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山谷 正人さん
インタビュー公開日:2017.11.15

「カッコイイ!」
父の後ろ姿を見てまっすぐこの道へ。
一般的な大工さんのイメージとは少し違う、ジーンズ姿のカジュアルな服装で登場してくれたのは、大工さんの親方『棟梁(とうりょう)』を務める山谷正人さん。
お父さんも同職である山谷さんがこの道に進んだのは自然な流れでした。
「単純に、カッコイイなって思ってました。高いところで作業をする姿が特に」
そんなお父さんは、山谷さんが大工になることに初めは反対していたとか。
「大変だぞ、やめとけって言われましたね。でもいざ決めてからは、ノミやノコなど、手道具を色々とプレゼントしてくれたんです。自分の現場をこっそり見に来てたこともあるらしいです(笑)」
使う道具はすべて自分でそろえるのがこの業界の通例ですが、山谷さんの使っている道具の多くは、お父さんから譲ってもらったものだそう。
言葉の意味すらわからない、
ひたすら経験を積む下積み時代。
大工の仕事は小方(こかた)から。現場での責任者である親方(棟梁)についてまわり、指示を受けて作業をするのが、小方の役割です。
「もちろん最初は大工仕事など、やらせてもらえませんでした。材料運びや掃除がメインでした」
一年目は言葉の意味を覚えるのも大変だったとのこと。
「例えば『しゃくる』は大工用語では溝をつくるということ。材料もそれぞれ独特な名称がついていて、○○持ってきて! と言われてもそれがわからない…そんなことばかりでした」
やらせてもらえることが少しずつ増え、三年目くらいが誰しも調子に乗る時だと山谷さんは笑います。できると思っていても、いざ現場に一人で入ると何もできない。そうやって挫折も経験しながら、一人前になっていきます。
成長を感じた瞬間は、
ベテラン大工さんと対等に話せた時。
あらかじめ工場で加工された部材が現場に届くプレカット製法とは違い、武部建設では現場での仕事に徹底的にこだわっています。例えば墨付け(木材を切るための印をつける)や木材のカットも、大工が現場で取り組んでいます。時には自社で所有する山林から、柱に使う木を切ってくることも。こうした経験を積むことで職人としての技術は向上しますが、失敗も経験します。
墨付けしていざ建ててみるとハリが短かった…なんてこともあったと苦笑いする山谷さん。
「とにかくいっぱい失敗しました。でもそういう経験の蓄積が大事。同じ失敗は二度としないですから」
初めて棟梁を任されたのは、大工仕事に就いてから五年目、23歳のころ。
「少しずつ、ベテラン大工さんと同じレベルで話ができることが増えていきました。向こうから聞いてくれた時には、認めてもらえた気がしてうれしかったですね」
冬の作業は指先がしばれる!?
自分らしく働けるのがこの仕事の醍醐味。
北海道の住宅は寒さに強いのが特徴。断熱材の量が多いだけではなく、気密性を高めるための部材処理の仕方などにも、現場での技術が求められます。また、冬の作業の厳しさは北海道ならでは。
「冬も作業内容は変わりありません。あまり分厚い手袋だと細かい作業ができないので、少し暖かい軍手をする程度。暖房で暖まりながら作業をしますが、指がもげそうになったこともありましたね(笑)」
下積み時代といい、大変なイメージが大きいこの仕事ですが、どんなところが魅力?
「建物に対して、設計・工期の範囲内で自分らしく作業ができることですね。思い通りに建設が進むと、本当に楽しいなって思います」
木目の使い方など細かい部分に大工それぞれの施工センスが現れ、関係者の間では「山谷くんっぽいね」と言われるような部分もあるのだとか。
向き不向きはない。
楽しむことが大切!
「例え大工仕事が人より抜きん出ていなくても、スタッフを使うのが上手だったり、部下に親しまれる人柄があったりすれば、親方(棟梁)になれます。必要なのはやる気だけ。どんな人が向いているとかはないですね」
かつては、見て覚え、失敗して経験を積むのが当たり前の世界だった大工のお仕事。時代は変わり、最近では新人の育成も、しっかり指導をする方向に変わってきているといいます。
まるで工作を楽しむ少年のように、木材を刻み、手際よく部材をつなぎ合わせる山谷さん。
「楽しいですか?」と聞いてみると、「楽しいです!」と即答してくれました。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

深く考えず、楽しく仕事をすることが一番です! 失敗してもすぐ切り替える! とにかく楽しむことです。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
「組ノミ 10本」
木材を削ったり穴をあけたりするのに使うノミ。大工はみんなそれぞれ自分の手道具を自分で選んで買ったり、もらったりして、使っています。この中には父からプレゼントされたものもあります。

武部建設株式会社

木のぬくもりを大切にした、注文住宅や古民家再生を手掛ける。素材を生かす墨付け・手刻みにこだわった住宅は、高気密高断熱にも定評あり。「大工ネットワーク北海道」を設立するなど、大工さんの育成にも力を入れている。

住所
北海道岩見沢市5条東18丁目31
TEL
0126-22-2202
URL
http://www.tkb2000.co.jp/

お仕事データ

職人技で木造建築物を!
大工
大工とは
美しさや機能を持ち合わせた
建築物をつくるのに欠かせない仕事。

木造を中心とする建築物の新築やリフォーム、修理などを手がけるのが大工の仕事。一般にノコギリやノミ、カンナなどを使い、建物の骨組みとなる柱や梁、壁、床などの下地を作り上げていきます。私たちがイメージするこうした木造住宅の建築に携わるのが「家屋大工」と呼ばれる職種。大工には他にも釘を使用しない木組み工法という手法を使って木造の寺社仏閣を手がける「宮大工」、建物の内装部分を仕上げる「造作大工」、コンクリート建造物の土台となる基礎を担う「型枠大工」など、多くの種類があります。いずれも、美しさや機能を持ち合わせた精度の高い建築物・構造物を建てるには欠かせない仕事です。

大工に向いてる人って?
手先が器用で精密な作業ができ、
チームプレーを大切にできる人。

大工はノコギリやノミ、カンナといった道具を使い、設計図にもとづいて木を加工するため、手先が器用で精密な作業ができる人が向いているでしょう。建築現場では予期せぬ問題に対応することもあるため、柔軟な思考と問題解決力を持つことも重要です。また、木材の運搬や高所作業もあるため、ある程度の体力があることも望まれます。大工は建築士、左官職人、内装業者、電気・水道・ガス工事業者など数多くの職業と連携することから、チームプレーが得意なことも素養の一つです。

大工になるためには

大工になるために必要な資格や学歴は特にありません。ただし、かつては中学校を卒業してすぐに大工の下積みとして就職するケースも少なくありませんでしたが、最近は大学や専門学校で木造建築や大工の基礎知識を学んだ新人を歓迎する傾向にあるようです。そのため、建築関連のコースを設置する専門学校や短大、大学に進み、工務店などに就職するのが一般的なルートとなりつつあります。

ワンポイントアドバイス
木造建築物は持続可能な選択肢。
最新技術を使った新しい大工の形も。

建築産業は常に需要があり、大工も人々の住宅や社会インフラに必要とされる安定した職業です。木材を使って建物や家具を作り出すクリエイティブな職業であり、木造建築は持続可能な選択肢として環境への配慮が求められることが多くなっています。環境に対する意識を持ちながら仕事ができるのも大工の魅力です。近年はCADや3Dプリンターなどのデジタルツールが使われることもあり、最新技術を駆使して新しい大工の形にチャレンジすることもできるでしょう。