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天満 宥太朗さん
インタビュー公開日:2024.09.04

年月を経て老朽化が進む歩道橋。
補修工事の施工管理業務を担う。
建設されたのは50年以上前の1971年。近くには小学校があり、通学路になっています。札幌市内に42橋ある歩道橋のひとつで、年月を経て老朽化が進んでおり、補修が必要な橋としてリストに載っています(札幌市横断歩道橋補修計画、2022年)。
「当初は2023年に工事が終了する予定でしたが、歩道橋の痛みがひどくて補修に時間がかかり、工期が延長になっています。とはいえ、それ以外は大きな問題もなく着々と進んでいます」
背が高く、しっかりと陽に焼けて、健康そのものといった風情の天満宥太朗さん。この補修工事の施工管理業務を担っています。ここからほど近い場所に設けられた現場事務所に出勤し、工事の進捗を見守る日々です。
「おかげで、歩道橋に関しては結構、詳しくなりました」
道路の安全性を高める改良工事や、河川の土砂などを取り除いて流量を確保する浚渫(しゅんせつ)工事にも携わりましたが、それ以外は歩道橋。もっともこれは業務分担の都合によるもので、「特に歩道橋が好きなわけではないのですが」と笑います。
歩道橋の長寿命化を目的として、
劣化した部分や傷んだ箇所を直す。
「この6月(2024年)は階段部分の補修を行いました。工事全体の進捗率は70%強といったところ。今年10月の完成を目指し、作業スタッフとともに、作業を進めています」
現場でそう説明してくれる天満さん。歩道橋の損傷が深刻になる前に〝予防的な修繕〟を行うことにより、長寿命化(長持ち)させるというのがこの工事の目的となっています。歩道橋の鉄製の部分の修理、ペンキの塗り直し、水漏れが起きないようにする防水工事、照明工事などの作業を行っていきます。そして、そのために、それぞれの工事の専門家である職人さんが現場にやってきます。多くの人が関わるだけに、工事をスムーズに進めるための段取りが必要になるのです。
「たとえば、錆びが浮いて塗装がボロボロになったり、劣化して穴が空いていたり。階段の踏面(ふみづら=表面)も通行や風雪でボコボコになっています。そうした部分を直していくことが仕事。橋の本体部分は鉄の表面の古い塗装をすべて落とし、補修を行ったうえで、すべて新たに塗装していきます」
階段の舗装も新しくし、滑り止めを設置。照明の改修も行うので、電気工事も入ります。それらの工事の交通整理を行うことが施工管理の仕事、と天満さんは話しますが、工事全体にわたって管理できるようになるまでには、ある程度の時間と経験が必要という、専門性の高い仕事なのだそうです。
多種多様な施工管理の仕事のなかで、
現場写真の撮影や安全管理を担当。
施工管理の担当者は、現場のいわばディレクター。工事の計画を立て、専門の職人さんや必要な資機材を手配。現場が始まると、進捗をチェックしながら工事の品質管理、そして作業者や周囲の安全管理を行っていきます。さらに、作業の記録や、発注者である行政機関に提出する書類の作成なども行います。
「こうした一連の業務のなかで今、私が担当しているのは、記録となる現場写真の撮影・整理、工事の体制・作業スタッフ・作業内容などを記す安全書類の作成、そして現場の安全管理です。少し前から〝オレが現場に行かなくても、安全管理はもう大丈夫だね〟と、上司の現場所長から任せてもらえるようになりました」
心なしかうれしそうな天満さんですが、小学校時代の野球チームのコーチが勤務するアイケン工業に、誘われて転職した当時は、土木に関する知識は文字通りゼロでした。
「現場の専門用語をはじめ、わからないことばかりでした。ただ、上司だけでなく現場で作業する方々も、聞けばどんなことでも気さくに教えていただける雰囲気なので、安心して取り組むとこはできました」
年上の職人さんに対する礼儀は、大学まで本格的に取り組んだ野球を通して、監督や先輩とやりとりしてきた経験が役立っていると天満さん。小さい頃から野球一筋で、野球に関する世界で就職も考えていたのだと、教えてくれました。
車や通行する人の安全を守ることが、
工事そのものの安全にもつながる。
工事全体を取り仕切る現場所長は、常に工程を見直したり、問題のありそうな箇所を確認したり、発注者との打ち合わせなどもあり、飛び回っています。その分、天満さんは常に現場に立ち、作業スタッフと会話しながら状況を確認する役割を担っているのだそうです。
「4車線の片側を交差点から一部、規制して工事を行っています。通行路を制限したなかで、車はスムーズに通れるか、車道側にカラーコーンとバーで設けた仮通路は歩行者が歩きやすいか。そうしたポイントを意識し、安全に作業が進められるよう、指示を行っています」
自転車が来たら、降りて通行するように警備員に伝えたり、隣接する民家に工事の埃などが飛ばないよう配慮を行うことも天満さんの大切な仕事。
「工事エリアはバーで区切らなくてはいけませんが、最初は現場を見てもそうしたことがわからず、準備不足で上司から指摘を受けました。誤って人が現場に入ると、怪我などの恐れがあるのだと教えられるなかで、状況を把握できるようになっていきましたね」
工事区間と通行する人の安全を守ることに加えて、地域の方々への細かな配慮が大切になる仕事であり、それが、作業スタッフの安全を守ることにもなると天満さん。ついさっきより、その姿が少しだけ成長したように見えます。
きちんと整理整頓された工事現場で
無事に作業できることがやりがい。
「車が交差点を曲がる位置で車線を減少させているので、普段と同じ感覚でハンドルを切ると、規制区間に侵入してしまう危険もあります。そのため、わざとカラーコーンを少し出し、早くから目に留まるよう工夫しています」
実際、カラーコーンを置く場所ひとつで、ドライバーには狭く見えたり、ゆとりがあるように感じられるのだと天満さん。感覚的な部分も大きいそうですが、同じように感覚として、現場がきれいに整頓されていると、事故などが起こりにくいということもあるそうです。
「歩行者の方々があるきやすいよう、配慮してカラーコーンを配置すれば、安全性を高められるだけでなく、現場の見栄えもいいですよね。上司の現場所長が、そうした点を重視して環境整備を行っているため、私も自然と意識が向くようになりましたが、そもそも現場がぐちゃぐちゃだと、カッコ悪いじゃないですか」
気持ちの良い現場で1日、事故もトラブルもなく順調に工事を進められること。それが何より大事なことだし、日々のやりがいにつながるのだと天満さん。施工管理技術者として必須になる1級土木施工管理技士の資格取得を目指し、「いろいろな現場に携わってみたいですが、とりえあえず〝歩道橋が得意〟とはアピールできそうです」。笑顔でそう言い残すと、現場に戻っていきました。
シゴトのフカボリ
土木施工管理の一日
8:00
出社。今日の作業の段取りを確認
8:30
現場に入るスタッフのミーティング、現場への移動
9:00
交通規制をかけ、作業開始。写真撮影、安全管理などを行う
12:00
昼食・休憩
13:00
午後の作業
16:30
片付けの開始
17:00
交通規制解除、現場事務所で安全書類の作成
17:30
退社
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
デジタルカメラ
工事ごと、段階ごとに記録として写真を撮り、まとめていくのも施工管理の仕事の一つ。埃にも雨にも強いコンパクトデジタルカメラは必須です。フィルムカメラと違い、画像を確認できるので安心です。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

塗装、電気、足場、防水など、現場には多様な業種のスタッフが入ります。工程に合わせ、段取りを行うことが重要ですが、諸条件でうまくいかないことも。そんな時、いかに冷静対処できるかが現場では大切なんです。

アイケン工業株式会社

1945年、採鉱・土木建築業で創立。以来、札幌に拠点を構え、土木・建築・舗装業の分野で公共工事をメインとしてインフラ整備などに携わっています。

住所
北海道札幌市南区常盤6条2丁目122番地13
TEL
011-591-8321
URL
http://www.aikenkogyo.co.jp/index.html

お仕事データ

「地図に残る」アレコレを!
土木工
土木工とは
インフラや暮らしを支える、
多彩な土木工事で活躍。

あらゆる工事の礎となる「土木工事」の作業を担うのが土木工。道路のアスファルト敷設やダムの建設、山の掘削、河川の護岸、宅地の区画整理など、多種多彩な現場で活躍しています。水道管やガス管の更新・埋設はもちろん、その際にアスファルトを切断する「切断穿孔(せつだんせんこう)工」、ブルドーザーやクレーン、ショベルカーといった重機を駆使する「機械工士」、斜面の落石防止などを手がける「法面工」も土木工の一員です。その他、経験を積んで「土木施工管理技士」の資格を取得した人は、監督責任者として工程や安全を管理するための指揮者として活躍。いずれも道路やダム、橋といった暮らしに欠かせないインフラを手がけ、社会生活を支えるというやりがいに満ちた仕事です。

土木工に向いてる人って?
コミュニケーションが好きで、
体力にも自信がある人。

土木工は大規模な工事現場で働くことが多く、幅広い職種と連携を取りながら仕事を進めなければなりません。チームの一員として周囲と協力する必要があるため、コミュニケーションをスムーズにとるのが得意なことも素養の一つです。また、危険を伴う作業も少なくないことから、安全面に配慮する注意深さも求められます。体を動かす仕事が大半なので、体力に自信がある人も向いているでしょう。

土木工になるためには

土木工になるために必要とされる資格や学歴はありません。高校や専門学校、短大、大学を卒業後、建設会社などに就職するのが一般的です。土木業界の企業では未経験者を積極的に採用し、一人前に育てるスタイルが主流になっているため、新卒としてキャリアをスタートさせるには最適でしょう。また、民間企業や公的期間が運営する土木系の訓練校で知識や技術を学び、資格を取得しておく道もオススメです。

ワンポイントアドバイス
仕事の幅を広げ、
ステップアップするには資格を!

土木工として仕事の幅を広げるには資格の取得がオススメ。ショベルカーやブルドーザーといった重機の操縦には「車両系建設機械運転技能者」が必要です。この他、クレーンのフックに資材などをかけ外しするための「玉掛け技能講習」、危険の伴う現場で責任者として働くための「作業主任者」、現場監督への足がかりとなる「土木施工管理技士」なども。こうした資格を取得することで、給料アップや昇進につなげることもできます。

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