知本 あかりさん
インタビュー公開日:2023.10.20

放射線の特性を活かした検査を行える
専門家として健診センターで活躍中。
左右のバーを握り、胸を平らな板に軽く付けます。「では、息を吸って……止めてください。はい、お疲れさまでした」
健康診断で行われる胸部レントゲン検査。誰もが受診する、一般的な検査の一つです。
「放射線の一つであるX線を用いてガンの発生などを調べるレントゲン検査は、医師以外では診療放射線技師という国家資格を持った専門家でなければ行うことができないんです」
知本あかりさんは、働き世代の健康診断や健康に関する市民向けの情報発信を行っているハスカッププラザ苫小牧市保健センターで、この診療放射線技師として働き始めて5年。若手ながら、日々の健診業務を通してスキルを高め、今では中堅クラスの技術を持つ技師です。
「放射線と聞くと、危険なものと思われる方もいるかもしれませんが、診療放射線技師は、安全性を確保しつつ、物質を透過するという放射線の特性を利用した検査を行うための知識をしっかり身につけています。安心して受診してください!」
そういって笑顔を見せる知本さん。「技師」という言葉からイメージした堅そうな雰囲気はまったくなく、人懐っこく話しかけてくれる姿が印象的です。
レントゲン、CT、バリウム検査等を行い、
撮影した画像の診断を行う読影も担当。
診療放射線技師は、医師の指示のもとで各種放射線検査を担います。胸部レントゲン検査、CT検査、胃のバリウム検査、乳がんを調べるマンモグラフィー検査、MRI検査なども業務範囲です。
「医療の現場では、特定の臓器・組織に集まる放射性医薬品を使った核医学(RI)検査、がんの有無や転移などを調べるPET検査、臓器の動きを見るSPECT(シンチカメラ)検査なども診療放射線技師の仕事となっています」
一方、健康診断を毎日行っている苫小牧市保健センターで知本さんは、ある日は胃のバリウム検査、別の日はマンモグラフィ検査と、シフトによって各検査を行いながら、診療放射線技師としての業務をフルにこなす毎日です。
「X線機器などを使って撮影した写真から病気の有無や程度を診断する読影(どくえい)の補助も、診療放射線技師の仕事です。医師とともに読影を行い、診断の助言などを行います」
正確な読影を行うためには、高度な撮影技術が求められます。また、毎年健診を受けている人なら、前回からの変化などを捉えて医師に伝えるのも大切な仕事なのだと知本さん。「病気の早期発見がなによりも大切なことですし、その最前線を担っているという責任とやりがいを感じます」と話しています。
チアリーディングの練習での転落時に、
検査してくれた診療放射線技師に関心。
知本さんが、診療放射線技師という仕事を知ったきっかけは高校時代の3年間、打ち込んだというチアリーディングにありました。
「私はスタンツ(組体操)で一番上のトップを担当していましたが、ピラミッドがうまくいかず、転落してしまうことも。そんな時、整形外科で骨や頭部を検査してくれたのが診療放射線技師さんだったんです」
テレビドラマの影響もあり、医療分野の仕事に関心が向くなか、病院でなじみのあった診療放射線技師に関心を抱いたのだそうです。
「当時、診療放射線技師の多くは男性でした。放射線被曝の影響への懸念もあったようですが、現在は、被曝量なども厳密に管理されているので、まったく心配はなかったですね」
女性の患者さんなら、女性の診療放射線技師がいた方がより安心してもらえるのではないかと考えたことも、この道へと進んだ理由の一つなのだと知本さん。検診車(バス)による出張健診も担当していますが、ある会場で高齢の女性に「今日は女性の技師さんでうれしい。バリウムが辛くなかったよ」という言葉をかけてもらえた時は、この仕事に就いてよかったと心から思ったそうです。検診車で遠方に出向く時は、「帰りにスタッフと一緒に道の駅などで地元のおいしいものを食べるのも楽しみ」と、小声で教えてくれました。
働き世代の女性の役に立ちたいと考え、
健診を専門に行うハスカッププラザへ。
診療放射線技師の活躍の場としては病院や健診センターが多いとのことですが、なかには医療機器メーカーなどで働く技師もいるのだそうです。
「そのなかで私が、健診センターであるハスカッププラザを選んだ理由も、同じ女性として、働き世代の女性の役に立ちたいという思を抱いたからです」
病院では必要に応じて放射線検査が行われますが、健診センターでは毎日、各種の検査が行われています。多くの経験を積むことができ、スキルアップのスピードも早いのではないかとも考えたと話す知本さん。土日が休みなど、働きやすい環境もポイントになったそうです。
「検診車のおばあちゃんと同じように、マンモグラフィを担当すると、『女性の技師さんでよかった、安心した』といっていただけることも多く、そんな時はうれしいですね。ただ、マンモグラフィは受診される方の個人差により撮影が難しいケースもあるので、技術を高めることが今の課題です」
マンモグラフィは身体に負担がかかりがちの検査なので、苦痛・不安を軽減できるよう、やさしい声がけを心掛けるなど、接遇も特に気をつけているのだそうです。
検査を通して病気を早期発見したい。
認定資格を取得し技術向上を目指す。
診療放射線技師は、技術者として淡々と検査を行うというイメージを抱いていたそうですが、実際の現場は想像とは異なっていました。
「診療放射線技師の仕事は、特に健診センターという場では、接客業と言っていいと思います。たとえば『今朝の雨、すごかったですよね』などと、お客さまとコミュニケーションを図りながら必要な画像を撮ります。気持ちよく検査を受けていただくための環境づくりも、私たちの仕事だと思っています」
病院は、病気が見つかってから行くところですが、健診にやって来るのは健康な人。だからこそ、ちょっとした異常に気付きやすいという面もあるそうです。放射線検査を通してしっかりと早期発見していきたいと知本さん。
「診療放射線技師には、検査分野ごとに認定資格というものがあります。マンモグラフィと胃がん検診の認定資格は取得しましたが、すべての認定資格を網羅し、技術を高めていくことが今の目標です」
女性の力になりたいという思いを強く持つ知本さん。将来的な話として、乳腺クリニックなどにも魅力を感じているそうです。「健康診断で万が一、異常が見つかったら、躊躇なく病院を受診してください!」真剣な表情に、一途さがうかがえます。
シゴトのフカボリ
診療放射線技師の一日
7:45
出勤、検査機器・装置の準備
8:00
今日の検査人数・内容などについて看護師、臨床検査技師等とミーティング
12:00
昼食・休憩
13:00
画像の読影、読影結果の入力・確認、翌日のバリウムの準備など
16:30
退勤
*午後は、マンモグラフィ検査を行うこともあります
*胆振管内を中心に、検診車による出張健診に同行することもあります。その場合、出発時間は訪問先によって異なります
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
熱ルミネセンス線量計
日々、放射線による検査を行うなかで、自分自身の被曝量を測定するツールです。1カ月に1度、回収されて被曝量の値が記録されます。健康を守るため、法令で着用が義務付けられています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私が整形外科で診療放射線技師にお世話になったころは、男性の仕事というイメージを受けましたが、女性でもまったく遜色なく取り組める仕事ですし、私は早期発見で誰かの役に立てることにやりがいを感じています!

一般財団法人ハスカッププラザ 苫小牧市保健センター

企業健診、特定健康診査、がん検診、予防接種、などのほか、運動教室、栄養相談など健康維持・増進のお手伝いをする機関です。

住所
北海道苫小牧市旭町2丁目9番7号
TEL
0144-35-0001
URL
http://toma-haskap-plaza.jp

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お仕事データ

放射線の検査や治療を!
放射線技師
放射線技師とは
放射線を使った検査のほか、
がん細胞を破壊する治療も担当。

医師の指示のもと、放射線を使った検査や治療を行うのが放射線技師。レントゲンやCT、MRIなどの機械で病気の診断に必要な画像を撮影するほか、がん細胞を破壊する「放射線治療」も担当。検査で得られた画像や放射線情報を取り扱ったり、放射線機器を安全に管理するといった業務もあります。

放射線技師に向いてる人って?
知的好奇心があり、慎重なタイプ。

生理学や解剖学といった医学知識だけでなく、画像を作るための電子工学、コンピュータースキルなど、日々進歩する医療業界ではさまざまな最新情報に対応しなければなりません。知的好奇心がおう盛でチャレンジ精神のある人が向いています。また、放射線は正しく使わなければ人体に害を及ぼす危険もあるので、慎重さも求められます。

放射線技師になるためには

「診療放射線技師」の国家試験に合格することが必須。文部科学省指定の学校、厚生労働省指定の養成所で3年学ぶことにより受験資格が得られます。診療放射線技師を養成する学校には3年制の専門学校・短大と4年制の大学・専門学校があります。

ワンポイントアドバイス
女性技師へのニーズが増加中。

ここ最近は乳がん検診やマンモグラフィ検査(乳房X線検査)など、女性に対する検査が増えていることから、女性技師へのニーズが高まっています。現在のところ、女性の放射線技師の割合も3割ほどになっているようです。