中村里美さん
インタビュー公開日:2019.10.29

アイドルの髪型に憧れて。幼少時代の経験が
スタイリストを目指すきっかけに
「子どもの頃から美容師になるというのは、ずっと心に決めていました」
そう語るのは、札幌市北区にある「ASH HAIR 屯田店」でヘアースタイリストを務める中村里美さん。高校卒業と同時に、同店を運営する「株式会社 理容・美容のカネコ」に入社。現在スタイリストとして活躍する中村さんですが、そのルーツは幼少時代の経験にありました。
「私の髪ってクセが強くて、子どもの頃はいつもロングかツインテールでしたね。小学生の時にモーニング娘。が流行っていて、自分も同じようにショートカットにしたいと連れて行ってもらったのが、初めての美容室でした」
素敵な髪型に感動したのも束の間、「次の日になると同じようにセットが出来なくてガッカリ(笑)。この髪を何とかできたらな、というのが美容師を志すきっかけになりました」
高校時代は強豪校で部活動に熱中。
それでも忘れていなかった将来の夢。
理想の髪型を求めて、さまざまな美容室を転々。中学・高校生の頃にはストレートパーマにも挑戦してとても感動したのだそう。「初めてストレートパーマをかけた時は、その技術に驚きましたね。すごい! って。さらに美容師への憧れが強くなったのですが、中学校から部活でバドミントンの楽しさに目覚めてしまって」
進学先にはバドミントンの強豪校だった函館工業高校を選んだのだそう。こうしてバドミントンに打ち込んだ高校生活を経て、進路を真剣に考えなければいけない時期を迎えます。函館工業高校の生徒は大学へ進学するか設計事務所への就職がほとんど。中村さんも漠然と設計事務所への就職を考えていました。ところが、ひとつの出会いが美容師の夢を思い起させてくれたと言います。
「我が家は『自分のことは自分で』という家庭でしたから理美容専門学校への進学は難しく、このまま就職かなと悩んでいました。そんな時に友人のお兄さんが今のこの会社で働いている事を知り、話を聞いてみる事に。アシスタントとして働きながら学校に通って美容師国家試験も受けられるサポートがあると知りました」
やっぱり美容師になりたい、強い思いで迷わず面接を受けに行き、見事内定をもらうことができました。
眠気マックスでも毎日頑張れた、
アシスタント時代。
アシスタントはお店の掃除からスタイリストのサポートまで幅広い業務を担当します。
「朝は7時半過ぎには寮を出ていましたね。営業中はアシスタント業務、閉店後はシャンプーやブロー、セットの練習。もちろんカットもたくさん練習しました」
学校は通信制となっており、勉強は寮に帰ってから。定休日の毎週火曜日を利用して、月に2、3回ほど学校にも登校する生活が3年続きました。
「時には深夜3時まで寮で練習をしていたこともありました。それでも頑張れたのは、ひとえに夢への希望と現場経験を積める会社の存在が大きかったです」
同社は新人を育てていく環境を当時すでに構築。練習の機会が多く、第一線で活躍する先輩たちから直接指導を受けられたのは、中村さんにも大きな経験となったようです。
「先輩たちからシャンプーの基礎をしっかりと学ぶことができました。デビューした時、お客様がイビキをかいてぐっすり眠っていたのには、『よっしゃー!』と心の中で喜びました」
学校に通い、美容師国家資格に合格するには最低でも3年。ストレートで資格取得した中村さんは、ほどなく一人前のヘアースタイリストとして最前線に立つようになりました。

トータルビューティーで考える。
技術もセンスもトレンドも常に勉強が一番。
ヘアースタイリストの仕事は、終わりのない仕事。中村さんが幼少時代に感じたように、カットの後、毎日のセットまで考えるスキルが重要になってきます。「頭や顔の形、髪質はみなさんそれぞれ違います。なので、希望の通りにはいかないことも。お客様のイメージや悩みをお聞きし、しっかりお話しをして、理解を得ることも重要なんです」
そうして施術することで、少しでもお客様の理想に近づけた時はやり甲斐や達成感もひとしお。「お客様に満足して帰ってもらう、基本ですけど一番うれしい瞬間です」
また、ヘアースタイリストの仕事はアンテナの感度が大切と言います。普段から専門誌だけでなく女性誌やファッション誌を読み込んでトレンドをチェック。休みの日に自身で別の美容室にカットへ行くことも。「スタイリスト=格好いい、オシャレと思われがちですが裏ではみんな努力しています。一人前になったからこそ勉強は必要。時には美容関連の企業が開催するセミナーに参加することもあります」
洋服の形やメイクもヘアースタイルと密接に関係しています。トータルコーディネート、トータルビューティーで常に考えるのが中村さんの流儀。
母娘、お孫さんまで。
家族で通ってくれるのはやっぱり嬉しい。
思い返せば、緊張から最初はなかなかお客様に話しかけられなかったという中村さん。仕事が慣れてくるにつれ、気持ちに余裕が生まれお客様との会話が弾むように。
「距離を縮められると、好みや生活スタイルが見えてきます。そうするとスタイリングもまた変わることがあります。いろいろなことが繋がって、たくさん美容室がある中で、うちを選んで毎回通ってくださる。本当に嬉しいことですよね」
同店は指名制度ではないそうですが、スタイリストを通してお店を評価してくれ、担当したお客様の娘さんやお孫さんまで利用してくれるご家族もいるのだとか。
「この仕事は技術が上達する楽しさというのもあるのですが、やっぱりお客様が満足してくれる、また来てくれるというのが一番の喜び。だからこそ過信せず、当たり前なことはひとつもないという思いで初心を忘れずに取り組むようにしています」
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

人生、時には失敗もつきもの。反省は大事ですが、深く悩み過ぎずに素直に受け止めて、自分らしく働くのが長く仕事を続けられる秘訣ですよ。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
ヘアーカットに欠かせない3つのアイテム
シザー(ハサミ)、セニング(すきバサミ)、コームはスタイリストのマストアイテム。一番下のシザーは社名のイニシャル「K」が入っている特別仕様で、大切に使用しているお気に入りなのだそう。シザーは通常半年ほどで切れ味が甘くなるそうで、メンテナンスも重要です。

ASH HAIR 屯田店

石狩と札幌を中心に4店舗を展開する「株式会社 理容・美容のカネコ」が、2016年にオープンしたヘアサロン。1974年創業の確かな技術と新たなトレンドを取り入れながら、幅広い層に支持されている美容室です。

住所
北海道札幌市北区屯田9条9丁目5-1
TEL
011-772-3559
URL
http://ashhair.jp/

お仕事データ

美とリラックスを提供
美容師
美容師とは
お客様の「おしゃれ」を
ヘアスタイルで表現。

お客様の髪をスタイリングするのが美容師の仕事。どのようなヘアスタイルにしたいかをカウンセリングした上で、その人に合ったおしゃれを表現するのが腕の見せどころです。希望に合わせてシャンプーやカット、カラーリングなどを施す他、美容室によってはネイルや着付け、ヘッドスパ、まつ毛エクステなどを手がけるケースも。多くの場合、アシスタント、スタイリスト、トップスタイリスト、店長などのランクがあります。

美容師に向いてる人って?
努力を惜しまずに、
人との関わりを楽しめるタイプ。

ヘアスタイルやファッションが好きなことはもちろん、努力を惜しまない気概が大切。最初は器用ではなくても、根気よく練習を重ねることで技術が身につき、スタイリストやトップスタイリストへの道が開けます。また、お客様と長時間にわたって会話することも多いので、「人との関わりを楽しめる」タイプも美容師に向いているようです。

美容師になるためには

厚生労働省が指定する美容学校(昼間部2年、夜間部2年、通信科3年のいずれか)に進学。筆記と実技の国家試験を受け、合格することで美容師免許が交付されます。

必要な資格
 美容師免許(国家資格)

資格取得の方法

 ・美容学校(昼間部/夜間部2年)に通い、国家試験に合格
 ・美容学校(通信科3年)に通い、国家試験に合格

※美容学校の受験資格は多くの場合、高卒者以上を対象にしています。詳しくは各学校のホームページなどをご確認ください。

ワンポイントアドバイス
美容師が活躍するフィールド。

スタイリストとして経験を重ねて自分のお店を開くのは美容師の醍醐味。それ以外にも、資格を生かせる職場としてエステサロンやブライダルサロン、メイクアップアーティストなどのフィールドもあります。ここ最近では高齢化が進んでいることから、介護施設などにお邪魔して施術を提供する「福祉美容師」といったジャンルも注目されています。