忠村 香織さん
インタビュー公開日:2018.10.11

ファンキーな人々が手がける
尖ったデザインにビックリ!
小さな女の子が夢見るお花屋さん…とはイメージが少し異なる「花たく」。スチールを基調としたスマートな空間に、花や緑がスタイリッシュにディスプレイされています。
「25年ほど前に父がこのお店を開いた時から、花はごくごく身近な存在。暮らしのすぐそばに咲いているからこそ、幼いころは特別な感情が湧かなかったんです(笑)」
冗談めかしてそう語るのはフラワーコーディネーターの忠村香織さん。聞けば、花の仕事に興味を抱いたのは高校生のころだとか。
「父のフラワーデザインはドイツ仕込み。本場のフラワーコーディネーターが家に遊びに来ることも多く、赤毛だったり、パンクファッションだったり、ファンキーな人々が尖ったデザインを手がけていました(笑)。当時の日本ではお花屋さんというとカワイイ職業のイメージでしたが、そのギャップが魅力的だったんです」
少しだけ回り道しましたが、
やっぱり花にふれるのが好き。
お父さんの影響からドイツで花のデザインを学ぼうと考えた忠村さん。まずは外国語を身につけるために大阪の関西外国語大学へ進みました。
「ただ、幅広い分野を学ぶにつれて証券や輸入といったビジネスにも興味が広がり、一度は『私の進むべき道は花屋じゃない』と思いました(笑)」
ところが、大学3年生のころに転機が訪れます。フィンランドに留学中、お父さんがイタリアでフラワーデザインの仕事を受けたと聞き、何気なく手伝いに行ったそうです。
「父の指示に従って花器の位置を変えたり、重い資材を運んだり、正直なところ骨の折れる雑用ばかりでしたが、花にふれている時間がどこか心地よくて楽しかったんです。例えるなら、ギターを弾くのが好きだとか、絵を描くことに夢中になるとか、そんな感情と同じだと思います」
忠村さんはフラワーコーディネーターを再び目指し、卒業後に3ヶ月ほど家業を手伝ってからドイツへと渡りました。
空間ごとコーディネートする、
というスタイルに目からウロコ!
忠村さんは、ドイツを中心に活躍するあこがれのフローリストのもとで一緒に働かせてもらいました。手先の感覚とデザインの感性を磨くために必死に食らいつく日々だったと笑います。
「1週間かけて製作した花のレースも、『何?この不格好なモノは』と容赦なく窓の外に投げ捨てられちゃって(笑)。でも、次こそは驚かせてみせる、先輩の仕事を奪ってやるという意気込みで技術に磨きをかけようと努力しました」
海外修業の中でも、忠村さんに大きな影響を与えたのがオーストリアで働いていた時のボス(上司)。10メートルを超える花のオブジェをつくったり、鉄を溶接して作品を手がけたり、アーティストさながらの仕事ぶりでした。
「あまりの大きなスケールに花屋さんの概念が覆りました。花を生けるだけでなく、空間自体を生み出すのもフラワーコーディネーターの領域なんだと目からウロコが落ちた瞬間です」
この仕事には、
人の思いを察する力が大切。
海外修業を終えた忠村さんが「花たく」にUターンしたのは10年ほど前。お店はブライダルのフラワーコーディネートを柱に据えているため、その分野が未経験の彼女はアシスタントから勉強を重ねました。
「お客様のご要望や旬に合わせ、花を仕入れるところがスタート地点。花を螺旋状に束ねたり、高さのバランスを計算してナイフで茎をカットしたり、花びらがつぶれないよう生け込むなどベースとなる基本の理論はあります。とはいえ、感覚も大きな部分を占める仕事なんです」
忠村さんは今や部下を指導する立場。自身は「見て覚えろ」の世界で学びましたが、できる限り平易で短い言葉にしてフラワーコーディネートの技術を伝えているそうです。
「でも、植物の知識や生け花のスキルよりも、素直で物事を前向きにとらえられる人柄が何よりの素質です。そうして人の思いを察する力が養われれば、デザインや色彩のセンスも自ずと伸びていくと思います」
花を通して子どもの五感を
刺激する場をつくりたい。
忠村さんは、4年ほど前から空間を含めたフラワーコーディネートの仕事が増えてきました。飲食店やオフィスの内装はもちろん、時に企業の販売促進やホスピタリティの表現を花からアプローチすることもあります。
「ある企業の100周年パーティでは7メートルくらいのシンボルツリー(鉄柱の骨組みに本物の木を取り付けた作品)を、電装会社や施工会社の方と一緒に手がけました。大人数で大きなモノをつくる時間も楽しい一方、商品を手渡した際に喜んでいただけるうれしさは小さな花束でもまったく変わりません」
今後、忠村さんは暮らしの中に花を取り入れる文化を次の世代に広めたいとお話しします。「今はモノがあふれているようで、すべて手の中のスマホで完結しちゃう時代。だから、花を通して子どもたちの五感を刺激するレクリエーションの場を提供できれば」とニッコリ。まさに笑顔の花を咲かせて取材を締めくくってくれました。
シゴトのフカボリ
フラワーコーディネーターの一日
8:00
出勤
8:30
事務作業
9:30
花束のデッサン
11:00
打ち合わせ
12:00
昼休み
13:00
打ち合わせ
15:00
事務作業
18:00
掃除
19:00
退勤

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

大工さん並みの工具も使用。
花のデザインを整えるハサミや茎をカットするナイフはフラワーコーディネーターの必須アイテム。私たちは大きなオブジェを手がけることもあるので、電動ドリルやグラインダーといった大工さんのような道具も使っています(笑)。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

ドイツでフラワーコーディネートの基礎理論を身につけたり、オーストリアでアート性の高い仕事を目の当たりにしたり、何かを体験することで人生の幅が広がりました。自分の目や耳、肌で感じたことも大切にしてください!

有限会社花たく

お客様の人生に寄り添い、心を豊かにする時間と空間を届けるフラワーショップ。お祝いやお悔やみの花はもちろん、ウェディングや店舗ディスプレイ、生け込みまで、幅広く思いを表現しています。

住所
北海道札幌市西区西野2条7丁目5-16
TEL
011-666-1874
URL
http://hanataku.net/

お仕事データ

空間をお花で華やかに!
フラワーコーディネーター
フラワーコーディネーターとは
お客様の希望に合った
花束やブーケ、コサージュを製作!

ホテルや結婚式場、レストラン、イベント会場など、さまざまな場所に花を飾り、空間を演出するのがフラワーコーディネーター。まずはお客様から予算や希望をお聞きして、どんな装花にするのか打ち合わせするのが仕事のスタート地点です。色合いや花言葉、季節といった特色を綿密に話し合い、実際の製作に入ります。例えば花束は花びらの状態やつぼみの大きさを確認しながら、カットを施して見た目を美しくアレンジ。他にも、ブライダルブーケやコサージュ、カゴ花を作ることもあります。

フラワーコーディネーターに向いてる人って?
植物に対して深い愛情を抱き、
お客様の思いをヒアリングできる人。

フラワーコーディネーターは花の扱い方、長持ちさせる方法、四季の花のサイクル、花の値段、仕入れなど、花に関する豊富な知識が必要。植物のことを常に勉強し、深い愛情を抱ける人が向いているでしょう。また、花束を作るには優れた色彩感覚も欠かせません。お客様から花を飾る空間に対する思いをヒアリングし、イメージを共有するといったコミュニケーション能力も求められる仕事です。

フラワーコーディネーターになるためには

フラワーコーディネーターには特別な学歴や資格は求められません。とはいえ、独学で花の知識や色彩のセンスを深めるのは難しいことから、「フラワーデザイン科」「園芸デザイン科」「フラワーコーディネート科」など、植物に関する専門のコースを置く専門学校に通うのが一般的です。卒業後はフラワーショップや園芸ショップ、結婚式場などに就職し、アシスタントを経てフラワーコーディネーターへとステップアップしていきます。

ワンポイントアドバイス
花束やブーケに加え、
プリザーブドフラワーも人気。

最近は花束やブーケを気軽に楽しめるフラワーアレンジメントが浸透し、フラワーコーディネーターの認知度も徐々に高まっています。かつては企業が依頼するケースが大半でしたが、個人のお客様にまでニーズが広がっているようです。また、花束を長期保存できる「プリザーブドフラワー」の人気も高まり、フラワーコーディネーターの活躍の場は広がっています。