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荒井 奈々美さん
インタビュー公開日:2023.04.21

本+さまざまな情報による生活の提案。
豊かな生活のお手伝いをしていきたい。
「その場所を、みんなの居場所に。」
これは、2018年にオープンした『江別 蔦屋書店』(江別市牧場町)のコンセプトです。店名のとおり書店ですが、本を買うだけでなく、ゆったりと過ごしたり、語り合ったり、おいしいものを食べたり。いわゆる普通の本屋さんとはひと味も、ふた味も違っています。店内は天井の高い、近代的なデザイン。その空間のなかを、黒ベストの制服でさっそうと歩いてきたのが荒井奈々美さんです。
「蔦屋書店が大切にしているのは『生活提案』ということ。本はもちろん、さまざまなアイテムや行動のきっかけになるような情報の提供を通して、豊かな生活を送るためのお手伝いができればと思っているんです」
この店舗のオープニングスタッフとして入社し、仲間のメンバーとともに運営を担ってきた荒井さん。
「この場所を、江別というまちを盛り上げる発信地にしていけたらという思いで日々、店舗に立っています」
仕事のこと、そして自分の思いを、実に楽しそうに話す姿が印象的です。
本の管理からスタッフ管理まで。
店舗全体のマネジメントを担当。
江別 蔦屋書店は、食にまつわる書籍と、ベーカリーから坦々麺まで幅広いジャンルの飲食店が入居する「食の棟」、多様なジャンルの書籍を揃えた「知の棟」、雑誌とともに生活に関するショップがある「暮らしの棟」という3つの棟(建物)で構成されています。このうち荒井さんの「持ち場」となっているのが、暮らしの棟。本の管理、店頭に立つスタッフの管理、そして店舗で常時、開催しているイベントの企画・運営などマネジメント全般を担当しています。
「アルバイトスタッフのシフト管理や育成も大切な仕事です。店舗内を歩いて本などの陳列を確認したり、スタッフからのヘルプに応じたり、お客様の問い合わせにお答えしたり、レジに入ることもあります。マネジメントというとバックヤードにいるイメージかもしれませんが、ずっと動き回っていますね」
荒井さんは主に夜の時間帯を任されており、15時に出勤すると、その日の店舗の状況を確認し、必要に応じて人員配置などを調整。そのかたわら、イベントの企画も行っています。
「現場がスムーズにまわり、スタッフが働きやすい環境づくりに気を配っています」
函館 蔦屋書店で受けた感動が蘇り、
江別の新店舗スタッフ募集に応募。
「小学校の時に出席した叔父の結婚式に感動し、それ以降、『将来は絶対に結婚式場で働く! 』と思っていました」
あこがれは続き、荒井さんは短大卒業後に夢を叶えます。平日はレストラン、週末にはブライダルパーティーを行う料飲サービスの仕事に就いて2年間、幸せなカップルのサポートに力を注いできました。そんな荒井さんが、江別 蔦屋書店で働くことになったきっかけは、友人がフェイスブックに上げた情報だったそうです。
「この店舗がオープニングスタッフを募集しているという情報でした。以前、旅行の際に訪れた函館 蔦屋書店で受けた衝撃を思い出し、『もう、ここしかない!』 とその瞬間に応募していました(笑)」
書店のイメージを越えたスケールの店舗、さまざまな新しい情報発信が行われ、お客様全員がインスピレーションを受けているような雰囲気に興奮したのだと話します。
「それは、友人の結婚式を私が責任者として取り仕切り、大きな達成感を得た後のことでもありました」
一つの仕事をやりきったという思いも、次のステップへと移る気持ちにつながったのだそうです。
常時行われるイベントの企画を行い、
スケジュールを考え運営までを担う。
営業開始の半年ほど前に採用され、入社のきっかけとなった函館 蔦屋書店で3ヶ月の研修を受けて書店の運営などをじっくり学んだ荒井さん。オープン時には知の棟の責任者に抜擢され、新しいメンバーへの業務指導、アルバイトのシフトづくり、1日の作業工程の作成などを通して店舗の船出を後押ししました。
「当初は本の品出しや仕分けも行っていましたが、2年目にブックリーダーという現場の責任者に就いて以降、現在のマネジメント業務が担当となっています」
なかでも重要な業務の一つが、イベントやフェアの企画。建物の中央に伸びる通称「マガジンストリート」には展示用の台(平台)が常設されており、いつも何らかの催しや提案展示が行われています。その内容、スケジュールを考え、運営していくことが一大ミッション。
「私は書籍の担当なので、本を取り入れた企画や、雑貨と本を組み合わせた提案などを行うことが多いですね」
半年から1年分のテーマを決め、出展者などと打ち合わせ、商品が届けば陳列も行います。一つひとつのイベントが、数多くの手間と荒井さんたちの情熱でつくられています。
地域に人たちにさまざまな提案を行う、
「江別のコンシェルジュ」になりたい。
これまでに担当したイベントで、荒井さん自身も強いインパクトを得たのが、2022年に初めて実施したピンクリボンの啓発イベントだといいます。乳がんを罹った経験をもとに情報発信を行っているテレビディレクターのアドバイスを受け、本人のトークショーを盛り込みながらの企画でした。
「ピンクの雑貨や本を集めたり、テナントの飲食店にピンクのメニューを考えてもらったり。『きっかけは一つのピンクから』をテーマにしたこのイベントには、多くの反響をいただくことができました」
関心があることに加えて、まだあまり知られていないものも発信していきたいと話す荒井さん。SNSでも、旅行先でもアンテナを張り、テーマを探していますが、企画が浮かばず、悩むこともあるそうです。
「そんな時は、店内を歩きます。本や雑誌はヒントの宝庫ですし、まさに書店の原点に立ち返るような気がする瞬間です」
入社から6年目。イベントを通して何かを体験できるこの場所で、地域の人たちが求めるものを直接、提案していく。そんな江別のコンシェルジュのような存在になりたいのだと大きな目を輝かせています。
シゴトのフカボリ
書店員の一日
15:00
出勤、売場の巡回(状況確認、人員配置の調整など)、店舗業務のサポート、販促やイベントの企画・商談、展示商品の陳列など
19:00
休憩
20:00
店舗の巡回、学生アルバイトの管理など
22:00
閉店、後片付け、翌日の準備など
24:00
退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
ハンディターミナル
陳列してある本の入荷日、販売数などの情報を読み取る機械です。膨大な書籍・雑誌があるため、その情報をもとにして、動きの悪い本を外したり、逆に追加して書棚に入れるといった作業を行います。今や書店には必須のアイテムとなっています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

以前、私が大好きな土偶のフェアを開催したところ、好評となり売上も出すことができました。展示を見ながら、私自身が楽しくてにやにや。人から見ると『へんてこ』でも、好奇心を持っていることは大切ですよ!

アイビーデザイン株式会社

人と環境にやさしい住まいづくりに取り組むパッシブホーム株式会社と、株式会社北海道TSUTAYAが出資して2017年に設立された、江別 蔦屋書店の運営会社です。

住所
北海道江別市牧場町14番地1
TEL
011-375-6688
URL
https://ebetsu-t.com/

お仕事データ

本を売るプロフェッショナル!
書店員
書店員とは
書籍の販売や接客、
売場づくりを行う仕事。

書店の売場に書籍や雑誌を並べたり、レジ打ちなどの接客業務を行ったり、取次(とりつぎ)と呼ばれる本の流通業者との連絡や在庫管理をしたりと、書店での業務全般を行うのが書店員の仕事。さらに話題作や新作を売るためのレイアウトやサイン会といったイベントの企画を行うケースも。幅広い役回りが必要ではありますが、憧れの作家や作品に携わりながら働けるのは書店員ならではの特権。本好きなら誰もが一度は憧れるのではないでしょうか。

書店員に向いている人って?
本への愛情を絶やさず
頭も体も使える人。

お客様目線で本の配置を行ったり企画を発案する発想力、お客様に対応するコミュニケーション能力や本を運ぶための体力など、さまざまな能力を求められるのが書店員の仕事。ですが、「大好きな本をみんなに知って欲しい!」という愛情さえあれば、重たい本も軽々と運ぶ原動力となってくれるかもしれません。

書店員になるためには

書店員になるためには、特に必要な資格や学歴はありません。高校、専門学校、短大、大学を卒業後に書店に就職するのが一般的なルートです。在学中のアルバイトから正社員になるという人もいるでしょう。企画や宣伝の経験や知識があると役に立つかもしれません。

ワンポイントアドバイス
ヒット作も、新しい書店の形も実力次第!

本を売るプロフェッショナルである書店員。例え大きな話題を呼んでいるわけではない作品でも、レイアウトの仕方やポップ、企画など書店員の実力次第でベストセラーを生み出せるかもしれません。また近年は電子書籍やオンライン書店が普及する一方、カフェや雑貨コーナーを併設した書店も増えてきています。創意工夫でお客様に新たな書店の楽しみ方を提案するのも書店員の仕事だと言えるでしょう。