中川 諒介さん
インタビュー公開日:2020.07.29

軽量鉄骨という材料で下地を組み、
建築の内装の下地をつくる仕事。
「返り墨から寸法を測り、それに合わせて軽量鉄骨を切断し、建て込んでいきます」。作業手順について、中川諒介さんが教えてくれます。仕事は、建築の内装工事。壁紙などで仕上げるための下地をつくっています。担当しているのは、軽量鉄骨でその骨組みをつくること。軽量鉄骨は、おおむね0.8ミリ以下の薄い鋼板を折り曲げ、断面をCのような形にした長尺の材料です。骨組みをセットしたら、その上に石膏ボードなどを張り、下地が完成。そこまでが、中川さんの勤務するミツヤが手掛けている仕事です。
「必要な軽量鉄骨の寸法(長さ)は現場に合わせて測りますが、建築の寸法は壁芯(壁の中心)を基準とするため、そのままでは測れません。このため、壁芯から一定の距離を置いて引かれる基準線から計測するんです」
その基準線のことを〝返り墨〟というのだそうです。専門的な解説もさらりとこなす中川さん。丸鋸のような切断機でギュイーンと軽量鉄骨を切断、サッと抱えてテキパキと現場に設置していきます。入社5年、すっかり手慣れたようすです。
間違えなければ、覚えていけない。
失敗こそが成長していくための鍵。
同じように見える壁にも、空間を仕切るだけの一般壁から、火災の延焼・音漏れなどを防ぐ耐火遮音壁など、さまざまな種類があり、施工方法も違うのだそうです。
「真っ先に施工する耐火遮音壁は、床面から天井まで隙間なくつくる必要があります。それだけ軽量鉄骨も長くなり、建て込みの手間も変わります。そうした仕様に応じた知識を身につけることも大切なんです」
技術者としての表情をのぞかせる中川さんですが、入社当初は先輩に付きっきりで、補助作業を行うところからスタートしています。そして3年ほど経つと、少しずつ実作業を任されるようになっていきました。
「〝ちょっと、やってみるか?〟といった感じで徐々に経験を積ませてもらいましたが、失敗も多かったですね」
少し、照れ臭そうに話す中川さん。ただ、そのたびに先輩に指摘され、考えたことが今につながっているのだそうです。
「間違えないと覚えないし、自分でやらなければ身につかない。それが実感ですし、失敗こそが成長の糧だと断言できます」
機会が与えられたら、やってみる。
そして全力を尽くすことがモットー。
小学1年生からサッカーを続け、高校でもサッカー部に所属していた中川さん。進路は当初から就職を希望していたものの、サッカーに没頭し、企業研究などの活動はあまりしていなかった、と打ち明けます。
「そんななかで、進路指導の先生に進められたのが当社でした。どんな仕事をするのかも知らないまま、面接を受けたことを覚えています。そこで始めて、業務内容を知りました」
仕事についてまとめた映像を観たり、実際の現場にも連れて行ってもらったそうですが、入社を決意し、この仕事に向かおうと考えた背景には、中川さん自身がずっと大切にしているモットーがありました。
「どんなことでも、〝とりあえず、やってみよう!〟というのが、私の信念です。できるか、できないかと考えるのではなく、与えられた機会に全力を尽くす。そうすればきっと、自分の道が見えてくると思っています」
見学させてもらったのは、大きな病院の現場。そのインパクトと、そうした工事に携われると想像できたことも、モチベーションになったのだそうです。
キツいと感じた市庁舎の仕事を終え
作業のスピードアップを実感する。
すでに数えきれないほどの現場を経験してきたという中川さん。そのなかでも特に印象に残っている内装工事として、道北地方のとある街の市役所の新築工事を挙げてくれました。
「消防庁舎と一体になった市役所でしたが、工事全体が遅れ気味だったこともあり、とにかく作業が急ピッチ。1日200平方メートルもの内装工事をこなしたことが思い出深いですね」
ベテランの先輩がどんどん進める作業を追いかけながら仕上げていくという、まさにスピード勝負。さすがに大変さを感じたものの、得たものも大きかったと振り返る中川さん。
「正直、キツかったですが、追われるように仕事をこなすなかで、作業がとにかく早くなりました。その後、大抵の現場は楽に感じるほどです。それと、思い出してみると楽しかったですね。10kgも太りましたし(笑)」
3カ月に及ぶ出張で仕上げた仕事。宿舎では、先輩たちとお菓子を食べまくった結果、超多忙な現場だったにもかかわらず、体重はアップ。すでにベテランの域(?)とも言えそうです。
自分の仕事が形になっていく醍醐味、
達成感が自分にとっての仕事の魅力。
同じ内装工事でも、市庁舎などの公共施設からオフィスビル、ホテル、病院など建物の種類や規模によって工事の進め方が異なるほか、技術者ごとに好みの現場もあるのだとか。
「私が好きなのは、今お話したような庁舎などの施設です。大きな吹き抜けのロビーでは、軽量鉄骨の幅が一般的な仕様の2倍、長さも4、5メートルになり扱いも大変ですが、そんな現場ほど、達成感があるんです」
広く高さのある空間に自分が建て込んだ内装下地がどんどん形になっていく。その醍醐味が魅力なのだと中川さん。話ながら、心なしか目がキラキラしているようです。
「とはいえ、自分は技術的にはまだまだ。スキルの証である一級技能士の取得を一つの目標としながら、手早く質の高い仕事を追求していきたいと思っています」
いつも指導してくれる、憧れの先輩を理想型に、鍛錬をしていきたいと熱意ある抱負を語る中川さん。最近は「一人で、よくやったな」と、その先輩に褒められることも増えたのだと、うれしそうな表情も見せてくれました。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

新しいこと、初めてのことに挑戦するためには勇気も必要ですが、あれこれ考えすぎずに、まずは立ち向かってみる、という姿勢を大切にしています。当たって砕けろ!きっと道は開けます。

株式会社ミツヤ

創業以来20年以上にわたって、マンション・ホテルから病院、オフィスビルに至る建築の内装工事を手がけ、品質の高さから多くの信頼を得ています。

住所
北海道札幌市白石区北郷2条4丁目6-27
TEL
011-879-5888
URL
http://www.kkmitsuya.jp

お仕事データ

建物の居住空間を快適に
内装工
内装工とは
壁や床、天井など、
建物内部を美しく装う!

建物の居住空間を快適に仕上げるのが内装工の仕事。とはいえ、「内装」と一口に言っても、建物の枠組みにボードを建てつけて壁を作る内装下地の作業から、壁紙の貼り付けや壁面の塗装まで幅広い分野があります。そのため、各専門職が分業して仕上げまでの一連の作業を担うのが一般的。例えば壁に使用する下地をつくる「鋼製下地組立工」、木製や鋼製の下地にボードや合版を張る「ボード張り工」、壁紙を天井や壁面に貼る「壁装工」、コテを使い壁面などに壁材を塗り仕上げる「左官工」、床材の張り付けから塗装などを担当する「床仕上工」などが挙げられます。内装工の仕事は見栄えにも直結することから、技術の良し悪しが、建物の完成度を左右するとも言えるでしょう。

内装工に向いてる人って?
一つひとつの作業に責任を持ち、
デザインやセンスを磨き続けられる人。

内装工は建物の仕上がりを左右する仕事のため、一つのミスや手抜きが見た目の違和感に大きな影響を与えてしまうシビアな一面もあります。室内空間を美しく機能的に手がけるためには、使う人のことを想像しながら一つひとつの作業と向き合う責任感が必要です。また、デザインやセンスを磨き続ける勉強熱心な姿勢も求められるでしょう。体を動かすことが多い仕事なので、体力に自信がある人も向いています。

ワンポイントアドバイス
キャリアアップには、
「内装仕上げ施工技能士」!

内装工としてキャリアアップを目指す場合、国家資格「内装仕上げ施工技能士」の取得がオススメです。試験は共通科目の学科試験と、「プラスチック系床仕上げ工事作業」「鋼製下地工事作業」「ボード仕上げ工事作業」などから選ぶ実技に分かれ、それぞれ1級、2級、3級と難易度で区分けされています。この資格を取得することは内装工の技術の証となり、仕事の幅を広げていくためにも役立つでしょう。