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港湾荷役作業員_齊藤 瑞貴さん
インタビュー公開日:2025.03.24

高校卒業後の進路は
やや迷走状態でした(笑)。
苫小牧港の某所、まるで巨大な壁のように見えるほど大きな船が停泊中。その船内に次々とトレーラーが入っていき、貨物車両を切り離したトレーラーヘッドだけが戻ってきます。
「この船はRORO(ロール・オン・ロール・オフ)船といって、トラックやトレーラーなどの貨物車両をそのまま積み込めます。僕らは荷物の積み下ろしプランにもとづいて、運転や固定、機械操作といった作業を担う港湾荷役作業員です」
こう説明してくれたのは、苫小牧栗林運輸株式会社の齊藤瑞貴さん。同社は苫小牧市の港で船に荷物を積んだり、下ろしたりする「港湾荷役」を古くから担っている企業です。
「僕はもともとホテルマンを目指していましたが、就職活動時の倍率が非常に高く諦めました。高校の先生にすすめられるがまま畜産業界に進み、運転が好きだったことから3年ほどで一般的な運送会社のトラックドライバーにシフト。大型免許なども取得したものの、自分としては運転手として働き続けたいワケでもなかったため、正直なところやや迷走状態でした(笑)」
段階的に指導してもらえるので、
仕事を覚えやすかったです。
齊藤さんがトラックドライバーとして3年ほど勤務したころのこと。苫小牧栗林運輸で働く知人から港湾荷役作業員として働かないかと誘われたそうです。
「地元では『栗林』といえば一大グループを展開する安定したイメージ。しかも、トレーラーだけではなく、フォークリフトやクレーンなどさまざまな機械を扱え、船内ではラッシング(船の揺れによる荷崩れを防ぐために貨物車両を固定すること)といった手元の作業も多いと聞いたことに面白みを感じました」
入社後、齊藤さんは港湾荷役作業員の新人教育として、1週間程度は安全確保の方法や危険行為、基本的な作業手順を学びました。その中で船舶内の現場も見学できたため、仕事のイメージもつかみやすかったと振り返ります。
「最初に教わったのはラッシング。事前に手順を学んだとはいえ、実際に手を動かしてみるとなかなか難しく、覚えるまでに時間がかかりました。その次はトレーラーを誘導するための笛の吹き方を指導してもらうなど、段階的に教育してもらえるので仕事を覚えやすかったです」
先輩方の良いところマネし、
自分なりの手法を試せます。
苫小牧栗林運輸の港湾荷役作業員チームは、一人ひとりの得意なことに合わせてメインの業務を振り分けています。齊藤さんはもともとトラックドライバーだったこともあり、トレーラーで貨物を船内に積み込む作業が中心です。
「道路とは異なり、船内は狭いので最初はハンドルを握るのが怖かったのが正直なところ。ただ、先生役の先輩が隣で指導してくれ、『合格』をもらうと一人立ちする流れなので心強かったです。さらに、この船はOK、この船はもう少し練習が必要と、船舶ごとにお墨付きがもらえるのも安心できます」
今の言葉の通り、一口に「船」といっても、柱の位置や船庫の構造が異なるため、合図員の笛に耳をすませながら細心の注意を払って運転する必要があります。例えば、大きな紙のロールを運ぶ場合は平均すると1日50台ほどの貨物車両を積み込むそうです。
「先輩方も一人ひとりの乗り方が違い、さまざまな手法が学べます。良いところを自分なりにマネしながら、効率的な方法を試していけるのも面白いところです」
多彩な作業免許を取得する分だけ
仕事の幅が広がっていきます。
苫小牧栗林運輸では「フォークリフト運転技能講習」やパワーショベルなどを動かせる「車両系建設機械運転技能講習」、「小型移動式クレーン運転技能講習」などの作業免許は、会社の費用負担で取得することができます。
「僕はトレーラーがメインですが、人によってはパワーショベルで木材チップを積み下ろししたり、大きなクレーンを使って巨大な鋼材を吊り上げたり、さまざまな荷役機械を扱っています。つまり、資格を取得した分だけ、自分の仕事の幅が広がっていくんです」
現在、齊藤さんは天井クレーンという機械を動かすための免許を取りにいっているところ。船舶に設置されたクレーンなどの設備で、陸と船を結んで貨物を積み替える際に使うそうです。
「今はトレーラーを運転するのが楽しいですが、もっと多くの仕事にも携わってみたいです。すべてを覚えるまでには…何十年かかるのかなぁ(笑)」
自分が積んだ飲み物が、
今日も誰かの手に渡っているはず!
齊藤さんは苫小牧栗林運輸の職場環境にも満足しています。苫小牧港は24時間貨物を受け入れているため、月に3〜4回は夜勤もありますが、その分の手当も弾むのだとか。有休もみんなで協力しながら取っているため、消化率も高いと微笑みます。
「以前は休みといえば出かけたり、スノーボードを楽しんだりしていましたが、最近は家で動画を見ながらダラダラしちゃいます(笑)」
苫小牧港は、国内の貨物取扱量が全国でナンバーワン。齊藤さんはトレーラーで引っ張る貨物車両の中に何が入っているのかも当然知っています。
「新聞用の紙や大きな鋼材、農業用の飼料といったビジネスを支える貨物の他にも、食料品や飲料、生活雑貨など、暮らしに身近な商品を数多く積み下ろししています。行き先も道内だけではなく、仙台や東京、大阪、名古屋など多種多彩。自分が積んだ飲み物を、日本、もしかすると海外の誰かが飲んでいるのかな…と想像すると感慨深いんですよね」
シゴトのフカボリ
港湾荷役作業員の一日
8:00
出勤
8:15
積み下ろし作業
10:00
休憩
10:15
積み下ろし作業
12:00
昼休み
13:00
積み下ろし作業
15:00
休憩
15:15
積み下ろし作業
16:00
退社

シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

僕らの仕事は狭い船内でトレーラーを運転したり、大きな貨物をクレーンで吊って下ろしたり、ダイナミックな分だけ安全の確保が何より大切。細心の注意を払い、コミュニケーションを密に取りながら、仲間たちと楽しく働けるのが魅力の一つです。

苫小牧栗林運輸株式会社

商社から商船、エネルギー、旅行代理店まで、幅広いビジネスを全国ネットで手がける栗林グループの一員。グループ中核を担う栗林商会の「港湾運送事業」に特化。高い技術と正確性を持つ港湾荷役のスペシャリストとして顧客からも高評価。

住所
北海道苫小牧市元中野町2丁目13番16号
TEL
0144-34-2111
URL
http://www.kurinet.co.jp/

お仕事データ

世界と日本をつなぐ物流の要!
港湾荷役作業員
港湾荷役作業員とは
船と陸とを結び、
物流の要となる重要な仕事。

港湾荷役作業員は、輸出入される商品や原材料を船から陸へ、陸から船へと移動させる仕事を担っています。具体的には、大型クレーンを操作してコンテナを船に積み込んだり降ろしたりする作業や、フォークリフトで貨物を運ぶ作業、貨物の検品や仕分け作業などを行います。日本は島国であり、多くの物資を海外との貿易に頼っているため、港湾荷役作業員は私たちの生活を支える極めて重要な存在と言えるでしょう。

港湾荷役作業員に向いている人って?
チームワークを大切にし、
安全意識と体力を兼ね備えた人。

港湾荷役作業は大型機械や重機を扱うため、安全に対する高い意識が必要不可欠です。また、仲間と連携して作業を進めることが多いため、協調性やコミュニケーション能力も求められます。さらに、屋外での作業が中心となるため、暑さや寒さに負けない体力も重要です。荷物の積み降ろしのタイミングは船の入出港に合わせて行われるため、時には深夜や早朝の作業もあります。そのため、不規則な勤務時間にも対応できる柔軟性を持っている人に向いています。

港湾荷役作業員になるためには

港湾荷役作業員になるには特別な資格は必須ではありませんが、クレーンやフォークリフトなどの運転免許があると有利です。具体的には、「玉掛け技能講習」「クレーン運転特別教育」「フォークリフト運転技能講習」などの資格があると就職や昇進に役立ちます。無資格でも港運会社や海運会社に就職して現場で技術を身につけていくケースがほとんどです。また、体力仕事のイメージが強い港湾荷役ですが、最近ではコンピュータシステムを使った物流管理や、自動化された機器の操作など、IT関連の知識が求められる場面も増えてきています。

ワンポイントアドバイス
技術革新で変わりつつある
港湾荷役の現場。

かつての港湾荷役作業は、体力勝負の仕事というイメージがありましたが、現在は体力の負担が少ないぶん、大型機械の操作やIT技術を活用した物流管理など、より専門的な知識やスキルが求められるようになってきました。また、環境問題への意識の高まりから、省エネや排出ガス削減などの環境対策に取り組む港も増えているため、環境技術に関する知識や経験も今後重要になってくるでしょう。