氣田 乃々楓さん
インタビュー公開日:2022.07.26

事務系の仕事を希望していたが
橋の工事現場を見に行った訳とは?
「本当に、参加しなければダメですか? と、先生に聞いたら、ちょっと怒られてしまって……。2年生の夏でした。それは、採用試験の受験希望者向けの見学会。地元の芦別にある橋の工事現場でした」
少し照れながら、そう話し始めた氣田乃々楓さん。その地元の高校を卒業し、2021年に隣町にある植村建設に入社しました。高校は普通科。土木分野の知識はゼロでした。
「正直、業種としても特に興味はありませんでした。地元のエリアにある安定した老舗企業、その総務部スタッフの募集ということで応募したんです」
事務系の仕事に就きたいと考えていた氣田さん。経理や庶務などを行う総務部は、まさに希望していた仕事だっただけに、「事務職がなぜ、現場を見る必要があるの?」というのが、素直な気持ち、素朴な疑問だったそうです。でも、実はそれは、入社後の氣田さんの仕事に大いに関係することでした。
オフィスにいながら工事現場を支える
『建設ディレクター』の仕事に就いて。
氣田さんの肩書きは『建設ディレクター』。建設・土木業界でもまだ新しい職域であり、主催団体の一般社団法人建設ディレクター協会によると「ITスキルとコミュニケーションスキルによって、オフィスから現場支援を行う」ことがその役割とされています。
「施工写真の整理や図面作製など、現場担当者が担ってきた業務を代わりに行うことで、労働時間を軽減することが私たちの仕事です」
男女問わず現場に関われる環境をつくることも目的となっているそうです。ちなみに、氣田さんの内定通知書の所属は「ICT事業部兼総務部」。ICT(情報通信技術)を活用し、デジタルデータを用いることで、作業効率・安全性などを向上させるICT施工を支援する部門です。植村建設では2016年頃から、本格的にICT施工に取り組んできましたが、業務量が増えるなか、必要となったのが建設ディレクター。氣田さんと、同じ高校の同級生、岩渕恵理奈さんがそこに抜擢されたというわけです。
レーザー測量したデータの解析業務と
解析データを元にした図面変換を担当。
氣田さん、岩渕さんの二人が、入社後にまず経験したのは、3次元レーザースキャナによる現場の測量業務でした。原理はちょっと難しいのですが、工事などを行う場所にレーザーを照射し、その場所の形状を点群データ(デジタルデータ)化するというのが作業内容。この点群データを用いて3D図面を作製し、その図面データによってバックホーなどの建設機械を自動的に制御するという、ICT施工のスタート地点ともいえる測量業務に秋口まで携わりました。
「日焼けすることが何よりも気になる仕事でしたが(笑)、現在の業務を行う上で必須となる経験だったと、振り返って理解できます」
そう口を揃える氣田さんと岩渕さん。現在は、測量した点群データから施工には関係のない不要な部分を切り取るデータ解析業務と、解析データを重機などに読み込ませるための図面変換業務が二人のメインの仕事となっています。
同期入社の同級生と助け合いながら、
建設ディレクターとしての仕事を体現。
「リアルタイムで現場とやりとりができることも、ICTを用いるメリット。測量したばかりのデータを現場でクラウドに上げてもらうことで即座に確認でき、すぐにビジネスチャットツールで照会することも可能です」
具体的な質問が必要なら、オンラインで画面共有しながら打ち合わせ。2年目にしてICTの意義を理解し、建設ディレクターとしてのワークスタイルを体現しているようです。測量の経験を通して業務の流れを理解できていたことがプラスになっていると話します。計らずも現場を知ることの大切さを説いてくれた先生にも、感謝でいっぱいなのだとか。
「岩渕さんには、めっちゃ頼っています!」と話す氣田さんは、データを線にしていく図面変換業務がちょっと苦手。サクサク進める岩渕さんは、まさに頼れる友です。一方、「私は、データ解析業務のソフトがなかなか覚えられなくて。氣田さんがいないと困ります(笑)」とは岩渕さん。お互いに、助け合いながらの毎日です。
膨大な数の現場写真の整理を通して
工事工程を見られることに面白み。
データ解析業務、図面変換業務とともに、2年目の春から二人が担当しているのが工事写真の整理。毎日、現場担当者がクラウドにアップする写真を、工区(区域)・工事内容ごとにフォルダに振り分けていきます。
「まだまだ、教えてもらっている段階のなか、膨大な数の写真の整理には大変さもありますが、工事の工程が見えるところに面白みを感じています」
更地を整地し、材料を入れ、舗装して白線が引かれていく。例えば、道路工事のそんな過程をリアルに知ることができるのが楽しいと氣田さん。現場の負担が減って楽になったという声がうれしいのだと岩渕さんも仕事の魅力を話してくれました。現在、保有している建設ディレクター初級から、上位資格の中級へとステップアップすることが目標という二人。会社からの期待、そして地元業界からの視線を受けつつ、老舗建設会社のいぶし銀の社屋には新しい風が確かに吹いていました。
シゴトのフカボリ
建設ディレクターの一日
7:30
出勤。パソコンを立ち上げて、今日の業務内容などを確認
7:55
朝礼、ラジオ体操
8:00
サーバーにアップされている、工事写真の整理業務
12:00
昼休憩
13:00
午前同様、工事写真の整理業務
17:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

土木の世界のことは、何も知りませんでした。そして入社してみてわかったのは、最先端の技術や機器が使われているということ。難しいことも多いのですが、積極的に覚えていきたいという、私の決意表明です!

植村建設株式会社

1953年の設立以来、地元のインフラ整備を手がけてきた老舗企業です。UNiCON(ユニーク・コンストラクション)をテーマにICT事業にも力を入れています。

住所
北海道赤平市東文京町1丁目1番地
TEL
0125-32-3141
URL
https://www.uemurakk.co.jp

お仕事データ

今後、注目のデジタル人材!
ICT職
ICT職とは
ITスキルを使って、
さまざまな課題を解決する仕事。

ICTとは「Information and Communication Technology」の略称で、日本語では「情報通信技術」。インターネットなどを経由して人と人とをつなぐのが主な役割です。ICT職は、IT機器の設定や問い合わせ対応などのヘルプデスク、運用保守といった仕事に加え、IT技術を使った分析結果から課題解決の提案をしたり、自社の生産性を向上させるためにシステムによる支援を行ったり、幅広く活躍する新しい職種。最近では自治体や運輸企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるために積極的に人材を採用する他、建設業界ではITとコミュニケーションのスキルによって、オフィスから現場支援を行う「建設ディレクター」というICT職も登場。今後、ますます注目を集めるはずです。

ICT職に向いてる人って?
IT技術を日々学び、
課題解決に結びつけるアイデアマン。

CT職はITスキルを使って、さまざまな課題を解決するため、日々進化するテクノロジーをキャッチしながら新たな技術を常に学ぶ姿勢が必要です。また、自らが直接システムを作らずとも、IT技術を活用して業務の効率化や働き方の改善などをサポートするケースも多いため、アイデアマンにも向いているでしょう。バックオフィスで現場を支援することもあるので、コミュニケーション能力も大切です。

ICT職になるためには

ICT職は最近の仕事のため、必要とされる資格や学歴には決まりがありません。高校や専門学校、短大、大学を卒業後、ICT職を募集する企業や自治体などに就職するのが一般的です。ただし、基本的なIT技術については学んでおいたほうが有利に働くでしょう。課題解決のためのヒアリングや分析スキルも求められるため、経営やマーケティングを勉強しておくのもオススメです。

ワンポイントアドバイス
今後、ますます広がる
「DX化」に向けてニーズが急上昇!

ICT職はITスキルを活用し、顧客や自社の課題を解決する仕事。最近ではデジタル技術を活用してビジネスモデルや働き方を変革させることで、ライバル企業よりも優位に立つための「DX」が大注目されています。ICT職は、この「DX」を担う人材としても活躍できる可能性が高い職種です。今後、企業ではますますDXを取り入れていく見込みのため、ニーズが急上昇するといえるでしょう。

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