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佐藤 佑さん
インタビュー公開日:2020.01.24

家具のデザインに魅了されて、
地元北海道を飛び出し東京の美大へ。
木製の四角いボックスに電灯が納められ、同じく木でつくられた上下の遮光板の配置で光の表情が変えられるフロアスタンド。佐藤佑さんが、現在の道を目指すきっかけとなった照明器具なのだそうです。
「近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトのタリアセンという照明です。彼の建築スタイルを生かしたそのデザインに魅了され、インテリアに目が向きました。家具のデザインがしてみたいと思うようになっていったんです」
ものづくりに興味を抱き、高等専門学校で建築を学んでいた佐藤さんですが、インテリアの分野に目が向き3年生で中途退学。東京にある美術大学で学び直すことを決意します。そして、二浪を経て合格を果たし、家具製作を主体に学ぶ木工を専攻しました。
「大学ではデザインから図面制作、材料の積算、機械を使った実製作まで一連を学びました。今の会社も設計部門、工場、ショップまでを持ち、企画から販売まで一貫して手掛けているので、ここでなら、学んだことをフルに生かせるのではないかと考えました」
地元で活躍の場を見つけたい。そんな思いもあり、北海道・旭川の家具メーカー「カンディハウス」の門を叩きました。
デザインをもとに設計図を作製。
家具をかたちにするための翻訳。
技術開発本部という部門で、製品開発を担当している佐藤さん。仕事の中心となっているのは設計業務。製品づくりの第一歩となる段階です。
「当社では国内外のデザイナーと共同で製品開発を行っています。そこでできあがってきたデザインを、実際のかたちとして製作するために必要な設計図面として落とし込み、作図するのが私の仕事。デザインを翻訳する役割といってもいいかもしれません」
デザイン的には素晴らしくても、木という生きた素材で表現しようとすると、技術的に難しい部分が出てくることがあります。また、家具としての機能がきちんと備わっていなければ、製品にはなりません。
「設計をもとに試作を繰り返して問題点を探り、調整しながら設計をまとめていきます。製品としての仕様が決定したら、お客様向けの説明書・組み立て図なども制作します」
営業スタッフが持ち歩く技術資料や、プレゼンテーションに使う3Dモデルデータの作成なども担当しているそうです。
デザイナーとやりとりしながら、
家具づくりの全プロセスに関わる。
カンディハウスでは年に数回、新製品の発表を行っています。平均すると、毎年30アイテムほどが新しく誕生しているそうです。その多くは、国内外のデザイナーの手によるものです。
「トップデザイナーの作品に、常に触れる機会があることも、私がこの会社を選んだ理由です。実際に、デザイナーとのやりとりも多く、とても刺激的です」
素材やディテールのサンプルを見せて欲しいといった要望も多く、作品によっては頻繁にミーティングが行われますが、そこには特有の難しさもあるのだと佐藤さん。
「美しいデザインですが、そのままでは強度が不足するので、少し部材厚を増やして欲しいといったやりとり、提案も行います。デザイン性を保ちつつ、いかに製品としてのクオリティを上げていくかが腕の見せ所です」
2020年1月にオープンしたアーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)。そのリニューアルにあたって、カンディハウスがオリジナルの家具製作を担当しました。2年ほどかかって一からつくりあげていった仕事に佐藤さんも参加。家具づくりの全プロセスに関われることが楽しいと話しています。
入社3年、初めて担当した製品づくり。
多数の目に見えない検討を経て完成へ。
2019年11月に発表した「ONE」という製品を佐藤さんは担当しました。入社から3年、1人でひとつの製品を手掛けたのは、初めての体験だったそうです。
「倉本仁さんというプロダクトデザイナーの作品で、中央の柱状の脚一本で支えるラウンドテーブルです。シンプルで自由度の高いテーブルですが、技術的には一筋縄ではいきませんでした」
一本脚のため、うまくバランスを取らなければ転倒の危険があります。脚のなかに重量のある構造体を仕込み、実際に転倒試験なども行いながら検討。構造体の試作を依頼した工場とも何度もやりとりを経て、最終的な仕様にたどり着きました。
「搬入を考えると、組み立て式にする必要があり、どうすれば簡単に扱えるかといった、見えない部分についての検討を無数に経ています」
この製品は東京で開催されたデザイン・アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2019」でお披露目し、佐藤さんが営業スタッフに向けプレゼンテーション。また、来場者のリアルな反応も参考にしながら、製品の販売に向けたブラッシュアップも行ったそうです。
デザインコンペティションに出品。
社内デザイナーとして提案も開始。
「純粋なデザインだけでは家具はできません。いろいろな制約があるなかで、どうかたちにしていくかを考えることに、個人的には仕事のおもしろみを感じています」
同時に、知識不足を感じる場面もまだ多いのだとか。そこで、設計や製造に関連するセミナー等を積極的に受講するほか、数多くのプロダクトに触れる機会も設けているそうです。
「当社では、毎年11月に開催されているIFFT(東京国際家具見本市)に出展しており、それに合わせて美術館や他社のショールームを巡って実際の家具に触れ、サイズ感、バランスなどを意識して見ています」
製品づくりの一翼を担いつつ、将来的にはデザインも手掛けてみたいと話す佐藤さん。3年に一度開催されているIFDA(国際家具デザインコンペティション旭川)に、オリジナルのデザインでエントリーしました。また、社内デザイナーとしても提案を始めるなど活躍の場が広がってきました。
「使う人のことを考えたすぐれたデザインを生み出すことを目標にしながら、家具産地・旭川をよりもり立てる役割も果たしていければと考えています」
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
クロッキー帳
美大の予備校時代から、使い続けているクロッキー帳。設計を行うためのディテールの検討、構造などの確認、デザインのアイデアなどを都度、書き込んでいます。入社後すでに7冊になりました。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

高専時代に、夢中になれるものを見つけて方向転換し、時間はかかりましたが、今、自分が望んでいた環境にいます。何かを夢中になってやっていれば、きっと自分の道が開けると思います!

株式会社カンディハウス

「ともにつくるくらし。」をテーマに、可能な限り北海道の木を使い、長く愛される家具を世界へ発信する旭川の家具メーカー。そのデザインは内外から評価が高い。

住所
北海道旭川市永山北2条6丁目
TEL
0166-47-1188
URL
https://www.condehouse.co.jp

お仕事データ

多種多彩な家具を製作。
家具製造工
家具製造工とは
設計図をもとに材料を加工し、
使う人の暮らしを彩る家具を。

家具製造メーカーや家具製作工場、家具工房で、テーブルやイス、デスク、キャビネットなどを手掛けるのが家具製造工。デザイナーが描いた設計図をもとに、材料の切り出しや削り、塗装、組み立てといった工程を経て完成品を作ります。多くの家具製造企業では機械化が進み、木工機械作業、組み立て作業、仕上げ作業などを分業しているようです。一方、顧客の注文に応じてオーダーメイドの家具を作る職人も活躍。インテリアにこだわる人も増えているため、熟練の技術は今後も必要とされています。どんな家具製造に携わるとしても、使う人の暮らしを心地よく彩るという目的は同じです。

家具製造工に向いてる人って?
ものづくりが好きで、
体力や精神力にも自信がある人。

家具の材料を傷めずに工具や機械を扱う器用さに加え、誤差や変化を感じ取る感覚の鋭さが求められます。立ち仕事も多く、時には納期とのせめぎ合いもあることから、厳しい条件下でも気を緩めることなく作業を続けられる体力・精神力も必要です。住環境や家族形態の変化、さらにトレンドなどをいち早くキャッチし、家具づくりに落とし込めるよう勉強を欠かさない向上心も大切。何より、ものづくりが好きな人は家具製造工に向いているでしょう。 

家具製造工になるためには

家具製造工に必要な資格や学歴はなく、未経験者を受け入れる家具メーカーもあります。ただし、最近は大学や短大のプロダクトデザイン系学科・コースで家具製造の知識や技術を身に付ける人が多いようです。また、専門学校のなかには家具職人を養成する学科やコースが設けられているところもあります。その後は、家具メーカーや家具工房に就職をすることが家具製造工としてのスタートラインです。

ワンポイントアドバイス
家具を製作する技術の証、
国家資格の「家具製作技能士」!

家具製造工として働くなかで、「家具製作技能士」の資格取得を目指す人も少なくありません。これは家具を製作する上で十分な知識と技術を持っていることを証明する国家資格です。1級と2級があり、それぞれ試験には学科と実技があります。資格取得のためにはデザインや素材に関する知識、工具の扱い方、構造力学などの専門性が必要です。この資格を取ることで、ステップアップや独立などの際にアピールになります。