濱田 康誠さん
インタビュー公開日:2017.09.11

そば好きが高じて
素人で飲食店経営をスタート。
高校を卒業し、当初は土木コンサルタントに勤務。全国の現場を回っている中でさまざまなそばに出会い、やがてそば打ちが趣味になったという濱田さん。
「そのうちに趣味では満足できなくなり、故郷の札幌に戻って独立開業しました。今から十年ほど前のことです」
とはいえ、接客や経営では全くの素人。当初は料理の手際が悪かったり、お客様への充分な対応ができなかったり値段と原価のバランスが悪かったりと、いろいろ苦労した様子。
「その時の自分にアドバイスするとしたら? 『おい、店をやるならもっとよく考えなよ!』かな(笑)」
毎日違う麺ができる。
それが面白くて、難しい。
そばの原料はそばの実。原料が植物であり生き物なのだから、毎日できるそばも微妙に違います。そこがこの仕事の面白さであり難しさでもあるとか。
「変化するからこそ、もっとおいしくなる可能性もありますが、その変化が大きすぎると『この前食べたそばと違う』とお客様も戸惑ってしまいます。粉の種類、水の量、打ち方、伸ばし方、切り方… 現状に満足せず一歩ずつおいしさを進化させることが、この仕事の真骨頂だと思いますね」
そばを極めるなら北海道。
でもライバルも多いです。
全国各地のそばを口にした濱田さん。そこで痛感したのは…
「やはり北海道産のそば粉は品質がいいということ。加えて空気も水もきれいなので、おのずと北海道のそばはクオリティが高くなるんです」
そういう観点では、将来的に飲食の世界で独立したい、高いレベルで食を極めたいという人には、北海道のそば屋はうってつけというのが濱田さんの考え。
「ただその分、ライバルもたくさんいます。試行錯誤と真剣勝負の世界であることを忘れずにね」
一人のお客様が
何度も足を運びたくなる店に。
飲食は基本的に『待ち』の仕事。客足が少なくなったのでチラシなどを配布すると、今度は入りきれないほどの人が押し寄せる… そんなこともよく耳にします。
「その中で気づいたのは、広く浅くお客様を呼びこむのではなく、おなじみさんに深く応対していくのが自分の理想ということ。そのために常連客を増やすことに力を注ぎました」
初めてのお客様とも積極的に会話を交わす、夜の営業時間を長くし家族連れなどを招く、休みの日にはご近所の集いの場に使っていただく。当初、それほど変化はなかったけれど、しばらく続けていくと、一人また一人と、馴染み客が増えていったとか。
「いろいろ苦労もしましたが、それでも今日までやってこれたのは、こういったお客様と心温まる交流があったから。飲食のやりがいは、その一言に尽きます」
長く働くことで気づくことも。
途中で投げ出すのは絶対ダメ。
「食事って、生命の基本。食べたものが体を作り、脳を作り、生きていくエネルギーとなります。そこに仕事で携われるのは、とても幸せなことだと、最近思うようになりました」と濱田さん。
「一つの仕事を続けていくことは大変ではあるけれど、長く働くことで見えてくることも、たくさんあります。例えば家族への感謝、農家の方々の苦労、配達してくれる業者さんへのさまざまな気遣い… なのでどんな仕事に就いても、すぐ投げ出したり諦めたりせず、まず納得できるところまで頑張ってみてほしいなぁ」
シゴトのフカボリ
そば店経営者の一日
9:00
お店へ そば打ち
9:30
下準備
11:30
ランチタイム開始
13:30
ランチタイム終了
14:30
自宅で昼休み
17:00
夜営業の下準備
17:30
夜営業開始
22:00
閉店

手打ちそば かのん

田舎と更科の2種類の手打ちそばを基本に、さまざまなメニューを揃える人気店。清潔な店内、温かな接客にも定評が。

住所
北海道札幌市厚別区大谷地西6丁目
TEL
011-892-1640

お仕事データ

繁盛店を作り上げる!
飲食店経営者
飲食店経営者とは
新しいアイディアで
魅力あふれるお店づくりを!

メニューの開発を筆頭に、接客や仕入れ、スタッフの教育、広告・宣伝など飲食の経営全般を担う仕事。オーナーとして経営に徹するケースもあれば、自ら調理をする個人経営のスタイルもあり、立ち位置はさまざまです。また、個人経営や外食企業のフランチャイズといった店舗だけでなく、キッチンカーやテイクアウト・デリバリー専門店など形態も多種多彩。ライバルの多い業界なので、新しいアイディアと市場調査で魅力あるお店づくりを進めることが大切です。

飲食店経営者に向いてる人って?
リーダーシップがあり、
鋭いビジネス感覚を持った人。

スタッフを一つにまとめ上げるリーダーシップや店舗経営に関する的確な決断力と運営力が求められます。そのほか、企画力や事務処理能力など幅広いスキルが必要。会社組織における飲食店経営者の場合は、売上を着実に伸ばす手腕も評価されます。食べることやお客様の喜ぶ顔を見るのが好きという情熱はもちろん、経営者として鋭いビジネス感覚を持てるかどうかがポイントです。

飲食店経営者になるためには

飲食店経営者には「食品衛生責任者」の資格取得が必須。飲食店や飲食関連企業で経験を積み、知識や技術、さらに店舗立ち上げのノウハウを身につけた上で開店に至るケースが多いようです。また、なかには飲食店経営を学べる専門学校などもあります。大まかな流れとしては、資金の目処を立てて店舗選びからスタート。内装やメニューづくり、従業員の確保などを経て開業に至ります。

ワンポイントアドバイス
「居抜き」と「スケルトン」、
どっちを選ぶ?

お店のオープンにあたる初期費用は「居抜き」か「スケルトン」かで大きく異なります。「居抜き」は厨房機器やテーブル、椅子などがそろった物件のこと。それらを活用することで開店コストをおさえられるのが特徴です。「スケルトン」は骨組みだけの状態。内装外装や厨房機器といった費用はかさみますが、自分のイメージ通りの店にできるというメリットがあります。