福屋  梨沙さん
インタビュー公開日:2023.04.14

タクシーの「タの字」も、
頭になかったです(笑)。
アカツキ交通株式会社は、札幌市北区・東区民の「足」になるべく1961年に創業。以来、徹底的に地域密着の営業スタイルを貫く一方、札幌市内で初めて女性タクシードライバーを採用するなど、新しいことに次々とチャレンジする企業です。
実は、2022年5月にタクシーに乗務するために必要な二種免許の受験資格が緩和されました(※)。今回インタビューした女性ドライバーの福屋梨沙さんは、規制緩和後の制度を活用した「北海道第一号」。ということは、昔からタクシードライバーにあこがれが?
「いえいえ、全然(笑)。恥ずかしい話ですが、子どものころも特にコレといった夢を持っていたわけではなく、日本語のやわらかな響きが好きという理由だけで、大学進学先に人文学部を選びました」
ちなみに、福屋さんの卒論テーマは日本語のさまざまな一人称にまつわる研究。在学時はタクシーの「タの字」も頭をかすめなかったと正直に語ります。

(※)二種免許取得の条件は「普通・中型・大型・大型特殊の一種免許を取得してから通算3年以上の運転経験で、21歳以上の人」でしたが、2022年5月13日に大幅緩和。一種免許取得から1年以上が経ち、「受験資格特例教習」を修了することで二種免許取得にチャレンジできるようになりました。
先輩女性ドライバーの
明るい人柄に安心しました。
大学4年生のころ、福屋さんは自身の向いている仕事が分からなくなり、就職活動に頭を悩ませていたとか。多くの会社説明会に参加する中で、たまたま足を運んだのがアカツキ交通株式会社のブースでした。
「新卒でタクシーに乗るなんて考えたことはありませんでしたが、採用担当者の熱意に心が動かされ始めました。さらに、先輩女性ドライバーが『女性の勤務は昼間だけだから酔客もいない』『私なんて休憩中に自宅に帰って家事をしている』と明るく、楽しそうに仕事のことを話す姿にすっかり安心したんです。タクシードライバーの自由そうな働き方にもグッときました」
ほどなくして福屋さんの決意は固まりました。ところで、ご両親はタクシードライバーにチャレンジすることをどう思っていたの?
「さほど違和感もなかったようで、むしろ私の背中を押してくれました。両親の世代でも、タクシードライバーのイメージが変わってきているのかもしれません」
二種免許の取得まで
至れり尽くせりの日々。
福屋さんがアカツキ交通株式会社に就職したのは2022年4月。すでに普通免許の取得から1年が経っていたため、二種免許取得資格の規制緩和を待つばかりでした。
「入社後は簡単な事務作業を手伝う他、上司と一緒に会社の指導車に乗って、乗務の流れや地理、無線をはじめとする機器の操作方法を教わりました」
自動車学校で二種免許の「受験資格特例教習」を受けたのは入社から約2カ月後。運転知識のおさらいや敷地内の実地走行など、合計36時限の教習を受け、見事受験資格を得ることができました。
「その後、何とか二種免許に一発合格することができました。給与をいただきながら勤務時間内に自動車学校に通わせてもらったり、免許取得費用まで負担してもらったり、至れり尽くせりの待遇に感謝してもし切れないくらいです」
しかも、冬道に不安があることを伝えると、4WDのクルマを導入してくれたとか。福屋さんがいかに期待の新人なのかうかがえます。
若いドライバーはそれだけで、
お客様に可愛がられます。
2022年8月、福屋さんは、いよいよタクシードライバーとしてデビュー。初日は緊張のあまり、何人のお客様を乗せたのか、目的地はどのエリアが多かったのか思い出せないと苦笑します。
「最近は乗務にようやく慣れてきて、会社の近所はナビを使わなくても目的地が分かるようになりました。お客様も私を見るなり『若いね!』『道が分からなかったら教えてあげる』など、あたたかな声をかけてくれます。自分の成長や感謝の気持ちを感じた時は、やっぱりうれしいです」
とりわけ、冬場はタクシーを利用する人が多く、最近は無線の配車に対応するだけであっという間に1日が終わると笑います。
「タクシードライバーは一人の時間が気楽な反面、これだけ無線配車が多いと収入面でも安心できます。先輩方の中にはこれまでの勘と経験で稼ぐスタイルのドライバーもいますが、少なくともお客様を乗せるのに運を天に任せることはありません」
従来のイメージとは異なる、
仕事の魅力を知ってほしい!
アカツキ交通株式会社には明るいドライバーが多く、福屋さんが乗務を終えて会社に戻ってくると他愛もない話題で盛り上がるそうです。
「先輩方はお客様を乗せやすい道や曜日ごとのポイントを気さくに教えてくれます。ウエストポーチやコインケースなど、仕事が捗る道具の買い物に付き合ってくれたこともあるんです。私はクルマの運転が得意ではなかったのですが、楽しく働けるのは娘のように接してくれる皆さんのおかげです」
同社では一人で好きにクルマを走らせ、いつ休憩を取るのも自由。出勤時間もある程度フレックスで融通がききやすいといいます。
「タクシーに乗務するようになって初めて、自由度が高く、ストレスフリーな働き方が性に合っていると気づきました。イマドキの若い世代でもハマる人は多いと思います。従来のイメージとは異なるこの仕事の魅力を、もっと多くの若者にも知ってほしいですね」
シゴトのフカボリ
タクシードライバーの一日
7:30
出勤
8:00
点呼/アルコールチェック
8:10
乗務
13:00
昼休み
14:00
乗務
17:00
帰社/日報作成/洗車
17:30
退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
お金の管理に便利
コインケースはお釣りを素早く取り出すのに便利なグッズです。ウエストポーチは、お手洗いやコンビニに立ち寄る際、お金を持ち歩けるように使っています。どちらも、先輩の女性ドライバーからオススメしてもらいました。

お仕事データ

乗客を安全に目的地へ。
タクシードライバー
タクシードライバーとは
お客様を目的地まで
快適に送り届ける仕事。

タクシードライバーは、お客様を目的地まで送り届けるのが主な仕事。道を走りながら手を挙げてくれる人を見つけたり、タクシー乗り場でお客様を待ったりする他、無線配車に対応することで乗客を増やしています。タクシードライバーには、タクシー会社の社員として働く「法人タクシー」と、個人事業主として働く「個人タクシー」があります。最初はタクシー会社で乗務経験を積んだ後、個人タクシーの運転手として独立することも可能。いずれもお客様を安全に、そして快適に目的地まで送ることが大切です。

タクシードライバーに向いてる人って?
車の運転が得意で、
細やかな気遣いができる人。

タクシードライバーは、車の運転はもちろん、地理を覚えることや地図を読むことが得意な人に向いている仕事。出発後は自分だけで過ごす時間も長いため、一人が苦にならないタイプにも好まれる傾向です。運転に集中しながらも、常に乗客の様子に気を配り、場合によっては「車内は寒くないですか?」などと声をかけることも大切。お客様に対して細やかな気遣いができる人には適性があるでしょう。

タクシードライバーになるためには

タクシードライバーとして仕事をするためには、「普通自動車第二種運転免許」が必要です。この免許を取るための条件としては、「普通自動車第一種運転免許」を持っていることに加え、取得から3年以上が経過していることが挙げられます。ただし、最近は未経験から採用を行うタクシー会社も多く、「普通自動車第二種運転免許」は入社後に会社のバックアップのもと取得を目指せるケースが大半のようです。

ワンポイントアドバイス
運転が好きな女性に、
チャンスが広がるタクシー業界。

かつてタクシードライバーといえば「男の職場」と考えられがちでしたが、業界全体で人手不足の解消に向けた動きが見られ、中でも期待を寄せられているのが女性ドライバー。最近は子育て中でも保育園の送り迎えに間に合うシフトを整えたり、日・祝日を固定で休めるようにしたり、女性の活躍に向けて労働環境を改善しているタクシー企業が増えているようです。「運転が好き」という女性に、よりチャンスが広がりつつあります。