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矢尾 達也さん
インタビュー公開日:2021.05.26

北海道の「農」を支える
農業土木という世界があります。
建設業界の中でも農業土木という分野があることをご存知ですか?農作物を育てるには水が必要ですが、当然ながら雨水だけで米や野菜が豊かに実るわけではありません。例えば、揚水機場(ポンプのような設備)が水田や畑に水を送る一方、余分な水を処理するための水路を走らせるなど、多彩な施設や設備が土台となり、北海道の農業と生産者を支えています。
「他にも農作業を効率化させるために畑の傾斜をなだらかに整えたり、生産性を高めるために水田の区画を拡大したり、さまざまな役割を担うのが農業土木。当社はその調査や測量、設計を手がけるコンサル企業です…まだ経験2年なので上司の受け売りなのですが」
こう笑うのは農業土木の分野で道内屈指の実績を誇る株式会社みずほ栄設計の若き設計技術者、矢尾達也さん。もともと北海道の大規模農業と最新技術を駆使した農法に可能性を感じ、京都の高校を卒業後、農家になろうと酪農学園大学に進みました。
自分が北海道に来た理由を
見つめ直しました。
「大学時代は迷走期でした」と北海道への進学後について振り返る矢尾さん。当初は農家を目指していたものの、新規就農にかかる費用が莫大なことから断念。一方、大学ではドローンを使った地形の3D画像化や作物の生育状況を把握するためのシミュレーションなどを研究し、こうした新しい技術で農業を支えたいとも考えるようになりました。
「とはいえ、自分のやりたいことが分からなくなり、一度は大学職員として働きました。ただ、仕事で学生さんの相談に耳を傾けることも多く、『何で大学に入ったの?』『将来はどうする?』と尋ねるたびに、その質問が自分の胸にも突き刺さったんです。僕は何のために北海道にいるんだろう…と」
矢尾さんは「やはり北海道の農業に関わる仕事に就きたい」と決意を固め、みずほ栄設計に転職しました。農業土木の幅広い分野を手がけ、ドローンをはじめとする新しい技術も積極的に取り入れている姿勢が決め手だったといいます。
図面からイメージを
膨らませることが大切です。
矢尾さんが入社したのは2019年。最初の1カ月はCAD(キャド/図面作成・設計のためのツール)ソフトの使い方を教わりながら、さまざまな図面を見せてもらい、「イメージ」を膨らませるトレーニングを積んだといいます。
「僕らが農業土木の設計をする上で、田んぼや畑にどのような問題点があり、何をどう作ることで解決できるか図面から読み取ることが大切です。工事の発注者である行政の指示をただこなすのではなく、農家さんにとってより良い提案をするためにも想像力を働かせるのが重要だと教わりました」
矢尾さんが所属する設計部には9名が在籍。設計技術者の担当は地区ごとに分かれているそうですが、要望の変更による遅れが生じたり、難易度の高い設計が求められたりした時は、全員が協力し合って乗り越えているそうです。
「僕は南幌を担当する先輩に同行することが多く、打ち合わせで分からなかったことは帰社後に丁寧に教えてもらいました」
地元の農家さんの声に
寄り添って設計を進めています。
同社が請け負う農業土木の設計ジャンルは大きく水田と畑。そこからさらに水路や排水施設の設置、区画拡大、農業機械を洗うための水道の引き込み、農道の整備や川を横断する橋の造成など多種多彩に分かれます。
「僕が経験したことがあるのは畑の面を平らにして農作業の効率を高めるものと、用水・排水施設の設計くらい。まだまだ先輩に同行中ですし、覚えるべきことは山ほどあるんです」
例えば、田んぼに水を張るための施設を作るにしても、地中にパイプを通す方式や開水路と呼ばれる溝を掘る方式などがあるのだとか。前者は農地に段差ができないため作業効率が良くなり、後者は維持管理がしやすいなど、それぞれにメリットがあります。
「工事の発注者は行政ですが、実際に使うのは農家さん。営農する上での希望を何度もヒアリングしながら、地元の声に寄り添って設計を進めるのが当社のモットーです。農業を知ることも農家さんの信頼を得る鍵になります」
自分の描いた図面が農家さんに
評価されると本当にうれしい!
農業土木の設計は測量から図面の納品まで1年以上かかることも珍しくない世界。実際の工事完了までにはさらに時間を要するため、矢尾さんの手がけた仕事が形になるのはまだ少し先のことです。
「ただ、自分が描いた設計図を農家さんに説明することもあり、『コレ、コレ、こうしてほしかったんだよ!』と評価いただいた時は本当にうれしくなります」
かつて「3K」といわれた建設業界とは異なり、同社は新しい設計ソフトを導入し、仕事の効率化も進めています。矢尾さんは休める時にキッチリと休むメリハリのあるスタイルもお気に入りです。
「労働環境の改善に加え、社員のチャレンジを積極的に受け入れてくれるのが当社。僕はドローンをはじめ、新しい技術を使った未知の仕事に挑戦してみたいと上司に伝えたところ、全力でフォローすると心強い言葉をいただきました。常に勉強が必要ではありますが、北海道の農業に貢献できる手応えの大きな仕事だと思います」
シゴトのフカボリ
設計技術者の一日
8:30
出勤
8:40
先輩と1日の業務確認
9:00
設計/作図作業
12:00
休憩
13:00
施設の耐久性の計算
15:00
打ち合わせ/調査
17:30
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

僕は計算が好きなので耐久性などの数値がバッチリと合った時は心地よさを感じます。逆に合わないと煮詰まってモヤモヤしてしまいますが(苦笑)。こんなふうに、仕事の中で自分が楽しんで取り組める部分を見出すことも大切だと思います。

株式会社みずほ栄設計

北海道に根ざした農業農村整備をはじめとする社会資本整備事業に関わる建設コンサルタント。主に農地、農道、かんがい排水の整備など農業土木を中心に手がけ、北海道農政部所管の受注では常に業界トップクラスの業績を維持。労働環境の向上や人材育成などにも力を入れている企業。

住所
北海道岩見沢市7条西15丁目4-27
TEL
0126-23-2386
URL
http://mizuho-sakae.co.jp/

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お仕事データ

ライフラインを支える設計を!
土木設計技術者
土木設計技術者とは
暮らしに欠かせない土木工事の
調査から計画、設計まで。

橋や道路、ダム、トンネルといったインフラに加え、農地の造成や斜面の防災なども含めた土木工事を進めるにあたり、調査・計画・設計を行うのが土木設計技術者。具体的には現場の測量や地質・地形の調査からスタートし、気候や周辺環境、社会経済の条件などさまざまな情報を収集した上で基本設計のプランを立てます。それに基づき、設計図面や仕様書など工事に必要な書類を作成。場合によっては用地の確保や周辺住民への説明、行政への諸手続きを行うこともあります。所属する企業によって得意分野は異なりますが、いずれもライフラインや地場産業を支えることにつながる手応えの大きな仕事です。

土木設計技術者に向いてる人って?
状況の分析や課題解決が好きで、
常に勉強する姿勢も求められます。

土木設計技術者はお客様の要望に添った設計を行うだけでなく、工事現場の課題を見つけ、その解決につながる提案をすることで高い評価が得られる仕事です。客観的に状況を分析したり、解決策を編み出したりすることが好きな人には向いているでしょう。また、工法や資材、設計ソフトは日々進化するため、常に勉強する姿勢も必要。デスクワークだけでなく、現地調査に行くことも多いため、心身ともにタフであることも求められます。

土木設計技術者になるためには

土木設計技術者になるために特別に必要とされる資格や学歴はありません。高校や専門学校、短大、大学で土木工学などを学び、構造力学や土質力学、コンクリート工学といった知識を身につけてから就職するのが一般的です。勤務先は、建設会社、コンサルティング会社、官公庁、各種研究機関の土木部門など多種多彩。土木設計技術者として経験を積み、「技術士」や「土木施工管理技士」などの関連資格を取得することでステップアップすることも可能です。

ワンポイントアドバイス
暮らしに密着した感謝の言葉を
聞けることもやりがいの一つ。

土木工事は橋や道路、トンネルなどのインフラを手がけることが多く、土木設計技術者も「トンネルができて通勤が便利になった」「この橋のおかげで買い物に出かけるのがラクになった」「放水路ができたので洪水の不安が減少した」という暮らしに密着した感謝の言葉を聞くことができるのもやりがいの一つです。また、畑の斜面を平らにすることで農作業を効率化させるなど、生産者の仕事に貢献することもできます。