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阿波 姫加さん
インタビュー公開日:2017.08.31

私の音楽の原点は吹奏楽。
兄の影響で、裏方の世界へ。
中学・高校時代、5歳年上の兄の影響で吹奏楽部に入ったのが音楽への入口だったという阿波さん。
「漠然と音楽を職業にしたいという憧れはありましたが、演奏者の道を選ぶほどの自信はありませんでした」
そのころ、兄が大学を中退してまで音楽の専門学校に方向転換。音楽の裏方の世界に目を向けるきっかけになりましたが、その中でもなぜ音響を担当するPAエンジニアに?
「進路を考えていた時、初めてライブハウスでバンド演奏を聴きました。そこでPAエンジニアの働いている姿や音がカッコイイ!と思ったんです」
そして、PAエンジニアコースがある専門学校に進学。そこではプロとして活躍する講師から学び、現場にも積極的に出て経験を積みました。
「音」を最適な状態で届ける仕事。
カッコよくて泣けることも!
PAエンジニアの仕事は、簡単に言うと、人に「音」を届けるために加工したり調整したりすること。テレビやコンサート会場などで、たくさんのつまみがついたミキサー卓を見ることがありますが、そこで仕事をしているのがPAエンジニアです。
「私たちは『音を作る』といいますが、通常、楽器の音や人間の声などは、そのままだと大きさや音質もバラつきがあり、会場によっても響き方が変わります。それが聴きやすく最適な状態で客席や視聴者に届くように、マイクを設置して音を拾い、細かく調整しています」
阿波さんの会社では、大小さまざまなイベントやコンサート、テレビ番組の現場を担当。
「音響の技術は人や会社によって少しずつ違います。今の会社は、出す音も働いている姿もカッコいいです。先輩が作る音がカッコよくて、涙が出ることもあるほどです(笑)」
大きなトラックだって運転します!
温度差の激しい冬には苦労も…。
トラックに機材を積んで運ぶのも大事な仕事です。
「現場からの帰り道は先輩も疲れているので、自分が運転できるように中型自動車の免許を取りました」と先輩への気遣いがにじむ阿波さん。
臨機応変に対応しなければならない現場では、時には失敗することも。
「現場での怪我や、忘れ物など数多くあります。新人は先輩が使う道具も用意しますが、事前の準備がしっかりできているかによって、現場でのスピードも変わってくるので気が抜けませんね」
寒い北海道ならではの苦労もあります。冬の寒い時期は搬入した機材が結露し、そのまま操作すると水滴がついて故障してしまうので、乾燥させるのに2~3時間もかかります。気温や湿度によっても音が変わるので、細かく神経を使って音作りをしています。
大きな仕事にも積極的に挑戦。
練習を重ねてドキドキの本番へ!
新しい仕事への挑戦にも積極的な阿波さん。自ら志願して、有名なアーティストのコンサートの仕事を経験しました。
さらに、PAエンジニアの仕事の中でも数年経験を積まないとできない、演奏者に聴かせる音を作る「モニター」を担当することに。
「演奏者ごとに、コンサートの最中に聴きたい音の大きさや質が違うため、直接コミュニケーションを取り、求める音を作らなければなりません。本番で失敗してはならないと思い、事前に何度も先輩に教わりながら練習を重ねて臨みました」
ベストを尽くして挑んだ本番では、これまでで一番の達成感を味わいました。
「お腹が痛くなるほどドキドキし、自分の技術も『まだまだだな』と思うところもありましたが、精いっぱいやりきることができました」
音響は、「人」を相手にする仕事。
先輩の支えで楽しく働けています!
エンジニアというからには機械を相手にする仕事という印象がありましたが、話を聞いていると、人とのつながりを大切にしている様子が覗えます。
「最終的に音を聴くのは人。そして、演奏者や仕事の仲間、照明や映像など他の分野のスタッフともコミュニケーションが欠かせません。PAエンジニアは人を相手にする仕事なのです」
その人柄と頑張りで、上司や先輩からも愛されている阿波さん。
「本当に皆さんによくしていただいているし、仕事も楽しいのでやめたいと思うことは全くありません。いつも、尊敬する上司の名刺をお守りがわりに名刺入れに入れています。
これからもどんどんスキルアップして、全国ツアーなどの仕事にも挑戦していきたいです!」
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

学生の時から、「好きを仕事に、好きを与える」がモットーです。1回きりの人生なので、好きなことをしたい。そして、人との出会いを大切にし、出会えた人と好きなことを分かち合えたらいいなと思っています。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
工具箱
いつも現場に持っていく、自分専用の工具箱。ヘッドホンやテーブルタップのほか、もしもの時のためにドライバーやペンチ、はんだごても入っています。これでも中身を減らしたほうですが、重さは5kgくらいあります。

株式会社フォルクラング

音響、照明、映像制作を行う会社です。各種コンサート・イベントやテレビ放送の音響中継も行います。北海道発信で全国ツアーも担当しています。

住所
北海道札幌市北区北6条西1丁目3-8 38山京ビル9階
TEL
011-708-7722
URL
http://voll-klang.co.jp

お仕事データ

人から人へ、音を伝える。
音響エンジニア
音響エンジニアとは
舞台やコンサート会場で、
「音」全般を技術的にサポート。

主な活躍の場はミュージシャンのコンサートや演劇の舞台、音楽や映画の制作現場。
監督や出演者と相談しながら、使用するマイクの種類や設置場所を決めたり、音のバランスを調整したり、「音」全般に関する技術的なサポートを行います。機材の搬入や設営、撤去、さらにメンテナンスも仕事のうちです。
現場によっては、「PA」「サウンドエンジニア」「ミキサー」などとも呼ばれます。

音響エンジニアに向いてる人って?
音感はもちろん体力も必要。

音感や耳の良さに加え、ベストな音を生み出すための技術やセンスも必要。また、電気楽器やマイク、アンプなどの配線を行うので電気的な知識に長けていると有利です。重い機材を運ばなければならないので、体力に自信がある人も向いています。

音響エンジニアになるためには

資格や学歴が問われることは多くありませんが、電気・電子系、音響系の学科がある大学や専門学校などを卒業し、音響関係の会社やレコーディングスタジオなどに就職するのが一般的なルート。音響関係の資格としては、国家技能検定の「舞台機構調整技能士検定」や「舞台音響調整作業技能検定」があり、公共施設などで働く場合には、この資格取得が条件となることもあります。また、重い機材を運ぶため運転免許の取得は必須です。

ワンポイントアドバイス
フリーランスで大きく稼ぐ人も。

音響エンジニアの収入は所属する会社や経験によって異なります。初めはアルバイトとして働くケースが多いですが、一人前になれば収入は上がっていくようです。アーティストやクライアントからの信頼を獲得することでフリーランスとして活躍し、大きなギャラを稼ぐことも夢ではありません。