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長内 勝さん
インタビュー公開日:2020.04.08

お客さんからも教えられつつ、
すし職人として成長した日々。
1971年の創業以来、札幌を代表する寿司店として高い評価を得る『すし善』。接待利用も多い札幌・円山の本店、すすきの店のほか、大丸札幌店内にはカジュアルに一級の寿司が楽しめる店舗があります。長内勝さんが、すし職人として働くのは、この大丸店。2年前からカウンターに立っています。
「今でも忘れられないのが、初めてカウンターに立った瞬間のこと。暖簾をくぐり、お客さまの前に出た途端、緊張で頭が真っ白に。ずっと下を向いていました……」
お客さんと何を話せばいいのかわからず、それまでに覚えてきた作業手順もすっかり頭から飛んでしまったのだそうです。
「先輩にサポートしていただきながら、少しずつ、少しずつ慣れていった感じです。頭で考えるだけではなく経験を重ねること、そして現場で学ぶことの大切さを痛感しました」
お客さんから教えられたり、先輩がお客さんと交わす会話から知識を得ることも。常連さんの好みを覚えつつ、先輩からのアドバイスを身体に染み込ませていく日々でした。常に誰かが見守ってくれる環境のなか、今は大丸店の主要なすし職人の一人として活躍しています。
不安な気持ち、心配してくれる声。
それらを、モチベーションにして。
働く姿がかっこいい。テレビで見る〝職人〟と呼ばれる人たちに、憧れを抱いていたという長内さん。寿司店で働いていたお父さんが、家で握りをつくる姿に惹かれたことが、現在の道へと進むきかっけとなりました。
「高校に届いていた求人票のなかで、すし善が真っ先に目に飛び込んできました。調べてみると歴史があり、札幌では知られた高級店。職人として修行するならここしかないと即決し、ほかは受けませんでした」
すし職人になるための修行は厳しい。そんなイメージはあったそうです。面接に遅れないよう、予め家から本店までの所要時間を確かめに来て、格式を感じる店舗を目にした時も、改めて〝こんなすごい老舗で、自分はやっていけるのか〟という気持ちが湧いてきたと長内さん。
「正直な気持ちとして心配してくれる高校の先生もいましたが、でも、だからこそ、自分の思いを貫いてみようという意思が固まったようなところもありますね」
店内に入ってみて、その上質な空間にも圧倒されたそうですが、不安な気持ちが逆に、〝ここで技術を磨きたい〟というモチベーションになったのだと話しています。
段階を経ながら任されていく仕事。
積極的な姿を評価してくれる環境。
三つのカウンターと二つの個室、20席の広間を備えたすし善本店。寿司店としては規模が大きく、使用する鍋や什器も大量です。この本店でそれらを洗うことが、入社直後の新人の仕事。一般企業でいう研修期間に当たるものです。
「最初のうちは、出社してから帰宅するまで、ひたすら洗いものです。しかも、専用の洗剤を使ってピカピカに磨き上げます。まだ技術も知識もない状態なので、お客さまの前に出ることもありません」
まさに〝修行〟という印象ですが、作業は同期入社の仲間と一緒。励ましあったり、時々はちょっと冗談も言い合ったり。そんな環境があったので、前向きに取り組むことができたと長内さん。洗いものがスムーズにできるようになると、一つ上の先輩が担当していた、開店前の準備作業へと移っていきます。
「カウンター内の道具を揃えたり、食材の配置、薬味の準備などを任されるようになります。やる気さえあれば、どんどん教えてくれるので、常に意欲的でいられますね」
覚えたことは率先して準備したり、やってみたいことがあれば積極的に申し出ているという長内さん。そんな姿勢をしっかり評価してくれる職場なのだそうです。
できることが増えていく楽しさ。
修行ではなく、毎日が成長の場。
洗いものからスタートして2年間、本店で勤務した後、長内さんは現在の職場である大丸店に異動になります。いよいよカウンターデビューと思いきや、さらに2年ほどは裏方業務を通して先輩から技術を学びました。
「魚の仕込みなど、自分ではひと通り、できていると思っていたのですが、まだ経験していなかった業務もいろいろあったんです。その一つが炊きもの(煮もの)。この店で基本から学びました」
店舗ごとに規模やメニューが違うため、業務内容も変わります。本店では先輩が魚をおろす場面は数多く目にし、経験もさせてもらいましたが、椎茸、穴子などの炊きものづくりは見たり触れる機会がありませんでした。先輩が専門に行っていた、そうした仕事を一つずつ、新たに身につけていったのだそうです。
「できることが増えていくと、その分、仕事も楽しくなっていく。それを本店で実感していたので、ここでも前向きに取り組むことができました」
修行というより、毎日が成長の場。先輩がいつも見守ってくれるという安心感の一方で、常に視線を向けられる緊張感も。もちろん、厳しさもありますが、それは技術の向上を願ってくれてのことであり、結果的には自分のためになっていると長内さんは言います。
目の前で調理し、感想をもらえる。
すし職人ならではの喜びを感じて。
「店で出す魚や食材の産地などを聞かれたら話せるようにしなければいけないと言われ、必死に勉強しましたが、それ以外のことをお客さまに尋ねられると答えられなくて……」
それでも、常に両脇に立つ先輩の助けを借りながら接遇するうちに、自然に言葉が出るようになっていったという長内さん。最近は、すし職人としてカウンターに立つ喜びをかみしめる瞬間も増えていると言います。
「お客さまの目の前ですしを握り、召し上がっていただき、感想を聞くことができる。〝おいしかった〟、〝ありがとう〟とお帰りになる姿を見送る時は感動を覚えますし、この仕事に就いて良かったと実感します」
すし職人にしか、この気持ちは味わえない。長内さんの言葉に思わず力が入ります。そして、その魅力を、子どもたちに知って欲しいと話します。
「だからこそ、まだまだ精進し、技術だけではなく接客も磨いていきたいと思います。〝あんなすし職人になりたい〟と、憧れを抱いてもらえる存在になることが目標です!」
ただし、背中を押してくれた両親を招待するのは、もう少し腕を上げてから。照れくさそうに話す長内さんです。
シゴトのフカボリ
すし職人の一日
9:00
出勤、魚の仕込み、道具の準備など
11:00
開店、寿司調理・接客(ランチタイムの対応)
14:00
昼食、休憩
15:00
寿司調理・接客
22:00
閉店、後片付け
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

この道を目指すなら、一流になりたい。そう考えて、札幌でもトップクラスの店に飛び込みました。ようやくカウンターに立てるようになりましたが、まだまだ半人前。精進を重ねて、レベルを上げていくことが目標です!

株式会社 すし善

札幌の繁華街・すすきので開業しておよそ半世紀になる老舗店。江戸前の技で北海道の味覚を生かした寿司を提供、〝札幌の顔〟とも称される店です。

住所
北海道札幌市中央区北1条西27丁目2-7(本店)
TEL
011-612-0072
URL
https://www.sushizen.co.jp

お仕事データ

「日本文化」を握る職人。
寿司職人
寿司職人とは
おいしい寿司とともに、
「真心」も提供。

日本の食文化の一つである寿司を専門に調理するのが寿司職人の仕事。まずは早朝の魚市場で食材を仕入れることから始まり、店舗では魚介をさばいたり、煮込んだり、寝かせて熟成させたりと下準備を行います。活躍の場は個人経営の寿司店から「回転ずし」に代表されるチェーン店までさまざまです。カウンター越しに寿司を握る姿が見えるようになっていることが多く、寿司職人は立ち居振る舞いにも細心の注意を払わなければなりません。何より、お客様に「おいしい」と言ってもらうために、真心でおもてなしすることが大切です。

寿司職人に向いてる人って?
立ち仕事をこなす体力と、
根気強さが必要。

一般的に寿司職人の仕事は早朝の仕入れから営業終了まで立ち仕事が多く、ある程度の体力が必要です。また、調理のほか、お客様に対して細やかな気配りができ、時には小粋な会話を交わすこともできるコミュニケーション力も求められます。一人前の寿司職人になるためには「飯炊き3年、握り8年」と言われるように、根気強く日々の仕事に取り組める人が向いているでしょう。

寿司職人になるためには

寿司職人になるために特別に必要とされる資格や免許はありません。寿司職人を養成する調理系の学校などで知識や技術を学び、寿司店に就職するルートが一般的です。高校や大学・短大を卒業した後に寿司店の門を叩き、修行を積むという道もあります。就職後は雑用から始め、徐々に技術を身につけていくことが多いでしょう。

ワンポイントアドバイス
海外でのニーズ拡大に伴い、
女性の握り手も増えています。

ここ最近、日本の伝統食が海外でも大人気。寿司職人も、欧米や西欧・アジアなどに活躍の場が広がっています。また、こうしたニーズの拡大に伴って、「男の仕事」というイメージが強かった寿司職人の世界に女性が参入するケースも増加傾向にあります。例えば、女性の寿司職人が日本の伝統を背負って海外で働くなど、ダイナミックな活躍にも期待が高まります。