蝦名 恵さん
インタビュー公開日:2018.02.27

不安なお年寄りの力になりたい、
その思いで社会福祉を学ぶことに。
病気やケガで治療を受けている患者さんにとって、治療やこれからの生活には不安がいっぱい。そんな不安を和らげてくれるのが、病院で相談業務を行う医療ソーシャルワーカーです。
蝦名恵さんは、社会福祉士の資格を持つ医療ソーシャルワーカーとして、手稲渓仁会病院で勤務しています。兵庫県に住んでいた子どものころ、札幌に住んでいる祖父母に毎年会いに行くのが蝦名さんの楽しみでした。そんな祖父母が、年を経るにつれ、生活の不安を口にするようになっていました。そこで、そんなお年寄りの不安を解消できるような仕事がしたいと、大学で社会福祉を学ぶことに。
中でも、病気を患い、通院や入院が必要な方と思いを共有し、共に考えていく医療ソーシャルワーカーに最も関心を持ち、試験を受け、社会福祉士の資格を取得して、この仕事につくことにしました。

病気やケガで治療を受けている患者さんの
さまざまな相談に応じます。
蝦名さんが勤務するのは、院内の患者サポートセンター。医師や看護師を通しての相談依頼や、窓口に来た患者さんの相談に応じています。定期的にカルテを見て、サポートが必要だと思う場合はこちらから話を伺いに行くこともあります。
蝦名さんの担当している病棟は、整形外科と婦人科です。相談の内容は、病気やケガをしたことで、「退院後のリハビリはどのように進めたらよいか」「自宅で今までどおりの生活ができるのか」「受けられる介護や公的サービスはどのようなものがあるか」など、患者さんが抱いている不安によって、多岐にわたります。
患者さんの不安を受け止め、
思いや希望を聞くことが大切。
蝦名さんも最初は、どのように患者さんと接したらよいかわからなかったといいます。
「先輩の面接に同席して、まずはこちらが話すのではなく、患者さんに質問をしてお話していただくことが大切だとわかりました。その中で、患者さんの今の状況や、今後どのような生活を送りたいと思っているのかがわかってきます」
時には、患者さんとご家族の間に入って互いの思いを伝えたり、医師や看護師には言いづらかった悩みを代弁することもあるとか。
「最初は不安そうな表情だった患者さんも、お話をして最後にはすっきりとした表情になってくれます。まずは、不安な気持ちを受け止めて共有することが大切ですね」
患者さんと真摯に向き合うには、
気持ちを切り替えることも大切。
患者さんの中には、事故で足を切断することになってしまったり、がんで余命宣告を受けた方もいるなど、深刻な状況に直面している方と向き合うことも珍しくありません。病気やケガによる不安な気持ちを、言葉や態度でぶつけられることも。
「最初は、そんな言葉をそのまま受け止めてしまい、よく落ち込んでいました。先輩に相談したところ、『過度に反応してしまったら、私たちは役割を果たせないよ。自分という人間と医療ソーシャルワーカーという職業を切り離して考えることも時には必要だよ』と教えてもらいました」
患者さんのサポートを客観的に、ベストな状態でできるように、前向きに考えることと気持ちの切り替えをすることを教わったといいます。
患者さんの今後の人生を
より良いものにしてもらうために。
患者さんの相談に対応して希望の生活を叶えるためには、幅広い知識が必要になります。病気に関する知識や、介護保険など社会的な支援の制度、そして病気やケガをするとお金もかかるため、医療費や年金に関する知識も求められます。手稲渓仁会病院には全道各地から患者さんが訪れるため、患者さんが住む地域の状況も知る必要があります。
「北海道は広いので地域によって状況が変わります。最寄りの病院や訪問看護事業所がどこにあるのかを知った上で、安心して帰っていただきたいですね」
病院の中でも、医師や看護師と連携をとって、患者さんの今後の生活や人生がより良いものになるようにと努力を重ねています。
シゴトのフカボリ
医療ソーシャルワーカーの一日
7:50
出勤
8:15
朝礼
8:20
窓口にて受付対応
入院手続き・制度説明
面接準備・電話対応
11:00
面接
12:00
昼休憩
13:00
面接
14:00
カンファレンス
15:00
窓口・電話対応
16:00
面接
16:30
カルテ入力
17:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

患者さんは辛い状況の中、家族のことやお金のことなど、普段は他人に話しづらいことも時間をとって私に話してくれます。そのありがたさを、いつも感じながら仕事をしています。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
オリジナルの相談シート
限られた時間で聞きたい情報をまんべんなく聞き出せるように、相談の時に使うシートを自分で作りました。A4判の紙1枚に、必要な情報を書き込んで一目でわかるようにしています。

医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院

地域の中核病院として高度な技術と専門知識を持つ専門医が在籍し、質の高い急性期総合医療・専門医療、満足度の高い医療サービスを提供しています。

住所
北海道札幌市手稲区前田1条12丁目1-40
TEL
011-681-8111
URL
http://www.keijinkai.com/teine/

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お仕事データ

問題を抱える人に寄り添う
ソーシャルワーカー
ソーシャルワーカーとは
社会生活に問題を抱える人に
解決策となる援助やアドバイスを。

病気やケガ、高齢、障がいなど社会生活を送る上で問題を抱えている人の相談を受け、適切なアドバイスや援助を行う仕事。時にはケアマネジャーや介護福祉士などの福祉サービス関係者、医師や看護師、リハビリスタッフといった医療関係者と連携しながら、状況に適したサービスを仲介することもあります。一般的にはソーシャルワーカーと呼ばれますが、高齢者福祉施設や障がい者福祉施設では「生活相談員」、病院では「医療ソーシャルワーカー」、学校では「スクールソーシャルワーカー」など、勤務先によって職種名が異なります。

ソーシャルワーカーに向いてる人って?
相手の悩みを理解する傾聴力と、
人の役に立ちたいという強い思い。

ソーシャルワーカーの主な仕事は困っている人の相談にのること。相談者が安心して話ができる信頼感があり、相手の立場に立って悩みを理解するための傾聴力が大切です。さまざまな関連機関や職種と連携しながら問題を解決へと導くため、多くの人と関わって物事を進めるのが好きな人も向いているでしょう。何より、ソーシャルワーカーには「人の役に立ちたい」という思いが欠かせません。

ソーシャルワーカーになるためには

ソーシャルワーカーとは広い意味では社会福祉事業に携わる人の総称。資格が必要とされるわけではありませんが、一般的には「社会福祉士」の国家資格を持っていることを条件にする職場がほとんどです。社会福祉士国家試験の受験資格を得るためのルートはさまざま。大学の福祉系学部に進み、社会福祉士養成を目的とした学科・コースで指定科目を学ぶルートが一般的です。この場合、卒業と同時に受験資格が得られます。2年制、3年制の福祉系短大・専門学校で指定科目を学んだ場合は、卒業後にそれぞれ2年、1年の実務経験が必要。資格を取得することで、社会福祉士と名乗って働けます。
※社会福祉士の国家試験受験資格については、詳しくは公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページをご確認ください。http://www.sssc.or.jp/

ワンポイントアドバイス
介護施設を筆頭に、
活躍のフィールドが広がっている!

ソーシャルワーカーは福祉や医療の専門家としてニーズが高まっている職業。とりわけ少子高齢化が進み続けている昨今では、特別養護老人ホームをはじめとする介護施設で活躍する人が増えているようです。また、病院や学校、行政など活躍のフィールドが幅広いのもメリット。今後、ますます世の中から求められることが予想される未来ある仕事でしょう。