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佐々木 晴菜さん
インタビュー公開日:2023.08.23

子どものころから
「裏方」に興味津々でした。
札幌市山鼻エリアの閑静な住宅街。その一角に佇むレトロでオシャレな建物に入居しているのが、テレビ番組の制作やアパレルブランドを手がける株式会社タワーヴィジョンズ。今回、インタビューのマイクを向けたのは、アパレルデザイナーとテレビディレクターの二足の草鞋を履く佐々木晴菜さんです。
「小さなころから『裏方』の仕事が好きだったんです。家族とライブやコンサートに出かけた時も、非日常の空間が演出されるこの当日に向けて、いろんな人が準備を整えてきたんだと感動を覚えるくらいでした(笑)」
佐々木さんは高校卒業後、経専音楽放送芸術専門学校に進学。札幌吉本の裏方バイトを紹介してもらえるという噂を聞きつけたのが理由だと笑います。
「実際、在学中に札幌吉本の裏方として働くことができ、芸人と打ち合わせしたり、コントに使う小道具の位置をバミったり(ガムテープで印を付ける)、バイトといえども仕事内容はかなり本格的。やはり裏方の仕事は楽しいと改めて感じました」
テレビのディレクターとして、
裏方の仕事に刺激を受ける日々。
佐々木さんは専門学校卒業後、テレビの制作会社に就職。取材のコメントを録りに行ったり、生放送の事前VTRを準備したり、編集作業に携わるなどディレクターの役割を担います。
「北海道のローカル局は、東京のキー局に比べて比較的早い段階からディレクターを経験できるのもメリット。週に1回の生放送に向けて準備を重ね、本番を迎えるなど、まさに裏方の仕事に携われるのは私にとって刺激的です」
北海道のテレビ業界では会社を移りながらステップアップする人も多いとか。佐々木さんもいくつかの制作会社を経て、2019年に現在のタワーヴィジョンズに転職しました。
「社長とはもともと一緒に働いていて、独立するにあたってタワーヴィジョンズに誘ってもらいました。働き方や給与、待遇に不満を抱えていても、会社自体を変えるのは至難の業。だったら、自分たちで理想に近づける職場を作ろうというのが起業の合言葉でした」
可能性がゼロではない限り、
まず動いてみることが大切です。
タワーヴィジョンズはテレビ番組や映像の制作だけではなく、「やってみたいことにトライする」のが方針の一つ。佐々木さんは、以前の職場で小樽のゴム長靴メーカー「ミツウマ」のことを知り、馬が3頭並んだロゴマークをカワイイと感じていたそうです。
「社長にあのロゴマークをキャップやTシャツにデザインしたらカワイイと思うと伝えたところ、『やっぱりそう思う?』と盛り上がったんです。すぐにウチでミツウマのアパレルを展開しようと本腰を入れることになり、ライセンス契約に向けて先方とも話し合いを重ねるようになりました」
タワーヴィジョンズが創業した2019年は、折しもミツウマが100周年を迎えるタイミング。加えて、テレビの取材で何度も足を運んでいたご縁もあり、ロゴマークをアパレルに使用することができる運びになったといいます。
「先方は100年企業なので、私たちの話に聞く耳を持ってもらえないと半ばダメ元の気持ちでスタートしたプロジェクト(笑)。でも、可能性がゼロではない限り、まず動いてみることは大切だと実感した出来事です」
「ミツウマ」を広めるために、
モデル撮影にも乗り出しました。
佐々木さんが最初に手がけたのは、ミツウマのロゴを刺繍したキャップ。工場見学に赴いた時、実際に働いている人がベージュの帽子を被っていたことから、同じ色味のアイテムを作ろうと考えました。
「キャップを皮切りにTシャツやパーカー、バッグなどをデザインし、オンラインショップで細々と売るようになりました。私が重視しているのはデザイン性ではなく、ミツウマのロゴマークをシンプルに生かすことです」
一方、ミツウマで働く人は古くから使い続けているロゴマークだからこそ、「若い人にウケるわけがない」という思い込みからアパレル展開を不安視していたとか。そのため、洋服をきっかけにミツウマのことを若い世代に広めるのもミッションに掲げるようになりました。
「長靴のユーザーとは異なる層に情報を発信するため、北海道出身のアーティスト・怒髪天の増子直純さんに協力いただいてモデル撮影をしました。その結果、イベントなどでも少しずつ若い世代がアイテムを手に取ってくれるようになったと思います」
自分のデザインした洋服を
着ている人を見かける喜び。
現在、佐々木さんはテレビの仕事に加え、空いた時間にはアパレルのデザインやモデル撮影にも積極的に取り組んでいます。
「イベント販売の際、ミツウマのことを知らない人が『カワイイ!』とTシャツを手に取ってくれ、長靴のマークだと教えると驚かれたことも。音楽フェスでミツウマの長靴を購入している若い世代を見かけ、ほんの少しでも認知度の拡大に貢献できたのかもしれないとうれしく思いました」
「カッコいい!」「ミツウマってオシャレ」。そんな反応を受け取れるのが佐々木さんのやりがい。テレビの仕事が煮詰まった時、アパレルのデザインを考えるのも頭が切り替わるきっかけになると相合を崩します。
「マチナカでウチの服を着ている人を見かける機会も増え、思わず話しかけたくなります…が、怪しいのでガマンしています(笑)。アパレルは日々新しいものをリリースしなければ飽きられてしまう可能性も高いので、今は月に一つは新作を考えるのが目標。こうしてより幅広い世代にミツウマのことを知ってもらえる洋服を作っていきたいですね」
シゴトのフカボリ
アパレルデザイナー/ディレクターの一日
10:00
出勤
10:10
アパレルモデル撮影の準備
11:00
小樽へ移動
12:00
アパレルモデル撮影
15:00
テレビ局へ移動
16:00
テレビのリサーチ・資料作成
19:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

この言葉は以前、テレビの仕事で取材したアーティスト「BiSH(現在は解散)」のアユニ・Dさんから借りました。「裏方」の仕事も、アパレルのデザインも、まず動かなければ何も始まりませんでした。可能性がゼロではない限り、トライしてみるのが大切だと思います。

株式会社タワーヴィジョンズ

北海道・札幌市を拠点にテレビ番組の制作とローカルアパレルブランドの企画・製造・販売を展開。テレビ番組の制作現場で培った経験と知識をローカルならではのコンテンツづくりで地域に貢献。

住所
北海道札幌市中央区南12条西20丁目2-22
TEL
011-835-2625
URL
https://www.towervisions.org/

お仕事データ

独創性のある一着を!
アパレルデザイナー
アパレルデザイナーとは
ユニークなアイデアによって、
顧客ニーズを満たす洋服を生み出す仕事。

アパレルデザイナーは、新しい洋服のデザインと開発を手がけるのが主な仕事です。プロジェクトのスタートラインは、トレンドの調査や市場分析によって消費者のニーズを理解すること。その後、コンセプトの策定やスケッチを行い、デザインアイデアを具体化します。デザインの決定後は、素材や色、パターンなどの細部を考慮しながら製品の詳細設計へ。さらに、洋服のサンプル作成を依頼し、それをディレクションして仕上がりを確認。また、マーケティングチームや販売チームと連携して、販売を促進するための戦略を立てることもあります。創造性とアイデアを絶えず磨きながら、顧客のニーズに応える魅力的でユニークなアパレル製品を生み出すことが使命です。

アパレルデザイナーに向いてる人って?
ファッションやアートに情熱を抱き、
ディテールにもこだわりを持っている人。

新しいアイデアを生み出すことや美的感覚に敏感で、ファッションやアートに情熱を持っていることが大前提。材料や色、パターンなどのディテールにもこだわりがある人にも向いているでしょう。新しいことに対して好奇心があり、変化や挑戦に対して柔軟な姿勢も求められます。顧客のニーズや市場の動向を理解し、世間に受け入れられるようなものづくりを行う感性を持っていることも重要です。

アパレルデザイナーになるためには

アパレルデザイナーになるために必要とされる資格や学歴はありません。ただし、高校卒業後、服飾について学べる専門学校、短大、大学や専門学校に進学し、ファッションデザインの基礎やデザインスキル、パターンメイキング、製図技術などを習得する道を選ぶ人が多いようです。在学中にインターンシップを受けたり、ポートフォリオを作成したりすることも大切。卒業後、アパレルメーカーやアパレルブランドなどの企業でアシスタントデザイナーとして働き、実務経験を積みながら一人前のデザイナーを目指すのが一般的なルートです。

ワンポイントアドバイス
グローバル化やカスタムデザインなど、
多様な展望が開ける「トレンド」も。

ファッション産業はグローバル化が進んでおり、オンラインショッピングやSNSの普及によって、消費者の購買行動も変化してきています。一方、個々のニーズに合わせたカスタムデザインやパーソナライズされたアイテムのニーズも増加傾向。これらのトレンドを踏まえると、アパレルデザイナーの将来性には多様な展望が開けているといえるでしょう。また、独自のブランドを立ち上げることや新たなビジネスモデルを探求することで、自身のキャリアを築くチャンスも広がっています。