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宗原 真敏さん
インタビュー公開日:2020.10.30

札幌市中央卸売市場の仲卸として
みかん、すいか、ぶどうを扱う。
「私が主に扱っているのは、みかん、すいか、ぶどうです。長年、担当してきたので、産品の状況、オーダー数なども頭に入っており、これらの品目についてはほぼ、自分一人で動かしています」
ここは、札幌市中央卸売市場(中央区)。1階にある青果仲卸売場が宗原真敏さんの仕事場です。中央卸売市場というのは、地域において生鮮食料品等を円滑に供給するため、農林水産大臣が指定する区域内に、認可を得て開設される市場。全国40都市に64カ所が設けられています。札幌市中央卸売市場は1959(昭和34)年、その17番目の市場として業務をスタートしました。同市場開設の翌年に設立され、野菜・果物の仲卸を手がける山石 石田商店で働き始めて14年。宗原さんの携帯には、頻繁に電話がかかってきます。
「お客さま(販売先)は、大手スーパーや、飲食店などに食材を販売している八百屋さんが多いですね。産品のオーダーから流通状況・価格動向なども直接、私に問い合わせが来るんです」
その繋がりが、仲卸としての自分の財産なのだと宗原さん。プロとしての自信が、垣間見えます。
野菜や果物を適正価格で津々浦々へ
「市場」でなければ、できない役割。
生産者と消費者の間に立って、収穫された産品を流通させる。それが市場の役割ですが、近年はネット通販など生産者から消費者へと直接、産品が届けられるケースが増えてきました。この先、市場はいらなくなってしまうのでしょうか。そんな問いに、宗原さんは大きく首を横に振ります。
「さまざまな直販チャンネルができていますが、産品全体の流通量からみれば、ほんの一部。市場がなければ、せっかく作った野菜や果物を、適正な価格で津々浦々の食卓へと届けることは不可能です」
宗原さんの仕事は仲卸。卸売業者から産品を仕入れ、量販店・小売業者などに販売する役割を担っています。市場といえば思い浮かぶのが〝せり売り〟。野菜・果物などの青果は、オークションのように値段を入れて競り落とす〝上げぜり〟が行われています。
「お客さまのオーダーに合わせてせりで買うほか、せりではなく話し合いで値段を決める〝相対(あいたい)売り〟で仕入れる方法もあります。固定のお客さまがほとんどなので、相対売りで着実に仕入れる方が多いですね」
産品によっては入荷日が決まっており、スーパーなどでは、毎日、必要な量が決まっています。そこで、値段を見ながら、次の入荷日の仕入れ量を調整するなど、日々、細かな判断が求められる仕事なのだそうです。
原点は八百屋をしていた祖父の記憶。
元同業者から声をかけられることも。
「宗原……、やっぱりそうか。あの宗原さんのお孫さんなんだね、と声をかけられることも多いんです。考えてもいませんでしたが、うれしいですね」
宗原さんが、札幌市中央卸売市場の山石 石田商店で働き始めたきかっけは、同じ市場内で働いていた友人から仕事の話を聞き、関心をもったことがきっかけなのだそうです。仲卸の仕事について具体的にわかっていたわけではありませんが、小さいころから漠然と興味を抱いていた分野だったといいます。
「祖父が小樽で八百屋を営んでいました。恐らくそのせいもあって、野菜や果物を扱う仕事に親しみを覚えていたんですね。私が高校の時に店を閉めてしまいましたが、小樽から買い付けにやって来る元同業者の方に声をかけられるんです。大げさかもしれませんが、運命のようなものも感じます」
転職で同社にやって来た宗原さん。入社後は、仕入れた荷物の運搬・配達などからスタートし、扱う産品について、取引先について、一つひとつ覚えていきました。実務経験3年で競り免許(せりに参加できる資格、通称・白バッチ)を取得。その後はみかん、すいか、ぶどうの担当として経験を重ね、取引先からの信頼を築いてきました。市場内で使うターレット(運搬車)の扱いも実にクールです。
スイカのシーズンなどの忙しさも、
売上に貢献するという喜びに変わる。
スーパーや八百屋など、取引先から注文を受けて仕入れを行うケースがほとんどですが、旬が短く、かつ需要が集中する夏のスイカなどは、今もセリの前になるとドキドキするのだと宗原さん。
「必要な量を、希望する価格帯で仕入れられるかどうか。緊張する瞬間ですね。守備良く仕入れが終わったら、今度は大量の荷物の運搬。限られたシーズンだけですが、集中的に忙しくなる時期があります」
当初は、てきぱきと仕事をこなすだけで精一杯。大変さも感じましたが、慣れて来ると今度は、大量の産品を動かし、売上に貢献できるという楽しさの方が、どんどん大きくなっていくのだそうです。
「お客さまからは、キロあたり幾らまでといった上限価格が示されることもありますが、価格は入荷量や品質によって変動します。自分の力ではどうしようもない部分もあって、まさに相場の世界ともいえます。だからこそ、お客さまにも満足してもらい、当社も適正な利益が残る取引ができた時の喜びは大きいですね」
仕入れ後の配送が立て込み、届け先を間違えてしまうといった失敗もあったと打ち明ける宗原さん。そんな時こそ相手と真摯に向き合い、信頼関係を築いてきました。
自分の判断で買い、販売していく。
その醍醐味が、仲卸の仕事の魅力。
仕入れには勘も必要なのだと話す宗原さん。取引先からの注文が入っていなくても、その日の入荷品目を見て、売れそうだと見極めれば競り落とすこともあるそうです。
「ある程度の目算は立てますが、うまく販売できた時は、やはりうれしいですね。ほかにも、たとえば珍しい品種のぶどうが入っていたら、馴染みのバイヤーさんに電話します」
〝○○円までなら買うから、競り落として〟。そんなオーダーを掘り起こし、プラスαの需要をつくるだけでなく、結果として自分の提案した産品が店頭に並ぶようすを想像するのも楽しいと話しています。
「自分の判断で買って、自分で斡旋して販売する。それが、この仕事の醍醐味ですし、利益が上がればやりがいにもつながります。同時に私たちには、取引を通して生産者の方々にとっても適正な価格を〝つくる〟という責任もあると自覚しています」
仲卸の役割の大きさについて、そう語る宗原さん。そのためにも、一緒に健全な相場をつくっていく取引先を、さらに増やしていきたいと話しています。クリックひとつでものが買える時代。人と人が直接、やりとりする現場が、食の支えていることに安心感を覚えたのは、温かな雰囲気の宗原さんのようすも大きく影響しているようです。
シゴトのフカボリ
市場仲卸の一日
5:00
出勤。ファクスで届いている担当産品のオーダーを確認
5:30
その日のせりにかかる産品の事前チェック
6:00
倉庫・冷蔵庫から、その日に配送するもののセッティング
7:30
せり開始
8:00
競り落としたものを、来場しているお客さんの車に積み込む
9:00
在庫品を倉庫や冷蔵庫に移動、現場の片付け
12:00
昼食・休憩
13:00
スーパーなどのお客さんへの配送業務
15:00
退勤

株式会社 山石 石田商店

札幌市中央卸売市場の開場に合わせ、1960(昭和35)年に設立。仲卸として青果(野菜・果実)を扱い、大切な食材の供給の一翼を担う老舗企業です。

住所
北海道札幌市中央区北12条西19丁目1−3
TEL
011-644-7556
URL
http://www.yamaisi.co.jp

お仕事データ

食材を市場から小売店へ。
仲卸
仲卸とは
目利きやせりなどによって、
市場の適正な価格を形成。

市場で卸売業者から魚や野菜、果物を買い付け、スーパーや百貨店をはじめとする小売店に販売するのが仲卸の役割。具体的には品物を下見し、一つひとつの質を目利きするところから仕事がスタートします。多くの場合、せり取引(多くの買い手の中から一番高額な値をつけた人に品物を販売する方式)や相対取引(売り手と買い手が話し合いによって価格を決める方式)によって水産物や青果物を購入。その後はお客様のニーズに合わせて加工したり、種類を揃えたりして、各小売店へ配送するのが一連の流れです。仲卸は専門的な立場から消費者に代わって品物を評価し、市場の適正な価格形成をすることにも重要な役割を果たしています。

仲卸に向いてる人って?
朝に強く、食に興味があり、
多方面に人間関係を築くのが好きな人。

市場の仕事は朝が早く、仲卸の中には午前2時に出勤する人もいるため、「朝に強い人」には向いています。魚介や野菜、果物の良し悪しを見分ける力も求められるため、「食」に興味があることもプラスに働くでしょう。また、卸売業者とはテンポの良い会話やハキハキとした態度で接する一方、お客様となる小売店には節度を持ったコミュニケーションをとらなければなりません。多方面の人間関係を築くのが好きな人も、仲卸としての素養があります。

仲卸になるためには

仲卸になるために求められる特別な学歴は必要ありません。多くの場合、高校や専門学校、短大、大学を卒業後、市場内で営業行為ができる仲卸企業に就職します。仲卸では仕入れた商品を各小売店に配達することもあるため、普通自動車免許を取得しておいたほうが良いでしょう。近年では目利きや買い付けのスキルをじっくりと教え、一人前になるまでに時間をかけて指導する仲卸企業が多いようです。

ワンポイントアドバイス
水産物や青果物の消費を増やす
戦略を立てることにも挑戦!

かつての仲卸は商品を仕入れて販売することが大きなウエイトを占めていました。けれど、ここ最近は小売店のニーズに合わせた加工や仕分け、さらには消費者の目線に立った売場の提案や商品開発といった「企画」も求められています。仲卸は生産者と小売業の間に立っていることから、両者からの情報収集と情報提供が可能。こうしたポジションを活用し、水産物や青果物の消費を増やす戦略を立てることにチャレンジしている企業も数多くあります。