有馬 佳宏さん
インタビュー公開日:2023.05.25

ホテルの仕事を目指し専門学校へ。
ソムリエを目指し大阪で就職。
黒いスーツに身を包み、気持ちよい笑顔と颯爽とした身のこなしでサービスをする、有馬佳宏さん。ブドウ畑とワイン醸造所や森・ガーデンを併設するワイナリー&ホテル、NIKI Hills Wineryでサービスを担当しています。
有馬さんがホテルでの仕事を目指したのは、進路を考え始めた高校生の時。「じっとしているのが苦手で、体を動かせる仕事がしたいと考えました。その中でも、スーツを着てカッコ良く働ける、そして芸能人にも会えるかもしれない(笑)、ということで、ホテルで働こうと決めました」。
高校卒業後に観光・ホテルの専門学校に入学。フロントや宴会、レストラン、ブライダルなどホテルのさまざまな分野のサービスを学び、その中でも有馬さんが心惹かれたのが、レストランでワインを選びサービスするソムリエでした。そこで、先生のすすめもあり、大阪の老舗五つ星ホテルに就職。宴会担当を経て、ソムリエが活躍するフレンチレストランに配属されました。
早くステージに立ちたい思いで、
ソムリエの勉強に励みました。
勤務しながら、ソムリエを目指した有馬さん。資格を取得するには酒類・飲料を扱う実務経験が3年以上必要で、「早くソムリエとしてのステージに立ちたい」と考えた有馬さんは、最短となる23歳での取得を目指しました。ソムリエの試験には、ワインの産地や銘柄、醸造方法などに関する筆記試験、味でワインやブランデーなどの種類を当てるテイスティング試験、そしてサービス実技試験があります。上司や先輩のアドバイスを受けられ、ホテルのバーでテイスティングの勉強もできる環境の中、試験前には睡眠時間を削って勉強したと言います。
その甲斐あり、晴れて最初の試験で合格。「先輩からは、(資格を)取ってからがスタートラインだと聞かされていました。実際に、ワインの知識はもちろん料理との組み合わせなど、勉強することは尽きません」。
有馬さんはさらにサービスの幅を広げるため、退職してオーストラリアへの語学留学を実行しました。
ワイナリー併設の環境に惹かれ、
北海道への移住と入社を決意。
帰国後、日本での就職先を探す中、元上司とNIKI Hills Wineryのオーナーが知り合いだったため、北海道へ縁がつながりました。ホテルに畑と醸造所が併設されているという、日本では他にない理想的な環境が、移住と入社の決め手だったと言います。
NIKI Hills Wineryのホテルはゲストが1日2組限定の小さなホテルです。そのため、フロント業務やレストランのサービス、ショップでの販売など、スタッフ一人一人がさまざまな仕事をこなします。
「仕事の幅が広がるので、知識も増えましたし、何より1組のお客様にチェックインからチェックアウトまであらゆる場面で関わることができ、笑顔を側で感じられる喜びがあります。お客様からお手紙をいただく機会も増えましたね。名前入りで、『良いサービスだった、また来たい』と仰っていただけるのは嬉しいです。その分、お客様に満足していただけるかどうかは自分にかかっているので、責任も大きく感じています」。
お客様の喜びと感動を生むため、
心を尽くしてサービスしています。
ソムリエとしても、有馬さんはこれまで培った力を発揮。レストランでサービスする際に料理に合うワインをおすすめする他、ショップで贈り物などのワインの販売も行います。
「贈られるお相手のワインの好みや、年齢、性別などできるだけ情報を聞き出し、喜んでいただけるワインを探ります。せっかく購入していただくのでお口に合うものを選びたいですよね」。
温度と湿度が一定に保たれたワインセラーを管理し、ワインの状態をチェックするのも大事な仕事です。ワインの熟成度合いや、酸素に触れて目減りしていないかなど、専門家だからこそ目視でわかる情報も多いと言います。
また、野菜や果物が豊富にとれる仁木町ならではの料理もお客様の大きな楽しみ。シェフが考案したメニューに基づき、有馬さんは演出を考えています。例えば、デザートにホテルのガーデンの花とドライアイスを添え、お客様の目の前でお湯をかけて煙を出すなど、驚きと感動を提供しています。
ワインづくりの現場は学びの宝庫。
サービスを通して地域貢献も。
後の目標は、ソムリエとしての知識をさらに向上させると共に、「有馬さんがいるからまた行きたい」と言われるよう、一人でも多くのファンをつけたいと日々の仕事に励んでいます。手が空いた時はブドウ畑に行って作業の手伝いをしたり、醸造の現場を見たりと、ここでしか学べないことがたくさんあります。冒険家でガイドでもある総支配人を始め、前職でさまざまな経験を持つスタッフからもいろいろな話を聞き、刺激を受ける毎日です。
そして、仁木町での生活も満喫しています。「大阪の都会で生活していたので、田舎の生活は新鮮です。周りに自然が多く、余市川があるのでワイナリーにも適した土地ですね。NIKI Hills Wineryのサービスを通して、仁木町を盛り上げて貢献できたらと思っています。サービスは無形の商品であり、価値はお客様が決めるもの。だからこそ、やりがいや魅力と同時に怖さもありますが、それを突き詰めていけたらと思っています」。
シゴトのフカボリ
サービススタッフの一日
9:00
出勤、全体朝礼
サービス担当者で予約・スケジュール確認
9:15
フロア清掃、ショップの在庫補充
10:00
ショップオープン、接客
レストランの準備
11:30
レストランオープン、サービス
14:00
休憩
15:00
片付け、洗い物、ディナーの準備
17:00
終業
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
ソムリエナイフとダストパン
ソムリエの必需品、会社から支給された開けやすいソムリエナイフ。そして、テーブルに落ちたパンくずなどをサッと片付けられるダストパン。これらは常に胸ポケットに忍ばせています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

疲れた時にホテルに訪れてホッとできる愛のこもったサービスは、機械には取って代わられないもの。ホテルで元気を充電したお客様が元の生活に戻って頑張っていただく、社会の好循環に貢献できたらと思います。

NIKI Hills Winery

33haの敷地内にブドウ畑と醸造所を持ち、宿泊施設とレストラン等を併設する複合型ワイナリー。ここでしか造れないワインと極上のひと時を提供しています。

住所
北海道余市郡仁木町旭台148-1
TEL
0135-32-3801
URL
https://nikihills.co.jp/

お仕事データ

TPOに合った最適なワインを提供
ソムリエ
ソムリエとは
お客様の好みや状況、料理に合わせ、
素敵な食事シーンを演出するワインを。

ソムリエはホテルやレストランで、お客様の好みや料理との相性を考慮し、最適のワインを提供する仕事。飲み物の提案や料理の選択のアドバイスといった対応が主な業務ではありますが、ワインの入荷や適切な保管、品質管理、グラスの管理、イベントの企画まで幅広い役割を担います。ワインは使用されているブドウの種類や産地、生産された年度などによって味が異なる奥の深い飲み物。お客様にとって何が好みなのかを素早く見極め、TPOに合った素敵な食事シーンを演出するのが腕の見せどころです。

ソムリエに向いてる人って?
ワインの深い知識を学ぶ熱量があり、
おもてなしや接客が好きな人。

ワインは最も歴史の古いお酒といわれ、地域や生産年度、作り手によって種類もさまざま。ソムリエにはその深い知識や相性の良い料理を学ぼうとする熱量が求められます。また、お客様との会話や立ち振る舞いなど、接客のプロとしてのスキルも必要。おいしいものを提供し、おもてなしをすることで喜ばれることが好きな人、観察力に優れていることもソムリエにとって大切な素養です。

ソムリエになるためには

フランスではソムリエは国家資格ですが、日本の場合は資格を持っていなくても働くことができます。とはいえ、最近は民間の団体が実施するソムリエ資格制度が浸透してきたこともあり、資格認定を受けてからソムリエを名乗るのが一般的です。ソムリエの検定試験を行っている団体は、日本ソムリエ協会(JSA)と全日本ソムリエ連盟 (ANSA)。中には日本ソムリエ協会(JSA)が実施するソムリエの認定試験の受験対策コースを設けている学校もあります。

※ソムリエ資格制度については、日本ソムリエ協会(JSA)や全日本ソムリエ連盟 (ANSA)のホームページをご確認ください。
https://www.sommelier.jp/index.html
http://www.ansa-w.com

ワンポイントアドバイス
ワインが身近になったことから、
ソムリエの存在価値も高まっています。

かつては高級なイメージだったワインですが、今や身近な飲み物として多くの人に親しまれています。日本のワイン消費量はしばらく安定して上昇すると予想されているため、ソムリエの存在価値はますます高まるでしょう。ベテランソムリエともなれば、国内外のコンクールで優秀な成績を収め、テレビ出演や講演会のゲストに呼ばれることも。こうした機会を利用して自分のお店を開業するソムリエもいるようです。