大箭 寛人さん
インタビュー公開日:2024.09.26

学校運営を支える事務部門に所属。
生徒の質問に答えるチューターとしても活躍
看護師および医療系分野を目指す人のための専門予備校、「学校法人創研学園 看予備」。大学や看護学校の受験指導を行っていますが、〝学生ファースト〟をテーマに、単なる予備校ではなく卒業後も忘れられない母校として記憶に残るような、一人ひとりに寄り添った指導に力を入れています。
「実際に、近くに来たからと顔を出してくれる卒業生や、なかには大学に進んだ後も、勉強でわからないところを教えて欲しいと訪ねてくる元学生もいるんです。そんな時には、一緒に大学のテキストを見ながら問題を考えたりしますね」
なんだか楽しそうに、そう教えてくれるのは、同校の職員として勤務する大箭寛人さん。学校の運営を支える事務部門の所属ですが、学生からの質問や相談に応じるチューター(個別指導員)も務めています。
「教員ではないので、授業で教えることはありませんが、身近にいる職員として、学生とは日々、ふれあい、話をする機会があります。事務といっても、デスクに向かっているばかりではない、というのが私の仕事の特徴といえます」
やさしい語り口、温かな雰囲気が印象的な大箭さん。そんな話を聞いていると、登校してきた学生さんが、さっそく話しかけてきます。
ミスがないように、徹底的に確認。
学生に関するデータの管理に携わる。
模擬試験の実施に関する事務作業、経理業務、各種データ管理など、同校の事務部門にはさまざまな業務がありますが、大箭さんは電算課という部署に所属し、データ入力・管理を主に担っています。
「学生名簿、模試の結果や偏差値、卒業生の進学先といったデータを作成したり、必要に応じてその分析や資料作成なども行っています。学生証の作成も、私の担当です。日々の業務は、この電算課での仕事がメインです」学生の個人情報、指導に用いる情報、学生募集から学校の運営に直結する数字など、扱っているのはいずれも重要なデータばかり。それだけに、間違いは許されません。
「とにかくミスのないよう、徹底して確認を行っています。模試のデータなどは細かな数字も多く、慎重さが求められますが、慣れてくると気が緩みがちに。いつも気をつけて入力しているのだから間違いないはずと油断していたらミスが起きた、という経験もしているので、何度も確認することを心がけています」
データ入力作業よりも、確認に一番、時間をかけているという大箭さん。意識を集中させ、モニターに向かっていると……『あの、先生、ちょっといいですか』と学生さんの声が聞こえてきました。
雑談から勉強、成績や進路のことまで。
一人ひとりの話をていねいに聞き取る。
「私が集中している姿を見て、申し訳なさそうに話しかけてくる学生もいます。データ入力は中断せざるを得ませんが、でも、気持ちとしては、よく来てくれたねという感じ。うれしくなるんです」
ここからが、チューターとしての大箭さんの出番。話したい内容は、学生さんによってさまざま。一人ひとりの話をていねいに聞き取り、不安や疑問の解決に結びつけたり、一緒に問題を考えたり。勉強を教えることも多いのだとか。
「今日○○先生に叱られたさ、といった雑談から、先生に聞くほどではないけれど教えて欲しいとか、成績や進路についての相談も多いですね。職員室の入口にあるテーブルで、軽いおしゃべりのように話すことも少なくありません」
チューターとして大切なことは、相談などに訪れる学生さんの悩みや課題をしっかりと理解すること、と大箭さん。勉強を教える際にはどこでつまずいているか、困っているかを見つけて、教え方を考えていくそうです。数学、英語、国語、それに生物や化学。どんな科目も、基本的なことはひと通り教えられるようにと、自ら高校などの参考書を解き、学んでいるという徹底ぶりです。「実際には『先生、間違っているよ』と学生に教えられることも多いですが」と笑う大箭さんです。
受付業務から始まり事務部門へ異動。
学生のことを覚える習慣が今に役立つ。
今の仕事を通して、教えるということにも興味が湧いてきたと話す大箭さんですが、14年前に新卒でこの学校に来た時には、夜間部の受付が担当でした。入社のきっかけは、大学のゼミの先生からの紹介。学校で働きたいという気持ちが、特にあったわけではなかったと打ち明けます。
「夜間部の授業が終わり、一人の学生が数学で聞きたいことがあると職員室にきましたが、残っていたのは英語の先生だけ。その先生から『大箭くん、わかるかな』と問われ、学生が持ってきた問題を見ると、解けたんですね。それをきっかけに、『受付の大箭は、勉強を教えてくれるらしい』となって(笑)。そのことが、チューターという役割を与えられるきっかけだったといえるかもしれません」
受付を担当しながら、データ入力にも携わっていたという大箭さん。7年ほど前に電算課に異動となり、現在は主任を務めています。
「受付の仕事をとおして、学生一人ひとりに目を向け、覚える習慣が身についていたことが、役に立っていると思います。誰に話しかけられても、だいたいわかるんです」
学生からの問いかけから始まるチューターの仕事。学生のことを知らなければ、必要なアドバイスも、声掛けもできないのだそうです。
教員と学生を結ぶ調整役という立場で、
学ぶことの楽しさも伝えて行きたい。
教員と学生の間に立って、学生の困りごとを聞き取り、教員に伝えたり、教員が気になる学生について、話をしながらその気持ちを察したり。勉強も教えるチューターだけでなく、事務部門がまさにそうした役割を果たしていることが、同校の特徴なのだと大箭さん。
「医師が考える治療のアプローチに対して、患者さんはその治療を受けたくないと考えることがあります。そんな時には、看護師が間に入ってお互いの意思を考えながら、調整役を務めます。私たちは、まさにこの看護師のような役割を果たしているとも言えますね」
同時に、チューターには、教員とも共通するやりがいもあるのだと教えてくれます。
「何度も聞きにきて、私も熱心に勉強を教えた学生が、合格の報告に来てくれた際に『勉強がすごくおもしろかった』と言ってくれたことが、印象に残っています。学ぶ楽しさを伝えたいと思いながら対応していたので、それが通じたようで大きな達成感をおぼえました」
卒業して大学などに進んでも、看護師や医療職として働き始めても、常に学んでいかなければならない。そのために、学習習慣を身につけることの大切さも伝えていきたいと話す大箭さん。教員と一緒になって学生の夢をサポートする、頼れるアニキ、といった風情です。
シゴトのフカボリ
予備校職員の一日
9:00
出勤、玄関の清掃
10:00
メールの処理、資料請求の整理、データ入力など
12:00
データ入力、学生からの質問への対応
13:00
昼食・休憩
14:00
データ処理、入学願書の受付、学生証の制作、ホームページの更新など
16:00
学生からの質問への対応
18:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

基本をしっかり学ばなければ、ものごとを極めていくことはできません。自分自身、常に基本に立ち返り、学んだうえで、学生からの問いかけに答え、その成長を支えていくことができればと意識しています。

お仕事データ

学校の運営を支える大黒柱。
学校事務職員
学校事務職員とは
事務処理や管理業務など、
学校運営に欠かせない存在。

小学校や中学校、高校、専門学校、大学などで校内のさまざまな事務処理や管理業務に携わっているのが学校事務職員。具体的には、給与の計算や備品の管理、各種証明書の発行など多岐にわたります。テストの点数や成績の管理、時間割の作成や入学手続きなど学校特有の仕事もありますが、多くの場合は一般企業の事務職とそれほど変わらない業務内容といわれています。生徒や学生と直接関わることは多くないようですが、学校運営に欠かせない存在です。

学校事務職員に向いてる人って?
真面目で几帳面な性格であり、
好印象を持たれる親しみやすさも。

入学金の管理や財務処理にも携わるため、真面目で几帳面な性格の人は向いているでしょう。パソコンを使った仕事がメインになることから、WORDやEXCELといったOFFICE系のソフトを扱えるスキルも必要です。また、保護者や生徒・学生と接することもあるので、親しみやすい人柄は好印象を持ってもらえるはず。教員やスタッフとともに仕事を進めるコミュニケーション能力も大切です。

学校事務職員になるためには

学校事務職員になるための特別な資格はありませんが、少なくとも高卒以上の学歴を問われるのが一般的。公立の学校事務職員の場合は「学校事務」「教育事務」(自治体によって異なる)などの区分で、地方公務員採用試験に合格する必要があります。国立学校では国立大学法人等職員の採用試験への合格が条件。私立の学校事務職員はそれぞれで求人募集が行われ、一般教養試験や適性検査、小論文、面接などを行うことが多いようです。

ワンポイントアドバイス
「ホワイト」な職場環境で
人気が高まっている仕事。

国公立、私立を問わず、学校事務職員の勤務時間は8時30分ごろから17時ごろまでと規則的で残業も少ないようです。少子化により、今後しばらくは子どもの数が増える見込みはなく、学校を統廃合する場合もありますが、一般企業のような形で倒産することは少ないことから安定した職業の一つといえます。いわゆる「ホワイト」な職場環境ということもあり、近年は特に人気が高まっています。