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山本  忠さん
インタビュー公開日:2023.01.12

日本一の昆布産地で
地元の漁師を支える。
縄文文化にまつわる世界遺産に登録され、近年注目の的となった函館市南茅部(みなみかやべ)地区。古くから昆布漁のまちとして知られ、日本で初めて昆布養殖が行われたのもこの地域。国内生産量の15%を占める日本一の昆布産地です。
そんな南茅部で、昆布漁船の船外機(外付けエンジン)や加工機械の販売、メンテナンスを手掛けているのがT&A(ティーアンドエー)マリンという会社。お話を聞いたのは同社の2代目として2010年に事業を引き継いだ山本忠さんです。
「子どものころから将来は家業を継ぐんだろうと、漠然と思っていました。地元の工業高校を卒業した後は、大手の自動車販売店に就職し、4年ほど整備士として働いていました」
難しそう?いえいえ、
想像よりもきっとカンタンです。
2018年に会社を法人化し、社名を山本機械工業からT&Aマリンに変更。ちなみにTとAの由来は山本さんと奥様の名前の頭文字だそう。
「横文字にしたら全然覚えてもらえず」と笑う山本さんですが、南茅部の漁師にとって、T&Aマリンは無くてはならない存在。漁の安全と収入確保は山本さんらにかかっていると言っても過言ではありません。
「仕事の中心は船外機のメンテナンスです。機械としての寿命は10年ほどですが、長く使えるかどうかは日頃の手入れ次第。車と同じようにオイルを交換したり、不具合のある部品を取り替えたり。構造は車よりずっとシンプルなので、特別な知識や経験は要りません。例えばオイル交換なら、古いオイルを下から抜いて、上から新しいオイルを注ぐだけ。やり方さえ覚えてしまえば、誰でもできる作業です」
1年のうち、昆布漁はわずか数カ月。
そこが踏ん張り時。
作業は船を陸に上げて行うこともあれば、海に浮かべたまま船に乗り込んで行う場合もあるそう。
「大掛かりな修理の時は船外機を取り外して、工場で作業をします。時には全て分解して組み立て直すオーバーホールを行うこともあります」
昆布漁は夏場が漁期となるため、5月から8月までが同社の繁忙期。前半は漁期に備えた整備が中心となり、漁が解禁される7月以降は突発的な故障などに対応します。
「漁期に船を出せないのは漁師にとって死活問題なので、トラブルがあれば出来るだけ早く修理して、漁を続けられるようにするのが自分たちの役目。忙しくはなりますが、この仕事に携わる以上、ここが踏ん張りどころです」
9月になると一気に落ち着き、まとめて有休や代休を取得するスタッフが多いといいます。
「1カ月で10日ほどしか出社しない人もいますが、夏場にがんばったぶん、休める時はしっかり休んでもらって構いません。メリハリを付けた働き方もこういう仕事ならではだと思います」
たとえ儲けにならなくても、
漁師のためにできることをしたい。
現在、南茅部地区で昆布漁を生業とする事業者は約400。かつては同地区でも複数の会社が船外機の整備を手がけていましたが、後継者がいないことなどで廃業が続き、今ではT&Aマリンだけとなっています。
「ウチでは船外機の他に、収穫した昆布を洗う機械や乾燥させる機械の販売とメンテナンスも行っています。ただ、この仕事をしていると昆布とは全く関係ないことで呼ばれることもしばしば。良く言えば頼りにされているということですが、悪く言えば何でも屋(笑)。それでも自分は漁師が困っているなら、なんとか力になってあげたいという気持ちが強いんです。だから正直、儲からない仕事も多くって(苦笑)」
取材中、たまたま掛かってきた電話の用件は『真空パックの機械が壊れたから見てほしい』というもの。
「こうやって、とにかくいろんな仕事を頼まれるんです(笑)」
イヤイヤではなく、
楽しめる仕事を続けたい。
取引先である漁師について尋ねると「基本的にデリカシーがない(笑)」とキッパリ。
「口は悪いし、クセも強いし、こっちが触れられたくないことにも、お構いなしに踏み込んできます(笑)。ただ、裏表がないのでこちらも変に気を使う必要がありません。サバサバしていて、付き合いやすい相手だと思います」
山本さんの言葉の端々から地元漁師への愛情とリスペクトが伝わってきます。最後に、仕事に対する考えを尋ねてみました。
「仕事は人生の一部でしかないというのが自分の考えです。プライベートを犠牲にしてまで働く必要はないし、好きでもない仕事をイヤイヤやるのはつまらない。だからこそ、自分がやっていて面白い仕事、やりがいのある仕事をしていたい。そのほうが人生が豊かになると思っています」
全国的に見れば漁業者は減っているものの、同社に限っては、仕事が増えているのだそう。「焦って会社を大きくするつもりはないのですが、いつか渡島全域に仕事を広げていきたいという夢を持っているんです」
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
船外機の試運転はここで
工場内に水槽があるのは船外機のメンテナンスを行う会社ならでは。プロペラを交換した後などは、ここで試運転を行います。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

せっかく仕事をするのなら、やってみたいこと、面白そうだと思うことにチャレンジしましょう。そのほうが有意義な人生をおくれるはず!

株式会社 ティーアンドエーマリン

昆布漁師が使用する漁業機械をトータルサポート。漁船に搭載する船外機や、昆布洗浄機・昆布乾燥機といった昆布加工用機械の販売・修理を手がけている。

住所
北海道函館市尾札部町769-1
TEL
0138-63-3249
URL
https://r.goope.jp/ta-marine

お仕事データ

機械を使った暮らしと産業を守る
機械設備メンテナンススタッフ
機械設備メンテナンススタッフとは
機械設備の安定稼働を支え
暮らしとビジネスの安心を守る。

住まいや店舗、工場、一次産業などで使われるさまざまな機械設備について、設置や修理、メンテナンスを行う仕事です。機械設備が壊れると「生活が不便」「営業ができない」など影響が大きくなるため、故障が発生した時にはスピーディーに対処したり、定期的なメンテナンスでトラブルを未然に防いだりするのが主な仕事です。現地での対応が難しい場合は一度製品を回収し、工場などで修理を行うこともあります。
機械の老朽化など、修理が難しいと判断される場合は、新しい機械への買い替え提案なども行います。

機械設備メンテナンススタッフに向いてる人って?
「なぜ?」「どうして?」を
深く掘り下げる探究心がある人。

一口に修理やメンテナンスと言っても、作業内容は多岐にわたります。消耗部品の交換や発生頻度の高いトラブルであれば、マニュアルなどを見ながら対応することが可能ですが、老朽化した機械が故障したり、原因不明の不具合が生じたりした場合は、自身の経験や同僚のアドバイスを頼りにして、自ら問題を解決していかなければなりません。
こうした仕事で大切なのは、表面的な知識を覚えるのではなく、「なぜそうなるのか」「別の場合はどうか」など、物事を追求して理解を深めようとする向上心。日頃からそのように習慣づけることで、さまざまな故障やトラブルに対応できる経験が積み重なっていきます。

機械設備メンテナンススタッフになるためには

機械設備を製造しているメーカーや販売代理店に入社したり、修理・メンテナンスを専門に行う会社に入社することで、この職業に就くことができます。多くの場合、職場の研修やOJTを通じて業務に必要な知識や技術を習得します。
仕事をするために資格は不要ですが、機械設備のメンテナンスに関係する資格として、国家資格の「技術士」、国家検定の「機械保全技能検定」などがあります。

ワンポイントアドバイス
修理メンテのプロになれば
長く活躍することができます。

機械設備には定期的なメンテナンスや修理が欠かせません。どんな機械設備を扱うかは担当する業界によって千差万別ですが、一度身に付けた知識や経験は他の業界の機械設備でも応用できることが多いです。あらゆる機械に精通したプロフェッショナルとなれば、長く活躍していけるでしょう。