道木 豊さん
インタビュー公開日:2024.09.05

水道工事に、アスファルトの更新工事に。
掘削のために道路を〝切断〟する仕事。
水道に関する調査・研究などを行う公益財団法人日本水道協会の統計によると、北海道の水道普及率は98.3%。水道の整備は1960年代以降、急速に進んでいきましたが、現在は老朽化が問題になっています。法定耐用年数40年超えの水道管の割合は23.4%に達し、更新工事や耐震工事が行われています(令和3年度 水道統計総論)。
「そうした現場も、私たちの仕事の舞台。道路のアスファルトを新しくする工事、歩道や縁石の設置工事、また、電気やガスの配管を埋設する時も真っ先に駆けつけて作業を行います」
ちょっと恥ずかしそうに話す道木豊さん。エイシンカッターに入社して10年。30代ながら、その経験をもとに第一線の現場を担っています。ところで、現場に真っ先に駆けつけるとは、一体どんな仕事なのでしょうか。
「社名にもあるように、道路のアスファルトなどを切断する仕事です。必要な部分だけを掘削できるよう、一定の幅でアスファルトに切れ目を入れていく。それが仕事です」
道路のアスファルトに、時々、パッチワークのように色が変わっている部分がありますが、それらの多くは、今話に出たような工事にあたり、アスファルトを切った跡。そう、道木さんたちの〝しわざ〟です。
巨大なピザカッターような歯を回転させ、
道路の厚みに合わせて正確に切っていく。
道路工事の現場で、四角い箱のような機械をゆっくりと押している姿を見たことはないでしょうか。それはきっと、道木さんが使っているコンクリートカッターという専用機械です。硬いダイヤモンドが先端についた、ブレードと呼ばれる円盤状の歯を回転させながら、アスファルトなどに切れ目を入れていきます。巨大なピザカッターといえばわかりやすいでしょうか。
「厚みのあるアスファルトを切断し、掘削できるようにすることが、私たち〝カッター屋〟の仕事。必要な箇所だけを、正確に、迅速に切っていくところが醍醐味ですね」
コンクリートカッターには直径の異なるブレードが6、7枚ついていて、アスファルトの厚みに応じて交換しますが、道路は過去の工事によって厚みが変わっている場合も多く、いかにそこを察知できるかがポイント。奥の深い仕事です。
「お客さんである道路工事会社と切断箇所を打ち合わせた後、ブレードを入れる位置に墨出しを行います。白いチョークがついた糸を張り、指で弾いて道路に印をつける作業です」
この墨出し、一見、簡単そうに見えて、実は道路を切っていく作業よりも難しいのだとか。経験が必要、ということに加えて、ギャラリーが多いからというのもその理由だそうですが、ギャラリーって? どういうことでしょうか。
あらゆる工事の一番最初に行う仕事。
〝ギャラリー〟の視線に思わず緊張。
たとえば今日、道路の下に埋設されている水道管の交換工事を行うとします。重機を使って掘削・埋め戻しを行うスタッフ、水道管の工事を担うスタッフ、アスファルトを敷設するスタッフが朝、一斉に集まってくるなか、一番最初に行われるのが、アスファルトの切断。そう、道木さんの仕事です。これが終わらないと掘削はできないし、水道管にも触れません。
「現場では、待機しているこうしたメンバーの視線を浴びながら作業を行うことになります。当初は本当に緊張しました」
急がなくては。正確に切断しなくては。〝早くしてよ〟と思われているのでは……ギャラリーがいることによるプレッシャーから、頭が真っ白になったと告白します。
「焦ってしまい、うまくいかないこともありました。でも、不思議なもので、人に見られながら仕事をすることが、いつしか快感になってくるというか(笑)。期待されている、という実感もモチベーションになりますね」
水道管の破損やガス漏れへの対応のため、緊急で現場に駆けつけることもありますが、そこには土木や水道工事のスタッフに加えて、警察やテレビカメラが入っている場合も。そして、そんな時こそ、自分が担う工事の意義、大きさを感じるのだと道木さんは話します。
簡単そうに見えて、難しかった技術。
お客さんからの評価がうれしい瞬間。
もともと車に興味があり、高校卒業後は正社員としてガソリンスタントで8年間ほど働いていた道木さん。エイシンカッターには知り合いの紹介で転職しましたが、入社時点では仕事内容などまったく知りませんでした。
「現場に連れて行っていただき、工事の様子を見せてもらった時、簡単そうだなと感じたんです。けれども、それが大きな誤解だとわかるのにそう時間はかかりませんでした(笑)」
業務の基本となる墨出し。糸の端を釘で固定し、すーっと伸ばして指で弾けばいい...はずが、曲がってしまったり、そもそも白い線がうまくつかなかったり。最初はぜんぜんうまくいかなかったと振り返ります。
「それでも、コツコツと経験を積むうちに、いつの間にかできるようになり、お客さんから〝道木くん、いやぁ上手になったね〟などと評価していただく時が、今は何よりうれしいですし、自信にもつながります。続けてきて良かったと思いますね」
お客さんはいい人ばかりで、教えられることも多いのだそうですが、現場では基本的に1人で作業を行い、いわばアウェイの状態。だからこそ、「現場では、元気に挨拶することを意識しています。そうすれば、誰も悪い気はしないですから」。なるほど、の仕事術です。
JR駅のホームの切断業務に新たな興味。
空港の滑走路など特殊な場所での作業も。
コンクリートカッターのほかに、ワイヤーソーという、ダイヤモンドのついたワイヤーをコンクリート構造物などに巻き付け、回転させながら切断するといった特殊工事も行っています。
「印象に残っているのはJRの駅のホームを縮めるために、不要になる部分を切断する仕事。列車が終わった夜に、ワイヤーソーを使って切っていきましたが、こんな仕事もあるんだ! と新たな興味が湧きました」
アスファルト切断の工事では、空港の滑走路、高速道路、自動車のテストコースから、動物園や自衛隊の駐屯地内など、一般の人が入れない場所での作業もあり、それもこの仕事のおもしろみの一つ、と道木さん。
「予定された時間のなかで作業を終わらせるため、小走りで段取りをすることもありますし、仲間の応援を頼む判断も必要です。情報共有が欠かせませんね」
それだけに、1人で時間通りに終了させることができ、満足してもらえる結果を残せた時の達成感は大きく、翌日も頑張ろうという気持ちも湧いてくるのだそうです。工事内容について指摘を受けることも稀にありますが、そんな時は悪い部分をすぐに修正。「だって、くやしいじゃないですか」。穏やかな中に、負けず嫌いな芯をもつ道木さんです。
シゴトのフカボリ
切断穿孔工の一日
8:00
出社。道具などを確認し、トラックで出発
8:30
現場で切断する場所、範囲などを打ち合わせ
8:40
切断作業の開始
12:00
昼食・休憩
13:00
切断作業の開始
17:00
終業
*1日に複数箇所の切断をする場合も多く、移動時間に休憩をとります

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

コンクリートカッター
道具というより、仕事に欠かせない相棒。ダイヤモンドのついた円盤状の歯で、アスファルトなどを切断します(作業時は、歯にカバーがつきます)。水を出しながら作業を行い、汚泥を回収するすぐれものです。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

仕事について適正に評価し、待遇にも反映してくれるので、やる気になりますし、仲間意識が強く働きやすい環境が自慢! 現場では1人なので、仕事が終わった夕方には、用もないのにあれこれ、話に花が咲いています。

お仕事データ

「地図に残る」アレコレを!
土木工
土木工とは
インフラや暮らしを支える、
多彩な土木工事で活躍。

あらゆる工事の礎となる「土木工事」の作業を担うのが土木工。道路のアスファルト敷設やダムの建設、山の掘削、河川の護岸、宅地の区画整理など、多種多彩な現場で活躍しています。水道管やガス管の更新・埋設はもちろん、その際にアスファルトを切断する「切断穿孔(せつだんせんこう)工」、ブルドーザーやクレーン、ショベルカーといった重機を駆使する「機械工士」、斜面の落石防止などを手がける「法面工」も土木工の一員です。その他、経験を積んで「土木施工管理技士」の資格を取得した人は、監督責任者として工程や安全を管理するための指揮者として活躍。いずれも道路やダム、橋といった暮らしに欠かせないインフラを手がけ、社会生活を支えるというやりがいに満ちた仕事です。

土木工に向いてる人って?
コミュニケーションが好きで、
体力にも自信がある人。

土木工は大規模な工事現場で働くことが多く、幅広い職種と連携を取りながら仕事を進めなければなりません。チームの一員として周囲と協力する必要があるため、コミュニケーションをスムーズにとるのが得意なことも素養の一つです。また、危険を伴う作業も少なくないことから、安全面に配慮する注意深さも求められます。体を動かす仕事が大半なので、体力に自信がある人も向いているでしょう。

土木工になるためには

土木工になるために必要とされる資格や学歴はありません。高校や専門学校、短大、大学を卒業後、建設会社などに就職するのが一般的です。土木業界の企業では未経験者を積極的に採用し、一人前に育てるスタイルが主流になっているため、新卒としてキャリアをスタートさせるには最適でしょう。また、民間企業や公的期間が運営する土木系の訓練校で知識や技術を学び、資格を取得しておく道もオススメです。

ワンポイントアドバイス
仕事の幅を広げ、
ステップアップするには資格を!

土木工として仕事の幅を広げるには資格の取得がオススメ。ショベルカーやブルドーザーといった重機の操縦には「車両系建設機械運転技能者」が必要です。この他、クレーンのフックに資材などをかけ外しするための「玉掛け技能講習」、危険の伴う現場で責任者として働くための「作業主任者」、現場監督への足がかりとなる「土木施工管理技士」なども。こうした資格を取得することで、給料アップや昇進につなげることもできます。

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