山本 雄基さん
インタビュー公開日:2018.08.21

大学で現代アートの面白さに開眼。
作品作りに没頭していきました。
山本さんと絵の出会いは、高校の美術部に入部した時。
「当時は絵というより、気が合う仲間たちと一緒に過ごす時間が楽しかったんです。
顧問の先生も他の大人よりも楽しく生きているように見えたので、その影響を受け自分も美術教師を目指そうと思うようになりました」
卒業後、北海道教育大学札幌校の芸術文化課程に入学。現代アートと出会い、抽象的な表現や挑戦的な表現にどんどん魅せられていきます。
「音楽の機材を並べて曲を奏で作品に組み込んだり、動く絵を作ったり…。そのような先輩の作品を見て、わからないからこそ、『なんだこれは?どうしてこんな作品を作ったんだろう? 』と好奇心を膨らませてくれるところに、現代アートの面白さを感じました。そして自分も現代アートを踏まえた絵画制作に没頭していました。いま有名な古典絵画もその当時は、最先端の現代アートだったんですよね」

2年間美術教員を経験するも、
その後は制作中心の生活を選択。
大学から大学院へ進学。本格的に芸術の道を目指して制作を続けていましたが、大学の先生から札幌で教員の臨時採用枠へ推薦され、美術教員の仕事をしながら絵を続けることにしました。
2年間の任期が終わった後も、他の学校で仕事を継続することはできましたが、制作中心の生活を選びます。
「教員と制作、どちらも創造的な仕事でやりがいがありました。だからこそ、両方を真剣に続けようとするほど、それぞれが中途半端になってしまう気がしたんです。なので、より難しい生き方を選ぶことにしました。全く予測できない生活が始まったら、自分はどう動くんだろうということに興味もあったので。食べていける見込みはなかったけれど、何があっても制作を止めない自信はありました」
アルバイトをしながら制作を続け、全国のコンペで多数入賞し、札幌のギャラリーで個展を開催。その時に偶然展示を見に来ていたドイツ在住の先輩アーティストから評価され、ドイツのギャラリーで個展を開くチャンスに恵まれました。
海外在住のアーティストや、
芸術作品から刺激を受けました。
ドイツで個展を開く機会に合わせ、1年間現地に住んで制作をすることに。
そこでの経験は、山本さんに大きなインパクトを与えました。
「現地で活動する先輩をはじめ、たくさんの素晴らしいアーティストと話ができました。彼らは、『アーティストとして生きていく』という覚悟に満ちていて、自分の甘さを痛感しました」
また、社会の中で、芸術家の存在が尊重されており、環境が整っているのも、日本との大きな違いだったといいます。西欧の他の国の美術館を見て回り、古典から現在に至るまでの美術作品の実物のタッチやスケール感を肌で感じる体験もしてきました。
そのような刺激を受けながら精力的に作品を制作し、個展では予想以上に絵が売れ、成功に終わることができました。
国内外で定期的に個展を開催。
徐々に作品が売れるように。
帰国後は、再び拠点を札幌へ。専業で画家を続けることで金銭的にも精神的にもプレッシャーが増え、苦労した時期もありましたが、札幌、栃木、ドイツ、台湾のギャラリーで定期的に個展を開けるように。
また、アートフェアなどにも出品し、ここ数年では生活できるほどには作品が売れるようになってきたといいます。
山本さんの作品は、大小や色もさまざまな円を描き、透明なアクリル絵の具を重ねて平らに研磨し、それを何層も重ねていくというもの。大きさも一辺3メートルを越える大きなものから、20センチ四方の小さなものまであります。
北海道にいることが、作品に影響することはあるのでしょうか?
「北海道は日本の中でも、歴史の軸が違ったり、風土も違う土地ですね。直接的ではありませんが、そういう場で物事を考えてきたことは、僕の作品の中身にも反映されていると思っています」
先の心配よりも、表現を磨くこと、
やり続けることが大事です。
作品発表の機会も増え、今は一人では制作が追いつかないほどになっています。
大学の後輩だった妻の幸子さんも、映像制作の仕事の傍らアシスタントに入り、共に作品を作り続けています。
画家を目指す学生は、今どんなことをすればよいでしょうか?
「先のことを心配するよりも、実作品をたくさん見て、いろんな体験をして、いろんな人と話し、自分にとって良い作品とは何なのかを考え続けること。そして制作の手を動かし続けること。この地道な繰り返しを人一倍やれるかどうかです。どんな状況にも対応できるフットワークの軽さや、助けてくれる人たちへの感謝も大事ですね。変人扱いと貧しさに耐えられるタフさもポイントかも(笑)」
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

あの作品はなんだ?なんであの時代あの場所であの画家があんな作品を作ったんだ?じゃあなんで今この作品を自分が作っているんだ?と、作品をたくさん作りながら考えることで、世界の見え方もどんどん面白くなっていきます。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
丸型定規とコンパス
円を描く作品には、丸型定規とコンパスが欠かせません。定規もコンパスも、大小のサイズをそろえています。手描きだけでなく、パソコンで下書きをすることもあります。

画家 山本雄基

拠点である札幌のほか、栃木、台湾、ドイツのギャラリーで定期的に個展を開催。円をモチーフにした独特の作品で、多方面から評価を受けています。

住所
北海道札幌市東区北2条東15丁目26―28 なえぼのアートスタジオ内
URL
http://yamamotoyuki.com

お仕事データ

人々の心を魅了する絵画を!
画家
画家とは
絵画表現を通して
人間の本質に迫るのが醍醐味!

仕事としての範疇を超え、絵を描くことを追求するのが画家。顔料をにかわで溶いて紙や絹布に描く日本画、油絵の具などを使ってキャンバスに描く洋画などの区別もありますが、それよりも、絵画に独自の解釈を与え、人間の本質に迫ろうとするのが画家の醍醐味です。絵の具に限らずさまざまな材料を使い、PCをはじめとした最新のテクノロジーを駆使して表現する画家も増えています。作品の収入だけで生活できる画家はほんの一握りといわれ、創作活動の合間に美術講師やデザイナーといった仕事を持つ人も多いようです。

画家に向いてる人って?
鋭い観察力と好奇心を持ち、
絵を描きたい衝動が湧き上がる人!

「絵が描きたい!」「絵画が好き!」という強い気持ちと、実際に制作を長年続けていくことが大切です。技術を磨き続ける努力はもちろんのこと、人と異なるテーマやイメージを表現できるセンスも求められます。テーマやモチーフ、作品の成長のために、幅広い好奇心を持ち、常識に縛られずに物事を多角的に観察できることも重要。また、他の職業に比べて一人前になるだけでも多くの歳月を要することもあり、努力が必ずしも金銭的評価につながるとも言えないので、それでも高いモチベーションを抱き続けるという強い精神力も大切です。

画家になるためには

画家には免許や資格は必要ありません。立場はさまざまですが、絵が売れることで生計を立てている画家の場合、一般的には、美術大学や芸術系の専門学校を卒業後、公募展やコンクールでの入選を経て、コマーシャルギャラリーに所属するケースが多いようです。美術の専門教育を受けずに、独学で一流の画家へと駆け上がった人もいるなど、道は一つではありません。単に絵が上手な作品だけが評価される世界でもないことから、独自の世界観を探求し、さまざまな発表の場に応募し続けることが大切です。

ワンポイントアドバイス
インターネットやSNSによって、
活動の幅が広がっている!

最近は、地方でもユニークな展覧会やイベントが増え、アートが身近になってきています。大企業が作品を購入する機会も増えており、画家を目指す若い人がチャンスをつかむ機会は十分にあるはずです。また、インターネットやSNSを活用することで、より多くの人に作品の存在を知ってもらうことや、展覧会の告知などの広報活動が容易になりました。地方にいながら、グローバル活動にも利用できるため、さらに活動の場が広がっていくと考えられます。