中島 友春さん
インタビュー公開日:2018.07.11

もともと興味があったのは
塗装の部署でした(笑)。
ジジッ、ジジジッ!株式会社ワールド山内の第四工場で、溶接トーチ(溶接機の先端部)を金属の板に当て、火花を上げている職人さんの姿が見えました。インタビューのマイクを向けたのは溶接工の中島友春さんです。
「高校卒業後、航空関係の専門学校に進みました。僕はクルマをはじめ、乗り物が好きだったので、正直なところ何となく(笑)。将来は航空会社に勤めたいという強い思いがあったワケでもありませんでしたから、学びが肌に合わずに辞めてしまい…」
そんな時、求人誌でたまたま目にしたのがワールド山内の募集。金属製品の設計から板金、切断、溶接・表面処理まで一貫して手がける中でも、塗装の部署に興味があったといいます。
「アルバイトの募集でしたし、クルマの塗装ができるかもしれない…と軽い気持ちで応募しました。結局、配属されたのは溶接の部署でしたが(苦笑)」
加工する材質や場所によって、
溶接の手法を変えています。
当時、働き始めてから3カ月間はいわゆる下積み。中島さんは加工する材料を運んだり、先輩が溶接した金属を磨いて仕上げたり、一つひとつできることを広げていきました。
「それから少しずつ溶接機にふれるようになりました。最初に教わったのは『TIG(ティグ)溶接』。タングステンという棒に電流を流し、その熱で金属を溶かしてくっつける手法です」
TIG溶接は細かい部分をキレイに溶接するのに向いているのだとか。そのほかにも、タングステンが自動で飛び出す「半自動溶接」やタングステンごと溶かす「アーク溶接」などがあり、加工する金属の材質や場所によって使い分けているそうです。何だか難しそうですね。
「そりゃあもう。新人時代は熱をかけすぎて穴を開けたり、金属が曲がったり、よく失敗しました…。あのころはまだ職人気質の先輩が多く、かなり怒られましたね」
人間関係の良さから、
「出戻り」しました。
中島さんは半年ほどでアルバイトから社員に昇格。最初は自分が溶接した部品が何にどう使われているかも分かりませんでしたが、徐々に組み上がった完成形を目にする機会も増えてきたといいます。
「例えば、電車の下部に取り付けるモーターのフレーム。東京の地下鉄で使われていると聞いた時は胸を張りたい気持ちになる反面、写真でしか見ることができないのが悔しくて(笑)」
実は中島さん、3年半ほどで別の職場に転職。ところが、そう時間が経たないうちにワールド山内へと「出戻り」したのだとか。その理由は?
「溶接が好きだからというとキレイすぎますね…。転職してからも工場にはちょくちょく顔を出していて、上司から『戻ってこい』と言っていただけたのが大きいです。人間関係の良さが一番の理由です」
上達するには、
自分でやってみるしかない!
ワールド山内の溶接部門は、ステンレスや薄い金属を担当する1係、大小さまざまな鉄製品を手がける2係、ロボットシステムを使って大量生産する3係に分かれています。中島さんは、2係の主任のポジションを経て係長にステップアップしました。
「部下の力量を見ながら仕事を振り分けたり、納期と生産数を考慮して工程管理をしたり、いわゆるマネジメントの業務も担当するようになりました」
今はスタッフの教育も重要なミッション。かつて自分が教わったように、厳しく指導しているのでしょうか?
「いえいえ全然(笑)。手順を手取り足取り教えますし、ひな形になるものを溶接してお手本も見せています。ただ、この仕事は言葉で伝え切れない部分が多く、一通りの作業がものになるまで最低でも5年。やってみて失敗するしか上達の道はないんですよね」
仮付けが苦手なので、
日々トレーニング中です。
中島さんが溶接工として働き始めてからおよそ10年。もうすっかりベテランですね、と声をかけると、「自分はまだまだ」と首を振ります。
「先輩方は経験値が半端じゃないんです。溶接する金属がどのように使われるかを頭の中に描きながら、どう作業するべきか組み立てています。例えば、後の工程で金属を曲げるなら、引っ張られても折れない強度に溶接するといったように」
中島さんは製品の形を整えるために軽く溶接する仮付けという作業が苦手で、完璧にこなすために今も日々トレーニングしているといいます。仕事が本当に好きなのですね。
「う~ん…というよりものづくりが好き。狭い場所で仰向けになって溶接するようなやりにくい時もあるんですが、キレイにくっ付けられると本当にうれしいです。それが職人の腕の見せどころでもあります。これからも、みんなに求められる技術を手にするために努力あるのみです!」
シゴトのフカボリ
溶接工の一日
8:00
出勤
8:20
朝礼
8:30
工程管理/仕事の割り振り
8:40
溶接作業
10:00
休憩
10:15
溶接作業
12:00
昼食
13:00
溶接作業
15:00
休憩
15:15
溶接作業
17:30
退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
溶接用ペンチ
一見すると普通のペンチのようですが、実は溶接作業用の特殊なもの。溶接トーチのノズルを着脱できる部分があったり、スパッタ(溶けた金属が粉状に固まったもの)を除去できるようになっていたり、コレ一本でかなり作業が捗ります。

株式会社ワールド山内

最新鋭の加工設備をそろえ、板金加工技術、機械加工技術、溶接・表面処理などを複合させた技術で金属製品を一貫生産。さらに三次元データを活用した高効率的な生産体勢を整え、短納期かつ高精度なものづくりを実現。

住所
北海道北広島市大曲工業団地4丁目3-33
TEL
011-377-5766
URL
http://www.world-yamauchi.co.jp/

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お仕事データ

金属を溶かして接合!
溶接工
溶接工とは
多彩な溶接技術を駆使し、
材料をくっつけるエキスパート!

金属などの素材を溶かして接合させるのが溶接工の仕事。その手法は電気や火の熱を使って金属を溶かす「融接」、機械を使ってプレスする「圧接」、金属や合板を使って材料をくっつける「ろう接」の3種に大きく分けられます。さらに、材料によって「アーク溶接」、「TIG(ティグ)溶接」、「サブマージドアーク溶接」、「スポット溶接」などさまざまな溶接技術を駆使。図面を見ながら金属を切断したり、溶接後に材料を磨いてキレイに整えたりするのも仕事のうちです。十分な強度があって見た目も美しい溶接加工をするためには高い技術が必要。溶接工は素材を接合するエキスパートといえます。

溶接工に向いてる人って?
ものづくりが好きで、
体力に自信がある人!

溶接工は、自らの手で素材をつなぎ合わせて新しい部材をつくるため、ものづくりが好きな人が向いているでしょう。溶接の際には火や電気、圧力、ガスなどを取り扱い、しかも美しく仕上げていかなければならないため、慎重な性格も求められます。また、仕事中は立ちっぱなしだったり、かがんだ姿勢をキープしたり、重い金属を運ぶこともあるため、体力に自信があることも素養の一つです。

溶接工になるためには

溶接工になるために特別に必要な資格や学歴はありません。ただし、専門性の高い技術職であることから、一般には公共の職業訓練校を卒業するケースが多いようです。一部の大学や専門学校では溶接工の養成コースを設置しているところもあります。企業によっては資格を求めることもあるため、「ガス溶接」や「アーク溶接」などを取得しておくとより良いでしょう。

※「ガス溶接」や「アーク溶接」の資格については、詳しくは一般社団法人日本溶接協会のホームページをご確認ください。http://www.jwes.or.jp/

ワンポイントアドバイス
ロボット化が進んでも、
溶接工は重宝される仕事!

大規模な工場では溶接ロボットを使う企業も増えています。とはいえ、機械化されているのは単純作業で、仕上げや細かい加工は溶接工が担当しているケースが多いようです。今後、あらゆる製造業でロボットが作業できる範囲は広がると見込まれていますが、こと溶接工に関しては、材料の知識を生かした加工やセンスが必要な美しい仕上げなど、経験を積み重ねた職人にしかできない仕事があります。将来的にもこの職業は重宝されると考えて良いでしょう。