田原 良輔さん
インタビュー公開日:2023.02.14

道央圏で不動の人気の山中牧場で、
中堅としてバター製造の一翼を担う
酪農を営みながら乳製品などを製造するケースは、今では珍しいものではなくなりました。各地で、さまざまな製品に出会えますが、そうしたなかでも味わい、品質の良さから道央圏を中心に不動の人気を誇るのが、赤井川村にある「山中牧場」のソフトクリームや牛乳。行楽シーズンともなると、豊かな自然のなかにたたずむショップの駐車場には地元外のナンバーの車がずらりと並び、内外からの多くの旅行者で賑わいます。
「こんなによく知られているとは、入社するまで知りませんでした。先入観は一切なく、ただただ農業に関わる仕事ということで、この村にやってきたんです」
そう話す田原良輔さんは、道南の八雲町出身。地元で有名なのは、同じ「山」でも山川牧場なのだと笑います。それから13年。会社の一翼を担う中堅社員となり、現在は養豚などの業務とともに、山中牧場が近年、特に力を入れている「プレムアムバター」というバター製造の第一線で活躍しています。
季節によって変化する牛乳の脂肪分
「感覚」を研ぎ澄ませて品質を調整
山中牧場がバターづくりをスタートさせたのは、今から20年ほど前。研究を重ね、品質を高めた「プレムアムバター」は人気を呼び、近年、生産量が急速に増えてきています。バター製造の工程は2日間に及ぶそうです。
「まずは、生クリームづくり。原料を独自の配合でタンクのなかに入れ、それを加熱、殺菌して1日間寝かせます。そして翌日、寝かせた生クリームをバターチャーンという攪拌機に入れて分離させ、バターにしていきます」
メインの原料はもちろん牛乳ですが、季節の温度変化等にともなって、含まれる脂肪分などが年間をとおして変化します。
「一方、製品としてのバターの品質は均一にしなければなりません。そこで室温、クリームや水道の温度などを管理し、品質を調整していきます。その塩梅が難しい部分でもあり、おもしろいところでもありますね」
自分が扱っているのは生きている素材。品質をコントロールするためには、『感覚』も研ぎ澄ませる必要があるのだと田原さん。まさに職人技といえそうです。
生乳等の生産から商品製造・販売まで
業務の幅広さに魅力を感じ入社を決意
道内・八雲町の農家の五男として生まれた田原さん。農業系大学の附属高校へと進み、大学では農業のマーケティングと環境について学びました。将来は、農業経営をサポートするような役割を果たしたいと考えていたのだそうです。
「大学で身につけた知識を活かし、農業関連の分野で働きたいと思っていましたが、4年生の時に、アメリカの投資銀行の破綻に端を発するリーマンショックが発生。金融危機の影響を受け、農の業界の求人もほぼ、すべてなくなってしまったんです」
大学時代にアルバイトをしていたイベント制作関連の仕事も視野に入れ始めた頃、出会ったのが山中牧場の求人でした。そして、業務の幅広さに魅力を感じたといいます。
「生乳や豚肉の生産に加えて、商品の製造・販売、さらに配達までを担っているというスタイルに興味を惹かれました」
入社後は、高校時代から経験してきた農作業から始まり、乳製品などをつくるための知識、技術を一から教わりながら学んでいきました。
看板商品・バター製造の責任者に抜擢
先輩の情熱に思いを馳せて味を守る
「バターの製造に関する知識は、ほぼゼロだったので、見習いとして先輩の作業補助をしながら、少しずつ手順などを覚えていく日々でした」
そうして製造の流れを知り、工場長のもとで製造技術を磨くなか、田原さんはバター製造の責任者に抜擢されます。それまで研究や製造を引っ張ってきていた先輩の異動などもきっかけでしたが、突然の指名に一気にプレッシャーが高まったと振り返ります。
「指示通りに作業を行えば良い立場と、責任者として製造を取り仕切る立場では、業務内容は変わらなくても視点がまったく異なります。加えて、ちょうど、当社のバターの販売が伸びていた時期でした。私のせいでその流れを止まるようなことがあったら、どうしよう……と不安になったことを覚えています」
そこで、田原さんが頼りにしたのが、気温をはじめ、製造した日の条件や仕上がりのようすなどを細かく記した製造データでした。その数字を参考にしつつ、諸先輩の努力と情熱に思いを馳せながら山中牧場の味を守っています。
品質にこだわる山中牧場のバター製造
お客さんからのリアクションも喜びに
出荷量が増えているとはいえ、大手メーカーに比べれば、山中牧場の製品は少量少品種。
「たくさんつくれない代わりに、品質にこだわるのが当社のバターづくり。バターと呼べるのは水分17%以下の製品だけですが、当社ではさらに水分量を落とし、濃厚で風味豊かなバターに仕上げています」
そうしてできたバターなどを、お客さんの元へも届けているのが山中牧場の特徴。「バター製造の見習いをしていた頃は、私もお客さんに届けていました。リアクションが直接もらえることは大きな喜びでしたし、働きがいを感じました」
入社から7年ほど赤井川村にある寮で暮らし、今は結婚を期に小樽へ移って通勤している田原さん。利便性の良さも魅力だそうです。
「ここはまさに山の中ですが、30分も走れば小樽に出られます。環境の良さと、都市に近いというギャップが赤井川の魅力ですね」
今は希望して勤務時間を繰り上げている田原さん。早朝、小樽の海岸から登る朝日と、山を染める雲海を眺めながらの毎日なのだと、ちょっと自慢げに話してくれました。
シゴトのフカボリ
乳製品製造の一日
5:30
出社、前日に寝かせた生クリームをチャーンに入れて攪拌、分離させる作業
12:00
昼食、休憩
13:00
朝と同じ工程で、もう一度生クリームを攪拌・分離し、充填
15:30
作業終了、帰宅
田原さんは育児の関係もあり、会社の協力で勤務時間を前倒ししています。また、バターの製造だけではなく、牛乳製品の加工、養豚に関わる業務も行っています
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

「美味しい!」と喜んでいただける製品をつくるため、品質にこだわっています。バター、牛乳、ハム・ソーセージに加えてパンの製造も始めており、当社の製品で朝食を提供できるようになれればいいなと思っています。

株式会社 山中牧場

1970年から赤井川村で酪農を営み、おいしい牛乳を届けることを目指して乳製品の製造を開始。人気のソフトクリームに加えバター製造にも力を入れる。

住所
北海道余市郡赤井川村字落合478番地1
TEL
0135-34-6711
URL
http://yamanakabokujyou.co.jp

お仕事データ

多くの人においしさを!
食品製造スタッフ
食品製造スタッフとは
食材の下処理や加熱、調理を行い、
たくさんの「ウマい」をつくる!

食品メーカーをはじめとする企業の工場で、お弁当やお菓子、パン、水産加工品、麺などの食品を手がけるのが食品製造スタッフ。大規模な工場では機械化が進み、食材の洗浄や下処理、加熱、調味、包装など工程ごとに生産ラインを分けて作業を行っています。食品の種類や工場によっては手作業を大切にする企業もあり、職人のようにパンやスイーツをつくる食品製造スタッフも少なくありません。家庭の食卓でよく見かける商品を手がけるケースでは、広くおいしさを届けられるやりがいが感じられます。

食品製造スタッフに向いてる人って?
コツコツ型で衛生面にも気を配れる、
「食」が好きな人。

食品製造スタッフは、当然のことながら「食」が好きな人に向いている仕事です。機械や調理器具などをきれいに洗浄したり、自らの身だしなみを徹底的に整えたりしなければならないため、衛生面に最大限の気遣いができることも必要です。また、製造の際には正確な作業を繰り返さなければならないため、いわゆる「コツコツ型」にも面白い仕事に映るでしょう。

食品製造スタッフになるためには

食品製造スタッフになるために必要な資格や学歴はありません。高校や専門学校、短大・大学卒業後、食品メーカーなどの採用試験を受けて、合格するのが一般的なルートです。未経験からチャレンジできる職場も多く、アルバイトやパートスタッフとして働いて、正社員登用の道のりを歩む人も少なくありません。ある程度経験を積むことで部門のリーダーや工場長へのステップアップも可能です。

ワンポイントアドバイス
気温や湿度、食材の品質など、
日々の変化によって小さな工夫を。

現在では機械化された工場が多いものの、やはり人の「感覚」もおいしさを左右する大きな要因の一つです。その日の気温や湿度を肌で感じて投入する水の量を調整したり、食材の品質を見極めて加熱時間を変えたり、一定のクオリティを届けるためには小さな工夫が必要。食品製造スタッフの仕事は一見すると単調な作業に思えますが、日々変化を感じながら働けるのです。

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