野村 友美さん
インタビュー公開日:2018.07.31

動物園の飼育員は狭き門!
全国の動物園の採用に挑戦。
可愛い動物と毎日触れ合えるというイメージで、人気の職業となっている動物園の飼育員。
野村友美さんは、札幌市円山動物園で動物専門員(飼育員)として働いています。
子どものころから動物好きで、特に動物の本来の姿をお客様に見せられる動物園での仕事に憧れていたそう。愛媛県出身ですが、北海道への憧れもあり国立大唯一の畜産単科大学である帯広畜産大学へ進学。
動物園の飼育員は全国的にも狭き門で、希望者は全国の園を対象に就職活動をします。野村さんも全国の動物園を受け、徳島県の動物園で1年間臨時職員を経験。
その後、札幌市で動物園の飼育員を専門性の高い一般技術職である「動物専門員」として採用する制度ができ、野村さんは初年度の職員として採用されました。
動物たちの命を預かる仕事。
細かい観察が欠かせません。
野村さんが担当しているのは、熱帯鳥類館。キュウカンチョウやオニオオハシなどが、熱帯植物を植えた館内で自由に飛び回っています。
毎日、餌を準備して与えたり、園内の清掃・管理をしています。
「動物たちの命を預かっているという責任を感じています。動物は言葉を話せないので、細かい変化を見て異変を感じたら、園の獣医師に診察してもらいます」
動物の変化は、細かい動きや鳴き方、目力などで判断するとか。
温度や湿度の変化は、動物の体調や行動に大きく関わってきます。特に寒い北海道の冬は、温度管理が重要です。
屋外にはインドクジャクもいます。鳥の足が長時間雪に触れると、凍傷になってしまう可能性もあるので、止まり木の雪を除けるなど注意を払っています。
動物の生態や魅力を伝えること。
人と接することも重要な仕事です。
訪れるお客様に、動物について知ってもらうことも動物園の重要な役割です。
餌を与えるために鳥舎に出た時などは、お客様にその様子を見てもらうとともに、お話をする大切な時間です。
「動物に野生に近い姿で元気に毎日を過ごしてもらい、生態や魅力をお客様に伝えることが、この仕事で感じるやりがいですね。中には毎日のように来てくださる方や、質問をしてくださる方もいて、動物のことを知ろうとしてくれていることがとてもうれしいです」
園内に掲示されている看板も、動物のことを知ってもらうために野村さんたち職員が作っているものです。
札幌の環境・生態系を守る役割も。
調査研究にも携わっています。
野村さんたちが関わるのは、園内に展示される動物だけではありません。
地域の生態系を守る調査研究や情報発信にも、動物専門員が活躍しています。
例えば、現在行っているのは札幌の野生コウモリの生態や個体数についての調査や、ニホンザリガニの放流に際し生態系を崩さないためのDNAの調査。
展示している動物の他にも、保護されたコウモリを飼育し、生態等の研究も行っています。そのような調査研究の結果は、市民向けに報告会を開き、公開しています。
野村さんは、大学で野生動物の調査に関わる研究をしていたので、その経験も生かされています。
幅広い知識や技術が必要。
新しい挑戦を続けています!
「動物が好きなことは第一条件だけど、それだけではやっていけない仕事だと思います」と野村さん。
動物に関する幅広い知識のほか、お客様や協力会社の人、共同研究をする大学の人とのコミュニケーションも必要です。
また、論文を書いたり発表資料を作ったりする技術も身につけなくてはなりません。
最近では、トビやフクロウなどの猛禽類が本来の習性に従って飛ぶ様子をお客様に見せる「フリーフライト」というイベントの解説役としてもデビューしました。
大好きな動物に囲まれながら、日々新しい挑戦をしています。
シゴトのフカボリ
動物専門員(飼育員)の一日
8:45
出勤・ラジオ体操
園全体ミーティング(前日の報告、周知・連絡)
9:00
係班ミーティング
9:30
開園・現場に移動、動物の様子チェック
10:00
鳥舎の清掃、動物の餌準備
10:45
餌やりをしながら、お客さんにガイド・解説
11:00
クジャク舎の清掃
11:45
コウモリの世話
12:15
昼休み
13:00
昼の園全体ミーティング
13:15
動物の様子チェック
13:30
フリーフライト準備
14:00
フリーフライト
14:30
看板制作、鳥舎の補修、植物の手入れ
16:00
夕方の餌やり、片付け、鳥舎チェック
16:30
閉園、窓と扉の施錠
16:45
事務所へ移動、日誌の記入
17:15
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

学生時代にYOSAKOIのサークルに熱中していました。就職活動中はサークルを辞める人が多い中、私は両方諦めたくなかったので、辞めずに全力でやり抜きました。その経験が、今の仕事にも生きていると思います。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
無線とデジタルカメラ
園内は広いため、職員同士は常に無線を使って連絡を取り合っています。デジタルカメラは、円山動物園だよりやブログに掲載する写真を撮ったり、異変を感じた時に獣医師に見せるために撮るなど活躍しています。

札幌市円山動物園

札幌市民の動物園として、約170種類の動物を自然に近い形で展示しています。また、市民への環境教育、野生動物の調査研究・保全も行っています。

住所
北海道札幌市中央区宮ヶ丘3番地1
TEL
011-621-1426
URL
http://www.city.sapporo.jp/zoo/index.html

お仕事データ

動物の餌やりや健康管理を!
動物飼育員
動物飼育員とは
動物が快適に暮らせる環境を
整える重要な仕事!

動物園や水族館で動物の飼育や観察、健康管理を行うのが動物飼育員。餌の食べ方はもちろん、歩き方や毛づや、表情から体調を読み取ったり、飼育小屋を掃除したり、動物が快適に暮らせる環境を整えるのが重要です。他にも動物の繁殖や種の保存の研究、入園者への説明、動物の調教などさまざまな仕事に取り組みます。ユニークな展示方法や企画を考え、多くの人に動物の素晴らしさを伝えるのも動物飼育員の役割です。

動物飼育員に向いてる人って?
動物や自然の不思議に探究心を持ち、
我慢強く関わることが出来る人。

野生動物はペットとは大きく異なること、動物園は単に飼育するだけではなく、絶滅危惧種の保全や、野生動物の知られざる生態・生理の解明、来園者に対する教育活動など、様々な役割を担っています。そのため、動物が大好きであることは大前提ですが、一方でただ単に動物が好きというだけでは務まらず、生き物や自然の様々な不思議を楽しみ、理解を深めようとする探究心が不可欠です。
また、動物園では様々な動物が飼育されており、その性質も様々。人間の思い通りに動かないことがほとんどなので、我慢強く接する必要もあります。

動物飼育員になるためには

動物飼育員に必要とされる資格はありません。ただし、多くの人が大学の獣医学科や畜産学科、動物関連の専門学校を卒業し、動物園や水族館、サファリパークなどに就職しています。動物飼育員の求人数はあまり多くなく、定期的に採用を実施しているケースもごく稀です。まずはアルバイトとして働いて人脈を作ったり、こま目に求人情報をチェックするのがオススメです。公立の動物園や水族館で働くためには、地方公務員試験に合格する必要があります。

ワンポイントアドバイス
動物の見せ方やふれあいの場に
アイデアが求められる時代。

かつての動物園は檻の中にいる動物を眺めるのが一般的でしたが、「もっと動物に近づきたい」「自然界でどんなふうに暮らしているのか見たい」という声の高まりから、入園者の満足度を高めるために各園が知恵を絞っています。最近では動物の見せ方を工夫したり、入園者が動物とふれあえる場を増やしたり、さまざまな取り組みで入園者を楽しませる傾向にシフト。動物飼育員にもアイデアが求められるようになるでしょう。