インタビュー公開日:

配属になったのは、お花見の季節
さくらという名前で一躍人気者に
社会福祉法人恵望会に就職して1カ月間の研修を終え、配属が決まったのは、ちょうどお花見の時期でした。おかげで、多くの利用者さんがすぐに名前を覚えてくれたと笑顔を見せるのは渡邊さくらさん。
「さくらちゃん、さくらちゃんと、まだ私が右も左もわからない時から声をかけていただけて、ホッとしたことを思い出します。さくらという素敵な名前をつけてくれた両親に感謝です!」
渡邊さんが勤務するのは、「恵庭市こがねデイサービスセンター」。要介護・要支援の認定を受けた方が、人とのふれあいを通してリフレッシュしたり、身体機能の維持を図ることで、在宅での生活の質を保つために利用する通所施設です。
「寝たきりや車椅子の方が多い施設で研修した後でここに来たこともあり、いい意味でギャップを感じました。デイサービスでは当たり前なのですが、体操なども立って普通にできる元気な方ばかりなんです」
高齢者といえば、介護が必要。そんなイメージが渡邊さんのなかで、大きく変わった瞬間でした。
楽しい時間を過ごしてもらえるよう
利用者さんと話すことが大切な仕事
渡邊さんの仕事はケアワーカー。施設を利用する方々のサポートやレクリエーションの補助、送迎など幅広い業務がありますが、まだまだ慣れないことも多く、教えていただきながら少しずつチャレンジしています。これから実務経験を積み、介護の知識・技術を身につけながら、国家資格である介護福祉士を目指していきます。
「送迎車の乗り降りや、段差がある場所で転倒されないよう見守りを行いながら、楽しい時間を過ごしていただけるよう、利用者さまとお話することが今の私の大切な役割です」
最初は、どんな話をすればいいのか迷ったこともあるという渡邊さん。先輩からのアドバイスを実践しているうちに、自然に会話が弾むようになったそうです。
「朝のニュースで興味を持ったことを話題にするなど、具体的なアイデアをいただきました。プロ野球が好きな方も多いので、前日の試合結果をチェックしたり、NHKの朝ドラも欠かさず観るようになりましたね」
もともと、朝はテレビを観なかったという渡邊さん。珍しいねと、ご両親が驚いていたようすを、うれしそうに話してくれました。
生き生きと働く介護士の姿に憧れ
頼ってもらえる存在を目指して
小さい頃から人と話すことが好きだったという渡邊さん。小学校の時、知り合いに会うために訪ねた施設で、たくさん会話をしながら生き生きと働く介護士さんの姿に憧れを抱いたことが、この仕事を目指す原点になっているのだそうです。
「私は、同居していたおじいちゃん、おばあちゃんが大好きで、いつも楽しく話をしていたんです。中学校の職業体験で介護職のことを知り、同じような年齢の方々と接することができる素晴らしい仕事だなと感じて、卒業する頃には目標の職業になっていました」
積極的に話しかけてくれる利用者さんがいる一方で、なかなか打ち解けることができず、一人で座っている方もいると言います。そんな時は、やさしく挨拶をして、さりげなく声をかける。職員が手薄になっているところがあれば、そこに行って見守りをする。そうした目配りも大切な仕事なのだと、真剣な表情で話すようすが印象的です。
「利用者さまとたくさん話して、お互いに信頼を深めていくこと、そして、少しでも頼っていただけたらうれしいなと思っています」
「焦らず、自分なりにがんばって」
利用者さんの言葉に思わず泣きそうに
「さくらちゃん、と声をかけられたので行ってみると、呼んでみただけだよ、なんて茶目っ気たっぷりの方も多くて、毎日、本当に楽しく働いています」
そう話す渡邊さんですが、辛い時期もあったと打ち明けてくれました。デイサービスは日によって顔ぶれが異なります。
「それもあって、顔と名前がなかなか一致しなくて……。髪型やメガネの色など、特徴をつかみながら、少しずつ覚えていきました」
移動の時の身体の支え方、力の入れ方なども一人ひとり違うので、それも覚えなければならず、精神的に切羽詰まった感じだったのだそうです。
「そんな時、あるご利用者さまが、焦らずに自分なりに頑張っていきなさいと声をかけてくださいました。私のようすを見ていてくれたんだと嬉しくて、もう、泣きそうに。同時に、そんな姿を見せていてはダメだなと、反省する機会にもなりました」
温かい言葉をかけてくれたり、成長したねと励ましてくれたり。人生の大先輩のやさしさが今、渡邊さんの一番の励みになっています。
失敗も経験として積み重ねつつ
介護のプロとしての基礎を固める
忘れられない失敗もあるそうです。それは、利用者さんが持ち物にかけていた鍵を間違えて渡してしまったこと。
「認知症のある方が鍵を取り違えて持っていたことに、私が気づかなかったのが原因です。帰りの送迎の際に、鍵が合わないと指摘されて初めてわかりました。想定外のことだったので、今でもその時のしまった、という気持ちが鮮明に蘇ります」
持ち物ひとつから、あらゆる部分に細心の注意を払うことが、介護職には求められる。利用者さんを直接、介助することにしか思いが至っていなかった渡邊さんにとって、だから想定外のことだったのだそうです。この時の失敗によって、大切なことにまた一つ、気づくことができたと話しています。
「まだ、できることは限られていますが、失敗も経験として積み重ねながら、介護のプロとしての基礎をしっかり固めていきたいと思っています」
すがすがしい笑顔の渡邊さん。さくらちゃん!という呼び声がまた、聞こえています。
シゴトのフカボリ
の一日
8:00
朝のミーティング、おしぼりやドライヤーの準備
8:30
送迎車に同乗して利用者さん宅へ
9:00
血圧・体温測定のあと順次入浴準備
11:30
食事の見守り
14:00
レクリエーションのサポート
15:00
送迎車に同乗して利用者さん宅へ
16:00
ロッカーの名前の入れ替えなど翌日の準備
17:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私は、利用者さまとお話することが大好き。大変なこともありますが、毎日、楽しく過ごしています。みなさんも、自分が楽しいと感じられることは何かを考えて、笑顔になれる仕事を見つけてください!