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久野 航さん
インタビュー公開日:2020.07.10

環境保全のための動植物の調査から
企業の広報活動・地域貢献も支える
環境保全という言葉は、今では当たり前のように使われていますが、知床のような手付かずの自然はもちろん、身近にある街なかの緑地でも、環境保全を図るためには特化した知識が求められます。その専門家として、動物・植物などの調査を実施し、適正に環境を守るためのアドバイスを行うのが環境コンサルタントという仕事。久野航さんが勤める会社は、まさにその、〝環境保全のプロフェッショナル企業〟です。
「代表的な業務の一つとして、環境アセスメントがあります。道路やエネルギー施設の建設など大規模開発事業を行う際に、対象となる場所に希少な猛禽類や植物が分布していないかといった調査を行い、その結果に応じて、影響を最小限に抑えるための方策を提案する仕事です」
動植物のモニタリングや、鳥獣による農作物被害の調査など、そのフィールドは多岐に渡りますが、近年、増えてきているのが民間企業の取り組みへのサポート業務。
「飲料メーカーなど、事業のために山や森などをもつ企業の依頼を受けて、そこに生息する動植物を調査します。その結果を広報活動に生かしたり、地域貢献につなげたり。生物多様性をテーマとする、そうした動きが活発になっていますね」
段階を踏んで覚えられる体制のなか
実地経験を積みながら知識を蓄える
2013年に入社した当初は、主に大規模事業にともなう環境アセスメントや、鳥獣被害の状況調査、駆除方法の検証などを担当していたという久野さん。
「先輩に同行して現地に入り、そこにある植物の名前をひたすらメモするといった実地経験を積み、知識を蓄えていきました。そして徐々に部分的な業務の一部分を任されるようになって……と段階を踏んで学べる体制でした」
高山植物に被害を及ぼすシカのようすを調べるため、重たい機材を背負って山に登り設置していくという、ちょっとハードな業務もこなして経験を積み、現在は企業のサポートが中心となっています。
「たとえば、苫小牧にある大手石油会社の製油所。同社では工場緑地をとても大切にしており、私は緑地と動植物のモニタリングを定期的に行っているほか、その結果を踏まえて地元の小学生を対象とした〝いきもの教室〟などを企画・運営しています」
工場が排出する二酸化炭素の吸収に貢献するため。海の塩害・飛砂(ひさ)から施設を守るため。従業員の心身の安らぎ(レクリエーション)を図るため――。こうした目的で設けられる工場緑地を保全・活用することによる地域への貢献を、ともに進めていくことに意義とやりがいを感じると久野さんは話しています。
建築を中心にデザインを学ぶなか
背景となる自然環境に興味を抱く
大学では建築を中心にデザインを学んでいたという久野さん。アートやデザインに関心があり、ものづくりに興味を抱いたことがその背景にありましたが、学んでいくうちに目指す道が変わってきたのだと話します。
「3DCADを使って建築図面を制作する際、敷地に木を描くことが多いのですが、何の木なのかは考えていない。『自然への影響を考えなくていいのかな?』と思うようになり、建築と同じコースにあった環境系のゼミへと方向転換したんです」
建築そのものではなく、その背景となる敷地の環境、そこにある生態系、水など、広い意味での自然環境とその保全について、久野さんは3年生から学び始めます。そして、さらに知識を深め、自分なりの考え方を身につけようと、環境・景観の分野に特化した専門職大学院へと進み、環境保全管理の方法についての知見を深めたほか、里山管理や庭づくり、植物の栽培などの実習を通して、実践的な技術を身に着けました。
「キャンパスは淡路島の山のなか。宿舎に帰るとイノシシが庭の木の実を食べていたのが衝撃で、それから捕獲する方法を調べ、わな猟免許という資格も取得しました」
造園などデザイン分野への就職も考えましたが、環境コンサルティング会社での経験を持つ講師などの勧めもあり、現在の会社と出会ったのだそうです。
SDGsの採択をきかっけとして
環境に配慮した企業活動が注目
2015年に国連サミットで採択された「SDGs」(エス・ディー・ジーズ)。持続可能な開発のためのアジェンダ(行動計画)を示したもので、17の国際目標が設定されています。生態系の保護や生物多様性の損失阻止といった項目もあり、これらを背景に、環境に配慮した企業活動への関心が高まっているのだと久野さん。
「自社所有の山林の環境整備、動植物の保全と同時に、それを地域へどう還元するかといったことが、盛んに議論されるようになっています。私たちも、現地調査の結果等をもとに、企業のビジネスにも関係する提案を行うことがよくあるんです」
そこでは、企業の活動を知らせるために効果的なイラストが描ける、映像の編集ができる、会報誌を制作したことがあるといった幅広い知識や経験を役立てることができるのだそうです。
「植物などの知識については、現場で目にするうちにだんだんわかってきて、そのうち地形を見ただけで、どんな種類の植物があるか予想できるようになります。覚えるべきことは山ほどありますが、逆に考えればいつまでもスキルアップしていける仕事でもありますね」
パッと視界が開けるように、理解が深まることがあり、その瞬間が楽しいと話しています。
住み込みでの1年間にわたる業務で
コミュニケーション力の大切さ実感
久野さんの会社では毎年、スタッフのスキル向上と先進事例の共有を図るため、事例発表と表彰を行っていますが、久野さんは2016年の発表会で最優秀賞を受賞しました。テーマは「耶馬日田英彦山(やばひたひこさん)国定公園におけるニホンジカ捕獲事業の取り組み」。福岡県からの受託事業です。
「シカの食害で生態系被害が深刻化している国定公園内で、捕獲を実施するにあたって必要となる調査と、試験的捕獲による効果・効率的な捕獲手法の検討を行いました」
現地に1年間住み込んで行う業務を、事務所探しからすべて担当したという久野さん。地元の猟友会や地域の責任者を探して挨拶し、受け入れてもらうことが最初の仕事でした。
「最初は緊張しましたが、いざコミュニティに飛び込んでみると、みなさん仲良くしてくれて、食事に呼んでくれたり、猟に誘ってくれたり。居心地よく過ごすことができました」
コミュニケーション能力や調整能力、提案力などが大事な仕事であるということも、そこで改めて実感したそうです。
「環境保全は大切。でも、それはなぜなのか。根本的な部分で環境保全に貢献するにはどうすればいいのか。そんな思想、倫理に関わる部分が最近、気になり始めています」
環境について考えることの奥深さが日々、増している。そんな風情の久野さんです。
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
専用のルーペ
植物の特徴などを調べる時に使う、久野さん専用のルーペ。宝石鑑定用の高精度のものを愛用しています。携帯しても邪魔にならない大きさ・重さもポイントなのだとか
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

興味をもったことがあれば、何でも挑戦してみて欲しいと思います。一歩目はちょっと怖いかもしれませんが、いざやってみると、予想外の楽しさ、心地よさが得られることも。水風呂と同じです!

株式会社 地域環境計画

東京を本社に、全国展開する環境コンサルタント。環境アセスメント、企業の生物多様性の取り組み支援、環境イベントなど事業内容は多岐にわたります。

住所
北海道札幌市北区北17条西1丁目1-3 末永ビル(北海道支社)
TEL
011-717-8001
URL
https://www.chiikan.co.jp

お仕事データ

専門的な視点から課題を解決。
コンサルタント
コンサルタントとは
クライアントの課題を分析し、
解決手法をアドバイス。

コンサルタントはクライアントが抱える課題を共有し、専門的な視点から解決手段を提案する仕事。引き受ける内容は「新しい事業の立ち上げ」や「新商品の開発」、「人材の活用方法」など多種多彩です。コンサルタントの代表的な例としては経営状況を分析してアドバイスを行う「経営コンサルタント」、建設事業の企画から設計を担う「建設コンサルタント」、他にも公共事業で発生する土地や建物の補償を扱う「補償コンサルタント」、ITシステムの構築などを行う「ITコンサルタント」なども。いずれも経営状態や今後の方向性などに対して分析をした上で、アドバイスや指導を行います。

コンサルタントに向いてる人って?
経営や資金の流れに興味があり、
コミュニケーション能力のある人。

コンサルタントは企業の損益や事業予算の配分などにも関与します。ビジネスのノウハウや経営手法、資金の流れといったことに興味がある人はやりがいを感じられる仕事です。また、クライアントの課題をヒアリングし、自ら導き出したアイデアを提案することも重要な業務。相手の状況や立場に思いを巡らせながら、積極的にプランを出すことができるコミュニケーション能力のある人にも向いているでしょう。

コンサルタントになるためには

コンサルタントは特定の学歴や資格が必要な職業ではありません。ただし、「経営」「建設」「補償」「IT」など細かく領域が分かれているため、まずはどの分野で活躍したいのかを決めることが大切。その後、大学や短大、専門学校などで希望する分野の専門知識を身につけ、コンサルティングを専門に行う企業に就職するのが一般的なルートです。

ワンポイントアドバイス
ステップアップのために
オススメの資格とは?

コンサルタントとしてステップアップするためには、資格の取得も有利です。例えば「公認会計士」や「税理士」、「中小企業診断士」などを取得することで、クライアントに対してより説得力のある提案ができ、仕事の幅も広がっていくはず。また、大学院やオンラインスクールなどで「MBA(経営学修士号)」を取得することもコンサルタントとしてのスキルアップにつながるでしょう。