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進藤 大哉さん
インタビュー公開日:2021.09.07

母や知人の影響で医療に関心。
土台を支える検査の世界へ。
2020年から、連日発表される新型コロナウイルス感染者数。その検査に当たっているのが、医療機関に勤務する臨床検査技師です。新型コロナウイルスのPCR検査以外にも、臨床検査には実にさまざまな種類があります。
道内随一の大規模な検査機関である第一岸本臨床検査センターで、新型コロナウイルスのPCR検査の最前線に立つ進藤大哉さん。工業高校で情報技術を学んでいましたが、看護師である母の影響や、知人にも医療従事者がいたことから話を聞き、医療の土台を支える臨床検査技師の仕事に興味を持ちました。
そこで思い切って方向転換し、専門学校で学ぶことに。最終学年である3年次には、地元・函館の病院で実習も経験。学校の授業では健康な学生同士で測定していましたが、実習では疾患を抱える患者さんのデータを見て学べることが多く、改めて検体を分析する仕事の意義を実感したといいます。卒業前に控える国家試験に向けて集中して勉強し、資格を獲得しました。
「さまざまな経験を積みたい」
その思いで今の職場を選択。
臨床検査技師としての就職先には、病院や検査機関があります。その中でも、道内各地に営業所・ラボ(検査所)があり地元で働ける可能性もあること、病院への出向もありさまざまな経験を積めることから、進藤さんは今の職場である第一岸本臨床検査センターを選びました。
就職して最初に進藤さんが希望し配属されたのは、分析専門機関であるラボの血液検査課。
「臨床検査はとても幅広く、学生時代に授業や実習で学んだ時に自分の得意・不得意を知ります。私は、血液の分析が得意だったので希望しました」
血液検査課には各地から多数の検体が集まり、社員10人で1日1万5千件もの血液の検査・分析を行います。機械にかけて必要なデータを抽出しますが、専門学校で学んだ検査に関する基本的な知識に加え、会社にある機械やシステムを使いこなさなければならないため、最初の2〜3カ月はわからないことがあれば先輩に聞き、必死でメモを取りながら覚えていきました。
新型コロナ検査の部署へ転属。
完全防備で検査に臨んでいます。
半年ほど勤めたころ、全国的にも新型コロナウイルスの感染者が増える中、PCR検査の応援勤務に入ることに。進藤さんが抜擢された理由は、「高校時代は空手、専門学校時代から現在はバレーボールとスポーツを経験し、体力的にも精神的にもタフだから」とのこと。ハードな部署での活躍が期待されての異動となりました。
会社の勤務は18時、21時、23時からのシフト制。なぜ夜間か?というと、昼間に病院や診療所で採取した検体を夜のうちに分析し、翌日には結果を送るためです。感染者が増えた時は、多くの検体が持ち込まれるため、進藤さんたちも忙しくなります。
感染の危険を伴う検査の際は、防護服と専用マスク、手袋を着用し、ガラス越しで行います。結核の検体にも使われる安全なキャビネットを使い、細心の注意が払われているため、作業による感染の恐怖心はないといいます。とは言え、緊張感のある検査を行う毎日が続いています。
風通しの良いチーム体制で、
正確なデータを提供しています。
「医療機関は患者の受け入れで逼迫しており、検査は専門機関に委託せざるを得ません。私たちが受け入れることで病院から感謝されていると聞くので、大変でもやりがいを感じますね」
検査は機械にかけて終わりでなく、データが正確に出ているかどうかを見るまでが仕事と進藤さん。PCR検査は検体に試薬を混ぜて、遺伝子を増幅させることでウイルスの有無を調べる方法です。少しでも汚染が起こると、正確な結果は出ません。そのため複数人でチェックし、おかしいと思ったら再検査をします。
そんな中、頼りになるのはチームの上司や先輩。職場の雰囲気が良く気軽に相談できることも、働きやすさと共に間違いのない仕事につながっています。
「例えば病院の場合、医師は検査の結果と患者の容体を診て総合的に診断を下します。治療にも影響するため、臨床検査技師の仕事にはデータをよく見て、細かいことにも気づける注意深さが求められます」
今後は他の分野の経験を積み、
チーム医療に貢献できる人材に。
当面は新型コロナウイルスの検査で忙しい日々が続きそうですが、コロナが収束した後は、再び血液検査課に戻って経験を積みたいと進藤さん。そして、いずれは病院に出向し、看護師など他の専門職と協力して行う医療の世界も経験したいといいます。
上司からも、進藤さんには病院でさまざまな経験を積んでほしいと言われているそうです。
「病院の現場を経験したら、医師や他の専門職が何を求めているかも理解できるようになるので、検査専門機関であるラボに戻った時にも活かされます」
会社には一つの分野に秀でたスペシャリストタイプの社員と、さまざまな分野を経験し病院でも活躍できるゼネラリストタイプの社員がいるそうで、進藤さんは後者を目指しています。
「血液検査の分析が一通りできるようになったら、尿や細菌、生化学など他の分野の経験も積んでいきたいですね。そして、病院で自分の考えを提案できるようになり、チーム医療に貢献したいと思います」
シゴトのフカボリ
臨床検査技師の一日
18:00
出勤
検体の仕分け、バーコード付与、前処理
20:00
RNA抽出、試薬を作る
22:00
検体と試薬を混ぜ、測定器にかける
23:00
交代で休憩
0:00
検査データを確認
次の検体でRNA抽出・測定作業
3:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私は高校時代、情報技術を学んでエンジニアを目指していましたが、方向転換をして今の道に進みました。一つのことにこだわらず、視野を広く持てば、自分に合った道が拓けていくと思います。

株式会社第一岸本臨床検査センター

医療機関から受託した臨床検査の分析データ提供において、道内15カ所と沖縄に拠点を持ち、北海道の売上シェア60%を保持するトップ企業です。

住所
北海道札幌市東区伏古7条3-5-10(札幌本社)
TEL
011-787-2111
URL
https://www.daiichikishimoto-kensa.jp

お仕事データ

診療に必要な各種検査を。
臨床検査技師
臨床検査技師とは
検査のデータを集めるだけでなく、
病気の兆候を見つける手がかりに。

問診や触診だけでは診断が難しい場合、医師の指示のもと、診療に必要な各種検査を行うのが臨床検査技師。主に病院や検査センター、保健所、検診センターなどで活躍しています。検査の種類は患者様の血液や尿などを調べる「検体検査」と、心電図や脳波測定といった身体を直接検査する「生体検査(生理機能検査)」。こうした検査結果を分析・評価し、医師に伝えることで、今後の治療方針が決まるケースも数多くあります。また、臨床検査技師は検査データを集めるだけでなく、病気の兆候や変化を見つけるための手がかりとしての役割も担っているのです。

臨床検査技師に向いてる人って?
知的好奇心が旺盛で、
判断力や気配りに優れている人。

医療に関する分野に興味があるだけでなく、日進月歩の技術革新を学び続ける旺盛な知的好奇心が必要です。臨床検査では顕微鏡の標本や機器のモニター画面から、患者様の身体に異常がないか分析するため、検査過程に間違いがないか正しく判断する力も求められます。また、機械化が進んでいるとはいえ、病理標本や血液標本の製作などは人の手で行うことも多いことから、手先が器用な人も向いているでしょう。患者様が不安にならないよう、思いやりや気配りを持って接したり、チーム医療の一員として連携したりするコミュニケーション能力も不可欠です。

臨床検査技師になるためには

臨床検査技師になるためには、臨床検査技師の国家資格が必要です。まずは、臨床検査技師の養成課程がある短大(3年制)や専門学校(3年制)、大学に進み、所定の課程を修了すると受験資格を得ることができます。そして、国家試験に合格し、臨床検査技師の国家資格を取得すると、臨床検査技師として病院などで働く道が開けます。

ワンポイントアドバイス
上位資格の取得によって、
より求められる人材へ!

臨床検査の世界では、簡易化や機械化が進みつつある一方、人にしかできない検査においては高い専門性が求められています。その代表例としては、がん細胞の早期発見を専門にする「細胞検査士」や腹部エコーなどの超音波検査を専門に行う「超音波検査士」。これらは臨床検査技師が取得できる上位資格であり、高度な専門性を備えている人材としてニーズが高まります。ステップアップのためには、ぜひ取得を目指したい資格です。