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井上 太喜さん
インタビュー公開日:2021.01.08

建築を学ぶ中でガラスに魅せられ、
進路変更をしてこの道へ。
小樽は、個性あふれるさまざまなガラス工房が並び、観光客がガラス作り体験もできる街。そのガラス工房の一つ、体験工房小樽イルポンテで職人として働くのが、井上太喜さんです。兵庫県出身の井上さんは、実家が塗装業を営んでいたこともあり、高校では建築科に進みました。高校で学ぶ中で、サグラダファミリアなどヨーロッパの教会のステンドグラスの写真を見て、その美しさに魅せられたのです。
「こんなステンドグラスを作ってみたいと思いましたが、建築からの進路変更をする勇気がなく、一度は建築デザインの専門学校に進学しました。でも諦めきれず、専門学校を辞めてガラスの道に進むことにしたんです」。
インターネットで全国のガラス工房の求人を調べたところ、愛知県でステンドグラスを作る工房での募集が見つかりました。ただ、そこでは賃金はなくガラスの技術を教わって実践ができるのみ。それでもアルバイトをしながら、そこで経験を積むことにしました。
自分の作品を使ってもらえる喜び。
それを感じたくて再び挑戦。
厳しい環境の中でも、ガラス製品が作れる楽しさに没頭していった井上さん。自宅でも作れる小さな作品を作るための卓上バーナーを購入して、自主的に練習を重ねました。1年ほど経った時に、初めて自分が作ったステンドグラスのランプシェードが売れた時は、自分の作品を人に使ってもらえる喜びをひしひしと感じたと言います。
しかし、アルバイトと両立しながらのガラス作りが辛くなったこと、家の事情で一時的に家業を手伝うことになったこともあり、一度兵庫県の実家に戻りました。
そして落ち着いた時に再度、全国のガラス工房の求人を調べ、ガラスの道に戻ることに。「求人は多くはないですが、今度は賃金が出るところを吟味しました。そこで、今の工房が募集をしていたのです」。
現在の工房、イルポンテは、吹きガラスを中心に製造を行い、観光客の受け入れも行っています。吹きガラスとは、高温で溶解されたガラスを金属の管に巻き取り、息を吹きかけてさまざまな形を作る技法。新たな挑戦に、井上さんの期待も高まりました。
難しい吹きガラスの技術は、
先輩から学び練習を重ねています。
吹きガラスは、ガラス製造の技術の中でも特に難しいと言います。「ステンドグラスは板状のガラスを切って使いますが、吹きガラスは熱で軟らかくしたガラスが冷める前に手早く加工し、思い通りの形にしなければならないですし、一度失敗したら直すことはできないので、とても難しいんです」。最初は先輩の手本を見て練習、わからないことは聞いてまた練習、を繰り返しました。また、吹きガラスでは複雑な形を作る時はアシスタントが付いて二人組で作るため、先輩のアシスタントに入った時も、技術を見せてもらうチャンスとして活用しました。
そうして練習した作品は、お店にある「新人職人コーナー」に陳列して、少し安価で販売。さらに経験を積んで、レギュラーの商品の棚に作品が並んだのは、入社して2年ほど経った時でした。「やっとかー、という心境でした。うれしかったですね」。やはり、作ったものをお客様に手に取って購入してもらえる喜びはひとしおだと言います。
他の工房の見学やイベントなど、
ガラスの街ならではの経験も。
お客様に体験をしていただくのも大切な仕事の一つです。吹きガラスは失敗したら取り返せないので、特にお客様の体験ではミスのないように注意を払っています。体験は15分という短い時間で行うので、その限られた時間でいかに楽しい思い出を作ってもらうかと、知恵をしぼって対応しています。さらにこんな面も。「ガラスの窯は常に火が燃える音が鳴っているので、大きな声で話さなければならなくて、実はそれがちょっと苦手です(笑)」。
ガラスの街・小樽では、他の工房を見に行くのも大事な勉強の機会。「これはどうやって作っているんだろう」「どうやってガラスを付けているんだろう」と想像しながら見て回っています。また、毎年7月下旬に開催される、おたる潮まつりと同時期に開催される「小樽がらす市」では、全国のガラス工房が小樽に集結して出店。「こんな大規模なガラスのイベントは初めての経験だったので、感動しながら楽しませてもらいました」。
もっと技術を身に付け、
いつか自分の工房を持つのが夢。
着々と技術を身に付けて成長している井上さん。オリジナルで新しいシリーズの器を考案し、上司の承認を得て、グラスやお皿などさまざまな商品に展開しています。
「でも、技術はまだまだ。複雑なものは作れないので自分の技術の範囲内で作っていますが、これからもっと練習して、思い通りの作品が作れるようになりたいですね」。
ガラス職人に向いている人は?と聞いてみると、「ものづくりが好きな人、自分のイメージを形にしていくのが好きな人」という答え。手先が器用な方がいいかと思えば、「技術は慣れなので、やる気さえあれば時間がかかってもできるようになると思います」。
いずれは独立も視野に入れているという井上さん。「自分の工房を持つのが夢です。そのために、もっと技術を磨いていきたいですね」。身近にいる先輩を始め、周りのガラス工房からも学べる小樽という恵まれた環境の中で、井上さんはその日に向かって歩み続けています。
シゴトのフカボリ
ガラス職人の一日
8:10
出勤、製作の準備
8:50
朝礼
8:55
窯から出した商品やお客様の作品を加工
上司の製作のアシスタント
13:10
昼休憩
14:00
お客様の体験
15:30
休憩
16:00
自分の製作
17:50
お店の締め作業
18:00
退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
ガラスを形作る道具たち
ガラスを切るハサミは数種類、器の口を広げたり目印を付けるための箸のようなジャックという道具、挟んで持ち上げるためのペンチなど、ガラスをきれいな形にするためにはたくさんの道具を使います。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私も、高校生の時に抱いた興味から今の仕事への道が開けました。興味のあることがあったら、まずはやってみるのが良いと思います。

体験工房小樽イルポンテ

個人・団体向けに吹きガラスやサンドブラスト、革小物の制作体験を実施。店頭では職人手作りのオリジナルのガラス製品・革製品を販売しています。

住所
北海道小樽市色内2丁目1番19号
TEL
0134-32-7880
URL
https://otaru-ilponte.com

お仕事データ

ガラスに個性や温もりを!
ガラス工芸職人
ガラス工芸職人とは
ガラスを自由自在に加工し、
世界に一つの作品をつくる仕事。

ガラス工芸職人は伝統の技術によって花瓶や小物から、コップやお皿などの食器、アンティーク風の作品などを作り上げる仕事。工房の多くは、明治時代に生活必需品であった石油ランプや、漁の際に使う浮き玉の製造を行っていた老舗の企業。その他、個人のアトリエも増えてきているようです。製法は「吹きガラス」に代表されるような、ガラスに熱を加えて形そのものを作るホットワークと、「切り子」のように冷えた状態で表面に加工を加えるコールドワークがあります。人の手で作られた作品には機械にない温もりや個性が宿り、オンリーワンであることも魅力です。

ガラス工芸職人に向いてる人って?
力仕事にのぞむ大胆さと
美しい造形をつくる繊細さをあわせ持つ人

ガラス工芸職人には、ガラス加工に関する高度な技術や深い知識が必要不可欠。また、ホットワークの場合、1000℃以上にもなる炉の前で長時間にわたり作業する上、吹き竿を操る腕や手にも負担がかかることから、体力があることも肝心です。こうした力仕事に向き合う大胆さを要する一方、自らの作品をこだわり抜いて手がける芸術的なセンスや審美眼といった、繊細さもあわせ持つ人がこの仕事に向いているでしょう。

ガラス工芸職人になるためには

ガラス工芸職人になるために、特別な資格や学歴は必要ありません。美術系・デザイン系の専門学校や大学、カルチャースクールなどで技術や専門知識を学ぶことはできますが、基本的には職人の元での修行が必須なので、まずは見習いとして弟子入りするのが近道です。その他、工房やメーカーに就職するといった方法もあるでしょう。またガラス工芸の伝統があるヨーロッパを筆頭に、海外で日本にはない技術を身に付けるという道もあります。

ワンポイントアドバイス
自分の好きなジャンルを探したり、
現代的な作品にも出合ってみよう!

一口にガラス工芸と言っても、日本人がイメージしやすい「吹きガラス」「江戸切子」の他にも、色鮮やかなベネチアングラスや琉球ガラスなどさまざまな種類がありますので、自分の好きなジャンルを探してみましょう。最近では伝統的な作風だけでなく、モダンな作品をつくり展示会を行っている「作家」と呼ばれる人も多くいます。展示会では作家自身も会場にいることが多いので、実際に会って話を聞くことで「伝統」にはとどまらない作品づくりへの知見が広がりそうです。

ほかにもあります、こんな仕事。