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手島 駿さん
インタビュー公開日:2018.03.05

子どもが引き込まれる授業。
先生は なんと1年生。
「雪のできる条件は3つあります──」
札幌市青少年科学館に勤務する手島駿さん。この日は人工的に雪の結晶を作る実験講座の講師を務めています。緩急のついたトークと分かりやすい実演に、参加者の子どもたちはどんどん引き込まれ、(失礼ながら学校の授業以上に…)真剣に話に聞き入っています。さすがはベテラン! と思いきや──「いえ、採用は去年の春。勤務はまだ1年目です」
化学の授業がきっかけ。
「人に伝える」面白さを感じる。
手島さんが科学館職員を志望したきっかけは、学校の先生。「化学の先生の授業が面白く、化学好きになると同時に、『人に伝える』ということの面白さも感じたんです」
その後進んだ大学で、手島さんは現職に通じる課外活動に参加します。
「学校や市内外のイベントなどで理科教室を開くプロジェクトで活動していました」
なるほど、トークスキルの素地はこの時期に養われていたのかもしれません。
そして大学3年。偶然求人を見つけた手島さんは、夏休みなどの長期休暇の間、憧れだった科学館でイベントスタッフなどのアルバイトを始めます。
職員募集は少ないけれど…
まさかの言葉に 背中を押され!
そこから本採用まで一直線…と思いきや、科学館の職員募集は毎年出るわけではなく、勤務開始のタイミングもまちまち。そのため、大学4年の時は1度、受験を見送ったといいます。
その後大学院の1年目に再度求人票が出たものの、これも卒業が間に合わず、もう縁がないものと手島さんは考えましたが…
「大学院の先生が意外なことを仰ったんです。得難い機会だから採用試験を受けてみろ、合格したら働きながら卒業論文を書けばよいだろうと」
思わぬ後押しを受けた手島さんは、難関を突破し、憧れだった青少年科学館に就職します。
多彩な業務の中で、
責任の重さと、喜びを感じる。
手島さんが科学館で担当しているのは、ロボットショーのコーナーと生命環境のコーナー。それに人工降雪装置や低温展示室ですが、その他にも冒頭のような科学教室の企画運営(そして実演・指導)や、展示物の保守管理など、業務は実に多彩。
「アルバイトの時に比べると仕事量や責任の重さは比になりません。ですが、その分やれることの幅も広がったので、苦労よりも喜びの方が大きいです」
その大きく広がった仕事のひとつが、年に数回、常設展示とは別に開かれる「企画展」。
手島さんはこの春に開催される企画展を任されたのです。
「私が選んだテーマは『文具の科学』。学校でも使う身近な文具にどんな科学が詰まっているかを掘り下げます」
科学が大好き!
素晴らしさを子どもたちに伝えたい。
企画を考えるときに大事なのは、テーマが見る人にきちんと、そして面白く伝わるかという点。科学に関する知識はもちろん、柔軟な発想力も求められる職場のようです。
最後に手島さんの仕事に対する思いを聞いてみました。
「まず、理科や科学というものが大好きです。そしてその素晴らしさや楽しさを伝えたい。そういう気持ちが自分を動かしていると思います。特に子どもたちには、身辺で役に立っている科学の大切さを知ってほしいと思うんです」
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

学校の授業ってムダだと思われがちですが、得た知識はきっとどこかで役立ちます。地理だったら旅行のときに。算数だったらモノを作るときに寸法を割り出したり…。生きて行くうえで「知識」は必要!
  

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
芯ホルダーと呼ばれる筆記具
一見シャープペンシルのようですが、芯の太さは普通の鉛筆と同じ。
企画書の下書きをする際、勢いよく書いても芯が折れない頑丈さで、手島さんの溢れるアイディアを支えます。

札幌市青少年科学館

「生涯学習」の見地から、科学および科学技術に関する知識の普及・啓発を通して、創造性豊かな青少年を育成する活動を続けています。

住所
北海道札幌市厚別区厚別中央1条5丁目2-20
TEL
011-892-5001
URL
http://www.ssc.slp.or.jp/

お仕事データ

博物館で展示の価値を伝える
キュレーター
キュレーターとは
博物館で専門知識を生かし、
資料収集や解説、研究などを行う仕事。

歴史博物館や自然博物館、美術館、科学館、水族館といった博物館に勤務する専門職員。考古学や化学、地理学、生物学、美術など身につけた知識を生かして展示などの価値を伝えます。具体的には、展示物や資料の収集・保管、調査研究、来館者への解説、展覧会の企画・運営などさまざま。時には講師として博物館主催の講演をしたり、レクリエーションを行ったりする他、PR活動などに取り組むこともあります。

キュレーターに向いてる人って?
専門分野の勉強や研究が好きで、
企画・運営のスキルにも優れている人。

絵画や遺跡、化学、動植物など自分が扱う分野の勉強や研究が好きなのは大前提。スタッフと強力して仕事を進めるため、深い知識とおう盛な研究意欲が必要です。調査や研究のイメージが強いキュレーターですが、人とコミュニケーションするシーンも数多くあります。収集した資料を魅力的に展示するのもキュレーターの仕事。企画力や運営力も求められるでしょう。

キュレーターになるためには

キュレーターとして働くには、それぞれの博物館の採用試験に合格しなければなりません。多くの場合、国家資格の「学芸員」を持っていると有利に働くようです。その受験資格を得るにはさまざまな道のりがありますが、文部科学省の定める博物館に関する科目を大学で修得し、学士の学位を取得するのが一般的。ただし、大学に入学のできる者(高校卒業以上)であれば、キュレーターをサポートする「博物館補」として博物館で働くこともできます。


※学芸員の国家試験については、詳しくは文部科学省のホームページをご確認ください。http://www.mext.go.jp/

ワンポイントアドバイス
人気も競争率も高い仕事。
学芸員補もぜひ視野に。

キュレーターは人気が高く、競争率が激しい仕事。例え学芸員の資格を持っていても、求人が出るまでアルバイトとして博物館で仕事をしながら、正職員の募集を待つということも必要です。ただし、学芸員補であれば採用されるというケースも多いよう。これはキュレーターの修行期間にあたる職種ですが、地道に経験と勉強を重ねることで、後に正式な職員になるルートも少なくありません。