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栗山町地域おこし協力隊_橋本 潤一郎さん
インタビュー公開日:2025.03.24

駅近くに開局したコミュニティFM。
開局準備から携わり、生放送を担当。
周波数78.8MHz(メガヘルツ)、出力20W。コールサインはJOZZ1BF-FM。2024年7月8日午前8時、周波数と同じ日時に開局したコミュニティFM放送局『エフエムくりやま』です。南空知のまち、栗山町。JR駅のそばにある交流施設「栗山煉瓦倉庫くりふと」の一角に設けられた小さなスタジオから、朝、昼、夕方の時間帯に生放送を届けています。
「私の担当は、月曜朝の『あさばん くりやま』、火・水曜の『ぎゅぎゅっと』、木曜夕方の『こちら!くりふと情報局!』、そして日曜午後の『くりふとな日曜日』。平日は生活情報を中心とした番組、日曜は娯楽要素の多い内容となっています」
そう話すのは、開局準備から携わり、メインパーソナリティを務める橋本潤一郎さん。当初から担当する日曜の番組には、多くのファンからメッセージが寄せられています。
「自分にとって原点、ホームグラウンドと呼べる番組です。構成や進行も一人でやっているほか、取材や営業にも出向いています」
さすがパーソナリティ、澱みなく話す橋本さんは、栗山町地域おこし協力隊として「エフエムくりやま」の普及促進を担当。しかし、それは最近のこと。開局から5カ月ほどは、専業ではありませんでした。
小学校時代に憧れたテレビのアナウンサー。
けれども、放送局はすべて不採用に……。
小学生のころ、テレビの情報番組やニュースで話すアナウンサーに憧れ、放送委員会に入った橋本さん。校内放送を担当しながら、その魅力に引き込まれていきました。
「放送用の原稿を書いた時、担任の先生がほめてくれたんですね。『今日は夏至で、昼の時間が一番長い日ですが、下校時間の5時を守って帰りましょう』というふうに、その時々に合わせた視点がすばらしいと。自分には放送関係の仕事が向いているかもしれないと、漠然と思った記憶があります」
中学校、高校でも放送部に所属。放送局への就職を思い描きながら通った大学では、学園祭で進行台本や司会を担当。たまたま、ポストが空いたタイミングだったといい、「思い続けていれば希望が叶う」と感じた橋本さん。しかし、放送関連の仕事には就けませんでした。
「就職活動では、地元の札幌はもちろん、仙台、東京、名古屋などの主要な放送局を受けましたが、すべて不採用。ラジオ局も入社は叶いませんでした」
さぞ、落ち込んだかと思いきや、「縁がなかったと、すぐに切り替えて就活を進めました」。結局、企業説明会で『この雰囲気なら、気持ちよく働けそう』と直感した、クリーニングチェーンに就職を決めました。
YouTubeで自前のニュースを配信。
その姿が、パーソナリティへの道を開いた。
「北海道でも規模の大きなクリーニングチェーンだったこともあり、東京支店の店舗勤務を皮切りに、札幌の店舗、工場と幅広い職種を経験しました。工場長候補となり、クリーニング師などの資格を取ったかと思えば、本社の経理や支店の総務に異動するなど、社内の転勤族でしたね(笑)」
そうして、すっかり会社に定着していった橋本さんですが、そのかたわら、学生時代にアルバイトをしていた団体の配信番組の進行を手伝ったり、イベントの司会を任されたり、また、自分で撮影した動画をニュース風に編集してナレーションをつけ、YouTubeチャンネルで公開していたそうです。
「割り切ったつもりでしたが、今振り返ると、どこかで放送に関わる仕事をしたいという思いがくすぶっていたのかもしれませんね」
そんなある日、栗山町で暮らす知人から、突然、連絡が入ります。開局準備中の「エフエムくりやま」で、パーソナリティを探しているという話でした。「アナウンサーに憧れ、自ら番組をつくっている人がいる。」そう、紹介してくれていたのだそうです。それは、開局まで3カ月を切った4月下旬のことでした。
東京転勤か、番組を続けるか……。
地域おこし協力隊として移住を決意。
大学時代に、釧路のコミュニティFM放送局で研修を受けたことがあり、仕組みがわかっていたことと、何よりも念願ともいえる放送の現場。断る理由はありませんでした。
「地域おこし協力隊として担当してほしいと言われたのですが、ずっと夢見ていたものの自分に実力があるかどうかわからない。半年から1年、やりながら様子を見てほしいという話をさせてもらいました」
こうして、札幌での勤務を続けたまま、日曜日の番組を担当することになった橋本さん。体力的には大変だったものの、『やっとラジオ番組ができる』という喜びが大きかったそうです。ところが、番組開始から1カ月、軌道にも乗ってきたころ、大きな転機が訪れます。
「会社から、東京支店への転勤辞令を受けたんです。これを受けると、番組はできなくなります。正直、悩みました。けれども、社内でも理解してくれる人がいたのと、栗山町に相談すると『当初の話のとおり、地域おこし協力隊の枠で、ぜひ来てほしい』と請われ、退職を決断しました」
仕事の引き継ぎが終わり、栗山町に引っ越したのは暮れも押し詰まったクリスマスの時期。開局のころに紹介され、結婚が決まっていた奥様が、一緒に移住を決断してくれたことも理由としては大きく、感謝しているのだと、少し照れくさそうに話します。
まちの人たちにラジオをもっと身近に!
第一弾として、学校ラジオを企画中。
「くりふとな日曜日」は、自ら集めてきた情報を提供する「橋本探検隊」をはじめ、栗山町の話題、季節のテーマ等々、内容も充実。休日の午後に、リラックスできる時間を届けています。
「私は、地域おこし協力隊としてパーソナリティを務め、放送に関わっています。大きな役割は、まちの人たちの間に『エフエムくりやま』を、『わがまちのラジオ』として浸透させていくこと。その一つとして、町内の小中高生、北海道介護福祉学校の児童・生徒・学生たちと番組をつくる学校ラジオという企画を進めています」
『エフエムくりやま』は、防災ラジオとして開局。災害時の放送に備え、町民誰もが必要に応じて話せるようになることを目指しているといい、その第一歩として子どもたちに親しんでもらおうという取り組みなのだそうです。
「放送は栗山町と由仁・長沼町の一部にしか届きませんが、レディモというアプリを使えばどこでも聞くことができます。全国の方々にも、栗山というまちに関心を持ってほしいですね」
すっかり、『栗山人』となった橋本さん。アナウンサーにはならなかったものの、憧れの『放送の仕事』に辿り着いた充実感が見て取れます。「思い続ければ夢は叶う。」それは、本当でした。

※「エフエムくりやま」
栗山町が設置し、株式会社エフエムくりやまが運営するコミュニティFM放送局。
https://fm-kuriyama.com
シゴトのフカボリ
栗山町地域おこし協力隊の一日
9:00
出勤。町の担当者と広報番組の打ち合わせ、および収録
11:30
昼生ワイド番組「ぎゅぎゅっと」放送
13:30
昼休憩
14:30
担当番組の準備、取材および営業活動
17:00
退勤

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

CUEシート、ストップウォッチ、メモ用具
生放送は、タイムスケジュールが命。進行をまとめた「CUEシート」をもとに、必要に応じてストップウォッチで時間を測ります。また、道路状況など放送中に飛び込んでくる情報を伝えるため、サッとメモをとりながら番組を進めます。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

小さいころから、アナウンサーや放送の仕事に憧れ、自分なりに関連する活動を続けてきた結果が、パーソナリティに結びつきました。本当に好きなことなら、続けているときっと、何かに結びつくはずですよ!

栗山町役場(エフエムくりやま)

栗山町の総合計画・統計調査などを担い、地域活性化のための活動を行う「地域おこし協力隊」の活動を支える。現在、8名の協力隊員が活動しています。

住所
北海道夕張郡栗山町松風3丁目252番地
TEL
0123-73-7502
URL
https://www.town.kuriyama.hokkaido.jp

お仕事データ

地域の魅力を引き出す仕事!
地域おこし協力隊
地域おこし協力隊とは
地方に移住し、
地域の活性化に取り組む仕事。

地域おこし協力隊は、主に都市部から地方に移住した上で、その土地の魅力を引き出し、地域を元気にする仕事です。特産品の開発や観光PRなどの産業振興、お祭りやイベントの企画運営、空き家の活用、移住者の受け入れ支援など、活動内容は地域のニーズによって多種多彩。地域の人々と協力しながら、外からの新しい視点を活かして地域の課題解決に取り組みます。任期は最長3年。この間に地域に溶け込みながら、将来の定住・起業に向けた準備を進めることもできます。

地域おこし協力隊に向いてる人って?
コミュニケーション力があり、
新しい環境で挑戦できる行動力のある人。

地域おこし協力隊には、地域の人々と積極的に関わり、良好な関係を築けるコミュニケーション力が重要です。また、地方への移住を伴うため、新しい環境に飛び込む勇気と適応力も必要。地域の課題を自分ごととして捉え、解決に向けて行動できる実行力も求められます。さらに、地域の伝統や文化を尊重しながら、新しいアイデアを提案できる柔軟性のある人に向いています。

地域おこし協力隊になるためには

地域おこし協力隊になるために必要な資格はありません。まず、全国の地方自治体が出している募集情報をチェックし、自分が活動したい地域と内容を探します。応募する際は、履歴書や応募用紙(エントリーシート)を提出し、書類選考や面接などの選考を受けます。採用が決まると、自治体から委嘱を受け、その地域に引っ越して活動をスタート。パソコンスキルや広報の知識、イベント企画の経験などがあると活動の幅が広がります。また、事前に説明会や現地見学会に参加して、地域の様子を実際に見ておくこともおすすめ。自身の趣味や特技を活かせる地域を選ぶのも良いでしょう。

ワンポイントアドバイス
活動をきっかけに、
新しい人生を切り開くチャンス!

地域おこし協力隊は、地域の活性化に関わりながら、自分の新しい可能性も見つけられる仕事です。任期中の活動を通じて起業のアイデアが生まれたり、地域に定住して新しい事業を始めたりする人も増えています。都会では味わえない暮らしや人とのつながりを通じて、自分らしい生き方を見つけられる魅力的な制度といえるでしょう。