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山崎 詩音さん
インタビュー公開日:2021.01.20

東洋医学に取り組むクリニックの
動物看護師としてQOL向上に携わる。
犬が849万頭、猫は964万頭。これは、国内のペット数です(2020年10月現在。一般社団法人ペットフード協会HPより)。犬は減少傾向にあるそうですが、2020年は犬、猫ともに前年同期比で15%ほど増加しています。日本の世帯数は約5,690万世帯なので、3軒に1軒の割合でペットが飼育されている計算です。
そうしたなか、ペットの日常的な健康相談から、病気・ケガの治療などを担う動物病院の存在が、以前にも増して重要なものとなっています。
「週末には、特に多くの飼い主さんがみえられますね。当院では、持病があったり、アトピーなどを持っていたとしても、できるだけ快適に、楽しく暮らせるように動物のQOL(生活の質)の向上ということをテーマに診療を行っています」
そう話すのは山崎詩音さん。一般的な動物病院の診療に加えて鍼・お灸・漢方など東洋医学も併用し、西洋医学では改善が難しい症例のにも取り組む「アニマルクリニック永山公園」の動物看護師として勤務しています。
獣医師のサポート業務をはじめ、
病院内の一連の仕事を担当する。
「動物看護師も、医師(獣医師)の指示のもとで治療などのサポートをするという点では人間の看護師と同じですが、より幅広い業務に携われることが特徴ですね」と山崎さん。
診療中、動物が動かないように押さえる保定(ほてい)に始まり、薬の調合、入院している動物の世話、飼い主さんなどからの電話の応対、診療の受付、伝票の作成など、病院運営に関わる一連の業務を担当しているそうです。
「鍼灸治療を行う際は、一般の診療とは異なる保定の仕方があり、コツが必要になります」
2019年の夏から、同クリニックで働いている山崎さん。触れると嫌がる部分を見極めて、部分的に保定する力の入れ具合を調整するなど、鍼灸治療ならではの技術も身に付き、馴染みの飼い主さんも増えました。この近くに暮らし、よく散歩している飼い主さんもその一人。愛犬のキャバリアは山崎さんの顔を見ると、尻尾を振って喜ぶのだとか。
「私のことを覚えていてくれるのが、とてもうれしいんです。クリニックでは名札を付けていないのですが、飼い主さんもすぐに私の名前を覚てくれて、親しくしていただいています」
満面の笑顔をみせる山崎さんですが、動物看護師になるまでには、寄り道がありました。
リゾート施設で犬の世話を担当。
動物病院ではできなかった経験。
もともと好きだった動物に関わる仕事に就くことを目指し、高校卒業後は動物看護師やトリマーを養成する専門学校へ進んだ山崎さん。しつけについて学び、認定動物看護師という資格も取得しましたが、就職したのは北海道内のリゾート施設でした。
「専門学校の時、動物病院での実習があったのですが、忙しそうに動き回る動物看護師の姿と、手がけている業務の幅広さを目の当たりにして『自分にはできないのではないか』と感じてしまって……」
実習の時期が、犬の予防接種が一斉に行われる春先というとりわけ多忙な状況だったこともありますが、山崎さんは自信をなくしてしまったのだそうです。ただし、動物から離れたわけではありませんでした。リゾート施設で任された仕事はアトラクションのドッグレースの司会と犬の世話やしつけ。
「4年間、その仕事を続けましたが、しつけに関しては学校で習ったことをさらに深めることができた貴重な時間でした。ストレートに動物病院に勤めていたら、できなかった経験を積むことができたと思っています」
できないこと、苦手なことにも、
チャレンジする決意でリベンジ。
そのリゾート施設での経験はまた、動物看護師の仕事へと、改めて目を向けさせてくれるきっかけにもなったと山崎さんは話します。
「世話をしている犬を動物病院へと連れて行く機会が多く、その都度看護師さんの姿を見ているうちに、やっぱり挑戦してみようという気持ちになっていきました」
思い切って退職し、札幌の動物病院に勤務しますが、その時、山崎さんは自分のなかで決心をしています。
「できないこと、苦手だと感じたことにもチャレンジしなければ、成長できない。そう考えて、動物看護師の道にリベンジすることを決めました。動物が好きという思いは、ずっと変わっていませんでしたから」
2年ほどその動物病院で働き、ホームセンターのペットショップ勤務を経て、現在のクリニックへと移った山崎さん。その間、自分自身の生活にも変化がありました。リゾート施設を辞めた後、犬を飼ったことです。犬種は、先に触れた飼い主さんと同じキャバリア。
「動物看護師を目指す人は、実家などで犬や猫を飼っているというケースが多いのですが、私はこれが初めて。飼い主としての目線も、どんどん仕事に活かしたいと思っています」
なるべく飼い主さんを待たせない。
そのための工夫に取り組む日々。
休日には、犬と一緒に出かけることが多いという山崎さん。ペットフードの値段、ドッグランがある場所等々、自分がこれまでに得た情報をクリニックに来る飼い主さんに伝えることもあるのだといいます。そんな山崎さんが、飼い主目線から取り組んでいるのが、なるべく待たせないということ。保定を行っていない時は、診療中に伝票の入力や薬の用意をするといった工夫を日々、行っています。
「予約時間が押している時は、どのくらい待つかアナウンスすることで、安心していただけるようにしています。状況を読み、それを伝えるタイミングの計り方などは、リゾート施設での接客経験が役立っていますね」
数年後、現在は認定資格である動物看護師が国家資格へと移行し、一定の医療行為ができるようになると言われています。
「楽しみな部分もありますが、自分にどこまでできるのか、不安もあって……」
慎重さと、苦手なことを乗り越えていく前向きさ。そのバランスの良さが、山崎さんの持ち味なのだと感じました。
「それと、実は猫が苦手。ここも乗り越えるべきポイントだと思っています(笑)」
シゴトのフカボリ
動物看護師の一日
8:45
出勤、清掃および診療の準備
9:00
午前の診療開始、30分おきの予約に沿って診療
13:00
昼休憩
15:00
午後の診療開始
17:00
診療と並行して片付けの開始
18:30
診療終了、退勤

シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私は、この一心で動物看護師の仕事を目指してきました。自信をなくすことや、苦手なことから逃げそうになった時期もありますが、最初の気持ちをしっかり持ち続けていたので、乗り越えることができたと思っています。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

相棒のワンちゃん
「道具」ではありませんが、4年前から飼っているこのコが、仕事について考える際にヒントを与えてくれる、欠かせない存在になっています!

アニマルクリニック永山公園

西洋医学に鍼灸と漢方を取入れた獣医療を実践しているクリニック。高齢疾患、免疫性疾患、関節・神経疾患など幅広い病気の治療を実践しています。

住所
北海道札幌市中央区北2条東7丁目82番地 ラポール永山西棟1F
TEL
011-251-8333
URL
http://www.animalclinic-nagayamakouen.com

お仕事データ

獣医師をサポート!
動物看護師
動物看護師とは
獣医師の診察や治療を補助し、
飼い主との架け橋役も!

動物看護師は、獣医師の指示・管理のもとで診察や治療、手術の補助にあたるのが大きな役割です。医療器具の準備や後片付け、検査、調剤などでもスムーズなケアをサポート。その他、受付や事務作業、動物の体を清潔に保つためのグルーミング(お手入れ)、入院中の動物のお世話など幅広い業務を担います。動物の病状について説明したり、健康や栄養面のアドバイスを送ったり、獣医師と飼い主をつなぐ架け橋になるのも大切な仕事です。

動物看護師に向いてる人って?
大好きな動物の命を預かる責任感を持ち、
対人のコミュニケーション能力も必要。

動物看護師には「動物が好き」という気持ちが大切な一方、時には病気で苦しんだり、死を目の当たりにしたりすることもあるため、命を預かる大きな責任感も必要です。獣医師の診療サポートの他、受付や清掃、入院中の動物の散歩など多種多様な業務を担うため、イメージする以上に体力も求められるでしょう。獣医師やスタッフと協力して仕事を進めるだけでなく、飼い主に治療方針や薬について説明することも多いことから、対人のコミュニケーション能力も重要です。

動物看護師になるためには

動物看護師になるために必ずしも必要な資格はありません。ただし、多くの場合、動物看護系の学科やコースを置く専門学校・短大・大学に通い、統一資格「認定動物看護師(動物看護師統一認定機構)」を取得後に動物病院やグルーミングサロン、動物園などに就職するのが一般的のようです。これまで動物看護師は民間資格しかありませんでしたが、今後は国家資格とする活動も進んでいます。

ワンポイントアドバイス
人と動物の関わりが深くなり、
動物看護師の仕事もより重要に。

ペットの代表格ともいえる犬と猫だけでも、日本で飼われている数は1800万頭を超えるといわれています。「ペットは家族の一員」という考え方はすっかり定着し、今後も人と動物の関わりはより深くなっていく見通しです。獣医師や動物看護師はさらに重要な仕事になっていくとともに、定期健康診断やダイエット指導、リハビリといった多種多彩なニーズも高まっていくはずです。動物の生活習慣や栄養、衛生管理など、健康を守るための専門的な知識を持つ動物看護師の活躍の場はますます広がっていくでしょう。