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工藤 ちえ奈さん
インタビュー公開日:2018.09.04

大学のオープンキャンパスで
陶芸に魅せられこの道へ。
もともと絵を描くのが好きで、高校もデザインアートコースを選択した工藤ちえ奈さん。
高校3年生の時に参加した大学のオープンキャンパスで体験したのが、陶芸との最初の出会いだったといいます。
「初めて電動ろくろを触り、土から立体作品ができるのが楽しく、夢中になっていました。そこで大学でも本格的に陶芸を学んでみようと思いました」
進学した道都大学では通常3年生になる時に専門分野を決めるのですが、工藤さんは陶芸の道を進むと決めていたので、1年生の時から早々に陶芸室を訪ね、現在の師匠でもある中島知之先生のもとで学び始めました。
学生時代から展示会で経験を積み、
卒業後はプロの陶芸家として活動。
大学時代から、先輩や仲間と一緒に展示会を積極的に開催。
プロの陶芸家になることを決意し、卒業後すぐに個展を開催しました。
そして、陶芸教室のスタッフや、師匠である中島先生のサポートをしながら活動の幅を広げていきました。
陶芸家として独立するということは、制作だけでなく、販売、展示会の企画、宣伝などすべて自分の手でこなさなければなりません。
「プロとしてお客さんに自分の作品が受け入れられるのか、不安ではありました。
でも、学生時代に先生の手伝いをしたり話を聞いて陶芸家として活動していくのはどういうことか知ることができたこと、展覧会を開いて経験を積み、お客さんに少しずつ自分のことを知ってもらえていたので、思い切ってやってみようと思いました」
アデリーペンギンをモチーフに、
生活に密着した器を作っています。
「陶芸の魅力は、芸術作品であるとともに、日常的に使えること」という工藤さん。
カップやお皿、お椀など、生活に密着した器を作っています。
そして、工藤さんの作品の最大の特徴は、モチーフにしている「アデリーペンギン」です
南極大陸にいるペンギンで、愛嬌のある顔とコロンとした丸い体型。
学生時代に見た本でこのペンギンに魅せられた工藤さんは、作品をアデリーペンギン一本に絞って制作していくことに決めました。
国内でも本州にはアデリーペンギンがいる動物園が数カ所あり、そこを訪ねて実物の動きを観察し、独特のポーズや仕草をとらえて作品に生かしています。
個展の前は集中して作品を制作。
粘土の凍結には注意が必要!
現在は、個展を開いたり、インターネットや実店舗での作品の販売、イベントへの出展や主催などで作品を発表。
SNSでペンギンや器が好きな人向けに情報を発信したり、イベントで知り合った他の作家と後にコラボするなど、精力的に動いて次につなげています。
制作は、中島先生のアトリエを借りて行っています。個展の前には100点から200点もの新しい作品を作っているそうで、その集中ぶりが伺えます。
粘土は乾燥や温度に対し繊細で、北海道の冬は粘土が凍らないように気を配っているそう。
「一度凍ってしまったら、解凍しても品質が落ちてしまい、元に戻すのは大変です。なので、毛布にくるんだり、暖房を絶えず点けるなど気をつけているので、私はまだ一度も凍らせてしまったことはありません」
仕事にするには情報収集を。
作品も常に成長しています。
大学の美術学科の同級生でも、芸術家として独立している人は稀だといいます。
決して安定した道ではありませんが、目指している人はまず何をすればよいでしょうか?
「将来はどのように仕事をしたいかを考え、そうするためには何を準備すればよいか、できるだけ早い段階から情報収集をすることが大事だと思います。
私も先生やプロの芸術家から話を聞いて準備をしてきたことで、仕事としてやっていくための見通しをつけることができました」
今の目標は、続けていくことだという工藤さん。
常に見る人にとって新鮮であり続けられるよう、絵を練習したり、新しい色の釉薬に挑戦するなど、作品も成長してきているといいます。
「新しい表現を生み出し続け、もっとたくさんの人に楽しんでいただけたらいいですね」
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

アデリーペンギンのさまざまな仕草を見て新しいポーズを描いてみたり、器としての使いやすさを追求しながら作品を改良し、より魅力的な作品づくりに励んでいます。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

陶芸用のヘラや筆
成形した粘土の表面を磨いたり、高さを調整したりするのに使うヘラ、表面に絵を描くための筆など大小数種類そろえています。

陶芸家 工藤ちえ奈

南極で繁殖する「アデリーペンギン」の姿をモチーフにした器を制作。グループ展「ペンギンコロニー」主宰など精力的に活動する若手陶芸家です。

URL
https://www.instagram.com/chikumo_chiena/?hl=ja

お仕事データ

土に命を吹き込んで陶磁器を!
陶芸家
陶芸家とは
土選びから窯焼きまで手がけ、
多くの人へ陶磁器を届ける仕事。

茶碗や皿、鉢、壺などの陶磁器を作るのが陶芸家。まずは、作品の大きさや柄、形をイメージするところがスタート地点。その後、粘土や長石(ちょうせき)、珪石(けいせき)などの材料を選び、ろくろ回しや手びねりで形を整えて窯焼きします。信楽焼や九谷焼、唐津焼、清水焼といった伝統的な陶磁器もあり、それぞれが独自の手法で技術を継承・発展。工房で作品と向き合うだけでなく、百貨店やインテリアショップ、雑貨店に商品を置いてもらうよう交渉したり、オンラインショップを開設したり、多くの人に陶磁器を届けるのも陶芸家の仕事です。

陶芸家に向いてる人って?
真剣勝負で作品に向き合う集中力と
クリエイティブなセンスが大切。

陶磁器はろくろ回しや手びねり、窯焼きの火加減で仕上がりが大きく異なります。そのため、作品と真剣勝負で向き合う集中力が必要。独創的なアイデアやデザインセンスも求められることから、「絵を描くことが好き」「美術品の鑑賞が趣味」など、普段からクリエイティブなものに触れている人も向いているでしょう。また、陶器市などで自ら作品を販売することもあるため、コミュニケーション能力が問われる場面もあります。

陶芸家になるためには

陶芸家になるために必要な学歴や資格はありません。ルートは大きく分けて二つ。まずは美術大学や陶芸を学べる専門学校に進み、基礎的な知識・技術を身につけてから陶磁器メーカーや陶芸工房に就職する道のり。もう一つは、学校卒業後に伝統的な窯元や陶芸作家のもとで修業をさせてもらうコースです。大手の窯元では毎年のように職人を募集しているところもあるので、チェックしてみてはいかがでしょうか。

ワンポイントアドバイス
インターネットを駆使して、
材料の入手や販売をする若い世代も。

かつての陶芸家といえば、石川県の九谷焼、滋賀県の信楽焼、岐阜県の美濃焼、山口県の萩焼、佐賀県の有田焼といった有名な産地を目指すケースが多かったよう。けれど、ここ最近はインターネットで全国から材料を手に入れることができるようになったので、焼き物の産地から遠く離れた場所でも工房を開くことができるようになりました。若い世代の中にはネットショップで作品を売る人も増えています。自分の暮らしたい土地で陶磁器と向き合いながら、自力で宣伝・販売できるのも陶芸家の魅力です。