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高橋 実花さん
インタビュー公開日:2019.11.19

子どもと仲良くなるのが仕事!?
知られざる児童心理司の日常。
岩見沢児童相談所に勤務する高橋実花さんは北海道職員です。「児童心理司」として、児童相談所で、さまざまな困難を抱える子どもたちを心の面からサポートしています。具体的にはどんなことをしているのでしょうか。
メインの任務は二つ。まず、心理検査です。「いわゆるIQ(知能指数)や知能偏差値を測る知能検査と、心の状態を見る人格検査があります。子どもたちを理解するために、児童心理司は必ずマスターしなければなりません」と高橋さん。もう一つが、心理療法です。会話したり、箱庭やおもちゃを使って遊ばせたりしながら、心のケアをします。「児童相談所に来る子どもたちは、困りごとを抱えて心を閉ざしています。心の扉をノックして開いていくのが、児童心理司の役目。子どもの価値観をまるごと受け止めて、仲良くなるところからはじめます。いつも子どもの味方でいていい。だから、この仕事が大好きです」
虐待も発達障がいも子も親も…
児童相談所がサポートする。
高橋さんの仕事場は、北海道庁の保健福祉部が管轄している「岩見沢児童相談所」
道内に暮らす子どもたちの心に寄り添い、見守っています。
児童相談所を知らない人は少ないでしょう。家庭に問題のある子どもたちが預けられるところ、子どもの虐待を見つけたときに通報するところ――。そういう一面はありますが、児童相談所の役割はそれだけではありません。子どもが健やかに成長できる家庭環境を整えることがミッションであり、親子の関係性を築きなおしたり、親に助言しながらサポートしたりと幅広く活動しています。最近は、子どもの成長に不安があると親から相談を受けるケースが増えてきました。テレビやインターネットによって発達障がいが知られるようになったことも影響しているようです。
「情報があふれすぎているから、親もどうしたらいいのか迷って揺らいでしまう。その不安を少しでもやわらげたいですね」
そのためにも、子どもの心理検査の結果は親の気持ちを想像しながら伝え、悩みに合わせた助言をしています。
高橋さんが仕事に就いた2012年に比べて、相談は複雑になっていると感じています。
「インターネットやスマートフォンが子どもの世界でもあたりまえになって、大人の目の届かないところで起きる問題も扱わなくてはなりません。時代とともに相談も変化していますね」
短大時代のボランティアが、
いまにつながる道を開いた。
高橋さんの児童心理司としての原点は、短大時代のボランティアです。やりたいことが見つからないまま進学した短大で、二つのボランティアに参加しました。一つが、絵本の読み聞かせ。もう一つが、発達障がいの子どもと一対一でとにかくたくさん遊ぶというもの。「発達障がいの子どもや不器用な子どもと関わることで、自尊心について考えるようになりました。その子たちの自信のなさが成長を妨げていると感じることがあったのです」
自信がないから、本当はできることも自分にはできないと思い込んでいる。なぜ、この子たちはこんなにも自信がないのだろう――それを知りたいと思ったといいます。
「社会にうまく適応できない子たちも、理解者と自分らしく生きられる環境があれば、持てる力を発揮できるのではないかと考えました。私自身があまり器用ではないのですが、周囲の人との出会いの中で救われてきたのです。だから、子どもたちが安心して関われる存在に私もなりたいと思いました」
編入した北大で学んだこと、
現場で学び続けていること。
やりたいことが見つかった高橋さんは、短大を卒業したあと、北海道大学の教育学部に編入しました。日本には、海外のような飢餓状態にある貧困はそれほど多くはありません。でも、相対的な貧困はあり、その格差が子どもたちにさまざまな影響を与えます。目には見えづらい貧困に悩む子どもたちに寄り添いたいと、進学を決意したそうです。「大学では、いろいろな立場の人たちと教育について話し合いました。さまざまな価値観があり、それを交換しあうことはとても楽しかったです。多数派だの少数派だの考えずに、自分の思いをオープンに話せる環境、自分をまるごと受け止めてもらえる環境があることはうれしいものだと実感しました」
だから、その環境を子どもたちに提供したいと考えます。子どもたちの話をじっくり聞ける仕事を探すなかで、児童相談所にたどりつきました。
「先輩の話を聞いて、子どもの話や困りごとを聞いて、寄り添って、迷いながらベストと思われる道を選んでいくことができそうだと思ったのです」
現場に飛び出して8年、子どもが安心できる環境のために、心理の知識と心理検査の技術を磨き続けています。
さまざまな価値観で、
子どもたちを支えたい。
児童相談所で働くのは、児童心理司だけではありません。児童福祉司は、子どもたちの置かれた環境の実態調査をして、社会学・社会福祉学の知識に基づいて親子を導きます。児童相談所に併設された一時保護所に入所している子どもを担当するのは、保護職員です。この三者が協力して、困難な状況にある親子を支えています。それぞれの立場や価値観から話し合って、みんなでベストな選択を考えるのです。「子どもの心は、わかりたいけどわからないことのほうが圧倒的に多く、わかったふりもできない。だから、独断的にならないように、みんなの意見を聞くことが大事なのだと思います」
さまざまな価値観を受け止めるには、自分の視野を広げることも大事。高橋さんは、北海道職員になったことで視野が広がったと感じています。
「札幌で生まれ育ちましたが、初任地は北見。知らない土地に行くことは怖かったけれど、とてもいい経験になりました。行動範囲が広がったし、それまで興味のなかったおいしいごはんやきれいな景色に感動するようになったのです。転勤っていいかもと思いましたね」
次はどこで勤務するのかなと微笑む高橋さんは、子どもたちに寄り添い続ける努力を惜しみません。
シゴトのフカボリ
児童心理司の一日
8:45
始業
9:00
事務作業(心理検査の所見を書く、療育手帳の手続きをするなど)
10:00
来所判定(相談のために来所した子どもの心理検査を行う)
12:00
昼休憩
13:00
外勤(発達外来のある病院へ心理検査の結果を伝える)
16:00
保護された子どもの心理検査・セラピー
17:30
退勤
※出張して心理検査を行う日もある
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

児童心理司は、さまざまな立場と価値観の人たちと力を合わせて、子どもにとってのベストを考えていきます。一人で抱え込まなくてもいい仕事です。いろんな視点で考えることが大事ですね。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
バインダー
高橋さんの仕事に欠かせないのはバインダー。「子どものことで気になったことや、周りの人からの話を、忘れないようにとにかく書きます。小さな子が発した何気ない言葉もできるだけ書き残すようにしています。バインダーは必需品ですね」

北海道保健福祉部岩見沢児童相談所

全道に8つある児童相談所の一つ。18歳未満の子どもの心身や家庭・学校での問題などの相談に応じて、健やかな成長をサポートしている。

住所
北海道岩見沢市鳩が丘1丁目9番16号
TEL
0126-22-1119
URL
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/iwj/

お仕事データ

子どもや保護者を心理学からサポート。
児童心理司
児童心理司とは
面接や観察、心理検査を通じ、
子どもや家庭環境の問題解決へ。

児童心理司は、児童相談所や福祉事業所、障がい児入所施設など地方自治体が運営する公的機関(児童相談所以外の公的機関では心理判定員という呼称)で、心理学の知識によって子どもやその保護者の心理診断を行う仕事。面接や観察、心理検査などを通じ、家庭環境や問題行動などの状況を確認し、児童福祉司や精神科医、行政関係者といった専門家と連携を取りながら、問題解決への道を探ります。子どもや保護者に寄り添い、心理学の面からサポートする大切な役割を担っています。

児童心理司に向いてる人って?
気持ちの動きに興味があり、
精神的にもタフな人。

児童心理司は心理学に関する専門知識が必要なため、「人の気持ちを分かりたい」「人を突き動かす原動力は何か」など、人の内面に興味があることが素養の一つになるでしょう。また、家庭内の虐待や非行などの問題とも関わるため、教育や社会など幅広い分野への理解が求められます。劣悪な家庭環境の中で苦しむ子どもたちとも接することも少なくないので、精神的にタフなことも大切です。

児童心理司になるためには

児童心理司は、地方公務員として働いています。そのため、まずは上級(Ⅰ種)地方公務員採用試験に合格しなければなりません。また、児童心理司は任用資格と呼ばれ、この仕事に就くことで初めて「児童福祉司」となります。その任用資格要件は「①医師であって精神保健に関して学識経験を有する者」「②大学において心理学を専修する学科等の課程を修めて卒業した者等とする」。一般的には大学や大学院で心理学関係の学部を修了することが望まれるでしょう。

ワンポイントアドバイス
厚生労働省は児童心理司の
増員を目指しているところです。

児童心理司は人気のある職種で、これまでは各公的機関の募集人数もそれほど多くありませんでした。けれど、2016年に発表された厚生労働省の「すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト」の「児童相談所強化プラン」によると、児童心理司の増員を目指していると記載されています。必須資格ではありませんが、臨床心理士や臨床発達心理士を取得し、需要の高まっているこの仕事にチャレンジしてみてはいかがでしょう。