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鑓水 雄介さん
インタビュー公開日:2018.04.26

写真がポップで開かれた世界へと
変わっていくことを感じました。
広告や雑誌、Webサイトにインタビュー記事など、さまざまな媒体の写真撮影を手がけている鑓水(やりみず)雄介さん。現在は札幌を中心に商業系フォトグラファーとして活躍しています。
「父が写真館で働いているので、小さなころから写真は身近な存在。けれど、特別に好きという感情を抱いていたわけではなかったんです」
そんな鑓水さんが写真の世界にほのかな興味を向けたのは高校時代。テレビでファッション誌の女性モデルがカメラを構える姿を見て、世間のイメージが変わりつつあると感じたそうです。
「それまでカメラ好きというと、被写体はマニアックな印象でした。でも、モデルさんが撮った写真は実にカラフルでポップ。今後は開かれた世界になっていきそうだと期待が膨らんだんです」
折しも、当時はカメラがフィルムからデジタルへと移行する境目。鑓水さんは写真技術を学べる専門学校へ進みました。
自分は何が好きなのか…?
その答えはやっぱり「カメラ」。
「専門学校時代はマジメな学生ではなかったです」。そう苦笑する鑓水さん。写真の基礎知識やライティングの技術はある程度学びましたが、実力が飛躍的に伸びたかというと疑問符が浮かぶと振り返ります。
「専門学校卒業後は東京の写真スタジオでアシスタントとして働きました。が、3カ月も過ぎたころに北海道に戻ってきちゃって…。仕事がイヤだったわけではなく、人の多さや環境のギャップに参ってしまったんです」
鑓水さんは地元の苫小牧にUターンすると、アルバイトや契約社員の仕事を転々としました。とはいえ、どの職場もそう長くは続かなかったそうです。
「仕事には本気で取り組みましたが、一生続けられるかといわれると答えはノー。自分は何が一番好きなのか自問自答した結果、カメラという結論にたどり着きました」
25歳のころ、鑓水さんはアルバイトをしながら、お父さんや先輩カメラマンの紹介を受けて徐々に撮影の仕事を獲得するようになりました。
コミュニティを広げることで、
お客さんも増えた気がします。
鑓水さんが転機を迎えたのは27歳。北海道のフォトグラファーは移動距離が長いことからクルマが必須で、ガソリン代もかかります。さらには新しい機材にもお金が必要。資金が底をついたら日雇いのバイトに出かけることも多かったそうです。
「だけど、お金がないのはなぜ?写真の仕事だけで暮らせないのはどうして?と考えるようになり、苦しくてもバイトをやらずに撮影一本に絞るようにしたんです」
それまでは自ら関わるコミュニティを狭めていましたが、接点のなかった人と会い、話すよう心がけた鑓水さん。仕事の幅がじわじわと広がり、今では札幌だけでなく本州からの撮影の依頼も多くなったといいます。
「デジタルカメラはデータのやり取りがスムーズ。フィルムの時代と比べて仕事の場所を選ばなくなったというメリットが生まれたと思います」
被写体のことを知り、
壁を取り払うのが大切な仕事!
良い写真を撮れるかどうかが、フォトグラファーの腕の見せどころ?当然と思える質問をぶつけたところ、鑓水さんはしばらく悩んでこう答えました。
「一定レベル以上の写真が撮れる技術は必要。でも、僕は空気づくりが何より大切だと思います。結婚式でも家族写真でも企業パンフレットでも、被写体の笑顔やリラックスした表情を引き出せるのは身内や仲間の方が得意。フォトグラファーは部外者だからこそ、相手と話して、相手を好きになって、壁を取り払っていくことも仕事なんです」
クライアントやデザイナーから提示されるカットを上手く撮るのは大前提。鑓水さんは時間が許す限り、角度や光の入り具合、背景を変えて何パターンか撮影しています。
「自分のエッセンスを取り入れたカットを提案し、それが採用された時は本当にうれしいです。こう撮ったほうが良いのではとアドバイスするには勉強あるのみ!」
現場の動き方を学べるのは、
現場だけなんです。
フォトグラファーは華やかな職業に思われがち。けれど、鑓水さんのように商業写真に携わる場合はあくまで裏方。地味な作業もたくさんあると笑います。
「僕らの仕事は撮影が上手く行けば終わり…ではないんです。写真はRAW(ロウ)という『生』の情報を取り込むデータで撮影しているので、それを現像ソフトで処理しなければなりません。多くの写真からより良いものをチョイスするのもフォトグラファーの役割。意外とPCの前に座っている時間が長いんです」
今や撮影技術は本やネットで学べるもの。けれど、結婚式や取材の際にフォトグラファーがどう動くのかは現場でしか経験を積めないと言葉を継ぎます。
「何よりお客さんの満足度を高めるためには、場を盛り上げるコミュニケーション能力が不可欠。自分もいろんな話に対応できるようにニュースをよく見ています。若いころは難しいと思うかもしれないけれど、写真が好きという気持ちがあれば大丈夫!自分もそうでしたからね」
シゴトのフカボリ
フォトグラファーの一日
9:00
機材をクルマに積み込み/出発
10:00
撮影現場に到着
10:10
ロケハン/撮影
12:30
昼食
13:30
打ち合わせ
14:00
撮影
16:00
オフィスへ
16:30
写真のチョイス/現像
19:00
作業終了

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

フォトグラファーといえばコレ!
普段の撮影で使っているのはニコンの機材。もし時間が余った場合はペンタックスのフィルムカメラで自分の作品用に撮影することも。ブロアー(レンズのゴミを吹き飛ばす)やレフ板(光を反射させる)も必携です。

フォトグラファー 鑓水雄介

車やバイクの雑誌、広告、企業ホームページなど、さまざまな商業系の写真撮影を手がけるフリーランスのフォトグラファー。「RISING SUN ROCK FESTIVAL(ライジングサンロックフェスティバル)」の撮影も担当。

お仕事データ

写真を通じて被写体の魅力を表現
フォトグラファー
フォトグラファーとは
光の当て方や構図を考え、
目的に合った写真を撮影!

広告や雑誌、芸能、スポーツ、芸術展示、インターネットなど、さまざまな分野の静止画写真を撮影するのがフォトグラファー。被写体も人物や動物、料理に風景と実に多種多彩です。ムービーカメラマンが動画を撮影するのに対し、フォトグラファーは一瞬を切り取る静止画に特化しています。もちろん、ただシャッターを切れば良いというわけではなく、撮影する写真がどこで、何を目的に使われるのかを考え、光の当て方や構図を決めなければなりません。フォトグラファーは新聞社や出版社、デザイン会社に所属する他、フリーランスで活躍する人も。広告・出版系や報道系、スポーツ系、自然・動物系、ブライダル系といったように得意分野を持つケースが一般的です。

フォトグラファーに向いてる人って?
明るく元気に現場を引っぱり、
臨機応変に対応できる人。

写真が好きなこと、クライアントから求められる撮影スキルを持っていることは大前提。フォトグラファーはスタジオでもロケ(屋外)でも、多くのスタッフと一緒に撮影を進めます。とりわけモデルやタレントといった人物を撮影する際は、ベストな表情を引き出すのも大切な仕事。そのため、明るく元気にコミュニケーションがとれる人は向いています。また、撮影現場ではフォトグラファーが指示を出すことも多く、リーダーシップを持って臨機応変に対応する力も求められます。

フォトグラファーになるためには

フォトグラファーになるために必要な学歴や資格はありません。美術系の大学や短大、専門学校の写真学科などで、カメラの基本的な知識や技術を身につけ、写真スタジオでアシスタント業務からスタートするルートが一般的です。これらの学校に通うメリットは、先輩や業界関係者とのつながりを作れること。将来、フォトグラファーとして働くための大切なコネクションが生まれます。とはいえ、独学で技術を身につけ、フリーランスとして活躍する人も少なくありません。

ワンポイントアドバイス
写真は私たちにとってより身近に。
SNSを営業ツールに使うのもアリ!

広告や雑誌、ニュースなどで写真は大きな役割を持っています。今後は紙からウェブサイトへの比重が大きくなっていくと予想されますが、撮影する仕事がなくなるということは考えにくいでしょう。さらに、スマートフォンの登場によって「撮影」が身近になり、写真への関心は高まっています。SNSなどの普及により写真を多くの人に見てもらう機会も増えていることから、営業ツールとして上手に使いこなせば、自分を売り込むチャンスも広がるはずです。一枚の写真で多くを語る技術がますます重要になっています。