志賀 花澄さん
インタビュー公開日:2019.08.05

生きがいを感じながら暮らせる。
地域づくりを担う、新しい仕事。
志賀花澄さんが担っている職種は「生活支援コーディネーター」。地域支え合い推進員とも呼ばれる、今、もっともホットな仕事の一つです。2025年には、戦後のベビーブーム世代が75歳以上の後期高齢者となり、その割合が人口の3割を超えるそうです。そんななか、厚生労働省が配置を進めているのがこの職種で、「生活支援・介護予防サービスの提供体制の構築に向けたコーディネート機能を果たす者」というのがその定義。
「堅苦しい表現ですが、地域で求められる高齢者向けのサービスを掘り起こし、支援が必要な人とマッチングするとともに、福祉などの関係者のネットワークづくりを行うことが、生活支援コーディネーターの仕事です」
健康で長生きというのが理想ですが、そのためには地域で生きがいを感じながら暮らせることが、とても大切なのだと志賀さん。まだ、新しい仕事であり、どのような役割を果たせるかということも模索しながら、一つひとつ地域とのつながりを築く活動に取り組んでいます。
地域の方々の声に耳を傾けて、
行政に届けるのも大切な仕事。
志賀さんの勤務先は、社会福祉法人恵望会が恵庭市から委託を受けて運営している「恵庭市ひがし地域包括支援センター」。同法人の恵庭市こがねデイサービスセンターに併設されています。地域包括支援センターは、社会福祉士、主任ケアマネジャー、保健師などが所属し、高齢者の方々が、慣れ親しんだ地域で安心して暮らすための各種相談を受けたり、介護予防のための支援サービスの橋渡しを行ったりしている施設です。
「どんな介護予防サービスがあるの? といった問い合わせから、近所のおばあちゃんのようすがおかしいといった相談まで、高齢の方々やご家族様の総合窓口という位置付けです。何かあれば気軽に話せる場所ですよと、地域包括支援センターのことを知ってもらうことも、生活支援コーディネーターとしての私の仕事なんです」
そうした活動を手始めとして、地域の声に耳を傾け、必要に応じて行政の担当機関へと届けていくという役割も担っているのだそうです。
町内会、老人クラブなどを訪ねて
さまざまな活動のきっかけづくり。
「生活支援コーディネーターの仕事って、ある意味で営業職に近いかもしれません。まず私を知ってもらうことが第一歩ですから」
そう話す志賀さんは日々、街へと出かけています。町内会や地域のサロン、老人クラブに顔を出したり、民生委員から地域のようすを聞いたり。介護予防という視点から、どんな活動が行われているかを把握するとともに、体操がしたいけれど友達がいなくて……といった声に応えていく方法を共に探ることも。
「主体は地域の方々。私の仕事は、自主的に活動を行うためのきっかけづくりです。簡単なことではありませんが、大切な役割を担っているというやりがいを感じています」
今は、地域のことを知り、地域の人と一緒に考えることが楽しいと話す志賀さん。
とはいえ、最初はドキドキだったのだとか。
「よそ者の私が入っていけるのか、不安もありました。でも、みなさん優しい方ばかり。ウェルカムな感じで接していただいています」
町内会長さんが自転車で立ち寄り、介護予防の講座を開いてほしいと言いに来たりすることもあるのだとか。しっかりと地域に溶け込みつつある志賀さんです。
大学卒業の年に社会福祉士を取得。
特養の相談員からコーディネーターへ。
志賀さんは、大学で社会福祉士の受験資格が得られる学科を専攻し、卒業の年にみごと合格を果たしました。福祉に関する相談に応じたり、必要な保健福祉サービスへとつなげたりするのが社会福祉士。国家資格です。
「高校時代、バドミントン部の顧問の先生から、志賀は人の話を聞くのが上手だから、社会福祉士が向いているのでは、と言われたことが、その大学へと進むきっかけとなりました」
そして、国家資格の取得に必要な1カ月間の実習で、総合病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)を経験したことが、今の仕事を目指す契機となったと話します。
「患者さんが退院後、どうすれば安心して生活できるかを考える実習を通して、そうした方々を支援する地域の大切さを痛感。福祉分野で活躍したいと思うようになったんです」
社会福祉法人恵望会が運営する特別養護老人ホームの相談員として入職しますが、地域づくりに関わりたいという思いが上司に伝わり、現在の職場へと異動。そして、同地域包括支援センターの生活支援コーディネーターに抜擢されました。その役割を地域に根付かせるという役割も担っています。
自分が関わり、暮らしやすい地域へと
変化していくようすを見ることが夢。
同法人では入職後、法人内のデイサービス、ショートステイ、特別養護老人ホームなど、幅広い支援サービスの現場を経験する1カ月の研修を実施しています。
「施設での介護について改めて学べたこと、また、ショートステイではサービスを利用されるご家族様の思いや在宅でのようすについて考えるきっかけを与えていただけたことが、今、地域でいろいろな方にお会いする仕事のなかで、とても役立っていますね」
生活支援コーディネーターは、全国的にもまだ知名度が高いとは言えない仕事ですが、地域での介護予防が推進されるなか、その役割には大きな期待が寄せられています。
「私たちが関わることで、高齢になっても暮らしやすい地域へと変化していくようすをこの目で見たい、というのが夢なんです」
休日には、真新しいバイクでショートツーリングを楽しんでいるそうですが、ここは買い物が不便ではないか、などと地域のようすがつい、気になってしまうのだとか。
「生活支援コーディネーターには、そうした視点が何よりも大切なんです」
なんとも頼もしい表情を見せてくれました。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

高齢者の方々が、安心して在宅で暮らせる地域づくりに関わってみたい。そんな思いを抱いたことが、今の仕事につながっています。自分がやってみたいことに、まずは向かってみることをお勧めします!

お仕事データ

問題を抱える人に寄り添う
ソーシャルワーカー
ソーシャルワーカーとは
社会生活に問題を抱える人に
解決策となる援助やアドバイスを。

病気やケガ、高齢、障がいなど社会生活を送る上で問題を抱えている人の相談を受け、適切なアドバイスや援助を行う仕事。時にはケアマネジャーや介護福祉士などの福祉サービス関係者、医師や看護師、リハビリスタッフといった医療関係者と連携しながら、状況に適したサービスを仲介することもあります。一般的にはソーシャルワーカーと呼ばれますが、高齢者福祉施設や障がい者福祉施設では「生活相談員」、病院では「医療ソーシャルワーカー」、学校では「スクールソーシャルワーカー」など、勤務先によって職種名が異なります。

ソーシャルワーカーに向いてる人って?
相手の悩みを理解する傾聴力と、
人の役に立ちたいという強い思い。

ソーシャルワーカーの主な仕事は困っている人の相談にのること。相談者が安心して話ができる信頼感があり、相手の立場に立って悩みを理解するための傾聴力が大切です。さまざまな関連機関や職種と連携しながら問題を解決へと導くため、多くの人と関わって物事を進めるのが好きな人も向いているでしょう。何より、ソーシャルワーカーには「人の役に立ちたい」という思いが欠かせません。

ソーシャルワーカーになるためには

ソーシャルワーカーとは広い意味では社会福祉事業に携わる人の総称。資格が必要とされるわけではありませんが、一般的には「社会福祉士」の国家資格を持っていることを条件にする職場がほとんどです。社会福祉士国家試験の受験資格を得るためのルートはさまざま。大学の福祉系学部に進み、社会福祉士養成を目的とした学科・コースで指定科目を学ぶルートが一般的です。この場合、卒業と同時に受験資格が得られます。2年制、3年制の福祉系短大・専門学校で指定科目を学んだ場合は、卒業後にそれぞれ2年、1年の実務経験が必要。資格を取得することで、社会福祉士と名乗って働けます。
※社会福祉士の国家試験受験資格については、詳しくは公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページをご確認ください。http://www.sssc.or.jp/

ワンポイントアドバイス
介護施設を筆頭に、
活躍のフィールドが広がっている!

ソーシャルワーカーは福祉や医療の専門家としてニーズが高まっている職業。とりわけ少子高齢化が進み続けている昨今では、特別養護老人ホームをはじめとする介護施設で活躍する人が増えているようです。また、病院や学校、行政など活躍のフィールドが幅広いのもメリット。今後、ますます世の中から求められることが予想される未来ある仕事でしょう。