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販売員_國安 夏々美さん
インタビュー公開日:2025.09.09

創業146年の歴史を持つ函館・五島軒で、
オリジナル商品のショップ運営を担う。
函館で西洋料理店を開業して146年。そもそもは、1879(明治12)年、初代若山惣太郎氏が、ハリストス正教会でロシア料理を学んだ五島(ごしま)英吉氏とともに開いたロシア料理とパン・ケーキの店に始まります。これが、現在カレーで知られる函館『五島軒』の原点で、帝国ホテルで修行した二代目若山徳次郎氏が完成させたカレーのレシピも今日まで受け継がれています。函館末広町にある本館は1934(昭和9)年の函館大火の翌年に建てられたものです。
「こうした沿革は、函館の歴史の一つで、幕末から続く日本の大きな転換期の物語。そのまちで、歴史を語り継ぐチャンスがあると感じたことが、五島軒に入社した一番の理由でした」
歴史、という言葉が口からこぼれた途端、大きな瞳がキラキラと輝き出したのは國安夏々美さん。五島軒本店にある、オリジナル商品のショップ「Ashibino」で、接客から商品管理・発注、店づくりまでを幅広く担っています。
「ただ、最初は苦手意識の方が強かったんです。見知らぬ方と話すのは、あまり得意ではなかったので。でも、とにかく前向きに取り組むうちに慣れ、今は積極的にコンタクトできるようになっています」
迷ったら、とりあえず動き、前へ進む。それが自分のモットーと、晴れやかな笑顔です。
大好きな函館の歴史を伝えていきたい。
苦手意識の接客を乗り越える決心で。
出身は函館。札幌の短大に進学しますが、最初から地元での就職を考えていたという國安さん。商社から情報系の会社まで、様々な地元企業に目を向けます。当初、考えていたのは事務系の仕事。ただし、オフィスワークがしたい、ということではなかったそうです。
「営業とか接客とか、お客様と接する仕事はできれば絶対にやりたくないと思っていて、それなら事務職かなと。でも、五島軒の求人情報を見つけた時、その考えを変える決心をしたんです」
地元の函館が好きなことに加えて、歴史を知ることが大好きという國安さん。小さい頃から、函館の歴史などを人に伝える仕事がしてみたいと漠然と考えていました。とはいえ、専門的な学問が必要なことから、諦めていたのだそうです。
「それが小さな頃から知っている、まさに歴史のある五島軒なら、諦めていた『歴史にまつわる仕事』にも携われるチャンスがあるかもしれない。接客は本当に嫌で(笑)、抵抗がありましたが、この機会を逃したくないと思い応募しました」
今は、接客は嫌いではなく、むしろ楽しみながら取り組んでいる、と照れくさそうに『弁解』します。店頭でのイキイキとした表情からも、その様子が確かにうかがえます。
お客様の様子を見ながら会話して、
求めているものを探り、提案する。
入社後、國安さんは宴会場、レストラン、フロントでそれぞれ補助業務を経験しています。これには、本店全体の仕事の流れ、そして五島軒の業務スタイルを学ぶという意味合いがありました。その後、現在の担当であるショップを任され始め、2年目以降は専属スタッフとして勤務。カフェテラスのサポートなど必要に応じて、臨機応変に活躍しています。
「指導はきっちりしていますが、どの部門のスタッフもとてもやさしく、仕事のオンオフのメリハリが印象的でした。業務の合間には、例えばお皿の正しい持ち方など細かなところまで教えていただいて。目に見えるサービスの裏側にあるノウハウや心遣いも知ることができ、興味津々でした」
今では、会話を通してお客様の思いをくみ取り、本当に求めている商品を提案することを心がけています。
「旅行者の方か、市内にお住いの方なのかだけでも求める商品は変わります。年配の方ならハードタイプのクッキーは好まれないかな、一人暮らしの方には食べきりサイズの缶詰をお勧めしようかな、など常に考えながら接客しています」
当初、補助業務で回っていた現場では、先輩がお客様からどんな要望を受け、どう応じたかといったことを意識して見ていたと國安さんは話します。なんでも吸収し、仕事に取り入れようという姿勢。とにかく勉強熱心です。
お客様の動きを見て売り場づくりを工夫。
五島軒の歴史を語り、商品をお勧めする。
観光シーズン、お盆や年末年始など、季節ごとの繁忙期には、大量に商品を仕入れ、積み上げて販売するなど、店舗づくりにも頭を捻っている國安さん。売場のレイアウト、商品の並べ方や陳列場所、ディスプレイの色遣いなどで、売れ行きが大きく変わるのだそうです。
「新商品が出れば、目立つ場所に置いてアピールしますが、意外と売れないことも。お客様はどういう動線で店内を回り、何を見ているかを常に気にしています。お客様の行動をもとに、あえて奥に置いた結果、手に取っていただけたということも。最近、少しずつその感覚がわかってきました」
参考にするため、いろいろな店舗を見て歩き、店づくりに活かしているのだとか。
「ショップには、函館や五島軒をモデルに船山馨が書いた小説『蘆火野』の生原稿や、創業時からの洋食器・調度品を展示してあります。ロシア料理とパンの店から始まった当店の源流といえるビーフストロガノフのレトルトをお勧めしながら歴史を紹介し、『話を聞けてよかった』と言っていただけるとうれしいですね」
歴史を伝えること。やりたかったことが少しずつできていると、またキラキラした目で話す國安さん。商品にまつわる物語こそ、一番のお土産なのだと話します。
歴史がつなぐ物語を伝えていきたい。
函館を知る資料館づくりにも参加。
物語の魅力がお客様に伝わったと、國安さんが振り返るできごとがあります。それは、「GOTOGIN」というジンを販売した時のこと。長崎県五島列島にある五島つばき蒸留所が丹精こめてつくる希少なお酒です。
「五島軒や函館のお土産に混じって並ぶ、五島列島のお酒。その違和感からなかなか売れませんでした。醸造所の公式ショップでは3カ月待ちになるほど人気のお酒ですが、そのジンがここにある物語が伝わっていなかったんですね」
五島軒の初代調理長である五島英吉氏は、五島列島の出身。このお酒は、その縁をきっかけに蒸留所とつながりが生まれ、はるばる函館まで商品が届けられています。そんな背景をていねいにお客様に伝えた結果、購入してもらうことができたのだそうです。まさに歴史がつなぐ物語。國安さんの面目躍如です。
「五島英吉は旧幕府軍として箱館戦争を戦っています。そのルーツとともに函館の歴史を伝えるギャラリーを計画中です。当社に眠る函館ゆかりの絵画や彫刻なども活用しながら、函館の歴史を知る資料館のような場を目指し、開設メンバーとして関わっています」
やりたかったことに、また一歩、近づいた國安さん。最後にはにっこりと笑いながら、こう付け加えました。
「本場のロシア人も認めるビーフストロガノフのレトルトは、自慢の一品です。ぜひ味わってみてください!」
シゴトのフカボリ
販売員の一日
10:00
出勤、館内のオープン準備
10:30
ショップの開店準備
11:00
開店。接客、商品の整理など
12:30
自社工場への商品の発注
13:00
昼休憩
14:00
接客、商品の整理など
17:00
閉店。店舗の閉め作業
17:30
退勤

シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私は、迷ったり悩んだりした時は、まずはやってみることをモットーにしています。いい意味で考え過ぎずに行動すれば、きっと道は開けてくるというのが経験に基づく実感。苦手意識のあった接客も、今は楽しいです。

株式会社 五島軒

1879(明治12)年、ロシア料理、パン・ケーキの店として創業。1886(明治19)に西洋料理店に転換して現在の洋食店の礎を築く。函館の歴史とともに歩んできた老舗レストランです。

住所
北海道函館市末広町4-5
TEL
0138-23-1106
URL
https://gotoken1879.jp

お仕事データ

お客様の笑顔を生み出す接客のプロ!
販売スタッフ
販売スタッフとは
お客様のニーズを汲み取り、
最適な商品選びをサポートする仕事。

販売スタッフは、アパレルショップや雑貨店、化粧品店など様々な専門店で、お客様に商品を販売する仕事です。単に商品を売るだけでなく、お客様一人ひとりの好みやライフスタイルを理解し、最適な商品をおすすめすることが主な役割。接客や会計業務に加えて、商品の陳列やディスプレイ、在庫管理、店内清掃なども重要な業務です。お客様との会話を通じて信頼関係を築き、「また来たい」と思ってもらえる店舗づくりに貢献します。トレンドに敏感で、商品知識が豊富な販売スタッフは、お客様にとって頼れる存在となり、店舗の売上向上にも大きく寄与しています。

販売スタッフに向いてる人って?
人と話すことが好きで、
流行やおしゃれに敏感なタイプ。

販売スタッフとして活躍する人の多くは、「人とのコミュニケーションが大好き」という特徴があります。お客様の要望を的確に聞き取り、適切な提案をするためには、優れたコミュニケーション能力が不可欠です。また、ファッションや美容、インテリアなど、扱う商品分野への深い関心と知識も重要な要素。常に最新のトレンドをキャッチし、お客様に魅力的な提案ができる人が重宝されます。さらに、長時間の立ち仕事にも耐えられる体力と、忙しい時間帯でも笑顔を保てる精神力も求められるでしょう。

販売スタッフになるためには

販売スタッフの仕事は特別な資格を必要としないため、未経験からでも始めやすい職種です。高校卒業後にアルバイトやパートタイマーとして働き始め、経験を積んで正社員になるケースが一般的。服飾系やデザイン系の専門学校、短大、大学を卒業してから就職する人も多く見られます。入社後は先輩スタッフから接客マナーや商品知識を学び、徐々にスキルを向上させていきます。販売や接客に関する資格として「販売士」や「接客サービスマナー検定」などもあり、キャリアアップを目指す際に役立つでしょう。

ワンポイントアドバイス
お客様の潜在的なニーズを
見抜く観察力を磨こう!

優秀な販売スタッフは、お客様が言葉にしない潜在的なニーズを読み取る力に長けています。「プレゼント用ですか?」「普段使いでしょうか?」といった適切な質問を投げかけることで、お客様の真の要望を引き出し、満足度の高い提案につなげることができます。また、季節やイベントに合わせたコーディネート提案や、関連商品の紹介なども売上アップのポイント。お客様との何気ない会話から得られる情報を活かし、一人ひとりに寄り添った接客を心がけることで、リピーターの獲得や口コミによる新規顧客の開拓にも貢献できるのです。

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