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水産物加工・販売_細川 厚志さん
インタビュー公開日:2025.07.11

『うおはん』でメインの魚売場を担当。
大量の魚をさばき、刺身をつくる毎日。
大きなまな板の上に乗った、見るからに活きのいい、ピカピカの魚。おもむろに刺身包丁を入れるのは、細川厚志さん。ムダのない、素早い手さばきに釘付けになっていると、もう、三枚おろしができあがっていました。残ったのは、きれいに身を削がれた骨と頭だけ。
「当店の魚売場は、一匹ままの丸魚(まるざかな)をお勧めする対面コーナー、刺身コーナー、干物コーナーがあり、私は刺身コーナーを担当しています」
〝当店〟というのは、恵庭市にある生鮮スーパー『うおはん』。青果、精肉、加工食品など幅広い品揃えのなかでも、メインとなっているのが鮮魚をはじめとした水産物。蟹など冷凍品の発送も行っており、近隣の方々だけでなく、新千歳空港を利用するゴルフ客などにも広く知られ、連日、賑わいが絶えません。
「毎日、大量の魚をさばきますが、その日の仕入れ分は、当日にほぼ売り切ります。そのため、とても忙しいですが、魚をさばくことがとにかく好きなので、苦にはならないんです。年末は、文字通り目の回るような業務量。でも、アドレナリンがバンバン出てむしろ快感です」
よどみなく、力強く仕事の魅力を語る細川さん。入社から15年。一つ年下の後輩とともに、同店の看板商品である刺身づくりに、店舗の喧騒も届く厨房で取り組んでいます。
学んできた建築とは別分野にチャレンジ。
思いを汲んでくれた社長の気持ちに感動。
そんな細川さんですが、〝魚屋〟に憧れていたわけでも、興味があったわけでもなかったそうです。高校は、地元の北見工業高校。建築コースで学び、同業界で就職を目指していたそうです。ところが、その希望は叶いませんでした。
「土木の求人はあったのですが、建築は、そもそも募集すらなくて。好きな分野だったので、求人さえあれば、そちらに進んでいたと思います。もっとも、今は魚の方が大好きですが」
そういって笑う細川さん、希望する道に行けないのなら、まったく別の世界にチャレンジしてみようか——。たまたま、Webサイトの就職情報で見つけた魚はん(『うおはん』の運営会社)の面接にやってきた、というのが今に至るきっかけとなりました。
「親元を離れ、自分一人の力でやってみたい。そんな思いも強くて、北見から離れた恵庭にやってきたのですが、入社を決断した理由の一つが、先代の代表(故人)との面接。私の話をじっくりと聞いてくれて、〝お母さんに、お土産でも買って行ってやれ〟と小遣いまでいただいて。熱い気持ちに触れ、感動しました」
1人で自分を育ててくれた母親の支えになりたい。少しでも恩返しがしたい。そんな思いを汲んでもらえたと感じたのだと細川さん。入社以来、仕送りを続けているそうです。
「今どき、こんないい息子はいません(笑)」
生鮮部門に誘われ、一から技術を習得。
繰り返し作業を行うなか、成長を実感。
細川さんが目にしたのは、生鮮スーパーの従業員募集。品出し、レジといった仕事の採用案内でした。
「入社後は、食品担当の主任として、売場づくりから仕入れまでを担当していました。その時は、魚の部門をやりたいという気持ちも、正直、関心もなかったんです」
5年ほど経ったある日、面接をしてくれた代表から鮮魚部門に誘われたことが、現在の業務に就く経緯です。突然、知識も経験もない細川さんに、白羽の矢が立ったのでした。
「最初は、抵抗もありました。魚のことなど、何もわかりませんし、包丁もほとんど握ったことがなくて。側から見るだけでも、自分にできるとは思えませんでしたからね」
ゴミの片づけ、洗いものといった補助作業からスタートし、対面コーナーで魚をおろすといった業務を経て、刺身専属となりました。
「おろし方の基本を覚え、何十回、何百回と繰り返すなかで技術が身についていきました。特にこの5年ほどで、技術も人としても成長できたと実感しています。先代は魚だけでなく、人の目利きも抜群だったという証拠です」
そんな話をしては、周囲に笑いを振りまく細川さん。根っからの負けず嫌いで、うまくいかないほど燃えるという性格も、技術習得を後押ししているようです。
包丁が骨に当たる音、振動が快感に。
どれだけさばいても変わらない楽しさ。
『うおはん』では毎朝、仕入れの目利きが札幌市中央卸売市場で魚を調達してきます。午前8時過ぎにその魚が届くと、刺身コーナーはフル稼働。9:30(月・水・木)、9:00(金・土・日)の開店時間に向けて、作業に集中。細川さんがおろした魚を、上司が皮を引き(剥ぎ)、パック担当者がトレーに乗せて店頭に出すという流れを繰り返し、商品棚を埋めていきます。
「おおむね午前中は、売れ具合を見ながら追加で刺身をつくっていくという作業の繰り返し。店のInstagramに投稿する特売品にお客さんが行列をつくることもあり、たとえばセールのマグロをどんどんさばいていきます」
鮮魚部門で10年。先輩の指導を受けつつ研究を重ね、魚をおろす技術には絶対の自信を持つに至ったという細川さん。どれだけやっても楽しいと、飄々(ひょうひょう)と話しつつ、いきいきと輝く目が印象的です。
「きれいに、納得のいく出来でおろせた時、やりがいを感じます。また、包丁が骨に当たって立てるパキパキという音が心地いいんです。手に伝わる微かな振動も快感。音+感触フェチかもしれませんね」
当初は包丁で手を切ったり、魚の棘が刺さり、その毒で包丁が握れないほどの痛みを感じることもあったそうです。最近は免疫ができ、ほとんど平気なのだとか。プロの領域です。
調理法の異なる三種のホッキをセットに。
オリジナルの盛り合わせを日々考案中。
苫小牧の漁港からも水産物を仕入れている『うおはん』。特産のホッキ貝のおいしさを存分に知ってほしいという思いから、細川さんは独自に考案した盛り合わせをつくりました。
「生ホッキ、ボイルホッキ、炙りホッキをセットにした三種の盛り合わせです。ネーミングセンス抜群の部長に付けていただいた商品名は『ホッキ貝120%』(笑)。好みの食べ方を見つけてもらいたいという思いがありました」
この商品は、細川さんの狙い通り大ヒットに。包丁を握り始めた当初は、触らせてもらえなかったというお刺身の盛り合わせ。任せてもらえるようになった時から、そして今も、オリジナリティがあり、見た目もよく、的確な価格で多くのお客さんに食べてもらえる盛り合わせづくりに取り組んでいるのだと話します。
「仕事ができるようになれば、ある程度、思い通りにやらせてもらえる環境があることが『うおはん』の特徴。失敗するかもしれない。でも、やってみなければわからない、と考える風土があります。私もいつも、アイデアを考えています」
店内では、お刺身に添える大葉の食材も販売しており、すぐに目にできることも発想にプラスになると細川さん。朝8時、仕入れた魚が入ってくる前が、盛り合わせに知恵を絞る時間。その姿はもう、〝魚屋さん〟です。
シゴトのフカボリ
水産物加工・販売の一日
6:30
出勤、盛り合わせづくり
7:45
休憩・朝食(主にパン)
8:00
刺身づくり、商品陳列
9:30
開店(金・土・日は9:00)、刺身づくり・補充
11:30
昼休憩・昼食
12:30
刺身づくり、商品陳列、冷凍商品の補充
14:00
冷凍商品の補充
15:30
休憩
15:45
翌日の仕込みなど
16:30
清掃、片付け
18:30
閉店、帰宅

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

刺身包丁
包丁は会社が支給してくれますが、自分の好みの一品を選ぶことができます。当然ですが、仕事に欠かせない道具であり、また、刺身や盛り合わせの品質を左右する要、いわば命のような存在です。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

魚には興味のなかった自分が、鮮魚担当になり、技術を磨いて10年。10年たっても、とにかく魚をおろすことが楽しくて仕方ありません。やっても、やっても飽きない(笑)。そんな仕事に出会えたのも、未知の世界にチャレンジしたお陰だと思っています。

株式会社魚はん

1985年に創業し、恵庭市に生鮮スーパーを開業。鮮魚を中心に販売をスタートし、現在は1990年に完成した店舗で青果・精肉、加工食品等も扱っています。

住所
北海道恵庭市住吉町1丁目5番1号
TEL
0123-33-7000
URL
https://uohan.ne.jp

お仕事データ

身近な「食」に不可欠な仕事。
スーパーマーケット店員
スーパーマーケット店員とは
食材のカットや品出しなど、
幅広い業務で食生活を支える。

私たちの「食」や「暮らし」を支えるスーパーマーケットで働くのがスーパーマケット店員です。仕事内容は部門によって異なり、レジ部門では主にレジ打ちや接客、精算業務、水産・鮮魚部門では魚の下処理やパック詰め、精肉部門では肉のスライスや陳列、青果部門では野菜のカットなどを担当。他にも惣菜部門で弁当や揚げ物を作ったり、グロサリー(調味料やお菓子など比較的賞味期限が長いもの)部門や日配(牛乳や豆腐など比較的賞味期限が短いもの)部門などで品出しや売場のレイアウトを行うなど、幅広い仕事があります。店長をはじめとする役職者の業務は、パート・アルバイトスタッフのシフト作成や商品の発注、売上・予算の管理といったマネジメントがメインです。

スーパーマーケット店員に向いてる人って?
人との温かなふれ合い好きで、
流行に敏感なタイプ。

スーパーマーケット店員はお客様に商品の場所を尋ねられたり、魚を三枚におろすようお願いされたり、接客が多い仕事です。そのため、人と接することが好きで、温かい対応に自信があるタイプには適性があります。また、テレビや雑誌に取り上げられた商品が爆発的に売れることもあるため、流行に敏感なことは売上アップにつながるはずです。自らが思い描いた企画にチャレンジしたり、斬新な売場を手がけたり、アイデアを形にしたい人にも向いているでしょう。

スーパーマーケット店員になるためには

スーパーマーケット店員になるために必要な資格はありません。一般的には、高校や専門学校、短大、大学卒業後にスーパーマーケットの運営企業に就職するケースが多いようです。また、アルバイトスタッフから正社員登用されることも少なくありません。未経験でも意欲を重視する職場が多いことから、知識やスキルを育む入社後の研修は手厚く整っている企業がほとんどです。

ワンポイントアドバイス
スーパーマーケット業界では、
女性の活躍にますます期待が!

スーパーマーケット業界は、昔から女性が数多く活躍する「女性型企業」といわれています。正社員登用も増加傾向にあるとされ、結婚・出産といったライフイベントを経ても働き続けられるよう産休・育休制度や復帰後の時短勤務などの労働環境も整っている職場が多いようです。また、店長やチーフを中心とする管理職に登用されるケースも増えています。今後、ますます女性の活躍が期待される業界です。

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