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小袖 魁翔さん
インタビュー公開日:2023.04.05

貨物専用のターミナルで担当する
誰も知らない貨物車両の入換業務。
鉄道ファンといえば、どちらかといえばマニアだけの世界と思われてきましたが、最近は乗り鉄、撮り鉄に、車両鉄、呑み鉄と、さまざまなスタイルで鉄道旅を楽しむ人たちも増えているようです。その一方で、同じ鉄道でも、一般の人にはほとんど知られていない分野と業務があります。
「鉄道の仕事といえば、私も運転士くらいしか知らず、就職にあたって調べてみて、初めてこの仕事を知りました」
そう話す小袖魁翔(こそで かいと)さんの勤務先は札幌市白石区にある札幌貨物ターミナル駅。日本貨物鉄道(JR貨物)が管轄する貨物専用の駅です。高校の担任の先生から勧められてJR貨物に入社して2年。担当する貨物車両の入換業務の腕前はすでに一人前です。
「今はもう、任された業務はしっかりとこなせるようになりました。日々、時間に追われ、忙しい作業ですが、それが逆に意欲につながっているんです」
仕事に対する自信がうかがえる小袖さんの表情。東京貨物ターミナル駅に次いで、国内第2位のコンテナ貨物取扱量を誇る現場に、欠かせない存在となっているようです。
400mの貨物車両を無線で誘導し、
コンテナ専用ホームに移動させる。
貨物車両の入換業務というのは、到着した貨物列車を荷役線と言われるコンテナを積みおろしする線に誘導したり、必要に応じて車両の編成を組み替えたりする作業のことです。
「例えば、本州から列車が運んできたコンテナは札幌貨物ターミナル駅ですべて取り卸ろしますが、そのためには、到着した貨物列車をコンテナホームという荷役線に移動させる必要があるんです」
この駅に入線する貨物列車の長さは最大400m。20mの車両を20両連結しています。各車両には5個のコンテナを載せられるので、最大100個のコンテナまで運ぶことができます。コンテナホームに移動させる時は、牽引してきた機関車は最後尾になるので前が見えません。そこで、小袖さんの出番です。もともと最後尾だった車両の先端に乗り込み、無線で運転士に指示を出すのです。
「貨物車両は安全性を保つため定期的に検査を受けることが義務付けられています。長い車列のなかに混じっている検査対象の車両を修繕箇所まで移動させることも入換業務の仕事です」
同じように車両をメンテナンス箇所に誘導したり、コンテナホームに誘導したり……と行ったり来たりを細かく繰り返していくのだそうです。
6カ月の見習い期間を経て独り立ち。
先輩の言葉に支えられながら成長。
「車両の位置とスピードを見極め、『あと何メートル』と停止位置を指示する誘導が主な仕事ですが、コンテナホームには目印が打ってあるので、それに合わせて指示をすれば、ちゃんと収まるようになっているんです」
いとも簡単そうに話をする小袖さんですが、もちろんすぐに作業を覚え、できるようになったわけではありません。1ヶ月間の新入社員研修が終わると、貨物車両の入換業務を行っている現場に入り、約6カ月間にわたる、「見習い期間」と呼ばれるOJT教育が行われます。当初1〜2週間は指導係の先輩について歩き、仕事の流れを学びます。その後、部分的に作業を経験しながら、徐々に全体の流れを覚え、1年目の冬を迎える前には独り立ちとなります。
「やってみると難しいし、なかなか覚えられないし、ミスをしてへこむし……でも、同期に後れをとりたくないという気持ちが強かったのと、先輩に注意されるほど、『よし、覚えてやろう!』というモチベーションが高まり、集中して取り組めました」
同時に、何もわからない見習い期間の大変さを知る先輩が、様子を見ながら「大丈夫か?」と声をかけ、精神的に支えたくれたお陰で頑張れたと振り返ります。
父親の仕事とのつながりに驚き、
物流を担っていることを実感。
小袖さんには、貨物車両の入換業務の仕事についたことで思いもよらなかった出会いもありました。それは、自分のお父さんの仕事とのつながりでした。
「私がJR貨物に就職することを知った時、『会社では貨物列車で本州から届く荷物を商品として扱っている』という話を父から聞かされたんです。自分が手がける列車が、父の仕事と直接、関係していることに驚きました」と、自分の仕事は物流の一端を担い、誰かの役に立っていることを実感できたと話す小袖さん。
「作業中の事故を防ぐため、列車の発車時間、到着時間、入換作業を行っている箇所など、とことん確認するようにしています。それとともに、自分が担当した部分についてミスなどがないか、完全に心配がなくなり、大丈夫と思えるまでチェックします」
着実に荷物を届けられるように。荷主さんと、待っている人のため、入換作業のトラブルで迷惑をかけることがないように。小袖さんが常に、意識していることなのだといいます。
作業時間の短縮につながる前準備。
自ら判断しながら業務を行う日々。
貨物車両の入換業務を行う際に、小袖さんがもう一つ心がけていることがあるそうです。それは前準備を行うということ。代表的なものが、電磁ブレーキの切断。車両には通常、メインの制動装置である空気ブレーキと電磁的な指令により車両を止める電磁ブレーキの2つが付いています。入換業務で車両の連結を切り離す時には両方のブレーキを切り離しますが、前準備として予め電磁ブレーキを切断しておけば、時間短縮につながります。
「特に車両が多く連結されている場合は作業時間がかかってしまうので、自分で判断しながら前作業を終わらせます。いざ入換業務開始となった時、すでに準備ができていると、ちょっと誇らしげな気分にもなるんです」
小袖さんが入社した年は歴史的な大雪。ダイヤが乱れ、貨物列車が集中して入線したため、入換作業も多忙を極めたそうです。
「1年目でその経験をしているので、もう何がきても怖くありません(笑)。経験を重ね、入換作業の計画立案や入換業務を担当する同僚への指示ができるようになることが、今の目標です」
ターミナル駅の線路のポイント切り替えを行う信号業務にも興味が出てきたと話す小袖さん。もうすっかり『鉄道マン』の顔です。
シゴトのフカボリ
貨物車両入換業務の一日
9:00
出勤、貨物車両の入換業務
12:00
昼休憩
13:00
貨物車両の入換業務
17:45
休憩・夕食
19:00
貨物車両の入換業務
0:30
仮眠
4:30
起床、貨物車両の入換業務
9:00
退勤
【勤務の一例】
*貨物列車は夜間に多く発着します。これに合わせて、勤務は24時間(上記)→非番→休日という標準パターンと夜勤のみの業務を組み合わせたシフト制となっています。
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
無線機
コンテナホームへ貨物列車を誘導する際、運転士に停止距離などを知らせるために必須の道具です。これがないと、仕事になりません!

お仕事データ

線路の「主治医」。
鉄道保線員
鉄道保線員とは
線路のゆがみやズレを直し、
列車の安全な走行をサポート。

列車の安全・安心な走行を支えるために線路の保守や点検などを行うのが鉄道保線員の仕事。線路の巡回によってゆがみやズレといった補修箇所を見つけたり、実際にレールを交換したり、いわば線路の「主治医」のような役割を担います。保守用車で軌道材料の運搬や軌道整備の修正を行うこともあり、車両の入れ替えを誘導するケースも。列車が通る合間を縫って作業が行われる場合もあるため、安全を確保することも大切な仕事です。

鉄道保線員に向いてる人って?
きめ細かで集中力があり、
チームワークを発揮するのが好きな人。

鉄道保線員は線路内で作業を行うため、安全に業務を行うための集中力が必要。複数人で協力しながら仕事を進めるため、チームワークも求められます。線路の小さな補修箇所も見逃さないためには、きめ細かな人柄も大切。また、重い機材や資材を運ぶこともあるため、体力に自信がある人も向いているでしょう。

鉄道保線員になるためには

鉄道保線員になるために、特に必要な資格や学歴はありません。高校、専門学校、短大、大学を卒業後、鉄道会社や保線専門企業に就職するのが一般的なルートです。多くの場合、新人研修を経て保線の業務に就くことになります。保線技術を一通り習得することで、役職者へとステップアップできる可能性もあります。

ワンポイントアドバイス
会社の規模によって、
すべての工程を経験できることも。

会社の規模によっては、工事計画の作成、点検・検査、作業現場の指揮監督など、専門分野ごとに分業化されていることもあります。小さな会社では、少人数で線路や橋、トンネルなどを管理することもある反面、すべての工程を経験できることから手応えも大きくなります。ただし、作業の大半は列車の運転本数が少ない深夜から早朝にかけて行われるため、夜間勤務が多くなるでしょう。