農業土木技術者は、農業に欠かせない水や土地などの基盤を整える技術者です。具体的には、田んぼや畑に水を届ける用水路、余分な水を排出する排水路、川から水を取り入れる施設、ため池、農道などの計画や設計、工事の管理を行います。小さな田んぼをまとめて大きな区画に整えたり、水はけの悪い土地を改良したりと、農家さんが作業しやすく、たくさんの作物を育てられる環境づくりも大切な役割。さらに、大雨による洪水から農地や地域を守る防災工事や、古くなった施設の点検や修繕なども担います。主な職場は国や自治体、土地改良区、建設コンサルタント、建設会社など。私たちが毎日口にするお米や野菜の生産を、土台から支えるスケールの大きな仕事です。
自然や農業に関心があり、屋外での仕事を楽しめる人に向いています。工事現場は田園地帯や山あいなど自然豊かな場所が多く、季節の移り変わりを感じながら働けるのも魅力のひとつ。農家さんや地域の方々、工事を行う職人さんなど、いろいろな人と話し合いながら仕事を進めるため、人と関わることが好きな人も活躍できるでしょう。また治水施設を通じて農業だけでなく、地域の防災に関わることも多いはず。いずれにしても「地域の役に立ちたい」という気持ちがあれば大丈夫です。
農業土木技術者になるために必須の資格はありませんが、大学や短大、専門学校の農学系や土木系の学科で、基礎知識や測量を学んでおくと有利です。国や自治体で働く場合は、公務員試験の「農業土木」や「農業農村工学」といった区分を受験するのが一般的。建設コンサルタントや建設会社で働く場合は、各企業の採用試験を受けて就職します。入社後は先輩のもとで現場経験を積みながら、少しずつ設計や工事管理を任されるようになります。経験を積んだ後は「土木施工管理技士」や「農業土木技術管理士」、さらに技術者として最高峰の国家資格「技術士」などを取得することで、より大きなプロジェクトを担当できるようになります。
近年は農業の担い手不足が進み、少ない人数でも効率よく作業できるよう、田んぼの大区画化や自動で水を管理できる設備の整備が進められています。工事の現場でも、ドローンを使った測量や、データを活用して重機を動かす「ICT施工」など、新しい技術が次々と導入されています。また、全国の農業用施設の多くが老朽化しており、点検や修繕のニーズも高まっています。日本の食を守る仕事として、これからもますます必要とされる分野と言えるでしょう。