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生活支援員_高橋 洋貴さん
インタビュー公開日:2025.06.09

子どもとの挨拶も飛び交う
地域に開かれた障がい者支援施設。
旭川市の隣に位置し、近隣随一の米どころとして知られる深川市。「障がい者支援施設 あかとき学園」は、同市郊外の納内(おさむない)地区にある障がい者福祉施設です。
施設の周囲には美しい田園が広がり、向かいの小学校からは子どもたちの声が聞こえてきます。取材陣が思わずため息をもらすほど、牧歌的な風景です。「僕も初めて訪れた時は『なんてキレイでのどかな所なんだろう』って驚きました」と話すのは、同施設で生活支援員として勤める高橋洋貴さんです。
「知的障がい、精神障がいのある方の福祉施設といえば、人里離れた山の中に孤立した、閉鎖的で暗い姿をイメージしてしまいますよね。でも当施設はその真逆のオープンな雰囲気。建物の中も日差しがあふれて開放的ですし、一歩外に出ると利用者さんと子どもたちが挨拶を交わす…なんて風景も見られて、地域に開かれた施設だとひと目見て分かりました」
高橋さんのご出身は深川市のお隣、秩父別町(ちっぷべつ)。8歳年上のお姉様が生まれつきの障がいを持っていたため、幼い頃から「障がいのある人」や「福祉」という存在が当たり前にあったのだそうです。高校卒業後は東川にある福祉専門学校へ進学。卒業後は家族や友達のいる地元で働きたいという理由から、揺籃会の「あかとき学園」に入職しました。
「僕にとって障がいのある人は特別ではなくて『個性』の一つでしかありません。姉と暮らすこと、家族と暮らすことが、そのまま福祉に直結していたので、生まれ育った地域の福祉業界で働けるのは一番の選択肢に思えたんです」
人と人との仕事だからこそ、
現場で学ぶのが一番です。
入職後は先輩の指導のもと、実際の利用者さんへの支援をしながら学んでいったという高橋さん。学校で学んではいたものの、現場での経験が最も大きかったといいます。
「高齢者介護と違って障がい福祉は、利用者様によってできること、できないことが異なるので、対応もケースバイケースです。さまざまな失敗や成功を経験しなければ覚えることができないので、ある程度場数を踏んでいくしかありません」
介護福祉の仕事と言えば、専門の資格が必要と思われがちですが、実は資格がなければできない仕事は少ないのだそう。実際、「あかとき学園」で働く37名のスタッフの中には高校を卒業したての若者から、全くの異業種から転職した方まで、様々な経歴を持つ方がいるそうですが、そのほとんどが無資格・未経験でのスタート。高橋さんの上司である施設長も高校卒業後に無資格で入職し、先輩たちに教わりながら実力を伸ばしていったといいます。
「若い方であれば体力を活かせますし、中途の方であればさまざまな人生経験を利用者さんとの対応に生かすことができます。学校を否定する訳では全くありませんが、必ずしも専門教育が必要な仕事ではないし、チャンスも平等に与えられると感じています」
どんな利用者さんとも、
心が通じ合う瞬間が必ず訪れます。
「あかとき学園」には生まれつき障がいを持つ「知的障がい」の方と、18歳以降に障がいを発症した「精神障がい」の方が約半々ずつ、約40人ほどが入居しています。年齢は18歳から84歳まで幅広く、障がいや発達の度合いによって支援のあり方はさまざまです。
「基本的には掃除、洗濯、歯磨き、入浴の介助、食事の支援など、簡単な身の回りのお世話がほとんどです。あとは運動や散歩、ボウリングやカラオケなどのレクリエーションなど健康を保つための『遊び』も一緒に楽しみます。入居されて長い方がほとんどですので、ごく身近に頼れる家族や友人のような関係を築いているのが特徴です」
ただ、障がいの度合いや特性によってもコミュニケーションが上手く取れる場合と、できない場合に分かれるのだそう。はじめから全てがうまくいかないからこそ、やりがいがあると続けます。
「2年ぐらい経っても何を話しかけても応じてくださらない利用者さんがいたんですけど、ある日を境に突然僕に話しかけてくれるようになったんです。声がけだったのか、気づかいだったのか…何がきっかけで認めてくれたのかは正直、僕にはさっぱり分かりません(笑)。でも、どんな人でも諦めなければ心が通じて打ち解ける瞬間が必ず訪れると、彼から教わったように思います」
時にはこうした日ごろのコミュニケーションがきっかけで、命を救えるケースもあります。
「普段は病院に絶対に行きたがらない利用者さんがある日『病院に行きたい』と言い出して、これはただごとじゃないな、と思いすぐに検査してもらったんです。そしたら大きな病気が見つかって、そのまま緊急手術となりました。今、元気に暮らしている彼の姿を見ると、あの時の自分の対応は間違ってなかったんだと誇りに思います」
組織づくり、安定性、目標…
働きやすい環境づくりも大切な仕事。
「あかとき学園」で働くスタッフは30代、40代が中心。揺籃会は多数の施設や事業所を運営していますが、それぞれの方針を尊重しているそうで、実は高橋さんの「リーダー」という肩書きも「あかとき学園」独自のもの。現場側で働くスタッフの代表として働きやすい組織づくりや、若手職員の育成にも力を注いでいます。
「先述のように、福祉の仕事を全く知らないで入ってくる若者も少なくありません。そんな若手は、毎日新しいことを覚えるだけでも精いっぱい。だからこそ、一人で悩みを抱えないよう、毎日出社したら必ず全員に話しかけるようにしたり、法人本部側との橋渡し役を担うようにしています。介護や福祉業界にはちょっと堅い印象を抱いている方が多いかと思いますが、この施設ではスタッフの若さを生かして、できるだけ柔軟で風通し良い組織でありたいんです」
高橋さんが入職した10年前と比べても、職場環境は大きく改善されたといいます。
「お休みやお給料といった待遇の面でも、組織の風通しの面でも良くなってきていると思います。揺籃会は深川市内の社会福祉法人としては最も規模が大きいですし、あまり大きな会社がない地域の中で安定した地位を築けているのではないでしょうか。介護や福祉はこの先も地域にとってなくてはならない存在ですので、将来も職員が安心できる環境をみんなで作っていきたいと考えています」
「人が好き」だから続けられる
人間に必要不可欠な役割。
高橋さんは5年ほど前から、実習に来る高校生や専門学生などの指導も担当し、これまでに20人ほど指導してきました。
「実習生たちは最初はおどおどしているんですけど、2週間後には必ず『楽しかった』という感想を聞かせてくれます。理由はみんな、話しかけたら笑ってくれたとか、お礼を言ってくれたとか、本当に些細なことです。実習後はそのまま揺籃会に入職してくれる方も、別な施設を選ぶ方もさまざまですが、福祉という世界に一人でも多くの若者が興味を持ってくれることを心の底から嬉しく感じています」
高橋さんはそんな学生たちに必ず、伝えているメッセージがあるそうです。
「偏見を持たないで欲しい、ということです。例えばですが、僕はこのメガネを掛けていなければ目が見えず、まっすぐ歩くことも難しいです。こんな風に一人では生きることができない困難は誰しもが抱えています。そんな誰かの目や耳、手や足となること。心に寄り添って支えること。それは障がいの有無とは関係なしに、人間にとって必要不可欠な役割です」
まるで優等生のような高橋さん。素晴らしいお話…と取材陣が褒め称えると、「そんなに立派じゃないですよ」と笑いながらこう答えてくれました。
「実のところ『辞めようかな』なんて考えていた時期もありました。でも、何ででしょうね…利用者さんと接しているうちに不思議と忘れちゃうんです。たぶんですけど、やっぱり人とふれ合うこと、人の支えになることが『好き』だから。僕が10年続けている理由は、それに尽きると思います」
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

自分が楽しく働いていると、周りで働く仲間たちも、利用者さんたちも、自然とみんなが楽しく過ごしてくれるようになります! 毎日は難しいかもしれないけど、できるだけ楽しく働けるように気分をあげていきましょう。

シゴトのフカボリ
生活支援員の一日
8:45
出勤、夜勤職員からの引き継ぎ
9:00
清掃・消毒
10:00
利用者さんと運動
10:30
休憩・おやつ
10:45
レクリエーション(塗り絵、ボウリング、ストラックアウトなど)
12:00
昼食
13:30
午後のレクリエーション(カラオケなど)
16:00
入浴介助
18:00
夕食
17:45
退勤

社会福祉法人 揺籃会

1977年(昭和52年)設立の社会福祉法人。深川市と浦臼町で高齢者介護施設、障がい者支援施設、保育所・認定こども園など約20の事業所を展開している。法人名の由来は新生児のゆりかごから、高齢者の「終の住まい」となるベッドまで、揺籃(ゆりかご)のように快適な環境を提供したいという理念から。

住所
北海道深川市納内町2丁目2番20号
TEL
0164-34-5635
URL
https://yourankai-group.jp/

お仕事データ

日常生活や生産活動をサポート。
生活支援員
生活支援員とは
障がい者や高齢者が社会で
快適に暮らせるよう支える存在。

障がい者や高齢者の暮らしに密着し、日常生活のサポートや身体機能・生活能力の向上につながる支援を行う他、障がい者支援施設などでは生産活動にも関わります。
具体的には、衣服の着脱や入浴などの生活習慣を身に付けてもらったり、農業や軽作業、陶芸、木工といった作業を指導したり、施設における人間関係や不満、将来の不安の相談にのることもあります。働く場所は障がい者支援施設や高齢者の介護施設の他、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所など多種多彩。いずれも一人ひとりの利用者様に寄り添い、快適な暮らしができるように支えることが大切です。

生活支援員に向いてる人って?
いつも笑顔で明るく、
相手に一生懸命向き合える誠実な人。

障がい者の中にはさまざまな生き辛さを抱え、不安や悩みを抱えている人もいます。そのため、いつも笑顔で周囲に明るい雰囲気を広げられる人は向いているでしょう。利用者様には繊細な心の持ち主も少なくないため、相手の立場を考えながら一緒に悩んで解決方法を探すような誠実さも大切です。また、スタッフ間での情報共有なども重要なことから、コミュニケーション能力も求められます。

生活支援員になるためには

生活支援員になるために必要な資格はありません。事業所によっては未経験から働ける職場も多いようです。ただし、福祉系の大学や短大、専門学校などで障がいや高齢者福祉について学び、社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士、社会福祉主事任用資格といった資格を取得しておくと就職に有利でしょう。また、利用者様の送迎を行う施設もあるため、普通自動車免許も取得するのもおすすめです。

ワンポイントアドバイス
就労継続支援事業所の
「A型」と「B型」の違いって?

障がい者が利用する施設の中で、「就労継続支援A型事業所」「就労継続支援B型事業所」の二つを聞いたことがありますか?いずれも利用者様に生産活動の機会を提供したり、就労に必要な知識や能力を身に付けてもらったり、「働くこと」の支援を行っています。A型は利用者様と雇用契約を結んだ上で最低賃金以上を保障し、時には一般就労への移行もサポート。B型は雇用契約を結んで働くことが難しい方に生産活動ごとの工賃を提供しています。これがA型とB型の大きな違いです。

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