三原 夏未さん
インタビュー公開日:2020.06.12

毎日が体力勝負!
子どもたちと全力で向き合う。
扉を開けると「こんにちは!」と、元気いっぱいに挨拶してくれる子どもたち。たくさんの笑い声と楽しそうに遊ぶ子どもたちの姿は、パワーに満ち溢れています。そんな笑顔の絶えない職場で働く三原さんは、入社2年目の児童指導員。適応訓練やコミュニケーション能力の促進などを目的に、発達に課題のある幼児をサポートする児童デイサービスの施設で、毎日フルパワーで子どもたちと向き合っています。「ここには、2歳~6歳の未就学児童が通っています。跳んだり跳ねたり、みんな元気が良くって(笑)。かなりスタミナが必要な仕事かもしれませんね」
施設では、フラッシュカードや読み聞かせ、食後の歯磨きといった生活習慣の訓練を交えながら、遊びを通して療育を行っています。「子どもは何事にも全力ですし直球です。中にはまだ言葉を発せないお子さんもいるので、全身で感情を表現する場面もあります。そのため、私たち指導員も精一杯向き合って、理解や信頼関係を築くことが大切だと考えています」
医療秘書から児童指導員へ。
幼少期の夢が自分を突き動かす。
三原さんが子どもたちと触れ合う仕事に就くのは、ここが初めて。これまでは、医学の知識やマナーを生かす医療秘書として、薬局やクリニックに勤めてきましたが、専門学校では児童についての勉強をしてきたのだそう。「昔から子どもが好きで、子どもと関わる仕事に就きたいと思っていたので、専門学校では医療秘書の資格取得の勉強とともに『小児クラークコース』を専攻していました」
子どもの心を知るための児童心理学、大人とは異なる体のしくみを理解する小児発達についても学校で学び、その頃から、将来の選択肢として、子どもと向き合う仕事を意識するようになったと言います。「医療秘書の資格を生かせる職場に就職したものの、それでもやっぱり、子どもと触れ合う仕事がしたいという気持ちが強くなってきて…」と三原さん。当初は地元で仕事を探していましたが、保育士資格を持たずに子どもと接することができる仕事が少なく、一念発起で札幌に出ることを決め、念願叶って今に至ります。
「ダメ」ではなく、
その子に合わせた言葉で寄り添う。
入社当初は子どもたちと遊んでいるだけで、一日の終わりにはぐったり疲れてしまっていたそう。「入社一週間後に、熱が出ました(笑)。今でこそ子どもたちのパワーに負けない体力が付きましたけど、最初はもう、一緒に遊んだり過ごすだけで精一杯。でも徐々に子どもたちと一緒に先輩職員のレッスンを聞ける余裕が出てきて、自分自身も学びながら、今では自分もレッスンを担当できるようになりました」
聞くと、発達支援や療育には、関わり方や声のかけ方にポイントがあるそうで、当初はそれに慣れることにも苦労したと言います。「例えば、『ダメだよ』のひと言が子どもの成長や可能性を妨げてしまうこともあるんです。『これは、こうしようね』と言い換える工夫が必要なのですが、最初はふと口走ってしまうことも。言葉のパターンも少なくて、その子の性格や、個性に合った『響く伝え方』が自然とできるようになるまでには、少し時間がかかりました」
経験値ゼロでも
みんなに支えられて成長。
「子育て経験や保育士資格があるわけではないので、最初は何事にも自信がなかったかもしれません」と三原さん。心が折れそうになった時にいつも支えてくれたのは先輩職員でした。「親御さんから、お子さんのおうちでの出来事を相談されることってよくあるんですね。でも、初めはそれに応えることができなくて。先輩たちに相談してお答えしての繰り返し。それでも、その積み重ねが経験値となって今は少しずつ自分の言葉で答えられるようになってきました。逆にお母さんたちに応援されることなんかもあって(笑)。みんなに支えられて今の仕事ができているんだなと感じます」
また、子どもたちから教えられたことも。「トイレに行こうと声をかけても『○○先生じゃなきゃ嫌だー』と泣かれてしまって落ち込んだことがありました。子どもは正直ですからね。でもそれって、信頼関係をまだ築けていなかったからなんですよね」と三原さん。常に笑顔で、子どもたちに安心感を与えられる存在になることが重要だと学びました。
子どもの成長の早さに感動。
もっと仕事の幅を広げるべく勉強中。
指導員の一日はお迎えに始まり、降園後の掃除や日誌の記録、施設ブログの更新など大忙し。それでも、三原さんのやさしい笑顔からは活き活きと充実した印象が感じられます。「体力もいりますし、大変なことも多いのですが、それを上回る喜びがあります。入所時には言葉を話せなかった子が、卒業時には話せるようになっていたりして、子どもの成長を間近で感じられるのって素敵な仕事だと思うんです。また、子どもが今どんなことを求めているのかが分かるようになってきて、みんなと通じ合えるのも純粋にうれしいですね」
三原さんは現在、保育士資格の取得に向けて絶賛勉強中。「必須ではないのですが、保育士資格があれば、親御さんたちも安心して私にお子さんを任せられるかなって。独学なんですけど、次の試験に向けて準備しています」
そして秘かな夢も最後に教えてくれました。「実は今、ピアノも練習していて。習得したら、園でのレッスンに取り入れたいなと頑張っています」
シゴトのフカボリ
児童指導員の一日
8:30
出勤
掃除、準備
9:00
お迎え(送迎)
10:00
子どもたちが到着
お散歩引率、絵本の読み聞かせなどの室内遊び
12:00
子どもたちと一緒に昼食(交代で自分も昼休憩)
13:00
ダンス・フラッシュカードなどのレッスン
15:30
順次降園、お見送り(送迎)
16:00
職員室で日誌記入や翌日の連絡など事務作業
17:30
施設ブログ・インスタの更新
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

「最高の笑顔で子どもたちと関わります」
子どもたちと心を通わせるには、自分が笑顔でいることが一番大切です。そして、どんな仕事や作業も笑顔で取り組めば、何事もいい方向に進んで行きますよ。

株式会社仁/あった中央

適応能力の向上や集団生活への対応訓練など、発達に課題のある児童を支援するデイサービス施設。ワークやレッスン、体操、遠足など体験を通して子どもが学べる場を提供しています。

住所
北海道札幌市中央区南18条西7丁目1-1 リバパークマンション1階
TEL
011-211-0695
URL
http://www.atta-jin.com/

お仕事データ

時には先生、時には親!
児童指導員
児童指導員とは
児童福祉施設に入所する
子どもたちの生活をサポート。

児童指導員は、児童福祉施設に入所する子どもたちに対し、自立した生活ができるようにサポートする仕事。活躍の場はさまざまで、家庭の事情によって家族と暮らせなくなった子どもが入所する児童養護施設をはじめ、障がいを抱える子どもが入所する障がい児入所施設、1歳未満の赤ちゃんを預かる乳児院などがあります。主な仕事は、子どもたちに挨拶や食事のマナーなど生活習慣を身につけさせるための指導。また、子どもたちの相談や悩みに向き合う役割も担います。時には先生として、時には親として、子どもたちが自立していく姿を間近に見ることができる、やりがいのある仕事です。

児童指導員に向いてる人って?
子どもが好きで面倒見が良く、
人と根気強く向き合えるタイプ。

子どもが好きであることは大前提。さらに、子どもとのコミュニケーションが得意で、面倒見の良い性格の人は児童指導員に向いているでしょう。児童福祉施設に入所している子どもたちは、その生い立ちや家庭環境に複雑な事情を抱えているケースも多く、時に一人ひとりと根気強く向き合わなければなりません。また、夜勤を含む勤務体系を採用する職場が多く、ある程度の体力も求められます。 

児童指導員になるためには

児童指導員として働くには、「任用資格要件」を満たすことが必要です。その資格要件を満たすためには、大きく分けて三通りの方法があります。一つは4年制大学または大学院の教育学部、心理学部、社会学部、社会福祉学部を卒業、または福祉系の専門学校など、厚生労働省が指定する児童指導員養成施設を卒業する方法。二つ目は教員免許、社会福祉士または精神保健福祉士の資格を取得する方法。最後に高等学校卒業以上の学歴を有した上で、児童福祉施設での実務経験を2年以上積む方法などがあります。さらに、公立の児童福祉施設で働く場合は、公務員試験を受ける必要があります。

ワンポイントアドバイス
放課後等デイサービスにも、
活躍の場が広がっています。

2012年に創設された比較的新しい福祉事業の「放課後等デイサービス」。日帰りで障がいを抱えた子どもを預かり、日常機能訓練やレクリエーションなどを行っています。放課後の時間帯に子どもを預けることで、保護者は働く時間を増やすことができるため、共働きが一般的になった家庭にとって待ち望まれたサービスです。この「放課後等デイサービス」も、児童指導員の活躍する場として拡大中。こうした社会的な要因も、児童指導員のニーズにつながっています。