など農業分野の測量が増えていること、山林関連の業務もあることなど測量調査の幅広さについて一心に話す片野さん。けれども、そもそも測量に興味があったわけではなかったそうです。
「高校卒業時にはやりたいことが見つからず、国の建設工事などを所管する機関に勤める叔父から、測量という仕事を勧められたのが、この道に入ったきっかけなんです」
専門学校で測量士補という資格を得て測量会社に就職します。けれども、2年ほどで退職。
「暑い時期に外に出たり、笹藪や草を漕いで山の中に入っていくのが嫌で……。何よりも虫が嫌いだったんです(笑)」
測量自体を辞めようと思い、1年間ほどブランクがあったそうですが、先の叔父さんの紹介によって旭川設計測量に入社。
「いい意味で上下関係が緩く、人間関係も良好。居心地の良さが、今度は腰を落ち着けて働こうというモチベーションになりました」
ボーリング大会や焼肉など社員が集まる機会も多く、部署を超えて人と人とのつながりの深い会社なのだと、ちょっと自慢げです。
複数の現場のスケジュール管理から
作業の指示までを行う管理技術者に。
測量士を自らの仕事と定めるまでには、揺れ動く時期もあった片野さんですが、入社6年目には技術部主任に昇格。管理技術者という測量現場の責任者となりました。測量業務を行いつつ、複数の現場を担当して状況をチェック。作業を指示したり、スタッフの配置を考えるといった仕事をこなしています。
「各現場のスケジュールを管理するとともに、発注者と常にやりとりをし、測量調査業務の段階ごとに作業内容・進行状況・問題点などの報告も行っています」
とはいえ積雪の多い北海道では1年中、現場で測量をしているわけではありません。外での作業は春先から秋口まで。それ以降は、図面を描いたり報告書などを作成する内勤業務がメインなのだとか。現場と内勤は年間でほぼ半々の割合だそうです。
「測量調査を行い、その過程を取りまとめるまでが私の仕事。測量結果について間違いがないことを示す精度管理表という書類を年度末に納品して仕事は完遂します」
その後、新年度の仕事が始まるGW明けくらいまでは比較的、ゆったりした毎日。年間を通して働き方にメリハリがあることも、この仕事の良さなのだと片野さんは話しています。
あいつに任せれば、間違いない。
そう言われる技術者を目指して。
片野さんには苦い思い出があります。5年ほど前、上司と2人で現場に常駐し、1カ月半ほどかけて測量したデータが、片野さんのミスにより、使えなくなってしまったのです。「くやしくて泣きました。でも、20代でその経験ができたことは、良かったと感じます。自分自身の教訓になったのはもちろん、部下にも実感を込めて、同じような失敗をしないためのアドバイスができるんです」
測量調査を担当した現場を通りかかると、道路が完成していたり、圃場(農作物を栽培するための場所)が広くなっていたり。そんな姿を見ると、自分の仕事が形になったというやりがいを感じるのだとか。
「若いころは大変さも感じていた測量の仕事ですが、実力がついていくにしたがって責任感が生まれ、楽しくなっていきましたね」
『あいつに任せれば、間違いない』と言われるようになることが目標なのだという片野さん。目下、最新のUAV(ドローン)測量を、実務を通して学んでいるところだそうです。
「現場で飛ばすだけで測量が終わるので、大幅な省力化につながります。何より、虫のいる草むらに入らなくてよいですから(笑)」
そういって目を細める片野さんです。
シゴトのフカボリ
測量士の一日
8:00
出勤 測量機材などの準備
8:30
現場へ出発
10:00
測量調査業務
12:00
昼休憩
13:00
測量調査業務
16:00
作業終了・現場出発
17:30
帰社、メールチェックなど
18:30
退勤
(現場作業主体に働く日の一例)
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
トータルステーション
目標点に光を発射し、戻った光を解析することで距離を測る機械。距離と同時に角度も測れることが特徴で、あらゆる測量に欠かせない道具です。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

「やりたい、やってみたい」と思うことがあるなら、すぐにやってみることを、お勧めしたいですね。学生のうちはもちろん、社会人になると、そのために働くと考えることでモチベーションにもつながりますから。

旭川設計測量株式会社

旭川市で70年を超える歴史をもつ測量会社。測量調査のほか、道路・河川・農業土木など各種設計業務も担い、地域のインフラ整備に貢献しています。

住所
北海道旭川市9条通23丁目3-1
TEL
0166-35-2772
URL
https://assjp.com/index.html

お仕事データ

工事を行う土地を測量。
測量士
測量士とは
あらゆる工事の「始まり」となる
縁の下の力持ち。

土木や建築をはじめ、工事を行う土地に対し、位置や形状、面積、高さなどの測量作業を手がけるのが測量士の仕事です。まずは測量計画にもとづき、さまざまな計測機器を駆使して現地でデータを収集。こうした野外で行う作業は「外業」と呼ばれ、チームを組んで実施されます。一方、事務所内で行う仕事は「内業」。観測したデータをもとに、測量ソフトによって図面作成を行います。測量士は決して華やかな仕事ではありませんが、測量の結果にもとづいて開発計画を立てたり、建設条件を変更したりするなど、工事の「始まり」となる縁の下の力持ちです。

測量士に向いてる人って?
真面目で粘り強く物事に向き合え、
高い協調性も備えている人。

測量士が作成した図面を前提に工事の計画が立てられるため、測量データには絶対の正確性が必要。幾度となく作業位置を変えながら高い精度で測量するこの仕事には、真面目で粘り強い性格の人が向いているでしょう。「外業」は都市部だけではなく、山奥や森の中で行われることもあることから、ある程度の体力も求められます。測量作業はチームで息を合わせることも大切なので、協調性の高さも適性の一つです。

測量士になるためには

測量士になるためには、測量士の国家資格を取得した後、国土地理院に申請・登録する必要があります。国家試験は年齢や学歴は不問で誰でも受験可能です。一方、学歴や職歴などの指定条件をクリアすることで資格を得るルートもあります。
①文部科学大臣の認定大学で測量科目を修めて卒業し、1年間の実務経験を積む
②文部科学大臣の認定短大・高専で測量科目を修めて卒業し、3年間の実務経験を積む
③国土交通大臣の登録を受けた専門学校で1年以上専門科目を履修し、2年間の実務経験を積む
④測量士補の資格取得後、国土交通大臣の登録を受けた養成施設で専門科目を履修する
資格取得後は、測量会社や建設コンサルタント会社、地図製作会社などで働くのが一般的です。

ワンポイントアドバイス
測量士の機器は飛躍的に進歩。
今後はドローン測量士の登場も!?

測量士は角度を計測する「トランシット」や距離を計測する「光波測距儀(こうはそっきょぎ)」、位置情報を計測する「GPS」など、専用の測定機器を使って各種データを収集しています。近年、これらの機材は飛躍的に進歩し、得られるデータは質も量も大きく向上しているようです。今後はドローンを使った測量など、新たなテクノロジーを使った分野の開拓にも期待が寄せられています。