北見 祥隆さん
インタビュー公開日:2020.12.03

幼いころから仏教が身近に。
大学時代に本山での修行も経験。
札幌市南区にある浄土宗のお寺・大松寺で住職を務める北見祥隆(きたみ しょうりゅう)さん。住職とは会社でいうと社長にあたり、北見さんは先代住職の息子として生まれ、小学生の時にすでに弟子入りし、37歳で跡を継ぎました。「幼いころから仏教が身近にある環境で育ったので、いたずらをして親に怒られると後で仏様にも謝るなど、信仰が自然に身についていました」
高校時代はバンドのボーカルに熱中し、卒業後はプロの歌手を目指したいと思っていましたが、父との話し合いの結果、東京の大学に進学して仏教を学ぶことに。大学では卒業に必要な単位に本山での修行が含まれていました。
「私たちの宗派の修行は、念仏を唱えながら礼拝(らいはい)を1日300回行うというもの。外部との接触ができなくなり、テレビもなくもちろん携帯電話も禁止。自由に座ったり寝たりすることもできないし、飲食の時間も決められています。修行をしていると、自由に過ごせる普通の生活がいかに幸せかがよくわかります」
北海道では歴史の長い大きなお寺。
卒業後はお寺に戻り正式に僧侶に。
大学卒業後は大松寺に戻って、正式に僧侶となりました。「父は、私が将来継ぎたいと思えるようにするため、必死で頑張ってお寺を大きくしてくれました。その思いに応えたいという気持ちもありましたね」
大松寺は北見さんで4代目。113年の歴史は札幌のお寺の中でも古い方ですが、「大学で実家の寺歴を調べる課題が出た時に、大松寺は4代の歴史ですが、同級生の寺は本州で800年以上続くお寺もあり、北海道と本州の歴史の違いを感じました」
ちなみに、お寺の生まれではない人も、修行をして僧侶になることができます。
お経で亡くなった方を供養。
お盆は休みなくフル回転です。
僧侶の仕事の一つは、葬儀や法事、お盆などの際に仏前でお経を唱えること。お檀家さんの身内が亡くなると、その日のうちに枕経を唱えるため、連絡を受けてお宅に出向きます。夜にも連絡が来ることもあり、人はいつ亡くなるかわからないため「お坊さんは、24時間お坊さん」と北見さんは言います。
お盆前後は特に大忙し。8月1日から12日までに棚経の依頼があったお檀家さんをすべて回るので、1日20軒以上というフル回転の毎日。13〜15日は納骨堂のお参り、つづく16日はたくさんの方が訪れるお盆のご法要となります。
お経の後のお説教も、大切なお参りの一部です。「お説教もまずは師匠の真似をして覚え、自分なりのやり方を身につけていきます。私の師匠である父は、特別な話ではなくても人の心に伝わるお説教をしていました。同じ話をしても、話す人の人柄によって伝わり方が違うものなんですよね」
仏教の教えを伝えることも、
僧侶として大切な仕事です。
そして、僧侶の仕事としてもう一つ重要なのは、仏教の教えを伝え広めること。もともと、日本の文化や道徳は仏教の教えに基づいて形成されてることが多く、日本人にとって大切な教えでもあると北見さんは言います。しかし、最近は仏教に対する意識が希薄化しており、「葬儀だけやってもらえればいい」と考える人も少なくないといいます。また、以前は人として大切なことを教わる機会として小学校などに講演に呼ばれていましたが、宗教に対するイメージの変化により、そのような場も少なくなっています。
「仏教を伝えることは、人間としての真理を説くこと。ただ真理だけを追求すればよいのではなく、人の生き方はさまざまで何をし、何を考えているのかを知らなければ道を教えることもできません。だから、人と関わることを大切にしています」
さまざまな職業の人と交流し、
もっと仏教を身近なものに。
そこで北見さんは札幌仏教連合会の青年会に所属し、お釈迦様の誕生日である4月8日に行う「花祭り」というイベントに参加するなど、仏教を身近に感じてもらうための活動に勤しんでいます。また、浄土宗各団体のさまざまな研修にも参加し、自らも企画・開催。さらに仏教の世界にとどまらず、異業種交流会や経営者の会にも出て積極的に多くの人と交流し、そのような場で求められれば仏教についての講演を行うことも。
「亡くなった方を供養するだけでなく、生きていて困難を抱えている方を救うのも仏教の教え。それを伝えていきたいです。興味を持ってもらえるように楽しく話すことも大事ですね」
そんな中、北見さんがうれしいと感じるのは、「住職に頼んでよかった」と言われる時。
「お坊さんも他の仕事と同じく、相手の方に求めていただけなければ成り立ちません。求められることでその方のために尽くし、今生きている人々が幸せであるように勤めていきたいと思います」
シゴトのフカボリ
僧侶の一日
8:30
出勤、事務所でお参りに伺う先の確認
9:00
お檀家さんのお宅へお参りに出発
11:00
札幌市内のホテルでご法事
11:40
移動、昼食
13:00
お檀家さんのお宅でお参り
15:00
お寺に戻り位牌書き、事務作業
16:00
夕方の勤行(お寺で行う毎日のお参り)
18:00
お通夜
19:00
帰宅
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

今は自分に自信がないという人が増えています。仏道を歩み、信じるひとから信じられる人へ、信じられる人から信じあえる人に。そうすると人から求められる人になる。自分に自信が持てるように、まずは神仏にふれて、自分を見つめ、「信じる」ことからはじめませんか。

大松寺

1907年(明治40年)に開山。百周年にあたる2007年に現在の本堂・客殿・庫裡・納骨堂を建立し、簾舞の本院には「北日本動物霊堂」を設けています。

住所
北海道札幌市南区藤野2条11丁目8番8号
TEL
011-596-2510
URL
http://www.daishoji.or.jp/index.html

お仕事データ

葬儀や法要で読経を。
僧侶
僧侶とは
故人を弔い、遺族を癒やす、
社会的にも大切な存在。

僧侶の仕事として馴染み深いのは、葬儀や法要の際の読経・説教。他にも年中行事に合わせて個人宅でお経を唱えたり、所属する寺院の運営に携わったり、墓地がある場合はその維持・管理なども担います。各種法要がない日も、読経や写経といった修行を欠かすことはありません。最近は、本堂や境内を開放してイベントを開くなど、地域貢献活動に力を入れる寺院も増えています。こうした場を通して、仏教や宗派の教えを広めることも役割の一つ。いつの時代も、故人を弔い、遺族を癒やす僧侶の存在は社会的にも大切です。

僧侶に向いてる人って?
仏教を深く追求し続け、
厳しい修行にも耐えられる人。

僧侶を志すには、まず仏教に関心を持っていることが大前提。その文化や教義について、理解と知識を深めるための努力も必要です。早朝から起床し、寺の掃除や読経の練習、食事の配膳を行うなど、厳しい戒律の中で修行するため、相応の体力や精神力も求められます。また、さまざまな悩みに耳を傾けることもあることから、聞き上手な人も向いているでしょう。

僧侶になるためには

僧侶になるためには、「得度(とくど)」と呼ばれる出家の儀式を受けなければなりません。修行者に名前を授ける「法名(ほうみょう)」や髪の毛を剃る「剃髪(ていはつ)」などを行い、初めて仏門に入れるわけです。僧侶を目指す人は仏教の知識が学べる専門学校や大学に進み、卒業後に各宗派のお寺で修行生活を送るのが大半。その他、中学や高校を卒業後、寺院を訪ねて「得度」をしてくれる師匠を見つける道もあります。ただし、宗派によって専門学校や大学の卒業生と修行期間が異なることもあるようです。

ワンポイントアドバイス
女性僧侶ならではの役割にも、
期待が高まっています。

仏教は古くから男女平等を実践してきたため、女性が僧侶になることを希望する場合も大半の宗派が門戸を開いています。道のりは男性同様に仏教系の専門学校や大学などで基礎知識を学び、それぞれの寺院で修行を積むのが一般的。男性には相談できないようなデリケートな悩みに寄り添ってもらえるという声も多く、女性僧侶に期待される役割はますます高まっているようです。宗教法人の寺院で正社員として働く場合、産後休暇・育児休暇などの制度が整っていることもあります。