福士 水希さん
インタビュー公開日:2019.08.09

税務署ってどんなところ?
知っているようで知らない仕事。
税務署は知っていても、その仕事はイメージしづらいかもしれません。普段の生活ではなかなか目にすることがないからです。税務署とはどんなところで、どんな人たちが働いているのでしょうか。
まず、納税は憲法に定められた国民の義務です。住民税や所得税などさまざまな税の中で、最も身近なのは消費税でしょうか。買いものをするたびに支払っている消費税は「国税」といい、国に納める税金です。この国税の納付税額を、国民から集めているのが税務署。そこで働くのが「国税専門官」です。
税務署に入って5年目の福士水希さんは、国税調査官。これは国税専門官の仕事の一つで、企業や個人の納税について調査や指導を行います。「わたしは法人担当で、企業の税務申告が正しいかどうかを調査しています。会社を訪問して、帳簿の処理のしかたをチェックして、税法上の誤りがあれば指導する――それが主な仕事です」
税務署の説明会に参加したら、
魅力的な先輩と出会った。
「国税専門官になると決めたのは、筆記試験の合格者を対象とした業務説明会に参加したとき。税務署の説明をしてくださった方がとてもハキハキしていて、一緒に働けたら楽しいだろうなと思ったのです」と福士さん。
さまざまな公務員試験を受けたけれど、その時点では、進路を絞りきれていなかったといいます。社会の役に立ちたいという思いがあって、それならば公務員だと考えていました。でも、税務署の仕事内容をはっきりとイメージすることは難しかったようです。だから、「仕事そのもの以上に、働いている方々の仕事への取り組み方や情熱から、自分の進むべき道を判断しました」
女性が無理なく長く働くには、
やっぱり公務員だと思った。
福士さんが公務員を目指した理由は、もう一つあります。「女性が無理なく長く働き続けられる環境を考えたら、公務員にたどり着きました」
国税専門官として確実にキャリアを積みながら、結婚や出産、育児と両立している先輩が活躍しています。フレックスタイム制や産前・産後休暇はもちろん、育児休業や子どもの看護休暇、超過勤務の免除など、さまざまな支援制度が整っているからです。長く仕事を続けていくと、働きはじめたころには想像もしなかった状況に遭遇することがあります。自分も家族も変化するからです。ライフステージに合った働き方ができるかどうかは、仕事を選ぶときの重要なポイントになるでしょう。
国税調査の仕事はドキドキ。
プロの目は不正を見抜く!
「初めての企業へ調査に行くときは、いまでも緊張します」
税務調査は、基本的に一人で会社に訪問します。配属されてすぐは、上司や先輩に同行して、仕事のしかたを覚えました。数件の会社を一緒に回ったあとは、いよいよ独り立ち。「訪問したときに嫌な思いをしたことはほとんどありません。やはり調査なので、冷たくあしらわれることを覚悟していました。でも、快く迎えて労ってくださる社長さんが多いですね」
国税調査官は、決められた時間の中で、帳簿の記載内容等から売上と仕入のバランスなどあらゆる項目を検討し、正しく申告されているかどうかを見極めます。ときには不正を発見することも。「帳簿類の該当部分を提示して、説明を求めます。そのうえで、本来の税務処理のしかたを指導しています」
これからの目標は教育官。
後輩たちをサポートしたい。
税の仕事は専門的だからこそ、研修制度がしっかりと整っています。採用後すぐの基礎研修から、実務経験に合わせてキャリアアップできるようになっているのです。福士さんのこれからの目標は、税務大学校の教育官になること。国税のスペシャリストを育成するポジションにつきたいと考えています。
「研修のときにお世話になった教育官とは、いまでも連絡をとっていて、サポートしていただいています。そんなふうに、私も後輩たちを支えていきたいですね。税務署がどんなところなのか、どんな仕事をするのか、知識やアドバイスを伝えて、安心して仕事に打ち込めるように支えたいですね」
シゴトのフカボリ
国税調査官の一日
8:00
出勤
8:30
メールチェック、スケジュールの確認、調査先情報の確認
9:00
調査先への移動
10:00
調査
12:15
昼休憩
13:00
調査
15:30
調査終了
16:00
税務署に戻り、経過記録書を作成
17:00
退勤

シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私たちが納める税金は、私たちの暮らしを支える大切なもの。でも、誰もが税法や税務処理に詳しいわけではありません。税のスペシャリストとして、適正かつ公平な課税を一緒に実現していきましょう。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

12桁の電卓
福士さんの仕事の相棒は電卓。千億まで表示できる12桁タイプを使っています。「企業の帳簿は金額が大きいので、12桁はあったほうがいいと先輩にすすめられました。新人のころから愛用しています」

国税庁 札幌国税局

国税庁の“支局”の一つ。全道30の税務署を束ね、指導・監督する。税務署では扱わない査察調査も行っている。

住所
北海道札幌市中央区大通西10丁目 札幌第2合同庁舎
TEL
011-231-5011
URL
https://www.nta.go.jp/about/organization/sapporo/recruitm...

お仕事データ

税金にまつわるスペシャリスト!
国税専門官
国税専門官とは
公正で公平な納税のために、
調査や徴収、指導を実施。

日本の財源を確保して、国を健全に動かしていくためには、個人や企業など納税者から適正な税金を徴収する必要があります。その税金を扱うのが国税専門官で、役割は「国税調査官」「国税徴収官」「国税査察官」の3つです。
「国税調査官」は個人や企業のもとに出向き、申告書類と帳簿を照らし合わせて適正かどうかをチェック。誤りが見つかった時には正しい申告の指導を行います。「国税徴収官」は期限までに納付されずにいる税金の催促や財産の差し押さえなどの滞納処分を行います。「国税査察官」は悪質な脱税に関する調査を行い、事実と判明した際には刑事罰を求めて告発。このように不正を見逃さず、公正で公平な納税のために働くのが国税専門官です。

国税専門官に向いてる人って?
公正な判断力と強い責任感、
そしてフットワークの軽さも備える人。

国税専門官は税金が正しく納められているのか調査し、時には厳しく徴収するため、公正な判断力と強い責任感が求められます。確定申告のチェックや帳簿との照合など事務的な業務もあることから、数字やデータを細かく見られる几帳面な人にも向いている仕事でしょう。また、法律の知識や相手と交渉するコミュニケーション能力に加え、資料の入手などに素早く動けるフットワークの軽さも大切です。

国税専門官になるためには

国税専門官になるには、人事院が実施する「国税専門官採用試験」に合格しなければなりません。年齢制限(21歳以上30歳未満)がある一方、受験資格に学歴は問われませんが、大卒程度の学力が想定されています。試験では憲法や民法、経済学、会計学などの高度な専門知識が問われるため、大学の法学系や経済学系へ進学したほうが有利でしょう。試験合格後は税務大学校などで専門官基礎研修を受け、各地の税務署に配属。一定期間の実務経験を積み、さらに専科研修などを経て国税専門官に任命されます。

※「国税専門官採用試験」については、詳しくは「国税庁」のホームページをご覧ください。https://www.nta.go.jp

ワンポイントアドバイス
巧妙化する脱税の手口や税務の国際化に、
対応できる国税専門官になろう!

納税があって初めて国の財政が成り立つことから、税に関する専門家である国税専門官の仕事がなくなることはないといえるでしょう。
ここ最近は経済の発展に伴って商取引が複雑化し、脱税などの手口も巧妙化しています。また、多国籍企業の増加がさらに進むにつれ、税務の国際化も発展していく予想です。こうした課題に取り組める国税専門官のニーズはますます高まっていくでしょう。